2016年3月13日 (日)

■ティファニーでガンプラを。~私信、『アマガミ』SS、「Plastic Joy」に寄せて~ -更新第1048回-

オッスおらオイサン。

今日のお話は、とあるお友だちに読ませてもらった
『アマガミ』の、絢辻さんにまつわる二次創作・SSの感想なので、
細部に関してはご当人以外にはサッパリわかんないと思うけど、
久々に『アマガミ』や絢辻さんについて思うことなんかを書くので、
せっかくだからご本人の許可を得て、こっちに載せちゃうことにした。

  いえーい。  ← 何がだ

デ、読ませてもらったんだけど、
先ずは、感想が2年越しになってしまったことを素直にお詫びしておきます。
メンゴメンゴ。

受け取った直後にもちゃんと読んだのだけど、
公私ともに超忙しい時期でもあって(お会いしたのもすごい合間を縫ってお会いしたんだったと思う)、
キチンとした感想を返せずにおりました。
今回改めて読み返してみての感想は……
だからもう、2年前とは違う感想になってしまうことはご容赦戴きたいのだけど、

「愛」とは、斯くも尊く、斯くも無邪気で、そして斯くも気恥ずかしいものであったか!

……と、そんな風に感じ入るものだった。


「恥ずかしい」とは書いたが、きっと、多分、
その恥ずかしさは書いてしまった今なんとなく分かってもらえるものと信じて書いた。
2年前には恥ずかしくなかったかもしれなくて、
今は恥ずかしいかもしれない……そんな恥ずかしさ。

お話自体はシンプルで、
それだけに愛と「祝い」に満ちていることが伝わりやすい、暖かいものでした。
そこがまた開けっぴろげで、恥ずかしさに直結してしまってると思うのだけど。

この結末にたどり着いた絢辻さんが、ナカヨシから来たのか、スキBEST・スキGOODから来たのかは
アマガミの実プレイから遠退いてしまった自分には推し量ることも難しいが、
いずれにせよ、
幸せな結末に辿り着いた絢辻さんへの、溢れんばかりの「おめでとう」に
むせかえるようだった。

登場人物の殆どが二人の門出の式にやってきて祝辞を述べるシーンでそれはよく感じられて、
キャラクター全員を登場させるのは二次創作としてのサービス精神でもあったのかもなーと思いつつ、
「誰からも祝われるまでになった二人のそれまでの時間」がさりげなく表れているのが
個人的には印象的だった。
あーホントに佳き二人であったのね、という感慨……というか、
そうであって欲しいという書き手の願いが、なんかもうパンパカパーンでパンパカパーンで。



……けど、どうなのでしょうね?



こうして、ビターではあるけれどもダークではない、
ハートウォーミングになってしまった絢辻さんは、
あの厳格な絶対輪郭を保っていてくれるのだろうか?



絢辻さんは、ブラックホールを抱えていた。



胸の深奥に、ブラックホール……
「無」の頂点であると同時に重力と質量の権化であり「在」の極致であるところの
奈落を抱えていたからこそ、そこから先に何者の介入も許さないくらいの強い強い強い強い輪郭、
事象の地平面をともなって
ボクらが愛してやまない唯一無二の絶対輪郭・「絢辻詞」というカタチでいてくれたワケで。
それを感じさせなくなったいま、彼女の輪郭はどうなってしまうのだろうか。
それが心配でならない……。
久しぶりに、そんな気分に浸ってしまいました。

  まオイサンは、そういう輪郭の残る気配が多分にあったからこそ、
  オイサンは「スキ」よりも、
  「アコガレからのナカヨシ」が好きだったりしたのだけれど。
  ……となると、それが感じられないこのSSの絢辻さんは、スキ系列の絢辻さんなのかしら?
  と妄想をたくましくするところではある
  (お会いした時に直接そんな話を既に伺ってたらごめんなさい)。

そんな気分にさせるほど、幸せいっぱいの絢辻さんのお話だったね、
ということです。

単体の読み物として、ヒトツ率直な物足りなさを述べると、
冒頭で述べた通り良くも悪くもシンプルで、シンプルさがたたり、
イマドキのオンライン・オフライン関わらず蔓延する物語作品から見れば、
どうしても、どこかで見た、誰かの何かの作品と重なってしまうところがある――



――のだけれども、それがダメかと言われたら、そうでもない。
二次創作のSSってそのくらいでいいんじゃないかなという感触を、
今回読ませてもらって改めて持った次第。



確定的な類似ではなく、全体的な枠組みが
「ああ、なんかこんな話どっかの何かで見たなあ」
という程度のことだけど。
けど、ヘンに作り込まれ過ぎて端から端まで風呂敷が畳み込まれるようなものよりは、
オイサンはよっぽど好きだけど。
モ少し余韻があっても好みかなあ。

デそういう好き嫌いを除いたとしても、だ。



特に、『アマガミ』は過程のゲームだ。



ADVだから、本来は一つの結末にたどり着くための過程は基本的に限定的で有限で、
SLGのような広がりは無い、
ハズである、
にもかかわらず、
過程に肝を置くゲームだ。
と、オイサンは思う。

  間口の広さは普通なのに、懐は不可思議に深く、そして出口はない、という
  歪むのもここまで来るとキモチワルイな!(ほめことば)
  ……という異様な(ほめことば)姿をしていた。

システムとしては完全にADVなのだけど、プレイするうちにSLGの味がしみてくる。
それは濃いプレイヤーたちの中で呼び起される感情が同じテキストを読んでも通り一遍でなく、
同じ道筋を辿りながら、パーソナルなステップを踏み次の展開に対して納得を得ている。
そうした手続きの事実はプレイする本人の外からは観測できないハズのものであるにも関わらず、
同じ世界に触れるプレイヤーたちは同朋たちの中で何かが起こっているのを
ボンヤリ察してしまうから、
そこに発生し存在する、個人の数だけの分岐を知り、それがSLG的である錯覚を起こす……。

……まゲームにしろ音楽にしろ映画にしろ、
娯楽物なんてのは多かれ少なかれ受け手の経験と引き出しによって違う味がしみてくるものですが、
『アマガミ』は特に個人の個人的な核に、針の形をした爆弾を打ち込んでくるらしい
(そしてどうやら、殊に傷を持つ者たちにはよりそうであるらしい)。

そういう個を相手どるゲームの二次創作なのだから、
ちょっとやそっと、骨格や輪郭が似ていたってどうということはないのではなかろうか。
個人が個人の材料と思い入れで勝負することが大事で、
そのはしばしに埋め込むパーツで、自分だけの輪郭を与えれば良い……んじゃないかなあ。
そしてたいがい、何故かそこに「ゆがみ」が埋め込まれるのがまた、
『アマガミ』の面白いところではあった。

だから、
「『アマガミ』が受け手にそういう(こういう)物語を書かせてしまう」ことは不思議でもなんでもなく、
今回読ませてもらったお話はまさにそういう物だったなーと思う。

書き手のアナタ自身の中で、
 「いつか幼い絢辻さんが川に投げたというおもちゃの指輪と、
  『アマガミVA5』にあったアンソロジーのストーリーと、
  エンゲージリングと、
  Plastic・Joyの歌の歌詞に現れたdiamond ringと」
が重なって、!他ならぬ一人の書き手が!いてもたってもいられなくなった、という、
熱の高さや鳥肌の立ったような昂揚感のあることが良く伝わるし、瑞々しいと思う。
その時点でもう勝ちだと言っていい。

  フシギなもので、なんかそういう
  「あ、そういう遊び方をしてもいいんだ」と思った人が、
  結構いたみたいね。他の環境とも相まってね。

……しかしそれだけに、やはり「我がコトの様に恥ずかしい」わけでw
ムズムズするわいw

……あの、言っておきますけれども、
オイサンはいま物凄いエラそうにして書いていますが、
これもまたものすごい恥ずかしいコトをしているという自覚のもとにやっているので、
なんかもうスミマセンでした。




……と、そういうことをふまえて。




これがまた、その世界を何も知らない人が読んでも共感出来てしまったり、
なんとも言えない気持ちにさせてしまったりすることが出来れば、
それはとても鮮やかだとオイサンは思うので。
ここから先は、読者としての贅沢。

オイサンは、一度お会いしたきりの第一印象からで申し訳ないけれども、
書き手のアナタのことを大変に豪放磊落な人物だと思っている。
その上で、人から認められる頭の良さや周到さなど、
緻密な面もきっと持っているのだろう、とお聞きする話の端々に感じていた。

大概どこかしらが鬱屈していて、
新品の折り紙を袋から出したら何故かどの折り紙も全部四隅の一つがちょこっとだけ折れちゃってた、
みたいなところのあるTwitterを通じてお会いした30人近い輝日東住人の中で、
アナタは稀有なパーソナリティを発揮しておられた。
アンタだけだよ、あんなんだったのw

  そうは言っても、上で書いたみたいに
  「瑕を持つものに這い寄ってくる『アマガミ』」だけあって、
  アナタも不思議なくらい主人公にシンクロする事件を抱えておったのでしたっけね。

「僕ってどんなんなんスかw」ってお思いになると思うけども。
まあお会いした皆さん、それぞれなんがしかの面で「アンタだけのあんなん」なんだけど、
その矢印の向き方が誰とも違っていた。
その分オイサンも面喰らって腰が引けてしまったところもあるんだけど、
その時点でも十分面白かったし、ときどき会って話を聞きたい人だなあと思う。

だからもっと大胆に、書き手であるアナタの持ってた当たり前、
でも他からしてみれば「お前なんじゃソレ」って言わずにいられない当たり前を、
作品の世界にぶちまけてみても良かったんじゃないかなーと思う、
っていうか、そういうのを読ませてもらいたいって思いました。
それはまあ、読者としての希望。

パーツにとどまらず、欲望・願望に収まらず、
土台からして自分ワールド全開の、新しい、『アマガミ』らしい冒険を。
今回の画サッパリまとまっていたから、
もっともっと「書き手くさい」ものを読みたいです。

絢辻さんは、比較的「閉じてしまった」ところのあるヒロインなので、
自分らしさを盛り込んで広げることは……難しいと思うんだけどね……。
情報も少ないしね……イヤ、遊び辛いとは思うのよ、ほんと。

  だからこう、当時、公式にはもう少し……ね。
  広げて欲しかったなとは思うんだけど、
  それはそれで、オイサンが最初に絢辻さんに感じた「完成度」と相反するんだけどさ。

オイサンの思うアナタの像を思うにつけ、
もしもアナタの愛したヒロインが、より快活で、より開かれた、
中多さんだったり、森嶋センパイだったりしたなら……
という妄想が尽きなかったりするです。

今現在、『アマガミ』や二次創作や、お好きなアーティストたちの作品と
どういう距離感で生きておられるのか分からないけど。
そういう遊びも見られると楽しいなーと思います。



……ね。



どーなんだろ。



まだ自分たちの体に、『アマガミ』や絢辻さんは息づいているんだろうか?
そんなことを思い返す価値を感じさせてくれる作品だったと思います。




……以上が、あなたが書いて、私が読んだ、
PS2版『アマガミ』の絢辻さんSS、「Plastic・Joy」の感想だったワケです。
相変わらずナニ言ってっか半分以上わからない感想だけれども。
どーでしょうね。

謎多き絢辻さんの物語、
そこにどんな自分なりの解釈を加えるか、
どの絢辻さんを自分の一番好きな絢辻さんに据えるか。
なんかこう、ゲームの『アマガミ』の絢辻さんでSS書いちゃうっていうのは
オノズとそういうトコが出ちゃうんで。

やっぱりこう、この作品に関しては、
みんなに「おめでとう」って言われちゃう、そういう絢辻さんだったよね、
と言うところが全てだったのかなと思います。



「ポチャーンって、安物のくせにずいぶん良い音がしてたわ」



次があるなら、是非。
カナダの森で、インドネシアのジャングルで。
絢辻さんが一体どんな絢辻さんらしさに出会うのか。
そんな話を読みたいです!  ← 無茶を言うな

オイサンも未だに書いてます。
次は、梨穂子で。
誕生日に間に合うといいけど、無理だろうなw



マそんなんで。
またお会い出来る機会があったら、面白い話を聴かせてください。
ホント、2年もすみませんでした。

気長によろしく。
オイサンでした。



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2015年10月20日 (火)

■猫とアラブと、競泳水着~ドリームクラブにて、百合スジに転向する絢辻さんを想うのこと -更新第1011回-

朝。
オシゴト向かう途中に目を引かれ、はっとさせてくれた二つの物。

オイサンです。

一つは、アラブから来た異邦人。
もう一つは、ツンと澄まして座った黒猫柄のスカート。



■月曜日の異邦人

駅の改札を出るとすぐ、
先日書いたパンの匂いのする地下道をくぐるか、地上の信号を渡るかの選択を迫られる。
大抵は信号との折り合いが悪くて、地下道コースを選ぶことを余儀なくされる。

今日の信号カラーも無情の赤で、
人型のサインにくっついている色が変わるまでのタイムゲージもほぼ満タンだったから、
ヤレヤレと、昨晩のやりすぎたジョギングでまだちょっと重い足を階段へ向けた。

そのときふっと、通りの向かいで信号を待っている、背の高いアラブ系の男が目を引いた。
シルエットは極めてシンプルであり、
見るからに肌触りの良さそうなベージュのセーターを着て、スリムな綿パンを履いていた……と思う。
丁寧に皮のケースをかぶせたミラーレスの一眼カメラを首に提げ、
何を見るでもなく、信号の変わるのを待って立っている。

  マ素材やなんかまでは、遠目だったので詳しくは分からなかったけれども。

つまりは、ゴテゴテ、ダボダボしたものではなかったということだ。
無駄な線は少ない。
飾り気のない装いにカメラだけ。
ただそれだけで、信号待ちをしていただけなんだけども、
まだ車通りも多くない朝の都会の真ン中で、異邦人然、とした彼のたたずまいに
不思議と目を引かれたのだった。

異邦人然。
\イホウジンゼン!/と音がした、と言っても過言ではない。
そこだけ既に写真のように、周囲がぼやけて、彼だけちがう空間に立っている。


……マ、理由なんかはないですよ。


なめらかな、強弱のはっきりした直線で深く彫りつけられた顔立ちとチョコレート色の肌が、
まだ少し寝ぼけたような石灰色の町の輪郭から自然に浮き上がって見えただけだと思う。

彼のまとった異邦人としての風合いが自然と哀愁を漂わせていて、
ついついもう少し見ていたいと……出来ることなら、私が彼を写真に収めたいくらいだったけれども……
思って、一度は地下道へ向かいかけた足を止めて、
信号が赤から青に変わるまでの時間、その男の姿を、通行人の目でぼんやり眺めた。

もし気付かれていて、彼がソッチの人だったりしたら
何か視線の意味をカンチガイされてしまったかも知れぬし、
不愉快な思いもさせてしまったかも知れぬ。
であればイロイロと申し訳ないのだが。

なんというか、朝の東京に珍しく、美しい情景であったことですよ。
悲哀……ではないけれども、そこはかとない異邦のこころもとなさ。
カメラが唯一その心細さに対抗する攻撃力ではあったのだろうけど、
逆に、胸にカメラを提げていなければ、異邦人であることを感じさせることも、あまりなかったのではないか。
そんな一幕。
ああいうのをサッと上手に、画にできるようになりたいものだ。

しかしまあ、アラブ系の人というのはその彫りの深さの陰影が異邦人っぽさを醸し出して
うらやましいですな。
あの兄ちゃんも、実際は大したコト考えてなかったと思うんだけど。
「(腹減ったな)」とか「(ジャパニーズJKのスカートは短えな!)」とか。

  ……貴様ッ! そのカメラの中身は、JKぱんつでいっぱいか!!(言いがかり

そういう意味では、ジャパニーズでもケン・ヒライとかヒロシ・アベなんかはうらやましい。
オイサンなんかは、ただのちょっと怖い感じのアジアの人ですからね。
マ海外に行けば、また違う感性で見られるんだろうけどさ。
あちらでは目の色が黒い・髪の色が黒いというだけで神秘的だと感じるらしいですし。

不思議とアラブの人には、白人さん、黒人さんとも一風違った雰囲気を、オイサンなんかは感じます。
えきぞちっく、ていうんですかね。塩化リゾチームでしたっけ?

  ……しかしこうして、色々と言葉にしてみて思うところがたくさん出てくるのだけれども。
  「異邦人」とはなんぞやとか、
  アラブアラブって言ってるけど、どこまでがアラブなのか、どこの人がアラブ系の人なのか、
  自分がイメージして話している「アラブ」っぽさっていうのは
  世間のアラブなイメージと合ってるのか? とか。
  一応、サラリとうわべくらいはさらってみたけども、
  なんか書き方に失礼があったらすんまそん。差別的な意図は何もないのよ。

異邦人、英語で言うとなんだろう? Stranger?
そう思って調べてみたが、普通にForeignerとかだった。
Alienっていうのもあったけど。ホントか?
Englishman in NewYorkでもI'm Alienって歌ってたな。

▼Englishman in NewYork



Strangerは、訳を見る限り若干失礼な感じかもしれぬ。
あと、エキゾチック(Exotic)にも、「ストリップダンサー」なんていう意味があるのね。
あとカミュの元祖『異邦人』にも興味が出てきてしまった。元祖?
こーゆーの、全然読んだことないなあ。


▼久保田早紀 異邦人




■きみの猫スカートに首ったけ

そこからさらに歩き、朝ゴハンも済ませた最後から二つ目の信号で、
スカートにたくさん黒猫を飼ってるお嬢さんをお見かけした。
黄土色の地に、しゃんと背筋を伸ばした細身の黒猫のシルエットをいくつも配したスカートをはいたお嬢さん。

スカートの形には詳しくないけども、サーキュラー? ギャザー?
膝より上丈の、ひらひらとした折込がそれなりに目立つ形をしていた。

目を引かれたのは、ただそのスカートのデザインだけ。
斜め後ろからだったのでお顔はよく見えなかったけれども、
少なくとも、下腹部から下のラインがそのスカートの面白さを邪魔するようなことはなかったから、
それなり以上にしゅっとしていたのではないだろうか。
ストッキングを履いてたかな。
覚えてない。

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学生さんなのか、あの時間だから勤め人だとは思うのだけど。
そこそこ目立つかわいらしさで、童貞の一人や二人、軽く殺せると思います。

スカートと言えばアニメ『ご注文はうさぎですか?』の第一話(一期ね)の冒頭、
ココアが初めての町を一人で歩くシーンを見た佐倉綾音が思ったのが
「ココアの履いているスカート丈は着こなしが難しい、
 足のラインに自信がないと履けないものだ」
ということだそうで、それにはチノ役の水瀬いのりも同意していた。

そのシーンに流れるメインBGMの命名権が二人に与えられ、ついた曲名が

「キミのスカート丈に首ったけ」

……というのは有名な話だが。
オイサンは、あのスカートに住む黒猫に、彼女が面白い名前をつけていないか気になるのであった。
「ちゃー」とか「きんむぎ」とか、「モルツ」とかじゃなければ良いが。

▼キミのスカート丈に首ったけ




■突撃! 深夜のラビットハウス!

……とまあ、なんやらこじゃれた話を二つばかり披露したところで、
今日も私のイカれた愛にかなしみながら水をやろう。
最近また、夜のお店に入り浸っているオイサンです。

マなんの話かつったら『ドリクラGogo.』の話なんですけどね。
上の話とは全然関係ないですよ。

いやあもう。
大体ね、花里愛ちゃんの競泳水着姿は反則なんだよ!!
あまりにもイヤr……健康的すぎる!

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ああ……かわいい…… ← キモチワルイの分かってるんだけどどうしようもねえんだよ!!

  などと言ったら、松尾象山館長は
  「恥を知りなさい君たち。萌えには反則なんてねえんだよ」
  とキレなさるだろうか。

毎度、ストーリー開始前に花里愛ちゃん+アンジュさんに競泳水着を着てもらい、
5、6曲歌っていただくので時間がかかってしょうがない。
大体、カラオケを眺めてる時間と、そのあとゲームしてる時間が同じくらいだよ!
ドリクラのカラオケを眺めてるだけで必要な栄養分と休息が摂取できるテクノロジーの開発が待たれる。
世界平和と、食糧危機・エネルギー危機解消のためにも!!

そんな寝言を言いつつ、
ストーリーの方で現在仲良くなろうとしているのはノコタンシショーなんだけど。
浮気者か。
浮気しまくりサンダーボルトか。

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カラオケでは花里愛ちゃんを基点にパートナーは気分で変えていたのだけど、
あるときアンジュさんをパートナーにしてみたら……
おやおや。
なんだか随分、お声の響きが良い。

  このゲームの素晴らしいところで、
  同じ歌を聞くのでも、歌い手のペアを変えることで歌の印象がサラッと変わったり、
  逆にヒロインの声の印象が歌った歌によって声の印象がすごくよくなったりするの。
  そんでちょっとドキッとしたりね。
  恋って……思わぬところに転がっていたり……するんじゃぜ?キラーン ← 言ってることは気持ち悪い

デ以来ちょっと気になってしまい、
ノコタンシショーとも若干仲がおよろしいということもあって、
隙を見て(なんの隙だ)、ストーリーの方でもチョイチョイご指名させてもらっております。

  ……ウーム……。
  宇宙警察、ときたか……。たいへんなことになってきた。
  『ドリクラ』宇宙には、宇宙刑事の皆さんもM78星雲も実在する流れになってきたぞ。
  ホント、なんでもアリだなこの世界観は……思いついた奴はやはり天才だ。

  会話やコミュニケーションをキャッチボールになぞらえるというのは
  日本では古く室町時代からのポピュラーな手法であり、
  成立しないコミュニケーションを「言葉のデッドボール」などと皮肉ったりしますけれども、
  『ドリームクラブ』からユーザーに向けて投げ込まれるのは、
  もはや消える魔球レベルですね。
  フツーの人間に取らせる気がない。

  けど、取る人はフツーの球と同じようにスパーンと取るし、
  なんならこっちのがフツーよか取りやすいね、イイ音して気持ちいいね、くらいのことをしれっと言う。
  なんなんでしょうね、この世界のいとおしさというのは。
  この世界を楽しむ他の方々の機微がどこにあるのか存じませんが、
  オイサンはもう、「俺はもう、この世界が大好きなんだ!」とすごく表明したいワケです。
  オッサンの愛・宣言とか、埒もありませんけども。
  「この世界のすべてを受け容れることが出来るのはオレだ! オレだけなんだ!」
  という固有の全能感みたいなものは、さながら『ゼルダ』シリーズの謎が解けたときの
  「オレだけが解けた!」っていうカタルシスに通じるものがある。
  そう、『ドリクラ』は萌え界の『ゼルダ』と呼んでも過言ではありますまい。
  無節操!変態!勇気! のトライフォース。

お話の主軸はしっかりノコたんで進行中。
この子とハナシしてると、なんかフツーに知り合いと話してるような気分になるな。
ギャルゲーとはいえ、異性を相手にするような、緊張感というか、異物感が無エ。
気取らなくて済む、というか。
オタクだからなのかもしれないが、オタク設定ヒロインは過去に何人も相手にしてるもんな。
不思議。
「あーそうなー」みたいな気分になる。

あと、彼女の持ち歌「O-share is Noko-ism」は、エンディングを張れる曲だなと思った。
黒バックにスタッフロールが流れるだけのシンプルなエンディングでかけても
十分座持ちするテンションがありますね。

お話の要所で口を挟んでくるセイラさんは、
正直、彼女メインのシナリオではあまり魅力を感じなかったけど、
こういう役回りで出てくると妙に映えるな。
「あ、この人いい人、魅力的」って思っちゃう。



■Closing~裏表のない素敵なオリビア

マそんな感じでヒトツ、取り留めもない日記でしたけれども。

最近、朝の松屋で結構な懐メロが流れる。
今朝などは、なにをトチ狂ったのか「ゴーウエスト」(♪ニンニキニキニキニンニキニキニキ…のアレ)が流れてきて、
一体どうしたんだと思わせたあと、杏里の「オリビアを聴きながら」がきた。
落差が激しすぎるだろう。

「オリビアを聴きながら」と言えば、サビの

  ♪ 疲れ果てたあなた 私の幻を愛したの……

という切ない一節が有名ですが、
絢辻さんのことを最も、荒れ狂うような高温で愛していたころ(今だって熱量の高さは変わらないが)に聴いて、
「いつか絢辻さんからも、こんな風に言われる日が来るのかもしれないなあ」
などと先を思って悲しくなってみたりしたのだが、
今考え直してみるとそれはそうではなくって、
この言葉はきっと、絢辻さんは言われる側だな、と思った。

絢辻さんが、絢辻さん自身に言われるセリフだ。

しかしそれでは、話の筋立てが哲学的すぎるし難解すぎる。
マなにぶん絢辻さんのすることだからそれでも丁度いいくらいかもしれないけれどそれは一先ず置いておいて、
絢辻さんが実は百合スジで、彼女自身によく似た、優しい恋人から言われる言葉だったらしっくりくるなあ……、
とか、
月曜の朝から松屋でカレー食いながら考えるコトではねえな。
ウム。
カレーうめえ。\辛エ/

  言われた絢辻さんは絢辻さんで、
  なんだか妙に腑に落ちてあっさり受け止めてしまいそうだけど。
  「ああそうね、その通りだわ。かなしくて耐え切れないけれど、それは全くその通りだわ」
  とか思っていそうでまたかなしい。絢辻さんはやっぱりいいなあ。
  誰よりも真剣に生きてる、絢辻さんが大好きだ!

……しかし、ナンですな。
このあたりの昭和歌謡の名曲と言われる歌は、
結構な割合で、ちゃんと聞くと全然たいしたことをうたったものではないですな。
そこんトコの当たり前具合が、
当たり前のことを美しく激しくドラマティックに、あたかも特別であるように、
大切なものであるかのようにごってりとデコレーションしてシロップでずっくずくにして歌い上げていることが、
名曲たる所以、数多くの人の支持を得たコツなのだろう。

「ああこの歌は、私の大切な思いをこんなに大切に、
 私みたいな些細な人間の気持ちが損なわれないように(大袈裟に)扱って歌い上げてくれている!」


っていうことのタマモノなのでしょう。
パワーポイントで要点を箇条書きにして出したら
「これが問題点です」
って1枚、2枚で終わってしまいそう。いや、見事。

悪いってことじゃなくてね。素晴らしい、という話ですよ。


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オイサンでした。


 

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2015年3月14日 (土)

■アマガミ・SS「ホワイトデーだ! 絢辻さんにお返しを渡そう!」 -更新第975回-

 
 
 
主人公「絢辻さん、今日はホワイトデーだね!
    はいコレ、チョコのお返しだよ。おいしかったよ、ありがとう!」

絢 辻「……」
主人公「……? 絢辻さん?」
絢 辻「……え? あ、ごめんなさい。何かしら?」
主人公「ホワイトデーのお返し……なんだけど、どうかした? 具合でも悪い?」
絢 辻「あ、そうね、そうだったわね。ううん、そうじゃないの。
    嬉しいわ、上げた甲斐があった」

主人公「……だったらいいんだけど……」
絢 辻「ちょっとボーッとしてただけ。ありがとう」

主人公「……」

主人公「(なんだか上の空だな。機嫌も、あまりよくないみたいだ。
     あれかな、ブルーデーってやつかな……)」

絢 辻「(なんてこと……迂闊だったわ……
     売り抜けるタイミングを逸して、あんなよけいな損を出してしまうなんて……
     金額は大したこと無いけど、悔しい!
     とんだブラックマンデーだわ……)」

 
 
 

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2014年6月24日 (火)

■今朝、市ヶ谷あたりで。~ドンマイ過ぎる六月のドルイド~ -更新第934回-


今日の朝、市ヶ谷あたりで追い抜いた、JKさん二人の言うことにゃ。  
 

  JKさん 「いっつもさ、朝、ゴハン炊くのはあたしの仕事なのね?」
  お友だち「うん」
  JKさん 「今朝スイッチ入れんの忘れちゃって……w///」
  お友だち「あら、ドンマイ過ぎる
  JKさん 「だから今日は、お弁当焼きそばなのww」
  お友だち「あっはっはw やったね」

朝のゴハンを炊く係を負ってるJKさんも感心だけど、
お友だちの返しがなんとも軽妙で。
「ドンマイ過ぎる」は秀逸。
ちょっと、落語聴いてるみたいに嬉しくなってしまった。

という具合で、この日、市ヶ谷周辺の高校に少なくとも1人、
昼から焼きそば弁当をワサワサ食べてるJKさんがいたハズです。
ドンマイ過ぎる。
好きな男の子に「お、焼きそば? うまそうじゃん」とか言われてたらいいですね。

  主人公 「あれ? 絢辻さん、お弁当は焼きそば? 珍しいね」
  絢 辻 「ん……(じろり)」
  主人公 「な、なに? (まずかったかな……)」
  絢 辻 「なんでもない。用がないんだったらあっちへ行って」
  主人公 「う、うん……ごめん。美味しそうだね、それじゃあね」
  絢 辻 「……。
       ……(美味しそう……)。
       ……(ずぞぞ///)」

▼伊賀野カバ丸



デまあ、焼きそばっつったら『伊賀野カバ丸』ですよ。
昭和のおっさんか。


▼あか抜け一番!



そしてついでに思い出したのでこっちも貼っておく。


明日はしっかり、スイッチいれてこ。



●◇● 夏至の日のドルイド ◇●◇



今年の夏至は6月の21日だったらしく、気付いたらもう過ぎ去っていた。
マ別に夏至になんかするってワケじゃないけど。

  そういえば兄貴の誕生日も終わってしまったな。
  あのオッサン、四十になったのか? 四十一か? いずれにしても初老だな(※)。

  ※伊藤静さんのモノサシによる。
   『ディーふらぐ』のラジオで、ケンジ役の小西克幸さんが41歳のバースデーを迎えてた時に
   あのかわいい声で「初老だネ」って言ってた。かわいい。


ある占いのページを見ていたら
「夏至の日には、ドルイド僧は祭儀を執り行う」
と書かれていて、ドルイドなんて言葉、久しぶりに聞いたなーと思った。

小中学生の時分、ファンタジー系の世界にどっぷり浸っていた時は
それこそ当たり前のように頭の中に合った言葉だったんだけれど。
デ気になって、ドルイドのことをちょっと調べてみたが……
あんまりよく分かっていないのね。文字文献を残さない文化だったらしい。
語り部が語ることが全てだったようですな。バード(詩人)の役割も果たしていたとか。
へー。浪漫だねえ。

  でも……そうだねえ。
  記録する媒体が、人から文字・紙になり、デジタルになり、
  便利にはなったけど……なんか、それによって「人」が軽んじられるようになっている感覚は、
  少なからずあるわねえ。
  自然崇拝ということになると、そういう流れが自然なのかもしれぬ。

ケルトの宗教的指導者で、自然的な崇拝者、ってことくらいしかワカラヌ。
後半の情報はファンタジー系RPGなんかでもおなじみですね。
一番最初にドルイドってワードを耳にしたのは、多分『ドルアーガの塔』だろうな。
灰色のローブの魔法使いだっけ。

  魔法使い系の敵って、メイジとソーサラーとドルイドとウィザードと、
  あとなんかいたっけかなー。
  ディスクシステムにも、確か『ドルイド』ってまんまズバリのゲームがあったはず……
  お、あったあった。やったことはないんだけど。
  やったこともないゲームの名前なんかよく覚えてるな俺は。

▼ドルイド 



なんだ、結構面白そうなゲームじゃないの。

ところで、森や樹木の精霊のことをドリアードとかドライアードとか呼ぶけども、
ドルイドと響きが似ていますな。
これも自然崇拝者であるところのドルイド僧と関係があるのかしら。
ケルトの神話に出てくるのだったらとても分かり易い。

ちなみに、ドルイド教を復活させようという動きもあるらしく、
そういう人たちは「ニュードルイド」と呼ばれている(自分らでそう呼んでいる)らしいです。
なんかパチンコ屋みてえだな。
PARLORニュードルイド

  なんでパチンコ屋って、パーラーとか会館とかって名前付けるのかね。
  あと大学院とかな。
  法律逃れとか? マいいけど。

次回のお話は、そんなドルイドさんも激アツ、夏至の日を含む先週末の日記です。
オイサンでした。



どういう予告だ。



……どうでもいいけど、
焼きそばって時間経ったら油吸ってふやけちゃわないかな。
明日、焼きそばどうだったか聞いてみよう(会うのか)。



 

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2013年3月 8日 (金)

■ひがしの最果てにて -更新第845回-

絢辻さん、おみそ汁をあっため直してくれないのは構わないけど、
出すときに「ヴィシソワーズよ」って言うのはやめてくれない?
オイサンです。
素直じゃないんだからまったく( ← そういう問題でもない)。

最近、書く頻度が下がっておる。
マここ見てももらってればわかると思うけど。
申し訳ない。

書くのがイヤなわけでも面倒なわけでもないけど、
手を付けようとすると踏み出すのに時間がかかり、
気が付くと余計なことをして時間が過ぎて書かずに終わっている。
そんな感じ。

普段もあまりハリがなく、元気が出ない。
けど、書き始めるとワーッと気分が上がってくることがある。
みるみる気分が高揚していく。
マ状態にもよるけど、大体、
何も考えずに書けることを書いてるときには上がることこの上ない。

やっぱ中身はともかく、
とりあえず書くのが好き、書くことで足腰に力が入る、
そういう人間なんだなあ自分はとしみじみ思う。

うーん、週に一回くらい、
何も考えない、テーマらしいテーマもない、まとめもしないで
ワーッとただひたすら書く時間というか、回があってもいいかも知れんな。

  この場合「良い」っていうのは自分にとって、ってことになるけど。

「げんき」を、「元気」ではなく真っ先に「衒奇」に変換する様な辞書を育ててるから
おかしな方に行くんだろうが!
これゾまさしく「元気」が「出ない」状態ってやかましいわ(ズビー ← ツッコミ

「衒奇症」なんて病気? があるのか……
ってまた「衒奇省」とか変換しやがるし。
どんな官庁だよそれは。
まあ日本の省庁なんてみんな衒奇症みたいなもんだけど ← てきとう



■東京物語



小津安二郎の映画、『東京物語』を見た。
小津作品は初めて。

▼東京物語


きっかけは、以前から興味はあったのと、
オイサンの書き物を読んで「小津作品みたい」と言ってくれた方がおられたからなのだけど、
まあさすがにそれは上等過ぎるというか、
多分にサービスが含まれたお言葉だということは了解しております。
相手は世界の小津ですからね。

  関係ないけど、この間の『ひだまりラジオ』で
  「褒められたときどうしてる?」と訊かれたあすみんが、
  「頭の中で自分をなぐってます」
  と答えたのが、すごくよく分かるし印象的だったw
  「ちょうしのんな!」「お世辞だかんな!」ってw
  分かるけど、それ言っちゃうんだw
  けどまあ、オイサンなんかは自分の殴り方が足らんのだろうな。
  閑話休題。

あらすじなんかはWikipediaでも見てもらった方が早いと思います。


 ▼東京物語 - wikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%B1%E4%BA%AC%E7%89%A9%E8%AA%9E
 ▼小津安二郎 - wikipedia
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%8F%E6%B4%A5%E5%AE%89%E4%BA%8C%E9%83%8E


尾道に住む老夫婦が東京に住んでいる息子・娘夫婦を訪ねるんだけども
あまりよくかまわれず、
唯一義理の娘(戦争で死んだ息子の妻・未亡人のまま)だけがよくしてくれる。
東京から尾道に戻るや夫婦の妻は死んでしまい
葬儀にやってきた息子たちはやはりドライな対応で、
あーなんかやりきれねー、みたいな話です(ざっくり)。

まあ、目に見えるお話としてはホントそれだけ。
素晴らしく面白かったです。
だてに世界で評価されてない……というか、
「へー、こういうテーマや映像やリズムは、
 世界でも普遍的に理解されるものなんだなー」
という、ちょっと逆向きの感心をしてしまった。
世界のフトコロを知らないオイサンとしては。
どちらかといえば、お話や心情よりも、
世界のクロサワがチャンバラ映画として評価されていた(らしい?)ように、
カットやシーンの絵画としての美しさや完成度が、
海の向こうでは主に評価されていたのではないか? と推測しますが。

オイサンの書き物を「小津に似ている」と言って下さった御仁のお気持ちは、
僭越ながら、ちょっとわかる気がしました。

それは
「物語を進めテーマへ誘導するプロセスを、
 人為的に起こる出来事に委ねてしまうことを出来るだけ避ける
 (出来るだけそう見えないように下準備をする)」
「シーンなりカットなりを一枚絵としてとらえる」
という二点に関してで、
この時代のほかの映画監督の作風をあまり存じ上げないので
この2点が小津独特のものなのか、
これらはワリと一般的な手法であって、
評価される『小津らしさ』がもっと別のところに特徴的であるのかは、
スンマセンちょっとわかりませんでした。

一点目は、簡単に言ってしまえば
「人の意図でなく、在るもので済ませたい」ということで。
風車が回るのを見て主人公が何かを感じるなら、
都合のいいタイミングで誰かがやってきて風車を回すのではなく、
また都合のいいタイミングで理由もなく風が吹くのではなく、
物語が始まるずっと前からどこか遠くで気圧に差が生まれていたことをほのめかし、
そこで生まれた風が届く場所と時間へ主人公が立つように仕向けること、
そしてそれらはどこかで(出来うるなら必然でなく)繋がっていた、
と感じさせることに心を砕きたい、とオイサンは思う。

その時空で一致したさまざまの運命的な出来事は、
あくまで偶然そこで重なったにすぎず、人の目にも偶然として映る、
けれども人がそれを勝手に必然として捉える、
それをそのまま描きたい。

そうあることで「ひとはそんなにえらくない」ということを、
まあ、自分で確かめたい。

二点目はもうそのままです。
『ファイナルファンタジーⅦ』とか『Ⅷ』とかです。
固定した一枚絵の中をてくてく歩く。
ときどきそれが、ぐりんっと回って角度を変えたりもするけども、
文字が流れるとき、絵の中のどこを見るかは変わるかもしれませんが
画角は変わらない。出来るだけ変えない。
まあそんなので、タイクツになったり、単調になったりしがちなのが
オイサンの書き物なんですけども、
さすがの小津カントクはそんなこと屁ほどもなかったですね。
一つ一つのカットが、それぞれ一枚の絵みたいで
非常に見ごたえがあったと思います。
役者さんと美術をつかって描いた膨大な量の絵を連続させる演し物だったと、
そんな風に思いました。
うーむ。

小津作品について勉強したわけでもなんでもないんで
Wikipediaに書いてあることの丸呑みなんだけど、
小津カントクは、役者への演技指導にせよ舞台づくりにせよ、
表情ひとつ、抑揚ひとつ、小道具ひとつとっても
全部自分の思った通りの完全を要求したのだそうで。

びしっと「美」で固めた映像づくりを追及された……らしいです。

  床の間に飾る掛け軸や器ひとつとっても、
  いい加減な拵えものではなく、
  いわゆる名画・名筆・名器を求めたのだそうな。
  当然、場面に適している、という大前提のもとでしょうが。
  その方が響く、その方が伝わると。

そんな小津作品を見ていてふっと思いついたのですが、
上でも「『ファイナルファンタジーⅦ』です」と書いたように……
このCG時代に小津監督が生きていたら、
その自分の試行する美を実現するために、
CGを如何様に使い、如何様に撮ったであろうかと。

まあ「まがい物と断じてバッサリ使わなかった」というお答えもカンタンですが、
使わずにはおれなかったんじゃなかろうか、とオイサンは思うし、
使うならどのように使い、何を実現しただろうかと、
そう考えるとちょっとワクワクしてしまいます。
ボートクですかね? 違うと思うけど。

以前読んだ、押井"パトレイバー"守カントクの著書に、
「デジタルの地平ですべての映画はアニメになる」という言葉がありました。
そのアオリ文句を見た同僚は「イミわかんねえ」と一笑に付しておりましたが
なるほどコレは非常に的を射たお言葉でして、
すなわちデジタルに落とし込めばあらゆるシーンを人為的に意図通りに改変出来る、
ということです。
それまではいじり用のなかった、相手が生身の人間や自然の場合であっても、
目の色を変え、肌の色を変え、曇り空を青空に、出来てしまう。
本来手を加えられない世界にまで手が及ぶということで、
それはすなわちアニメーションの世界だと、押井カントクは言っていた。

そんな現実をアニメする力を手に入れた時に
理想世界の鬼がどんな金棒を振るっただろうかと。


……マそんな妄想もさしはさみつつ。


珍しくオイサンにしてはお話のことを書かず、
ほとんど映像に関することばかり書いてきましたが。
だってお話に関しては、書くことないんだもん。
あらすじがすべて。
ド真ん中で、何も足せない、何も引けない世界でした。
ごろん、と石がいっこ置かれていた感じ。

  現在放映中の某まっすーぐなー思ーいがーみんーなを結ぶーアニメの筋を
  「王道だ」と評する話を聞きましたが、
  マそれも間違いではないんでしょうけども、
  ただ、他に何もなかったから省いたものが
  結果「王道」と似た姿に落ち着いたとしても、
  それはひとえに雑なだけで王道とは呼ばれへんのとちがうかなー、と感じます。
  かつての王道からぶっこ抜いてきただけの部品、
  わかりやすい記号だけをガチャガチャ並べくっつけて
  「はい王道!」っていうのは、やっぱどっか違う気がする。
  アレ、『アイマス』のアカンかった回ばっかり繋げただけみたいになってません?
  そんなことない?
  それぞれが好ーきなーこーとーでー頑張れーるならー別にイイですけど。
  なんであんなに雑に見えるんだろう。不思議だ。

  まあ、オイサン自身が見てきた「王道」も、
  過去の遺物の出涸らしだったんじゃないの?てハナシも否定できませぬが。
  そのヘンの歴史も勉強したわけじゃありませんから。
  王道には時代性もあるんじゃないのかしら。
  となると、今の王道の時代性を、ジジイであるオイサンが感じ取れていないだけなのかも知れんなー。
  ジジイは退場するべきなのかもなー。
  閑話休題。

ただ、当時の文化や風俗に明るくないので、
人同士の関係や感情をどう理解していいのか? 自分の読み方であっているのか?
という不安と疑問は見始めにあったのですが。
話のテーマが普遍的なものであると分かってからは何も困るコトはなかったです。

どう申しましょうか。
映像に説得力があるし、映像であることに意味がある。
オイサンが普段見ているようなアニメ作品とは、
映像に、視覚的な刺激に負わされた役割が違うものであるようにすごく感じました。

映像も、物語も、音響も、そのどれもが作品のあるじではなく、
それらの要素が支え合う頂点にもの言わぬあるじが存在している……
すごく鋭利にテーマが表現されたものだった。
緻密とはこういうことを言うのだろうなと。



マそんな感じで。



今現在書いているものにも、分からない所や迷いが一杯出てきてしまい、
サテどうしたもんかと筆の止まることも多いのですが、
丁度良いタイミングでこの『東京物語』に出会えたような気がしております。

マこれに限らず、ちょっと他の小津作品にも手を出してみようかなと、
また面倒くさいことのヒトツも考え始めるオイサンでした。



ほなまた。



P3020267



あーつれーわー尾道いきてーわー。




 

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2013年1月12日 (土)

■カミサマと夜空の手鏡~北海道旅行18・摩周編 -更新第834回-

~2012年1月某日・0430AM・自室~

絢  辻摩周湖に行くわよ

オイサン「……」
絢  辻「……」
オイサン「……」

絢  辻「なによ」
オイサン「……どうしたの? 急に」
絢  辻「どうもこうもないわよ。行くと言ったら行くの」

オイサン「ああ、うん……。いつ?」
絢  辻「今」

オイサン「…………」
絢  辻「だから何よ」
オイサン「ホントにどうしたの?
     あたま腐っちゃった? ながいこと僕と一緒にいたから」

絢  辻「(ぶちン)」
オイサン「(あっすごい音)」

絢  辻「……はいコレ」
オイサン「え、何?」
絢  辻「航空券。釧路行き」
オイサン「えっなにそれこわい」
絢  辻「ホテルはここよ(バサリ)。その地図の、●のついたとこ」
オイサン「手回し良いねえ」
絢  辻「あたしが言いだしっぺなんだから、
     そのくらい手配出来てないわけないでしょう」

オイサン「そりゃあそうだけど……」

絢  辻「はい、じゃあ……いってらっしゃい。5時半の羽田行きのバスよ。
     もうあんまり時間ないわよ」


オイサン「ぼ  く  だ  け  !!?!」


きーー……ン





(……10時間後……)





R0056429





オイサン「うーん。来てしまった」

 
 
 
 
 
……とまあそんなコトがあったので、絢辻さんの意図はイマイチわかりませんが
私は今、北海道は道東の弟子屈(てしかが)、摩周湖にほど近い町に逗留しています。
なかなか寒いです。
マ「行け」と言ってくれるモンはもったいないので来ましたけど。
わしゃ鉄人か。(絢辻「あたしは正太郎少年か」)
ハテサテ……どんな趣向が待っているのやら。





……というのはまあもちろんウソ、というか
全てウソとも言えませんが、とりあえず摩周湖近くにいるのは本当です。
寒いのも本当。

まあ、この年明けの3連休は北海道にいるのが大体常になっているオイサンなので、
今年もそれに倣っての感じではあります。
でも去年とその前は違うかな。

場所は、絢辻さんの指定通り、5年ぶり三度目の摩周湖です。
目的は……特にありません。
久しぶりに摩周子さんにお会いしたくなったというのと、
昨年末、折からの北海道を襲う寒波とやけに冷え込む本州での毎日を過ごすにつけ、
「ど―せ寒い思いするんなら、徹底的にいきたい」
という思いが募り、
そしてそのついでにダイヤモンドダストが見られるかも知れない、
という思いも手伝ってのこと。

  イミが分からない? まあそうでしょうな。気にするな。
  このオッサンはそんな感じなんだ。

期間は三日間
とりあえずダラダラと行きます。



■1日目



▼羽田へのバス
4時半に起きるつもりが起きたら5時。
やべえ。
近隣の駅から出る羽田行きリムジンバスが5時半発なので超やべえ。
もう一本あとのバスでも間に合うけどとりあえず急ぐ。
急げ。

音速で家を出てどうにかセーフ。バス中は爆睡!
いつも通り、何事もなければ予定時間より30分は早く着くだろうと思っていたら、
案の定、7時5分着の筈が6時半に着いた。
すばらしい。

寝入りばなにはpillowsの曲を聴いてたはずなのに、羽田到着のアナウンスを聴いた時には
寝起きにポテトチップスに変わってた。
なんでじゃ。


▼羽田(セガのことではない)
チェックイン、荷物預けをさっさと完了し、
座席がイマイチ面白くなかったので、カウンターでアップグレード出来ないか聞いてみた。
結果はOK。
+1000円払って、クラスJの最前・窓側をゲットする。
おおお、これエエ席やないの。テンション上がってきた。

朝食は、いつもの地下のフードコートでなく
ウロウロして(ウロウロすんな)偶然見つけたそば屋で戴く。
だし巻き卵定食880円也。

R0056111

マお安くはないが、空港の中じゃどこもそれなりのお値段するので良しとする。
だし巻きが思いの外でかく、セットの一口そばもなかなかで満足。
どうしたどうした俺。
なかなか出足が快調ですよ?
死ぬ?
死んじゃうコース?


▼搭乗~機内
保安検査場をやりすごし(やりすごすな)、
搭乗ロビーにて儀式の如く飛行機さんのお写真を撮っていたら、
天気がいい、富士山が見えよる。

R0056123

搭乗ゲートへ移動するまで気付かなかったけど、
この日は珍しくバス移動からの登場だった。機材へのバス移動は久しぶりだ。
過去に何度かはあったけど。

離陸後、空の上が超いい天気&航路にも恵まれて、
ディズニーランドをほぼ真上からスコンと見下ろすことが出来た。
精巧なジオラマかミニチュアみたいで圧巻。
釧路へは確かにそんなに回数も行っていないから、
こういう航路を飛んだことが多分そんなにない。
こんな風に見えるのかー。

富士山、空港からも見えていたんだけど……
繰り返しになるけどこの日は本当にもう天気が良く、機内からもガンガンによく見えた。
くそう、なんで写真撮れないんだ。
アナログ銀塩なら使ってもいいのかな?  ← 電子機器使用禁止期間中

R0056187

富士山が見え、その手前に箱根の山々が並び、
その更に奥には、……あれは信州長野の当たりの山々なんだろうねえ、
無数の峰が連なっているのがよく見えた。
ここまで遠くまで見渡せることは珍しいなあ。
オイサンは多分、ここまでのは初めてだ。
いやあ……いい席もらえたなあ。
言ってみるもんだね。
これはアナタ、幸先いいか、死ぬかどっちかですよ。
九割方死ぬ。

機内アナウンス。
「釧路の気温はマイナス14℃」って寒いなオイ。
釧路・弟子屈へはダイヤモンドダストが見たくて行くわけですが、
昨日の予報では、今朝の釧路、気温はー21℃の好天。
ダイヤモンドダストが見られるかも、って予報に書いてあるくらいで
「一日ずらせ!!」
と心で叫んでおりました。
明日も、寒くていい天気だといいなあ。


▼釧路空港~JR釧路駅
サテ何事もなく到着。ナニゴトかあっちゃ困る。
寒さあふれるいい天気。
タラップだっけ、あそこを通過するときに既に寒い。
いいぞお、期待通り。
けど、思っていたより窓の外に雪は多くない。
マ釧路はそもそも、そんなに雪深い土地ではないけども。

着陸時、お見送り・お出迎えのテラスに人がたくさん並んでいて、
有名人でも乗ってるのか? 俺が有名なのか? と思ったけれども(思うな)、
荷物の出てくる回転テーブル横で待っていたとき、隣に立ってたご夫婦の会話でその理由が判明した。

  「あの機体、今月一杯で引退なんだって」
  「ああそれで」

何のことはない、
オイサンの乗っていた機体が今月一杯で運行を終了する物だったらしい。
なるへそ。

  ▼JAL・MD-90、引退へのカウントダウン [ SKE48とエアバスA380超絶推し男のblog ]   http://blog.livedoor.jp/ske380_800/archives/19900966.html


  飛行機写真撮りマニアの間ではそういうのがあるんだそうですよ。
  パパさんが言ってたw
  皆さん大変熱心で結構なことです。

行きの座席アップグレード作戦があまりに功を奏し過ぎたので、
到着するなり帰りについても打診してみたが、
オイサンの券はパック旅行の券だったので当日じゃないとだめなんだとさ。
残念。

空港から釧路駅まではシャトルバスで。
以前、タクシーを使ったこともあったけどやっぱ高いのよね。
その時は色気出した運ちゃんの口車に乗ってしまい、
予定になかった湿原展望台(釧路湿原の西の端)を回ってから市外まで行ったら無駄に高くついた。
当たり前っちゃ当たり前なんだけど。
北海道は広い。

バス、満席。珍しいな。
座るとこなかったんだけど、
荷物をイスに置いてたおっちゃんが荷物をよけてくれた。感謝です。
そんなん当たり前じゃん、と言われそうだけど、
それをやってくれたのはそのおっちゃんだけだったし、
大体ねえ、やっぱ一人で座る気分の完成したところへ
突然隣に人が! ってなると、気持ち的にはどうしたってめんどくさいしね。
気持ちはワカル。責める気は起こらん。

空港~JR釧路駅までは50分程度です。
こちらも何事のイベントもナシ。


▼JR釧路駅
バスの駅到着が10時50分頃、摩周行きの汽車(ディーゼルです)発は11時36分。
あまり時間はないが、軽くおなかに何か入れたい所存。
駅ナカのうどんやさん?で塩野菜うどんを戴く。
……なんかラーメンみたいなお出しでちょっと残念だけど
うどんはおいしかった。
タンメンの麺をうどんにした感じ。
でも、うどんはやっぱり鰹だしだよねえ。

そして、駅の古本……屋、なのかな。
新刊も扱ってるみたいだけど。ここも、初めて訪れた2006年、7年前からあるが、
都会のブックオフでは見つけられないような、
鈍く光る謎のお宝が眠っているような、そんな気がいたしますよ。
帰りに時間があったらゆっくり見よう。

  ……釧路、ゲームの中古屋ないのかなー(←好き者)。
  発掘してえ。

一瞬すれ違った前髪ぱっつんのお嬢さんが、ほとんど黒猫でとても可愛かったです。

……心なしか……駅の中が明るく軽やかになったようにお見受けする。
前来たときはもう……寂れゆく地方都市の空気そのままで、
待合所にオシゴトない系の年老いた独り者の御仁がひしめき合っていたりして、
遊びでふらふらやって来ていた余所者のオイサンは、
生きることの大変さを感じ取り
なんだか申し訳ない気分にひたってしまったりしたのだけれども。
今回、そんなことなかったなー。
施設が変わったりした様子はなかったんだけど。

R0056232


▼列車・釧路~摩周
11時36分発の普通ワンマンディーゼルで、釧路からいざ、弟子屈・摩周へ。
1時間20分くらい。
一両編成なんだけど、乗客はいないなー。
がらがら。
里帰りっぽい若いお兄ちゃんお姉ちゃん、あとは日常使いのご老人、通学の学生さん。
そんな感じ。
オイサンみたいな旅行者然としたのはみあたらない。
車両も、そこかしこ塗装がはげ、もう一体何年走ってるんだろうという代物。
リクライニングも、座面を前に滑らせるとそれに連動して背もたれも倒れるという旧式。

  車両の真ん中あたりの座席だけ、何故か四人対面のボックスになっていて、
  しかもセンターにテーブルがある謎仕様。
  イヤ以前にも見たことはあるけど、コレ、設計者はどういうホスピタリティをねらって
  こうしたんだろう。

R0056295 R0056307

これといったイベントもなく、列車は定刻通り摩周駅へ。
摩周湖へは2008年の1月以来5年ぶり3回目、
摩周駅へは、2006年のやっぱり1月以来、7年ぶり2回目。
もう7年にもなるのかー。
そんな気全然せんわ。
スゲエ最近の感じ。



■摩周駅~宿~摩周湖



▼JR摩周駅
7年前に来た時は、冬の時期でも摩周駅から摩周湖第一展望台まで
1日4便バスが出ていたものだけど、
どうも近年は利用者の少ない時期にはバスは走らせていないらしい……トホホ。
マイノリティには生き辛いご時世じゃよ。
まさか、不景気がこんなところでマイノリティを圧迫させてくるとは。
効率よく、快適に生きようとするなら、出来るだけたくさんの人間の歩く方向と速度に合わせなさいよ、
と言われているようだ。

  マ事実、そうなんだろうけどさ。
  結局はスケールメリットが底を支えるんだろうね。
  「戦後、国民の価値観がほぼそろっていた」みたいなことの理由に、なんだか妙に合点がいく。
  貧乏だから、足並みを揃えて色んなことのコストを浮かせるしかなかったんだろう。

まあ、タクシー使うっきゃないなー。
明日は晴れてたら歩いてみようかな、とも思ってたんだけど、どーかな。
10km前後のハズだから、雪道を考慮に入れても2時間半もあれば着けると思うんだが。
2時間半の寒気に耐えられるかということと、
あとは、飽きるどうかだなー。

R0056319 R0056325

……という様な内容を、観光案内所の金髪のお婆ちゃんと話す。
案内所の中には、バアちゃんの退屈しのぎのために捉えられたと思われる、
オイサンんよりも数段若いバックパックのにーちゃんが座らされていました……どうしたんだろうアレ。

駅舎を出てみて思いだす、そうそう、ここは駅に足湯があるんだった。
明日にでもさっと浸かりに来ようかね。


▼お宿
地図も持たずにしばし町中を迷い歩いた挙句、どうにかお宿に到着。

  ちなみにお宿も、7年前に泊まったのと同じところです。
  特段良かったというワケでもないのだけれど……
  ていうか、どんな宿だったか憶えていない。

むむ、町のかたちの記憶も7年前のデータなので今一つ怪しいわ。
思ったよりも宿が駅から離れていた。
最初は、
「方角がこっちで合っていたか」「こんなに遠くまで歩いたか」
と不安になっていたが、町を流れる釧路川を渡る橋を越えるとき、ああ確かにこの橋は渡った、
帰る時、宿を出て荷物を負いながら確かに渡ったこの橋を、しかと思いだした。
そういう一瞬一瞬のことは何気なく憶えているモンだ。

宿にひとまず荷物を預け……
この日の予定にはなかったんだけど、
天気があまりに良いのでもう摩周湖までいってしまおう、と決断。
旅先で性急になるのはよくないけども、天気のいいのは逃せませんからね。
明日がどうなるか分からない。

  一軒、気になるお店があるのでその場所を確かめようと
  町をウロウロしながら駅まで向かってみたが、とうとう発見出来なかった。
  どうも実は川湯温泉駅に存在するっぽいのだけれど、
  食べログで検索すると、摩周駅の役場近くに存在するように表示される。
  これはいったい。


▼摩周湖
駅前でタクシーを捕まえて、摩周湖へ向かう。
しかし……俺も飽きないもんだな……。
乗ったタクシーの運転手さんは、弟子屈で生まれ育って50年らしい。
今年は寒い目で雪も多いのだそう。
昔はマイナス30℃、35℃は当たり前だったらしく、
その頃に比べればぜんぜんましだけど、それでもここ数年ではかなり寒いらしいです。
ちなみに、摩周の市街あたりは、大体摩周湖の湖底と同じくらいの標高なのだそうな。

ちなみにその運ちゃん、落ち着いた地味なしゃべりが高校ンときの物理の教師に似ていた(知らんわ)。



■摩周湖



車を降りて、駐車場から階段をほんの数段のぼるまで、
……いやあ、ときめく。

ここにたどり着くまでは割と醒めた気分でいるのに、ここに着いた途端、どきどきし始める。
それは以前訪れた二回でも同じ。
不思議なことだ。
離れて暮らす、連絡もとれない想い人に久し振りに会うような、そんな気分なんだねえ。

  ……恋人なんかいたことねえけどな!!
  お、お前等にわかりやすいように書いてやっただけなんだからねっ!
  感謝しなさい!?(CV:釘)

いや、まあ、でも。
茶化すトコでもないんじゃよ。
なんかもうオイサン、ホントにそんな気分なんだから。
階段上がる一歩一歩が、もうねえ。
高鳴る。

そんで階段を上がった辺りから少しずつ湖の様子が見え始めて、展望台に立ったところで、
一気にわあっと視界がひらけるわけです。
そうなるとすごいもんで、一目で全部、そこがどんな場所なのか分かる。
この不思議な湖を抱く風景は……陳腐だけど、一幅の絵画を見るような。

展望台の良い位置に立つと、
目のちょうど端から端までピッタリと湖が埋めてくれて、
その真ん中に知床の山々が浮かんで、
摩周岳の、熊か、猫か、毛深い獣みたいなシルエットが画面の端にゴロリと横たわって。

R0056423 R0056358

湖のいびつな輪郭や、斜面から無数に突き出た、白と焦げ茶のダケカンバの怪しさも相俟って、
本当にいくら眺めていても退屈しない。
どこを見てもいいし、どこも見なくてもいい。
心をぐっと捉えながら、それでもすごく放っておいてくれる景色。




  「アラ? いらっしゃい、また来たの? まあ、好きになさいな」




……なんか、そんな感じ。
すみません。

  理由は分からないんだけど、その白と黒と深い青を眺めてると
  「ああ、これは絢辻さんだ」
  と、ぽんと自然に浮かんできた。
  まあ、勝手な印象とイメージだけど。
  絢辻さんは、こんなひと気のないところで
  取り澄ました顔をしてはいないと思うんですけどね。

  どちらかというと、封神演義の竜吉公主さまが、この湖のイメージに一番近い、
  そんなことを考えるオイサンです。湖の萌え擬人化。


    


本当にねえ。
じーーーーーー……っと、眺めてても全然飽きがこないんだけど、
如何せん、寒い。

  ここで一つ、失敗したことに気付く。
  冬の北海道では必須の、耳当て付きの帽子をホテルに置いてきてしまった。
  体の方は、多少寒いのは問題にならないけど
  ゆび先や耳などの末端部分は音速で持って行かれる。
  仕方がないので、レストハウスの売店で見つけた、謎の耳だけあったかアイテムを購入。
  315円也……しかしこれがなかなかのスグレモノ。
  帽子よりかさばらないし、肝心の耳はちゃんと温かいしで、
  おお、これは出物かも。

その後、レストハウスを出たり入ったりを繰り返し、
時折いもだんごを食べたり、かぼちゃ餡ドーナツを食べたりしながら約1時間半、
摩周湖さんとの再会を懐かしむ。

R0056380 R0056375

いやあ。
ホントに五年ぶりなんだねえ。
そんな気全然しないねえ。

……人にはそれぞれ、見合ったサイズの景色ってのがあるような気がオイサンしておりまして、
ま自分に見合うのがこの冬の摩周湖……というと、それはちょっと上等すぎて僭越だとは思いますけど、
このサイズ……
見渡さなくとも、ちょうど自分の視界の幅に収まり、
それでも、あちらに集中すればこちらが行き届かなくなる絶妙な広さといい、
遠くまで見渡せるわけでもない、比較的近い範囲に行き止まる深さといい。
高さにしても百数十メートル程度にとどまり、
白、黒、青、あとは茶色と種類はけっして多くなく、
けれどもその少ない色をじっと見つめれば気付く程度のささやかなグラデーションで彩る
色彩といい。

一生かけて、自分の足で歩き回って、色々見切れそうな、そんなサイズ。
どこまで行っても手が届く、意識の、ちょうどひと抱え分くらいの景色。

  至仏山から見下ろした尾瀬が原も近い趣をもっていましたが、
  オイサンにはそこは広すぎた。
  摩周湖は、ぎりぎり全ての面倒をみられそうな、そういう手頃な広さを感じます。
  イヤ実際、全部の面倒見るとか、そういう話じゃないですよ?

あの、本当にねえ。
皆さん、ぜひ一度は見にいらして下さい。
夏場は霧が出て見られずじまいで終わってしまうことも多々あるので、
出来れば、冬。

日本であって日本でない、
ほかのどこでもない、誰の物でもない、
ああ、そう、この世界が誰の物でもない、
人間のものではないことを実感できる景色がありますので。

どこかへの入り口であって、何かの生まれ出ずる場所なのではないかと。
人の意識が吸い込まれて、星の光になって生まれてくるのではないかと、
そんな風に見える場所です。
どうか、どうか……。

そんな様々なことを、今年も感じながら一時間半ほどの短い逢瀬を終え、
後ろ髪をひかれる想いで摩周湖を後にするのでした。

だってさあ、考えてもみなさいよ。
5年ぶりに会う彼女と、一時間チョイでお別れですよ。
寂しいじゃないの。
……まあ、明日もまた来るんだけどさ。

しばしのわかれ。



■Closing



このあとは特に何もありません。
お宿にもどり、お風呂を浸かって、ゴハンを食べておやすみなさい。

このお宿はねw
お風呂もゴハンもねw
特筆することのないお宿ですので。
ええ。
イマドキ、自販機が観光地価格ですから。
それをことさらあげつらう気はありませんけど。
好きで選んだんだもの。

ゴハンがお部屋で、お膳で戴けるのがありがたいところですね。

そんな感じで一日目は無事終了。
明日は、早朝のダイヤモンドダスト探しのお散歩からスタートです。
はれるといいけどねー。



オイサンでした。



 

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2012年7月22日 (日)

■稜・線・鼎・話 (後編) ~『アマガミ』SS・絢辻さん・薫・中多さん・~ -更新第789回-

 
前編はこちら
 
 
 
     ◆    £    ◇    ξ
 
 
 
「んーじゃあ、中多さんも、別にあたしに用事ってわけじゃない
のね?」
 棚町先輩は、うすぼんやりと黄色い蛍光灯の明かりの中でもき
びきびと、くせの強そうな髪の毛の一本一本まで輪郭をはっきり
させて、散らかった小間物を片付け片付け、帰りの身支度を整え
る。絢辻先輩はキャンバスのある一画からは離れて暗がりの中へ、
やっぱりその毛先や肩の縁を曖昧にしながら、窓や扉の鍵を確か
めて回っていた。
「はい、たまたまなんです。それで、素敵な絵ですねって、絢辻
先輩とお話をしてました……」
 改めて棚町先輩に尋ねられ、一人手持ち無沙汰な私はもう一度
キャンバスを眺めた。横長の画面に広く横たわる輝日東の峰の、
尾根筋の存在感はたっぷりと重厚感があって、奥から手前へと統
一された筆の流れが、なんだかそこから降りてくる風を表してい
るみたいに見えた。それは見ている私を導いてくれているようで
も、山の道のりの険しさから涼やかに私を守ってくれているよう
でもある。
「お? 嬉しいこと言ってくれんじゃないの。おだてたってなん
も出ないわよー」
 棚町先輩は、絢辻さんもてんきゅねーと、教室の殆ど対角線の
反対側にいた絢辻先輩の背中に向けて言った。暗くて遠くて背中
を向けて、様子はあまり分からなかったのだけれど、絢辻先輩は、
ガタガタッ! と、ちょっと乱暴なんじゃないかと思うくらいに
教室の前の扉に鍵がかかっていることを改めると、ううん、本当
のことだもの、と、いつもの鈴の鳴る様な透明な声で言った。そ
うして一通りの確認を済ませると明るい所に戻って来て、あっち
の扉、立てつけが少し悪くなってるみたいねと、やっぱり明るく
澄んだ声で言ったのだった。
「棚町さんの絵、見ていて、その……なんて言うか、ちょっとぐ
っときちゃった。よくは分からないんだけどね」
「そ。てんきゅ」
「分かりにくい感想でごめんなさいね」
「ううん、じゅーぶん。あたしだって、何を描いてるか言葉で上
手く説明出来るわけじゃないしね」
 ニカリと歯を見せて静かに笑った後、棚町先輩はすこし落ち着
いた調子で自分のキャンバスに目を移した。満足げでもありなが
ら、瞳を滑らせる先でところどころ厳しい表情になるのは、完成
が近いからだろうか。
「そういうものなんだ」
「まあね」
 絢辻先輩はそれにつられることもなく、もう改めてキャンバス
を見ることはしなかった。それってつまり、棚町先輩自身よく分
からずに絵に込めたものを、絢辻先輩がよく分からずに受け止め
たということなのだろうか。それとも、絢辻先輩はまったく違う
ものを掬い上げたのだろうか。少し静かな時間があった。窓ガラ
スに張り付いた外の冷気が、じわりと部屋の内側へと染み込んで
くるような間。絢辻先輩の繰り返した「分からない」という響き
は不思議とやさしくて、お二人のまなざしは別々の方を見ていた
けれど、ふたり丸い光の玉の中に収まって、同じように照らし出
され、同じように影を落としていた。
「案外さあ」
「うん?」
「あの、わた……あ、すみません」
 棚町先輩が切り出したのと、私が口を開いたのが殆ど同時で、
私は恐縮してしまった。棚町先輩は
「あ、ううん。中多さん、どぞ」
と優しく譲ってくれたけれど改まるとなかなかうまく言葉が出て
来ず、また少ししどろもどろを繰り返し、もう一度、どーぞ、と
棚町先輩に、そして絢辻先輩が「中多さん」と笑いかけてくれて、
私はようやく一つ深呼吸をすることが出来た。
「あの、私も……その、よくは分からないんですけど……広々と
して、涼しげで……厳しいけど、やさしい。なんだか、そんな風
に思います」
 棚町先輩の絵に感じるところは、最初に感じたことからそう変
わってはいなかった。素敵だけど結構普通で、その素敵さを言葉
にするとさっき見たまま、そんな感じだった。棚町先輩が何を込
めたのか、絢辻先輩が何を読み解いたのか、それは多分私には感
じ取れていないのだと思う。でも絢辻先輩が「分からない」と言
ったのを聞いて、自分も、何か少しでも言葉にしないと失礼なん
じゃないか……そんな風に思ったのだった。
「頼りがいがあるっていうか、あ……」
 自分の頭にあるぼんやりとした形をなんとかがんばって言葉で
くり抜いてみよう、そう一所懸命になってしまって、気が付くと、
絢辻先輩と棚町先輩がびっくりしたみたいに私のことを見ていた
から、私は慌てて体を二つに折った。
「あ、えっとあの、す、すみませんっ……」
「へえーっ」
 けれど、棚町先輩は楽しそうに、寒くて、細いのに、袖を捲っ
たすごく強そうな腕をぎゅっと組むと、イーゼルの上の自分の絵
を見て嬉しそうに何度も頷いた。そっかそっか。そうね。うん、
当たってる。独り言みたいに……もしかしたらそうだったのかも
知れないけど、繰り返して、その最後に私に向けて、グッと親指
を立てて見せてくれた。
「なんか、何描いてんのか、自分でも分かったような気がしてき
た。中多さん、やるじゃん」
 そうして窓の向こう、日も落ちてしまって峰のほんの縁だけを
かろうじてオレンジ色に光らせている、絵の中心にもなっている
のであろう山の方を、もう真っ暗なのにまぶしそうに見つめた。
「えと、はい……」
 私はただ、自分でもすごく間が抜けてるなあと思う返事しか出
来なくて、再び目を爛々と輝かせ始めた棚町先輩の横顔に置き去
りにされた。何か続きの言葉をかけようと、あ、えっと、とゆび
先を出したり引っ込めたりしていたらまた、隣の絢辻先輩がまた
一つ、長くて深い息をした。窓からすっと最後の光が引いてお日
様は完全に隠れ、ガラスがきりりと青黒い影を深めると、耳たぶ
や爪先に染み入る寒さが一段増した。
「良かったわね、中多さん」
 棚町先輩はいすに腰を下ろし、もうすっかりキャンバスの向こ
うの世界に行ってしまった。戸惑っていた私に絢辻先輩はとても
優しく微笑みかけてくれて、私が返事をするより早く、やれやれ
と一歩棚町先輩に歩み寄った。こんなとき、先輩の微笑みの、目
や唇の輪郭はとても滑らかで、昔パパと美術館へ見に行った、有
名な作家の切り絵を思い出す。ひたり、まるでそうなることが決
まっていたみたいでとても綺麗だと思う。
「それで棚町さん。案外、何?」
「え? ああ」
 棚町先輩はもう、半分面倒くさそうだった。
「あたしたち、好みは案外似てるのかもねーって。それだけよ」
「案外?」
「そ。それだけ」
 前のめりだった体を一旦起こしてそう言うと、棚町先輩はまた
深く、自分からキャンバスに飲み込まれにいった。絢辻先輩はそ
の後しばらく黙っていたのだけれど、両肘を抱える見慣れた立ち
姿で、こつ、こつ、こつと、棚町先輩の背中から、絵に描かれた
山をじっと覗き込んだ。しばらくの間、棚町先輩が鼻で息をする
音と、蛍光灯のかすかなうなりだけが聞こえていた。
「……そうね。そうかもね。そういう絵は好き。だから、そうい
う絵を描ける棚町さんのことは、すごく羨ましいと思う」
「ふーん? ……あたしはさ。絢辻さんの、その髪。羨ましいよ。
すっごく羨ましい」
 言葉のこぼれるぽろぽろという音が、そのときの切り絵の絢辻
先輩からは聞こえてくるようだった。棚町先輩は姿勢を変えなか
ったし、瞳も動いていなかったと思うけれど、真剣に結ばれてい
た唇は少しだけ、曲線の形を変えた。
「髪……」
「真っ黒なストレート。あたしってほら、くせっ毛だから」
 棚町先輩は後ろに立つ絢辻先輩を、肩越しに振り仰いで笑った。
 面喰らい、髪先を手のひらにさらりと掬い上げて、絢辻先輩も
それに応えて「そうね」と仕方なさそうに笑った。私にしてくれ
るときとは雰囲気の違う複雑な笑い。体の内側と外側から、細や
かなたくさんの繊維が引き攣れ合って、行き着いた先の面差しが
ほかにどうしようもなく笑顔だった……そんな戸惑い含みの下が
り方をした眉だった。髪を切るのにそれだけのための鋏がたくさ
んあるみたいに、切り絵にもそれ専用の鋏があるのだそうだ。パ
パと行った美術展にはその有名な切り絵作家が使っていた鋏も一
緒に展示されていて、そうなんだと感心したことを、頭の隅で思
い出していた。
「でも、棚町さんだって色は綺麗な黒じゃない。染めたりはしな
いのね」
「まあね。いじるつもりはないかな。それに、絢辻さんくらいま
とまって量があると迫力が違うじゃない?」
 ただでさえくるくる踊る毛先を追いかけて弄ぶ、棚町先輩のま
だ少し絵の具が残ったゆび先を見ていると、そのいたずらな感触
がなんだか私の指の節にも伝わってくるみたいでこそばゆい。な
あにそれ? 「迫力」と言う言葉がおかしかったのか、絢辻先輩
がクスリと笑って掬ったままだった髪の毛を手のひらの中で揺す
ると、その一本一本の隙間に蛍光灯の光が滑って黒が白に変わっ
ていく。黒は全部の光を吸い込むから黒く見えて、白は、全部跳
ね返すから白くなる。棚町先輩のキャンバスは白い。景色の絵な
のに、ところどころ、色を載せずに白いまま残してあるのは、ま
だ描きかけだからだろうか。それとも、何か意味があるのだろう
か。
「でも、これはこれでね」
「うん」
「面倒なのよ。結構」
 絢辻先輩が掌を傾けると、掬った髪はさらりと掌からこぼれる
ように、本当に水のこぼれるみたいに流れ落ちて、はらはらと、
まるで重さを感じさせずに静かに背中に帰って行った。そしてぴ
たりとまとまって、先輩の背中を覆い隠した。思わず拍手をした
くなるくらいに。
「面倒……ああ」
「うん。ケアとかね。これだけ長くて量もあると、放っておくわ
けにはいかないでしょう?」
「そっかもね。大変そう。あたしのだって、決して楽なワケじゃ
ないと思うけどさ」
 それは女の子なら誰だって思い当たる節のあることだ。棚町先
輩も上目遣いに何かを想像したあと、いっくらでもゴマカシはき
くし、と波打つ髪に掌をくぐらせて苦笑した。
「それは、そうかもだわ」
「それじゃあ、あたしはこれで退散するわね。中多さんはどうす
る?」
 絢辻先輩が、くるりと出口へ踵を返したのを見て私は慌てた。
二人は一緒に出るつもりだったんじゃなかったんだろうか。
「棚町さん、まだやっていくことにしたみたいだから」
 いつの間にそんな合意が得られていたんだろう? かわるがわ
る二人を見ていると絢辻先輩は丁寧に教えてくれて、棚町先輩は
ひらひらと、キャンバスの影から手だけを振って見せてくれた。
「そう……なんですか?」
「そういうこと。じゃね絢辻さん。また明日ー」
「はい。戸締まり、しっかりよろしくね」
「はいはい、がっちゃがっちゃ」
 傍らに置いてあった黒い当直日誌を抱え直し、絢辻先輩がもう
一度、今度は目で「どうする?」と問いかけてきたから、
「あ、か、帰ります」
私は小走りに駆け寄って、そのまま、絢辻先輩も、棚町先輩も、
互いを見ることはなくて、部屋の扉はあっけなくカラカラパシン
と音を立てた。



      ◆    £    ◇    ξ



『……切ろうかしら』
 半ば出し抜けな絢辻先輩の一言が、また私を驚かせる。
『中多さんは、どう思う──?』


 部屋を出てから、十歩も歩いたかどうか。
「──先輩は、いつから伸ばしてるんですか?」
 下りの階段へ向かいながら、自分でもびっくりするくらい自然
にそんな言葉が出てきた。私から話し掛けてきたことに絢辻先輩
もびっくりしたみたいで、何か考え事をしていたのか、えっ、と
珍しくすぐには答えが返ってこなかった。
「あ。えと。髪……です」
「そうね、いつからだったかしら」
 どうして、そんなことを訊こうと思ったのだろう? 我ながら、
当たり前の流れでなんとなくなのだろうけど、先輩の髪には不思
議と惹きつけられるものがあったのかも知れない。
 小学校に上がる前から、もう大体今と同じ髪形をしていたかな
あ、と普段の調子に戻って先輩は答えてくれた。それ以上、私も
何も考えていなかったから、そうなんですか、と返したらその先
には何もなくなってしまった。
「本当に、すっごく面倒なのよ?」
「先輩が言うんですから、相当ですね」
 煩わしさを強調するのが先輩らしくなくて可笑しくて、思わず
私がフフフと笑うと、先輩も合わせて笑ってくれた。
「でも、ずっと続けてるっていうことは、やっぱり気に入ってる
ってことですよね」
「それは……」
 私は至極当たり前のことを言ったつもりだったのだけれど、絢
辻先輩はハッと息をのむように言葉を詰まらせて、珍しく、一度
開いた口を閉ざしてから言い直した。
「そういうわけでも、ないんだけどね」
 何か、事情があったのだろうか。言葉に出来ないこと、しては
いけないこと、そんな筈ではなかったこと。たとえば私の髪だっ
て、この色この長さこの形に理由があったわけではないけれど、
理由はどうあれ一度そうしてしまったものは気が付くと自分をそ
こに置くための目印になってしまっていて、そこから離れるため
には何か新しい目印が、ないよりあった方が良い。思い描いた完
成形はいつも思わぬところが寸足らずで、立ったり座ったり、些
細に変わるバランスにふらつくことにも、その理由を人に説くこ
とにも、涙が出そうなくらいくたびれることがある。心臓の小さ
な私と違って絢辻先輩がそれを怖がるとは思えないけれど、ただ
先輩を映し出す切り絵の画面の多くを占める黒髪は、しゃきんと
ひとたび鋏を入れて落としてしまうと、二度と再び取り返しがつ
かない、そんな気がする。
「羨ましい、か」
 ポツンと繰り返したのが先輩自身の言葉だったのか……それと
も棚町先輩が言ったことだったのかは分からない。
 と突然、先輩が首を大きくぶんぶん! と左右に振ると、首す
じからほどけた髪は一度大きくらせん状にねじれて広がって、そ
してまた……ゆっくりと静かに、先輩の背中に集まった。それも
また、びっくりするくらい静かに、規則正しく。
「もう、切ろうかしら」
「え?」
「中多さんはどう思う?」
 髪を、ですか? 当たり前すぎて、私は飛び出しそうになった
言葉を慌てて飲み込んだ──。

 ──そうして、今に至っているのだけど。
「あの……きっと、似合うと思います」
 私は、さっきまでやっていたお芝居の衣装合わせみたいに髪を
短くした先輩を思い描き、そこにいくつかの小物や場面を当ては
めてみる。合うもの、合わないもの、棚町先輩の絵の景色はどう
しても背景に合わなかったけれど、あっと思える一つが思い浮か
んだときにそう答えてしまっていた。
「そう。ありがとう」
 さっぱりとした先輩の笑顔は多分、世間話のひとかけらを聞き
流すためのものだったと思うのだけど……自分の想像が間違って
いたら、どうしよう。私は急に怖くなってしまって、
「え、あの……。切るん、ですか?」
と、先輩の顔を覗き込みながら確かめてしまった。あまり軽々し
くそういうことを言ってはいけないと分かってはいたのだけれど、
そのとき自然に思い描かれた、今より少し年をとり、誰かの隣で
髪を短くした絢辻先輩の横顔が、シルエットが、とても穏やかに
笑っていた気がして、大した確信もなしに口走ってしまったのだ。
絢辻先輩は私なんかが言うまでもなく慎重で頭のいい人だから、
私の話なんかをそうそう真に受けたりはしないとは思ったのだけ
れど。
「そうね。もしかしたら、そのうちね」
「……そうですか」
 ああ、良かった。返ってきた答えが、自分が期待していたのと
そう変わらなかったからほっとする。
「いい時期がきたらね」
 ぽろりと継ぎ足された言の葉は、また、誰かに話しかけると言
うよりも言葉のメモを自分の胸の内側にピンで留めておくような
言い方で、そこに私の影はない。はあ、と相槌を打つことくらい
しか出来なかった。
「中多さんの」
「はい?」
「中多さんのハンカチは」
「あ、はい」
「とっても素敵だったけど、いつ頃から使ってるの?」
 スカートのポケットの中でこそこそ揺れるパパからもらったハ
ンカチは小学校の頃のおみやげだ。
「もうずっと、子供の頃からです」
 後から聞いた話では、そのときの出張は何か新しいお仕事を始
めるとかで、私はあまり覚えていないのだけれどとても長かった
らしい。その長かった分、このハンカチの他に洋服やおもちゃ、
おみやげではなく現地から送ってきた物もたくさんあったのだけ
ど、殆どは着られなくなったり遊ばなくなったりで、捨てるか、
どこかにしまい込むかしてしまった。今も元気で残っているのは
このハンカチと、部屋に飾った人形やぬいぐるみくらいだ。
「そう。大事にしてるのね。部屋が暗かったからかも知れないけ
ど、色が少しくすんで見えたから」
「そうなんです。だから、マ……お母さんもそろそろお払いにし
たらって言うんですけど、なかなかいい代わりが見つけられなく
て」
 自分の真横で揺れる二つのテールの穂先が気になって、ゆび先
で捕まえようとしてみても、ヒョコヒョコ弾んでうまく行かない。
「じゃあ、お父さんにまた、出張に行ってもらわなきゃね」
「そうですね。……あ、それもいいんですけど……」
 先輩の冗談に二人でクスリと微笑みあい、思い浮かべたことを
私が言葉に換えあぐねていると、先輩は私の考えていることを、
まるで全部分かっているみたいに
「そうね」
と頷いてくれた。
 行き着いた下り階段の下り口で、絢辻先輩はすっと明かりの落
ちた廊下の奥をゆび差した。
「それじゃあ私、まだこっちに用があるから」
「え? あ、はい……。しつれい、します……。暗いから気を付
けて下さいね……」
 そうして別れたのはいいけれど、背中を向けて気が付いた。先
輩の向かって行った方、その先には階段も曲がり角もなくて。あ
るのは既に明かりの消えた幾つかの教室と……開かずの扉、開か
ずの教室。あれっと思って振り返ってみても、絢辻先輩の姿はも
う、暗くて見えないだけなのか、それともどこか近くの部屋に入
ってしまったのか、サラサラほつれた髪の先から闇に編み込まれ
てしまったみたいに、消えてなくなっていた。
 そして翌朝、
「おはよう、中多さん」
「あ、おはようございます。何を見ていたんですか?」
桜坂の途中で会った先輩は、いつもの滑らかな笑顔で
「ううん、何も。先に行くわね」
と行ってしまったのだけれど、かすかに残った視線の跡を辿って
みるとその先には、小さく冠雪を頂いて、白と黒、昨日の夜には
見つけられなかった陰影を、ドレスのドレープのように細やかに
纏う、あの山の姿があった。
 
 
 
                        (おわり)
 
 
 

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2012年7月21日 (土)

■稜・線・鼎・話 (前編) ~『アマガミ』SS・絢辻さん・薫・中多さん・~ -更新第788回-

「ありがとう、中多さん。またお願いねー」
「あ、えと……はい。し、失礼、します……」
 そう言ってお辞儀をし、被服室の扉を閉めたら、がまんしてい
た深い深いため息が、はぁー……っと体から漏れた。ああ、緊張
した。
 遅い放課後の、廊下の窓から見える空にはもうあまりオレンジ
色の部分も残っていなかった。人の気配がほとんど消えたコンク
リートの校舎は十二月の空気に冷やされて、しんと染み入るその
冷たさがおへその奥まで届いた。
 一体、誰から噂を聞いたんだろう? 多分、美也ちゃんだと思
うのだけど……演劇部の人にお願いされて、お芝居の衣装作りを
手伝っていたらこんな時間になってしまった。今は冬だから時間
はまだそんなに遅くはないのだけれど、空がそんな色をしている
ものだから……人のまだいる教室には明かりが灯り、そうでない
ところはほとんど真っ暗闇。廊下の電気の灯り方もまだらになっ
ていた。
 被服室のおとなりと、そのまたとなりはもう暗闇で、そのまた
となり、美術室はなんだか不思議な明かりの灯り方をしているの
が気になった。普通の教室二つを繋げた広さのある部屋の、後ろ
半分の奥の方、窓側にだけ電気がついているみたいで、鈍くて遠
い、ぼんやりした光がちょっぴり怖い。きっと、熱心な部員さん
がまだ残ってお仕事をしているんだろう。
 その前を通り過ぎようとしたとき、明かりの消された奥の棟の
暗がりから、まるで黒い帳からほつれ出すみたいに歩み出てくる
人影があった。絢辻先輩だった。
「あら? えっと……中多さん?」
 手に黒くて大きな当直日誌を持って、いつも通り深い黒の制服
をきちんと着込んで髪も黒、けれどどの黒もしっかりと手入れが
行き届いて、その表面にはするすると、ときどき白い光が滑って
いく。いったいどうしたらあんな風に出来るのだろう? 私はい
つも不思議に思う。
 どうしたの、こんなところで? 絢辻先輩は、私が特に部活動
をやっているわけではないことを知っていて、こんな時間までこ
こに残っていることを不思議に思ったみたいだった。けれども挨
拶ついで、事情を説明すると納得してくれたようで、そう、と一
つ静かに頷くと、
「それじゃあ気をつけて、なるべく早く帰るようにね。中多さん
は、可愛……」
とそこまで言って、視線を一瞬だけ私の顔から……どこを見たの
か、チラリと下の方へ滑らせた。
「……凶悪」
「え?」
「ううん、なんでもないわ。……中多さんは可愛らしくて、魅力
的だから」
「え? あ、はい。……いえ、そんな……えっと……はい……」
 突然そんな風に言われて私は、またいつものしどろもどろに戻
ってしまう。一瞬だけ、先輩の笑顔の唇の端に苦々しい物がにじ
んだ気がしたのは、明るさと暗さのブレンドされた、黄昏の校舎
の光の加減だと思う。
 絢辻先輩はそれきりくるりと向きを変え、ぼんやり光りの灯る
美術室の扉に向き直った。まるでもう、私なんかここにいないみ
たい。あとから思えば私はその時点でもう帰ってしまって良かっ
たはずなのだけど……なんだかまだ、お話に続きがあるのかと思
えてしまって、立ち去ることが出来なかった。
 先輩はごく普通に教室の引き戸をノックして、失礼します、と
凛と通る滑らかな声で戸を引いた。

 ──部屋には、誰の姿もなかった。

 外から見たまま、明かりは教室の後ろの奥側にしか灯っていな
くて、四分の三は色をなくした闇の中。蛍光灯の弱い光がちらち
らと、かろうじて全体に届いてはいるけれど、たとえば隅の方に
何かうす気味の悪い物がうずくまっていたとしても、気付くこと
が出来なさそう。カーテンの裏、教卓の陰。唯一明かりのおりて
いる一画には──ここも遠くてあまりよくは見えなかったけれど
──出しっぱなしのイーゼルにキャンバスが載せられたままにな
っていて、脇に置かれたイスの上にも、画材のような小物と鞄が
置き去りになっているようだった。やっぱり、今の今まで誰かが
ここで絵を描いていたのは間違いないみたい。動く物のない部屋
では、普段は目にとまらない蛍光灯の瞬きが、なんだかそれらの
静物を生き物みたいに動かして見せていた。古い映画のコマみた
いに。
「ふむ……」
 私がそんなことを考えている間にも先輩は、部屋を見渡して鼻
の奥でつぶやくと、つかつかっと明るい一画に歩み入ってしまっ
た。私はといえば廊下から、多分私と同じ風に感じているのだろ
う、そこに取り残された物の様子を確かめる先輩の、ときどき暗
がりとの境目が曖昧になる髪と背中をただ眺めていたのだけど…
…ある瞬間、キャンバスに目を留めた先輩が「……へえ」と、感
心したような長い息を漏らしたのを聞いて、足が自然と前に出て
しまった。先輩は、そう呟いたきり、動かない。
「ど、どうかしたんですか?」
「あら?」
 まだいたの? そんな後半が省略された調子だった。私が近寄
って声をかけるまでの一分足らずの間、絢辻先輩はじっと絵に見
入っていて、今も私のことはちらりと見ただけで、すぐに瞳をキ
ャンバスに戻して言った。
「ううん、なんだか素敵な絵だなと思って」
「そうなんですか」
 先輩は何も言わずに少し身を開いてキャンバスの前をゆずって
くれたから、私はイーゼルの上で黄色い光を浴びてる画布を覗い
てみた。
「山……ですね。テラスの風景でしょうか」
 描かれていたのは遠く臨む山々の稜線で、多分、食堂のテラス
席からも眺めることの出来る輝日東の山側をぐるりと囲う尾根筋
をモチーフにしているのだと思う。そこへ本当の風景とは少し違
う、空の形や、木々や、雲や、風のようなたなびきが現実にはな
い色で足されていて、厚みとあたたかみ、不思議な奥行きを感じ
させた。でもそれは、
「こんな絵を描く人が、うちの学校にいたのねえ」
と、しきりに感心する絢辻先輩には悪いのだけれど、私にはなん
だかありふれた風景画に、変化を加えたもの以上には思えなかっ
た。なぜだろう? 私はこういう絵を見ることが取り立てて好き
なわけではないし、美術の成績もあまり良くないから……きちん
と分からないだけなのかも知れない。上手な絵に変わりはないし、
本当のことと印象のようなものが混ざり合って、少し夢を見るの
と似た気分にさせてくれる。それは確かに、少し特別な安心感を
与えてくれた。この感じを、私は他のどこかで感じたことがある。
どこだろう? それは分からなかった。
「中多さんは、どう?」
「え? わ、私ですか? 私は、えっと、その……」
 静かな調子を取り戻した先輩に尋ねられ、私はどう返していい
かわからなくてまたしどろもどろになる。私の性格を察してか、
先輩はふふっと微笑んで
「いいわよ。また、まとまったら聞かせて頂戴?」
と言ってくれたのだけれど、
「……はい。すみません」
それは、ちょっと違うんです。やっぱり、それが「格別なもの」
だとは思えなくて。私は、ただ俯いてしまった。
 先輩、ごめんなさい。
 その時だった。
「びゅんびゅんびゅん~あたしの絵筆はダイナマイト~♪ あた
しにかかれば~どんなモデルもイチコロよ~、っとお」
 静まり返っていた廊下から、ちょっと絵を描くことを表現して
いるとは思えない歌が聞こえてきた。聞き覚えのあるその声は、
どんがどんがどんがらがったと上機嫌なまま段々近付いてきて、
やがてその主が、
「あれ、絢辻さん。どしたの?」
「棚町さん」
と、開け放してあった扉の前に姿を現した。



      ◆    £    ◇    ξ



「あたしに、何か用事?」
 派手にウェーブした髪と、すらりと細身の体のライン。ハンカ
チで手を拭いながら教室に入ってきた、そのどちらかといえば可
愛いや綺麗というよりもかっこいいシルエットを持った女の先輩
は、先輩……美也ちゃんのお兄さんと一緒にいるところを何度か
見かけたことがあった。名前は多分、さっき絢辻先輩が呼んでく
れなければ思い出せなかったと思うけど。
「ううん、そういう訳じゃないの。美術部は全員帰ったはずなん
だけど、鍵が返ってないからついでに見てきてくれないかって」
 絢辻先輩はスラスラ応じ、なるほどそうだったんだと私も心の
中で掌を打った。その直前に一つ、先輩が長く、大きく息をした
のが気になったのだけれど……それはとても静かにだったから、
隣にいた私にしか分からなかったと思う。
「ああそっか、ゴメン」
「ううん、気にしないで。最後に戸締りをきちんとしてくれれば、
何も問題はないから……そっか。じゃあこの絵は、棚町さんが描
いたものだったのね」
 絢辻先輩の告げた事情に棚町先輩は悪びれる様子もなくて、ス
カートのポケットから捜し当てたホルダー付きの部屋の鍵をゆび
先でくるくる回し、その棚町先輩から視線をそっとキャンバスに
移した絢辻先輩の言葉は、尋ねるというよりも、どこかその事実
を心に馴染ませるために丁寧になぞるような節があった。そして
また、それを打ち消すみたいに、
「あたしの用事はそれだけ」
と、話を戻して締め括った。
「ん、まあね。あたしも、もう帰るつもり……で? 中多さんは、
あたしに?」
「え?」
 急に、自分の名前がポンと挙がったことにびっくりしてしまっ
て私はすぐに返すことが出来なかった。私が驚いたことに驚いた
先輩は、「どうかした?」といつでもパッチリした目をさらに丸
くした。
「あ、いえ……。私は、その、たまたま……なんですけど……」
「ふん。けど?」
「あの、すごいですね……。あんまり、お話したこともないのに
……」
 それは、私の素直な感想。
 お話をしたことは確かにあったけれど、それもほんの二言、三
言。その場には美也ちゃんがいて、美也ちゃんのお兄さんがいて、
私は美也ちゃんにつられて言葉を交わす、ほんのその程度のこと
だった。そうやって、すぐに人の顔と名前を憶えられる人を、私
はすごいと思う。
「ん? ああ。そりゃ、まあねー」
「え……」
 棚町先輩は背も高くて、少し言いにくそうに、そしてなんだか
引きつったような笑いを浮かべて私を見下ろした。見上げる私と、
視線が微妙にズレるのは何故だろう。不安になって窺った絢辻先
輩の表情も、棚町先輩の視線を追って、なんだかぎしりと音を立
てたような気がする。空気が軋んだ。
「……それだけ立派なのには、なかなかお目にかかれるモンでも
ないし……ねえ、絢辻さん?」
「立派……ですか?」
 首を傾げた私をよそに先輩たち二人は、ちょっと、棚町さん!
 だってぇ絢辻さぁーんと、咎め、ふざけあいを始めてしまって、
私はなんだか身の置きどころがない。棚町先輩が視線を落とした
襟や胸元を見てみても、いつも通り私の胸が邪魔なばっかりで、
これといって変わったところはなかった。けれど一つだけ、自分
でもあれっと思うワンポイントに目がいった。制服の胸ポケット
からのぞいた、白いアイレット刺繍のハンカチ。そういえばさっ
き被服室で、衣装の柄の参考にと持って来たのを両ポケットが塞
がっていたからとりあえずそこに挿し込んで、そのままになって
いたのだった。そのハンカチはパパがフランスに出張した時のお
土産で、小さくて可愛いからよく持ち歩いていたのだけれど、い
つかの機会に使っていたのを、棚町先輩も見ていてくれたのかも
知れない。やっぱり絵を描くような人はそういうところにも敏感
なんだろうなあと、私はまた感心をした。
「これは、パ……お父さんから、貰ったモノなんです」
 私は乱れたそれをポケットから抜き取ると、ふわりと広げて、
きちんと畳み直した。
「棚町さん、それはセクハ……え?」
「まぁーたまたそんなこと言ってぇー、絢辻さんだって本当は気
にな……は?」
 私が言うと、まだナンヤカヤと言い合っていたお二人はぎょっ
となってこちらを見た。『それは確かに、そう言えなくもないか
も知れないけど』。そんな風に言いたげだった。
「ヨーロッパ出張のお土産で……。あの、どうかしましたか?」
 私はまた何か、おかしなことを言ってしまったのだろうか? 
けれど二人とも、私の手の中のハンカチに気が付くと、ああ、と
なんだか白けたように息を揃えた。
「そう。お父さんに」
 絢辻先輩はふっとトーンを翳らせたけれど良かったわねと言っ
てくれ、棚町先輩には何故か「なんか、ゴメン」ときまり悪そう
に謝られたあとで
「ま、そういう物なら大事にしないとね!」
と、頭をがしがし撫でられてしまった。
 
 
 
                        (つづく)
 
 
 

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2012年2月23日 (木)

■六角形のハザマから。~SS『アマガミ』・梅原・香苗さん・塚原センパイ編 -更新第762回-

 輝日東のみなさんこんばんわ。
 俺、ミステリーハンターの梅原正吉です。
 俺は今、駅前商店会でも知る人ぞ知ると評判の甘味処に来ています。
いやあ、駅を離れて少し路地に入ったところに、こーんなお店があった
んですねえ。いやね、俺んちの店、あずま寿司っつうんですけどね、一
応駅前だけじゃなくてこっちの商店会にも片足突っ込んでるところがあ
るんで、まあ大抵の店は把握してたつもりだったんだけど、あるもんで
すねえ。建物も内装もいい感じに古びてて、とても雰囲気のあるお店な
んですよ? ……え? そんな良い雰囲気のところにどうせ男ばかりで
来てるんだろうって? 侘びしい? へっへーん、ところが今日は……
ちがうんだなあ。

 先ずはこちら、俺の右手……あ、俺今、二人掛けのテーブルに、無理
やり一つイスをくっつけてもらってお誕生席状態で座ってるんですけど
ね。……正直、窓が真正面で西日が射しててちょっと眩しいんだが……
そんなことはいいんだよ。で、俺の右手、これ誰だと思います? そう、
隣のクラス、2-Bのハツラツ系マスコット、伊藤香苗さんです。いや
ー、かわいらしいですねえー。
「なによ」
 そしてこちら左手、香苗さんの向かい。誰だと思います? ご存じで
しょう? そう、3-A影の名参謀、塚原響先輩です。麗しいですね。
「……何かしら?」
 ハイご紹介も済んだところで、今世紀の最大のラストクエスチョン。



 俺、なんでこの二人と一緒に

     こんな店にいるんだろう……?




 いや、そもそもこの二人からして、なんで一緒の店で、一緒のテー
ブルについてるんだろう……?



            ×



 ものの数分前、塚原先輩に先導されて俺たちは席についた。先輩が緑
茶、香苗さんがトロピカルジュース、俺がほうじ茶付きの塩大福をたの
んで、しばらく誰も何も口をきかない間があった。
 そのうち店のばあさんが飲み物が運んできて、それを合図に、
「で、話ってなんですか?」
と、口火を切ったのは香苗さんだ。
 まあその疑問はもっともだ。香苗さんをここへ連れてきたのは塚原先
輩で、その誘い文句が
「ちょっとあなたに、訊きたいことがあるんだけど」
だったんだからな。俺だって興味がある……俺? 俺はついでだよ。
「そうね、良ければ君も来てくれる?」
って、そのあとに言われただけなんだから。
「……そうだね……」
 香苗さんに促され、塚原先輩は言葉を選ぶみたいにいつもの静かな調
子で自然に黙った。
 もしかして、長くなんのかな。参ったな。
 そんな風に思った俺がキョロリともう一度、目玉で店内を見渡そうと
したら、
「じゃあ、単刀直入に訊くわ」
って、まるで牽制するみたいじゃねえか。見た目に違わず塚原先輩は、
ナイフみたいな割り切りでテーブルに肘をついた。その切れ味、まさに
短刀の直輸入、イッツ・ゾリンゲン! ……いや、意味はねえ。すまね
え。
「はあ」
 ……そのみなぎった緊張を、気の抜けた返事一つで受け流した香苗さ
んも、すごいっちゃあすごい。特に身構える感じでもねえし、咥えてた
ストローから口を離して、タンブラーのフチに果物の挿さった小洒落た
飲み物を、湯呑み敷き……否、コースターに戻した。
 塚原先輩には、もう淀みはなかった。
「桜井さんは、本当に彼のことが好きなの?」
 あー。やーっぱり、そんな話だ。



            ×



 話のどアタマは、実は昨日の夕方だ。
 そういや、大将の誕生日が近いなあ……俺がそんなことを考えながら
廊下を歩いてたら、香苗さんが声をかけてきたんだ。
「梅原くん梅原くん。あのさあ、放課後、買い物につきあってくんない?」
 おおかたの事情は読めた。桜井さんが大将の誕生日プレゼントを選び
たいから、意見を聞きたいってなもんだろ。けど如何せん、昨日の俺は
都合が悪くて、桜井さんは明日──つまり今日──が都合が悪いと来た。
だから仕方なしに今日、俺と香苗さんだけでリサーチをして、その結果
を明日香苗さんが桜井さんに伝えるっていう、まあなんともまだるっこ
しい話になったわけだ。
 で今日、三十分ほど前のこと。
 大将がこのところ足繁く通ってる、子供向けのおもちゃと、おとなの
男臭いアイテムをごった煮でぞろっと扱ったおかしな店があるんだが、
プレゼントはそこで見繕えばハズレはないだろうと俺は踏んでた。香苗
さんが俺に声をかけたのは正解だったと思う。女の子のネットワークば
っかりじゃ、どう転んだってあの店には辿り着くはずないからな。

 ……けど、驚いた。その店に塚原先輩がいたんだ。

 狭苦しい通路に、乱雑なディスプレイ。ごみごみの見本市みたいなそ
の店の片隅に、これ以上ないくらい、すらりと不釣り合いなシルエット
を見つけたときは、俺は目を疑ったね。切れ長の鋭い目を不可解そうに
しかめて、そりゃもう輪郭線こそほっそいのだけど、その線からこっち
にはもう誰も入れないぞって言う凛とした空気。多分男でないとそのロ
マンを理解できないであろう、境目もなく山と積まれた、謎のアイテム
群を見つめてたんだ。
 俺がそれに気付いて、やっぱり隣で小汚い棚を見上げて眉をしかめて
た香苗さんを肘でつついたのと同時に、塚原先輩も、俺と香苗さんに気
が付いた。
「──君は──」
「ああ、ども。こんちゃっす」
 塚原先輩も驚いたみたいだった。俺と先輩は、一応大将と一緒の所に
何度か会ったことがあったから面識くらいはあった。
 何で、先輩がこんな店に? そう思ったのは最初だけで、次の瞬間に
はもう合点が行っていた。目的は多分、香苗さんと一緒だ。どういう経
路でこの店に辿り着いたのかはわからんが、さすがの切れ者ってことだ
ろう。侮れねえ。侮れねえぞ。気をつけろ大将。……何をどう気を付け
たらいいのか、わからねえけどな!
 それよりそのとき気になったのは、挨拶を返してくれた先輩の目が、
俺を外れて、どちらかといえば隣の香苗さんに重点的に注がれていたこ
とだ。この二人、面識あったんだろうか? まあ……ここんとこの大将
の周りは色んな交通網が入り乱れてるから、どこで抜け道やバイパスが
開通してるかわかったもんじゃねえんだが。
「2-Bの伊藤香苗です」
「そう、2-Bの……。伊藤さん。私は」
「あ、知ってます。3-Aの塚原先輩ですよね」
 やっぱり、面識そのものはなかったらしかった。塚原先輩は、香苗さ
んの名前よりも学年とクラスに、ぎゅっと力を入れて繰り返してた。あ
あ、そういうことか。俺はそのとき、もうピンときてた。なんとなくわ
かる。不思議でもなんでもなかった。
 だから、

──先輩、こんな店で珍しっすね。何してたんです?

とは、俺は訊けなかった。
 そこで話が途切れちまって、さてどうしたもんかと思ってたところに
例のせりふさ。
「ふぅん、……いい機会かもしれないわね。突然で申し訳ないんだけど、
ちょっとあなたに訊きたいことがあるの。今、時間あるかしら……?」
 ほんの数秒、考えた後の言葉だった。ここで会えたのも何かの配剤─
─先輩、そんな風に思ったんじゃねえのかなあ。



            ×



「本当に、って……。そんなこと、分かりませんよ」
「……そうよねえ」
 香苗さんが、ミもフタもなくその質問をなで切りにすると、分かりき
ってたと言わんばかり、塚原先輩はかろうじて支えていた頭を垂れた。
「まあ、あたしから見て、そうじゃない可能性なんてすっっっっっっご
く、低いと思いますけどね」
 その様子を気の毒に思ったのか、香苗さんはもう少しだけ、自分の見
解を交えた情報をヒントに出す。けど、その新情報にも大方の見当がつ
いていたと言わんばかり、塚原先輩は全く同じトーンで、そうよね、と
返した。
「ゼロに近いです」
 そりゃそうだ、っと。そーんなの、俺にだって分かる話だ。ムグムグ。
んお、うめえな、ここの大福。俺は完全に傍観者モードで、大福につい
てきたほうじ茶をすする。悪くない。悪くないどころか、良い。そもそ
もメニューにほうじ茶と饅頭がある時点でかなり良い。親父にうちでも
大福置かないか提案してみよう。また冷凍マグロで殴られるかも知れね
えけど。
「桜井に、直接聞けばいいじゃないですか」
「それはそれでおかしな話でしょう。はるかがそうするなら、わからな
いではないけど」
「えへへ。ですよね」
 自分で言っといて。それが世話焼きおばちゃんみたいな行為だと、言
ってあとから気付いたんだろ、エッヘッヘと香苗さんは白い歯を見せて
苦笑いした。いい加減だなあ。
 ……大体、それを森島先輩本人が実行したとして、桜井さんから返っ
てくる返事が確かなモンだって保証なんてどこにもない。そりゃ訊いた
モン負けの類の質問だ。じゃあどうすりゃいいって、このテーブルの上
に漂ってる「そんなの訊くまでない」って空気が、ぶっちゃけ、一番の
正解に決まってる。
 一体どういうつもりで、なんのための場なんだろう? 塚原先輩も呆
れ気味に……珍しいな。姿勢を崩して頬杖ついた。いつもすました顔で
スッと背筋を伸ばした印象しかない。その顔は眉を下げて笑ってる。な
んだろう、ちょっと失敗したなあっって顔だ。へえ……こういう顔もす
るんだ。女の子同士の時間ってのはこういうもんなのか。……すなわち、
今の俺は完全に空気。すし詰め……否、差し詰めエア男子ってところだ
な。とほほ。美人のけだるげな笑顔を肴に、饅頭のおかわりでもしよう
かねえ。
「なあに?」
「へ?」
 将棋の対局のように、二人掛けに向かい合った二人、俺はお誕生日席
でその記録係か秒読み係のような位置にいたんだが……表情を温ませた
塚原先輩に見とれてしまったのを見つかって、いらない矛先を呼びこん
じまったみたいだ。
「そうだ。ねえ、梅原君だったら、どっちの味方をする?」
 そこへ香苗さんまで余計な旗を振る。やめてくれよ。
「そうね。参考までに聞かせてくれるかな。君の目から見て、彼にはど
っちが相応しいと思う?」
「え? お、俺!? ですか!!?」
 いきなりかよ!
「そーそー。梅原君なら、あたしたちの知らない彼のことも知ってるで
しょ? そういう視点で見たらあの二人の、どっちがいいと思う?」
「お、おいおい。なこと言われてもよお」
 俺と大将の付き合いは確かに古いけど。だけど、香苗さんや塚原先輩
が大将のことを知らないのと同じくらい、俺には桜井さんや森島先輩の
ことが分からない。俺の知ってる大将がどっちとくっつくのが良いかな
んて、俺にわかるわけがない。
「ねえ、どっちを選ぶの?」
「はっきりなさい」
「さあ!」
「さあ」
「さあ!!」
「さあ!」
「さあさあさあ!」
 ふ、二人がまるで、俺にせまるみたいに! な、なんだこれ! 相手
は輝日東きってのクールビューティと、お日様系のサバサバキューティ
……これは、ちょっと……う、嬉しい! 嬉しすぎる! だ、誰か今の
この部分だけを録画してくれッ!
 ……と、俺が一人で悶絶しているうちに、二人ともその行為の不毛な
ことに気付いたんだろう。乗り出した身を戻して、ほとんど同時に、ハ
ア、とわざとらしいため息をついた。
「やめましょ」
「そうですね。梅原君に、わかりっこないもんね」
 ……。あのなあ。ていうか、最初から遊んでただろう。先輩も、たま
にノリが良いよな……。こりゃアレか? 森島先輩の教育の賜物か?
 けど、そりゃご無体な難題ってもんだよ。大将にだって色んな顔があ
る。ぶっちゃけた話、男同士でいる分にはそいつが女の前でどんな顔し
てるのかなんてわかりゃしないもんだ。思いもかけない顔してることの
方が普通なんだってことくらい、親父とお袋見てりゃあ……分かる話だ。
まあ、寂しい話だけどな。その辺、男と女じゃ若干の差がありそうだ。
 二人はすっかり諦めムードで、一体この場が何のためにセッティング
された物なのかもわからなくなってきた。ちょっと塚原先輩らしくない
思いつきだったかな。それとも、そもそもそれを確認するための場だっ
たのかもしれない。こうなることなんて先輩には分かってたはずだもん
な。
 しかし、となると、俺は暇つぶしか腹いせかの出汁にされっぱなしっ
てことになる。それで黙りこくってるのも癪に障る、いや、男がすたる
ってもんだ。せっかくの機会だしここは一つ、俺の方からも質問してみ
ようかねえ。
「あのー、質問。いいっすかあ?」
 俺は半分、テーブルに突っ伏したような姿勢から挙手して訊いた。ま
さか成り行きでつれてこられただけの俺が自分から首突っ込んでくると
は思ってなかったんだろう、銘々、自分のグラスに口を付けていた塚原
先輩も香苗さんも、目を丸くして飲み物を置いた。やるときゃやる男で
すよ? 男・梅原正吉は。
「何よ?」
「何かしら」
 うおっ……。さっきまでとは明らかに空気が変わった。緊張感。やっ
ぱり踏み込むべきじゃなかったのか? 女同士ならではの冗談の言い合
いだったから許されてたんだろうか? けど、まあ、もう引っ込みつか
ねえし……行く。……しかねえやな。
「あのー……桜井さんはともかく、俺には森島先輩が大しょ……橘に好
意を持ってるってのがどうにも信じがたいんですけど……その辺、どう
なんでしょうね?」
「はるかが?」
 香苗さんは感心したようにうんうんと深く瞳で頷き、塚原先輩はクッ
と力を込めて、自分の肘を抱いた。そのまろやかながらも鋭いおとがい
に手を添えながら浅くうつむいて、俺とも、香苗さんとも目を合わさず
に眦の端に滑らせた瞳は、多分、どこも見てねえな。なんか色々思い出
してる感じだ。
 こち、こち、こち。
 この店、時計なんかあったんだ。多分店の奥の方、カウンターから響
いてくる針の音が不意に大きく響いて、窓ガラスを透かした外の黄色い
光が、テーブルに置いた自分の手の甲をふんわり焼く。塚原先輩はまる
で、息もしてないみたいに止まったままで、俺は香苗さんとこっそり目
を合わせた。香苗さんも、なんかこっちを見てくるけど、何を言いたい
のかさっぱりわかんねえ。こういうときダメだな、男と女じゃ。
「どう……なのかしら」
 おっとぉ。漏れ出た一言に、俺も香苗さんもがっくんと椅子から転げ
そうになる。それを見て塚原先輩は、髪から肩から、全身にまとってい
た鋭さを憮然とした雰囲気で鈍らせた。
「仕方ないでしょう。私にだって、初めははるかのあれが恋愛感情だと
到底思えなかったんだもの。今だって、確信してるわけじゃ……」
「あ、あああああ。で、ですよねー。責めてるわけじゃないんですよぉ、
ねえ、梅原君?」
「そ、そうそう。へへへ、さーせん……」
 自分ではあんなこと訊いといて、とは思ったけど、好きとか嫌いとか
の線引きが蓼食い虫にお任せなのは、男も女もさしたる違いはないって
ことか。二人とも、俺もだけど、話がきれいに振り出しに戻ったのを感
じ取って、小さく息を吐いた。で、また飲み物に口を付ける。ずずず。
 誰も何もしゃべらない、少しの時間。香苗さんのだんまりは軽やかだ
けど、塚原先輩のは重たいなー。何か考えてるか、そうじゃないかの違
いなんだろう。香苗さんの場合は顔に開いた心の窓が大きい分、黙って
ても気を使わなくて済むってのはあるかもな。香苗さんの目が、さっき
最後に注文した俺の手元に残ってたメニューにぴたっと止まったから、
俺は、
「ん」
と、古めかしい、焦げ茶色に濡れたような木の表紙で綴じられたそれを
彼女の方に滑らせた。
「ありがと」
 香苗さんはそれを受け取って開くと、お替わりねらいかと思いきや、
甘味のページの写真を目で追い始めた。
「……そもそも、あの子の魅力って何なのかしら」
 考えあぐねた塚原先輩が、そんなことを言い漏らした。案外遠慮のな
い人だなあ。森島先輩と付き合ってると、そういう風にもなっちまうの
かもな。その言葉に、香苗さんは猫みたいにピクンと髪を跳ねさせて分
厚いメニューを閉じた。木で出来た表紙のやさしい重みに、ラミネート
加工された間の頁から空気が押し出されて、文字通り、ぱたん、という
丸みのある音とともに風をつくった。
「あ、それあたしも知りたーい。興味ありました、前から」
「分からないわよね?」
「分かりませんよ。……桜井には悪いけど。マニアックっていうか」
 頬杖をつき、切れ長の眦を意味のない方向に投げながらの塚原先輩の
つぶやきに香苗さんが食いつき、二人は一瞬盛り上がる。おいおい。人
のダチ公なんだと思ってんだ。確かに、大将のセイヘキはマニアックの
方向に傾くこともあるけどよ。
「……でも、はるかのそばにいるのに、不思議とあの子以外のビジョン
は浮かばないのよねえ……」
「そんなもんですか? あたしはー……桜井の場合、おさななじみって
いう強ーいカードがあるから……他の人は浮かばないですけど。そうね
え、桜井に他の人かあ……。考えたことなかったなぁー」
 塚原先輩はテーブルについた肘を少し滑らせてうつぶせに近づき、逆
に香苗さんは、ストローを咥えたまま。椅子に背中を大きく預けて天井
を仰いだ。俺も、つられてちらりと天井を見上げる。むき出しの木の梁
から下がってる時代物の照明は、ちょっと薄暗いし燃費も悪そうだ。作
り出す光の柔らかさはちょっと魅力的だと思うけど、自分で欲しいとは
思わねえ。
 日暮れ前。鋭く射してくる冬の西陽。その時間は長くはねえ。二人と
もまるで美術の教科書で見た一瞬の切り絵みたいだ。ムナカタシコウ、
だったかな? 窓辺に無理矢理しつらえた三人がけをほんのりと、艶っ
ぽい空気が包み込む……。あー、俺今日ラッキーだなー。詩人だなー。
「マニアック、か」
 ん? 塚原先輩が香苗さんの、なんだか意外な言葉尻を捕まえた。ん
にゃ、この際「捕まった」って言う方が正しいのかも知んねえな。香苗
さんにもそれは意外だったみたいだ。ん、と勢いを付けて体を起こすと、
ストローを戻す素振りで、上目遣いに先輩の細い瞳の奥を窺った。けど、
先輩はそれには取り合わなかった。
「マニアック……ねえ」
 ほんの少し、笑いの調子を含んだおうむ返しの呟きで、香苗さんも窓
の向こうに目を細めたんだけど……二人とも、どこ見てんだ? 古くな
ってゆがみのひどい窓ガラスは、自分の厚みの中に光をとじこめちまう
んだろうか。夕日がおかしなぐあいに反射して、黄色い紙を貼り付けた
みたい眩しくて向こうが見えない。それでも二人の視線は、ガラスを抜
けたどこか遠くの先で、奥で、細く結ばれてるんじゃないかって気はし
た。
「人の心配ばかりしていられるほど、ゆとりがあるわけでもないしね」
「そーなんですよねぇー……」
 塚原先輩も、香苗さんも。さっきまでの、お互い友達を憂いつつ人の
恋路を肴にちょっと楽しんでる、そんな空気はすっかりナリを潜めて、
つぶやいたきり物憂げに、さっきとは明らかに意味合いの違う熱っぽい
ため息を鼻から漏らした。……い、色っぺえ……。この人らホントに、
俺らと同じ高校生か? 女子ってこんなに大人びた顔するもんなんだ。
……大将、俺ぁ今日、一個学んだぞ。
 けど、まあ。何を考えてんだろうな。さっぱり分かんねえ。マニアッ
ク、か。俺には与り知らない話だ。ああ、分かんねえ分かんねえ。
 手持ちぶさたの俺はもう、ほうじ茶に二つくっついてた小さな塩大福、
その残りの一個にがぶっと食いついた。むぐ、むぐ、むぐ。ああ、やっ
ぱうめえな、ここの塩大福。ちょっと匂いにクセはあるし、そもそもこ
の店に来てほうじ茶に塩大福のセットを頼むやつがどれだけいるか知ら
ねえけど、俺なんかにゃたまんねえ。病みつきってやつだ。多分親父も
気に入るだろう。どっから仕入れてんだろ。こっちの商店会の店かなー。
「ま、人のどこ好きになんのかなんて、なにが普通とかあるわけじゃね
えっすもんねぇ。言ってみりゃ、みんな普通で、みんなマニアックみた
いなモン……な、なんスか」
 とりあえず思ったことだけ言ってほうじ茶を飲み干し、これもなかな
か渋い唐津の湯飲みをテーブルに戻すと……いつの間にか二人ともまじ
まじと俺の方を見てて、俺はちょっと怯んだ。
「……」
「…………」
「だ、だから何なんスか?」
 しばらくそのまんまで、結局二人とも、俺に何にも言わなかった。い
いだけ俺のことを睨んだあと、示し合わせたみたいに瞳を伏せた。何な
んだ、一体。そして終いにはちょっと安心したみたいに、そろそろ出ま
しょうか、と塚原先輩が切り出した。ホント、一体何なんだよ。
「悪かったわね、時間をとらせて」
「いえいえ」
 先輩のゆび先が自然に滑って伝票に辿り着いたところに香苗さんが手
を重ねて遮る。塚原先輩も驚くが、私が誘ったんだから、とそこは譲ら
ない構えを崩さなかった。
「支払いくらいもつわよ」
「いえいえー。こういう話でしたから、ね」
 なるほど。
 にやりと笑って片目を瞑ってみせる、その香苗さんの表情もなかなか
堂に入っていて曲者感がハンパない。いやー、女子って大人だな。熟女
だな! ……それは違うか。
 それを聞いて、少し意地悪く頬をゆるめる先輩も先輩だ。
「そう? じゃあ、そういうことで」
「はい」
 いつの間にか空気は、最初の頃に戻っていた。
 やれやれ、しゃあねえな。
 俺の分だけ二人で割ってもらうわけにも行かず、俺は尻ポケットの財
布を渋々探った。



            ×



「で、結局よお?」
 店の出口で先輩とは別れ、俺と香苗さんはもう一度、目的の店へ戻っ
た。大将へのプレゼント候補を幾つか挙げて、あとは桜井さんのセンス
で選んでもらえばいい。大体そんな段取りだ。
 帰り道、いい加減日も落ちて、お互いの顔もよく見えない。俺は何と
なく、香苗さんに聞いてみた。
「何よ」
「香苗さんも、好きな奴とか、いんの」
「ん、なっ……!」
「ああ、やっぱりいんだ。ふーん、そっか」
 びしりと脳髄に亀裂の入る音を立てて香苗さんがどもるから、その先
は敢えて本人には言わせない。そいつぁ野暮天ってもんだ。香苗さんだ
って、ここまで唐突な訊き方じゃなけりゃこうまでうろたえないだろう。
普段だったら、とか、相手が女友達だったら、しれっと
「そりゃいるわよ、おかしい?」
ってなもんだろう。俺は自分で勝手に結論つけて、その話は終わらせた。
まあ、別に。普通のことだ。そりゃまあそうだ。
「そうだよな。高校生だもんな、俺ら」
 俺がそういう風に線路を敷いたら、香苗さんも不思議なくらい落ち着
いた。暗くてよく見えなかったけど。真っ赤になってたはずの頬が、す
っといつもの色に引いてくのが分かった。
「まあね。梅原君だって、いるんでしょ?」
「まあな。……田中さんとかも、いるんだろな」
「田中さん?」
 何だかわからねえけど、香苗さんはクスリと笑う。香苗さんの質問は
意趣返しのつもりだったのかも知れねえが、自分で振った話だ。うろた
えるわけもない。つまり、だ。さっきのアレは、塚原先輩も、ってこと
なんだろう。あの窓の向こうに誰がいたのかは知んねえけど。みんな、
アレだ。大忙しだ。
「へへっ」
「ちょっと、何よ」
 冬の風が厳しい。乾いた鼻の下を指でこすって、俺が笑ったのが香苗
さんは気に入らなかったらしい。
「マニアック、か」
「えぇ? 何よ、文句あんの!? あんなこと言っといて」
「べぇーつに。いいんじゃねえの」
 最初、大将が森島先輩と、って聞いたときには、驚きもしたし、疑い
もした。桜井さんと、ってときには別に驚きはしなかったが、どうして
今頃? と思いはした。けど、まあ。何があっても不思議はねえってこ
ったな。棚町とやけぼっくいに火がついたっておかしくねえ。だから多
分、このお話もいつの間にか始まってたんだろ。
 今年のクリスマスまで、もうあと少し。残念ながら今年の俺は、大将
と違ってどっかでボタンを掛け違えちまったみたいだが……そうそう、
大将が言ってた、
「……梅原にも、きっとくるよ。思いもかけず、黒い手帳を拾っちゃう
日がさ」
って言葉の意味が、今日はなんだか分かった気がするぜ。その黒い手帳
が一体何のことなのか……それはやっぱり俺にはまだわかんねえんだけ
どな。それはまあ、拾ってみないとわかんねえって奴だろう。
 ……あと、そう言った大将の顔がやたら青ざめてたから……実はあん
ーまり、そいつは拾いたくないなぁーとは、思うんだけどな。そゆこと
言ってると一生実らないんだろ。
 くわばら、くわばら。



                       ──おしまい──




      ──Epilogue──



梅 原「なあ、香苗さんは、黒い手帳って拾いたいと思う?」

香 苗「思わない」


 キッパリ。即答かよ……。


香 苗「なんかすっごいイヤな予感する。
    何それ。何の心理テスト?」


梅 原「いや、分かんねえ……。けど、その意見には賛成だ」

香 苗「はぁ? 意味ワカンナイ……
    でもゼッタイやだ。ゼッッッッッッッタイ拾わない」

梅 原「分かった、わーかったから」

梅 原(大将……お前、一体ナニ拾ったんだ……?
    こりゃただ事じゃねえぞ)




 

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2011年9月 7日 (水)

■あの子と鉄山靠 -更新第708回-

「セッちゃん」という文字列を見ただけで軽く泣きそうになります。
オイサンです。

なに科に罹れば良いんでしょうねコレ。


Webラジオ終了の余韻も覚めやらぬ中……
そして自分の超凡ミスで
仲良くなれるハズだったノノノさんをみすみす未来に返してしまった
(のかどうかも定かではない、最悪の期限切れENDを迎えた)ダメージも生々しい中。


今日も懲りずに『ドリームクラブ』に通うオイサン(36)でございます。
不屈のピュア紳士と呼んで戴いて結構!!

  そういえば雪っちゃんも源氏名なんだな。
  本名なんていうんだろう……。

魅杏さん、あすかさん、ノノノさんときて、
魅杏さんで二周してますから、次はもう五周目。
ぼちぼち本命にいってもいいんじゃないかと思いまして……
昨晩、地獄から来た超セレブともっぱらウワサの遥華さんを指名してみました。

いつも通り指名をし、ドリンクを注文し。
オイサンのペースでは、最初の時計(延長前の60分)が3/4を過ぎるくらいで
ほろ酔いモード(ETSでは味気ないので)に入るくらいに
飲んだりしゃべったりするんですが。

そうして話を聞いてたわけですよ。



……うん。



ふんふん。



あーそう。そーなんだ。





(……え、何これ)





(ああ、知ってるぞこの感じ)





だ。





なんスかこの子。
めっちょ可愛いんですけど。
超ときめいてます。



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ものすごい高飛車だとは聞いていたのですが、
なんだろう、
ただ高飛車なだけなんですね、このコ。

何かこう、高飛車であるべき理由というか寄る辺というか、
自分は他者に対して高慢であっても良しとするだけの自信が、
自分の中にある、わけじゃない……っぽい。
今のところ。
環境や立場の照り返しでそうなってるだけみたいだ。

オイサンが今まで見てきた高飛車なキャラクターって、
そうするだけの理由……背負うものや過去があって、
その重さを自認しているからこそその高さはそうそう崩せるものじゃない、
というスタンスの人たちが多かったように思います。
鉄壁のガードの向こうから、固くて重いパンチを撃ってくる人たちだったのに。



このコ、しょっぱなから全弾グルグルパンチだ。
ヤダ……すっごい可愛い。



高飛車なんだけどモノを知らなくて、すごく子供っぽい。
年はハタチらしいけど、話してみた感じ、中学生か高校生くらいの印象しかない。
えらい頼りない。幼い。
人をミジンコ呼ばわりしたり、メールアドレス交換が自分で出来なかったり、
強がりでもなく、
示威行動でもなく、
天然なんだなあ。

取り乱すとかキーキー叫ぶとかそんなんじゃ全然ないんですよ?
落ち着き払って、上から見下すんですけど……
その「上から」が無自覚さであるが故に、目線が軽いんですよね。すごく。
見下されている気がしない。
圧力がないんです。
不思議なもんだな。
こういうことも出来るんだ。
シナリオにせよ、お芝居にせよ、コレを計算でやってたらすごいなあ。


  ……イヤ、まだ始めたばっかりだから、第一印象でしかないんだけど。


それでも、酔うまではワリとフツーの高飛車なコなのかなーと思ってましたけど、
酔ってからがエライ可愛いんだなあ。
一気にバケの皮(本人バケてる意識もなさそうだけど)がはがれ始める。
二人称が「アンタ」なんですよね。
ちょっとびっくりしてしまった。
「え? 今オイサンのことなんて呼んだ!?」
みたいになりました、やってて。
「ねえ、ちょっとアンタ」、みたいに言われるんですよ。
新鮮。

  ラジオでへきるさんがゲストに来たとき(公録んときだったか?)、
  「江戸っ子」みたいなことを言ってたけど、これのことなのかなあ。
  でも文字にしたら美川憲一の声でしか再生されませんね。
  とんだ誤算だ。

これ、仲が進展したら呼び方変わっちゃうのかなあ。
それヤだなあ。

このコのこと好きだって言うとまた、

  ・ オイサンはピュアでドMだなあ!
  ・ オイサンはピュアでドMだなあ!!
  ・ オイサンはピュアでドMだなあ!!!

とか言われそうだけど、そうじゃない、見ていてすっごい微笑ましいよ!?
ものを知らないわがままな駄々っ子の、
ちょっと世間ズレした話を聞いてあげているような。
非常に心穏やかなお父さん気分でおりますよ。
S → Mという気持ちでは全然ない。

  ……まあ、ちょっと、一発ビンタして欲しいなー
  と思うことはありますけど(変態だー)。

  絢辻さんにも「ぶたれたい」と思ったことは、実はないんですけど
  (あの人嬉々として手加減ナシできそうだから歯が折れるっていうか基本グーパンチ)、
  この人は、自覚もない分、ほど良くぶってくれそうな気がする。
  ↑ってアンタその思考が既に。

遥華さんとひとしきり飲んだあとに、
アフターでSPのお二人・スミス & ウェッスンと、
あの可愛さについて延々語り明かしたい。飲み明かしたい。
あの二人、スカした顔で後ろに控えてるけど。
……絶ッ対、ハマってるはずだよ。
ファンだよ。お嬢の。
毎晩お嬢が寝静まったあとに、
バーかどっかで「本日のお嬢ハイライト」の擦り合わせをやってるに違いない。

  ……って、今思ったけど。
  ボヤッキー & トンズラーとか、ハンソン & サンソンあたりも、
  自分のご主人の可愛らしさを肴に夜な夜な一杯、飲ってたのかも知れんな。
  大人になって気付く男のサブストーリー。

マそんな感じで、
またしばらくオッサンの腑抜けた世迷言がここに並ぶ可能性が高まりましたが、
呆れずに見守って戴けるとありがたく存じます。

▼Happy&Pride


イヤー、マイッタナー。
ワリとガチにねー。
思い出しただけでドキドキしてくるレベルよw?


 ♪ フンフンフンフ フンフンフフンフン 恋のBellが鳴るー、っとくらぁ

  ↑懲りてない ← そもそも懲りる要素がない



■おおっと、おきゃくさん! あいが たりませんよ!



ゲームの話に関連して、ちょいとWebで読んだ記事で面白いのがあったのでご紹介。

  ▼『バーチャファイター』が、『プレイステーション』を救った!
  http://www.enpitu.ne.jp/usr6/60769/diary.html [ いやしのつえ ]

この記事を読んで思った、何がスゴイって、鈴木裕がすごいよ。
まあ、鈴木裕がすごいのか、その周りのスタッフがすごいのか分からないけど、
とりあえず当時のAM2研とセガがすごい。

そんな、他社が「どうやっているか皆目見当もつかない」様なコトを、
あれだけの遊びの完成度を伴わせて発表出来る、……ってのは、すごいなあ。
ゲームの世界に限らずに外の研究分野とかに首を突っ込めば、
当時でも多少は実用的な例があったのかもしれないけど、
それでもそれだけ先進的な技術を、
「ゲームに取り入れよう!」と思いついて言い出す人間(これは多分鈴木裕だろう)がすごいし、
それを研究して使えるようにした人間も、
遊べるようにした人間も、
そしてそれを許してお金を出してたセガも、軒並みすごい。

多分その頃、任天堂だって3Dの基礎技術研究なんかやってはいたんだろうけど、
あそこまでは到達していなかったんではないだろうか。
そもそも任天堂は「枯れた技術の水平思考」の会社ですしね。

  ……あのですねー……
  面倒くさいんよ。
  新しい技術って。キホン。
  オイサンのやってるオシゴトでもたまにあるけどさ。
  誰も使ったことのないデバイス。
  誰も使ったことのないツール。
  開発環境。言語。
  ホンマにね、とにかく面倒くさいんすわ。
  時間はかかるしお金もかかるし手間もかかる。
  行き詰ると何にも分からなくなるし、
  手探りで解法を探して、見つかったとしても、それが正しいか、安全か、
  誰にも分からないし、保証もされない。
  リスクは自前もち。
  初めてって、そんなんですよ。
  それが好き、分からないこと、新しいこと大好き! 解き明かすの楽しい!
  ……っていう人もいますけど。
  オイサンには、それはなかなか理解できない。
  少なくともオイサンの従事するオシゴトの分野では。

  見たこともないジャンルのゲームをやるのとかは、
  昔は多少好きでしたけどね。

まあ、ビデオゲームなんてのはどこまでいっても嗜好品で、
壊れたり、間違ったりしてもなかなか人の命に関わるに至るほどではないので
ある程度安心して失敗出来るってのはあるのかもしれませんが。
「ごめーん、バグった」
で、済むといえば済みますし。

  ……いや、やってる方が命懸けなのはオイサンだって重々承知ですよ。
  怖かったもん、『アマガミ』やってるとき。
  データが飛ぶ、いいところで止まるってのは、
  ゲームとしては「致命的」なんだけどさ。
  本当に命までとられるわけじゃないですからね。
  そういう意味では「まだマシ」って話です。
  これが自動車の制御システムとかだとソッコー人命直結ですからね。
  そーはいかんワケです。

「あー、そうか、セガってすごい会社だったんだ!」
と、改めて思った次第です。
なんというか……ほんとバカですよねw すっごい褒め言葉として。
「男ってバカ」
という言葉がよく似合う会社だと今更ながらに思います。

そう、セガさんはゲーム業界の「男」だったのかもしれない。
『P.S.すりーさん』に登場する「せがさん」は女だけど、
キャラとしてはすっごく正しかったんだなあ。
今もってファンが多い理由がよくわかるお話でした。

▼バーチャファイターOP WILD VISION

愛が足りないぜも良いけど、こっちが好きなんだなあ。


マそんな感じでヒトツ
オイサンでした。


 

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