« ■筋書きのない富山~延長5年、ツーアウトからの『true tears』・城端巡礼~(第5回) -更新第1084回- | トップページ | ■DEEPNESS beyond EVERYDAY -更新第1986回- »

2016年8月18日 (木)

■40歳に置き忘れた、遠いあの夏のうどん -更新第1085回-




実家に帰っていたとき、母が、奈良にあるうどん屋の話をしてくれた。




Dsc04873
※画像はおそうめんです。


いわく、以前父と一緒に行ったらしいのだがずいぶん歯ごたえのあるうどんなのだそうで、
かたい、かたいとそこばかり強調して、
けれどもちっともイヤそうではなく、嬉しそうにするものだから、
かたいけどおいしいのか、かたいことがよっぽど楽しいのか、
きっとどちらかだったのだな、とそう思った。

帰省して二日目、一家で芦屋にある墓に参った日の夜遅くになって、
母が、明日のお昼はそのうどん屋に行ってみるのはどうかと言い出した。

このとき兄はもう二階の、彼がこの家に住んでいたとき自室だった部屋に引き込んでしまっていたし、
父は床に就いたあとだったから、じゃあ朝にでも相談してみようか、という話だけして、
私も寝室へ戻った。

翌朝、私がジョギングから帰ってきてみると兄はもう起き出して、母の朝食の支度を手伝っていた。
母に昨夜の話をしたのか尋ねてみたら、「もう断られた」と笑って言った。
それもまた、別段いやそうでも悲しそうでもなかった。まあ、いつもの調子なのだ。
兄は西大寺の百貨店にバッグを見に行きたいと昨日から言っていて、
腹づもりとしては昼から出かけるつもりだったようで、母の思っていたプランとは合わなかったのである。

そのうちに父も起き出して来、
母が
「あのうどん屋さんに行こうって言っててんけど」
と、――これもいつものことだが――唐突な切り出し方をした。
「うどん?」
と父。
「奈良の、あのかったーいうどん屋、行ったやんか」
「ああ、ああ」
やはりそこでも、強調されるのはかたさなのか……しかし父もそれでピンと来たようだったから、
二人の脳裏には十分に「かたいうどん屋」でタグ付けされているようだった。
「行くんか?」
「ううん、却下されてん」
母の話では、そのうどん屋は父もワリと気に入っていたようだったからもう少しノリ気なものかと思っていたが
そういう風でもなかった。ふうん、と気のない返事で、台所ののれんもくぐらずに、顔を洗いに行ってしまった。
しかしなんだか、あの言いようでは私もすげなくしてしまったようじゃないか、と思ったが、
四人で行けないのでは意味がないのかもしれないし、
特に訂正するような話でもなかったからそのままにしておいたのだが。



……。



母が、四人揃ってうどん屋に行きたかったかどうかは分からない。
父がそのうどん屋を、家を出た息子二人を連れて行きたいほどに気に入っていたかも分からない。
けれどもいまこうして思い返すにあたり
「三人でもいいからそのうどん屋に行きたい」と言い出すのが私の役目だったのではないか、
と思える。
父が車を出し、兄を西大寺の百貨店でおろして、三人で奈良まで行けばいいじゃないか。
そのカッターイうどんを、おかしな顔をしながら食べたいと言えばよかったんじゃないかと、
他に都合があったわけでなし、矜持に反するわけでなし、
母がどことはなしに皆で食べたそうにしていたそのうどんを食べに行きたいと言えば良かったんじゃないかなあ、
と、
その二日後四十一になったぼんくらな次男は、
台風の過ぎ去った熱波の東京の空の下で、
四十の夏に置き忘れてきた最後のうどんのことをうすボンヤリと思うのだった。



来年にはもう、カタくなくなってしまっているかもしれない、うどんの話。
オイサンでした。


Dsc05127
※画像はおそうめんです。











蛇足。





……と、書いてて思ったけど、最も良かったのは、
気分を害さない程度に兄も誘ってみて、どーにかうどん屋に連れ出すこと、だったかなあ。
相反するような譲れないプランが、どっちにもあったわけじゃなし。
マその前日が墓参で四人まとまってゴハン食べてたから、
毎日お出かけって気分を出すのも難しかったんだけどね。
ぽてちん。


どうでもいいけど、 蛇足 を DASOK って書くとALSOKみたいだよね。
ホンマにどうでもエエな。

Dsc05156






|

« ■筋書きのない富山~延長5年、ツーアウトからの『true tears』・城端巡礼~(第5回) -更新第1084回- | トップページ | ■DEEPNESS beyond EVERYDAY -更新第1986回- »

[日記]」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/55967/67052670

この記事へのトラックバック一覧です: ■40歳に置き忘れた、遠いあの夏のうどん -更新第1085回-:

« ■筋書きのない富山~延長5年、ツーアウトからの『true tears』・城端巡礼~(第5回) -更新第1084回- | トップページ | ■DEEPNESS beyond EVERYDAY -更新第1986回- »