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2016年4月の5件の記事

2016年4月27日 (水)

■いつの間にか、きみを。~桜と向日葵と思い出す人生のこと・小諸、十一回目~(3) -更新第1056回-


食べてすぐ横になると、食べてすぐ横になるマンになるわよ!
オイサンです。
変身ヒーロー。

サテ、行き過ぎた妄想力を持った男がその力で世界を救うも、
あまりに妄想がヒド過ぎて迫害され人間社会を追われた先に行きついたのが小諸だった、
そんなオイサン11度目の小諸探訪記、今回はその第3回、最終回です。

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前回はオイサンが、普通の人間の目には見えない美少女と出会い、
ともに飯綱山の山頂へ導かれて、妖精さんからふしぎな歌を教わるところまででした。

今回は……マもうお昼ゴハンを食べて帰るだけ……のはずなんですが、
まだもう一つ、不思議な出会いが待っていたようです。



■おみやげのみやさかとさん。~思わぬところで小山田先生の息吹に触れる
そんな風に、ちょっと切なメの思いに駆られたのには、
頭に小山田先生のことがあったことが無関係ではないだろう。

今回の小諸訪問を考えたキッカケに、小山田いく先生が亡くなられた、ということがあった。

  小山田いく先生は、小諸出身のマンガ家です。
  『すくらっぷ・ブック』(1980~1982)などの代表作があります。

オイサンなんかは例のごとく、熱心なファンと言うほどでもない。
先生のことをキチンと知ったのもごく最近(と言ってももう3年前だが)でしかなく、
ちゃんと読んだ作品も『すくらっぷ・ブック』くらいだ。
30年以上昔から今なおファンを続けておられるガチ勢の方々から見れば
ミーハーも良いトコだ。
けれどもその『すくらっぷ・ブック』の世界が、
スーパー二次元脳のオイサンが小諸のことを肌で取り込む上で添えた彩は計り知れない。
小諸のことを好きになってしまった自分として、その存在は外せない。

このタイミングで小諸を訪れたから何をするというワケでもないけれども、
どこへとなりと向かって手を合わせることくらいは出来るだろう、ということは頭の片隅にあった。

  マ実際来てみたら、ホント具体的に何が出来るでなく、
  いつも通りフラフラと、山と空を見上げ、川を眺めして
  ときどき作品の世界に思いを馳せることくらいしかなかったけど。
  その間も大体、隣に向日葵ちゃんがいたしね(罰当たり。

2日目はあまり長居することを考えていなかったので、昼を食べる店にアテがなかった。
雨も、昼が近付くにつれ急き立てるように勢いを増していた。
いちいちケータイを出すのもおっくうで、ここと思ったのれんをてきとうにくぐった。
結論から言うと大当たりだった。
メインのかき揚げ丼のみならず、
突出しの山菜の小鉢も、茶わん蒸しも、お味噌汁もお漬け物もお茶も、
何から何までハイレベルで美味しく、店の設えもスバラシイ。

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……なのだが、ウッカリ写真を撮り忘れたので、朝のきざみそばの写真。


天ぷら中心の割烹で、焼き魚定食をたのむという心づもりで入ったが、
じわじわ温度を上げている天ぷら鍋を見て気が変わった。

殴ったら手の方を怪我しそうなご主人も、
低く落ち着いた声で気さくに、しかし程よい距離感で話しかけてくれるし、
明るい桜色のお着物姿が堂に入った女将さんも大変に行き届いていて
オイサンのごとき若造には言うことなんか何もないくらいの良いお店でした。
それでいて鯱張りもせず、ただ自ずと背筋を正していただくのが心地よい。
お値段もリズナボー。いやあ、アタリを引いた。

そんなナイスなお店でゆっくりしてしまったので、
お店を出る頃には電車までの時間が予定の40分を切っていた。
しからばもう、あとは「おみやげのみやさか」さんに寄って買い物を済ませておしまいにしよう。
15分もあれば済む用事だ。
……そんな風に思っていた時期が、僕にもありました。
結局また、30分近く話し込んでしまった。ここは何屋だ。


  ……さあ、全国5000万の小諸・おみやげのみやさかさんファンの皆さんこんばんは。
  お待たせしました。みやさかさん(主にお母さん)の時間です。


オイサンが入店したとき、
お店のカウンターでは「こちら側」っぽいお客が数名固まって話されていた。
そして彼らが去った後、そこには数冊の同人誌と、
十冊近い古びた週刊少年チャンピオンが置かれていたのでした。

「小山田先生、亡くなられたんですよね」

それを見てオイサンが切り出すと、お母さんはいつもの調子で、
これを置いて行った彼らは昔からの小山田作品ファンで、
当時の同人誌と掲載誌を置いて行ったのだと、聞かないことまで教えてくれる。

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促されてページを開いてみると……なんともはや、どちらも懐かしい感じの誌面。
チャンピオンの方に至っては、『らんぽう』『750ライダー』『プラレス三四郎』『がきデカ』など
レジェンド級の作品がズラリでうっかり読みふけりそうになる。

世間話の中で、今日はすぐそこの"懐"というお店でゴハンを食べたのだと話すと、
お母さんはパッと楽しそうな顔をして(あのヒトいつも楽しそうだけど)


  「あっ、あっ、じゃあ、おかみさんおられました? お着物の」


と言う。
ああ、確かにおられましたけど。

  「あのおかみさんがねえ、『すくらっぷ・ブック』の……
   誰だっけ、ホラ、一番右の!


わかんねえよ。
どのイラストの話だ。常に最右翼なのか。そいつは右サイドバックか。
お母さん、『なつまち』やら『おねティ』やらと一緒に小山田先生作品のグッズが並んだ棚を見渡して、


  「えっとねえ、あの、この……あれ? ない。どこやったっけ?」


失くしたのか。
お母さん、僕を萌え殺すつもりですか。
お母さんは、どこのギャルゲーから出てきたんですか。
秋子(水瀬)さんとか春香(柚原)さんとか、メインヒロインより人気出ちゃう系女子ですよね?
毎回毎回素敵すぎるんですけど。

  ……そういえばお母さん、お土産の中でもやたらとジャム推しなのはもしかして……。

イヤ、結果的にはあったんだけど。
お母さんが出してきたイラストの、確かに一番右には、桜井光代という女の子が描かれている。


  「そうそう、この子のモデルになった人なんですよ。小山田先生の同級生で」


なんとまあ。小諸に残っておられたんですね。
そのあともアレやらコレやら、おかみさんのパーソナルな情報をリークして下さって、
また一つ、思い入れのあるお店が出来てしまった。
終始お母さんのキャラに押され気味でしたけれども、
亡くなった小山田先生の思いに、思いがけず濃いかたちで触れたような心持ちがして。
なんだか……得をした気分です。
不思議なご縁、と言っていいのか。ただの偶然だけれども。
人間、考えることは同じなんでしょうね。



■帰途
……こうして、オイサン11回目の小諸の旅は幕を閉じます。

思えば、そばばかり食べていたような気がするなあ……。

旅行をすると、頻繁に、思いがけない楽しい偶然と出くわします。

それはまあ言ってしまえば、本当にとるにたらないただの偶然であったり、
或いは無意識にそう仕向くように働いてしまった意識のタマモノであって、
そういうものを旅の空気の特別な気分がそれ以上の何かとして錯覚させているだけなのでしょう。

  けどもまあ、発見は発見だ。
  そういう実感を感触としてつかめたら、それは紛れもなく自分の一生のうちの確かな手ごたえであるわけで。
  他の誰にもわかってもらえなかったとしてもね。

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四半世紀前に自分の中にしまいこんで忘れていたものと、
30年にわたって世の中の隙間で温め続けられてきたものと、
その二つのありようはダイレクトに繋がるものではないけれども……
輪郭の、ユルやかに重なる、あるいはふれあうものであるように感じる。

人間、生きてるとどーしたって変化するし、気持ちも移ろうけれども、
亡くなった方の気持ちというのは安定していて、それ以上移ろうことはない。
オイサンはなんか、そういう落ち着いてしまったものに込められた真実とかなしみに魅力を感じます。
移ろうことのない喜びと、もう移ろうことが出来ないかなしみ。
落ち着いてしまったがゆえに、二度と紐解かれることのない思い。

思い出すことの方が多い人生は、多分もうどこかで折り返した人生で、
少しずつ、大きな安定、大きな落ち着きに近付いている。
そのことに気付ける人は、多分そんなに多くない。
それまでの時間を使って、これまでため込んで来たものも使って、
最後に残す形として、ふさわしいものを組み立てていけばいいのかなー、などと思う。

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色即是空、などと物わかりのイイことを言ったけど。
そうした思いは、……マ形がないので色とも言えないけれども、空でもないだろう。

なんとなく、そんな思いのフタを開いてくれたように思われる向日葵ちゃんのことを、
この先もう少しよく知ってみようかなー、などと考えるオイサンでした。
「買いかぶり過ぎですわ」
と、控えめに笑うのだろうけど。
小諸、全然カンケイねえな。すみません。
ではまた。


……。



『ゆるゆり』の聖地は、富山なんだよな……(ゴクリ



 

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2016年4月26日 (火)

■いつの間にか、きみを。~桜と向日葵と思い出す人生のこと・小諸、十一回目~(2) -更新第1055回-


女性向けファッション誌が「これが男性ウケする彼女服!」とかいう
クソの役にも立たないような特集を組んでおられるから、
男衆はソレ読んで勉強して、女の子がそういう服装してたらすかさず誉めてあげるようにすれば
モテるんじゃね?

オイサンです。

ちなみに、そんな女性向けファッション誌を見て
「なるほど、これは絢辻さんに似合いそうだな……こっちは西住どの向きだな。
 こっちは宮ちゃんに合いそうだ……」

と突然二次元ファッションショーを開催するのが私です。

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サテ、ひまでひまでしょうがないアラフォー(そんなことはありませんよ)が
暇に任せて訪れた11回目の小諸探訪記。
今回その2回目。
まさかそんな、一人2次元ファッションショーをパリコレ並みの規模で開催できるオイサンの妄想力が、
こんなところで現実世界にひずみを生み出すだなんて……
ヒト様に迷惑をかけるような子にだけは育てなかったつもりなのに……!!

小諸について、花盛り・ひと盛りの懐古園を一回りし、
一服ついた辺りからの続きです。



■グレイスランドホテルというゆる宿
ところで、今回は初めてのお宿を使ってみた。名をグレイスランドホテルという。

今回はゆっくりするのが最大目的だったから、宿が取れなければ行くつもりはなかったのだ。
書いてきた通り、時期は花の見ごろであり、
小諸にとってマキシマムな書き入れ時とあって、お宿にもなかなか空きが出なかったのだが、
それが金曜の深夜、
オシゴトを終えて帰ってきたときにwebを覗いたら運よくひと部屋だけ空いていたのが、
このグレイスランドホテルだった。

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  ……つまり前日の夜中に(厳密には当日)行くコトを決めたワケだ。
  宿を見つけて一時間足らずで、電車と、大体の行動プランも決めた。

デその、グレイスランドホテル。
……良いお宿でしたよ?
エントランスをくぐったらフロントの明かりは落ちていて人もいない。
そこへ背後から、もじゃもじゃ頭にアーミー風ジャケットを羽織ったラフなお兄さんが現れた。

  今にして思えばアレは、
  『軽井沢シンドローム』の主人公、耕平ちゃんリスペクトだったのではあるまいか……。




チェックインはまだ出来ないというから、荷物だけ預かってもらって鍵をもらう。
鍵は持って出て良いシステム。
支配人(推定)の身なりといい、飄々とした語り口といい、この時点で
「……この宿、ちょっと曲者臭がするな……」
と思ってはいたのだけれども、翌日、小諸を去る間際におみやげのみやさかさんとした会話で、
その予感は確信に変わった。


  お母さん「今回は、また日帰り?」
  オイサン「いえ、一泊で。たまたま宿が取れたんで。
       線路沿いの、ちょっと駅から離れた……グレイスランドホテルっていう」

  お母さん「ああ、あのゆるゆるのw? 電 気 つ い て た ?


あなたが言うのか! それはなかなかだな!(色々と失礼)
あと電気は消えてました!

お母さんから話を聞くと、まあ色々とユルいお話が出てきたのだけれども、
どれをとっても可愛らしいもので実害めいたものは特にないっぽい。
ただ……なるほど、確かにユルいのだねw
オイサンの滞在中は困ったことなんか何もなかったし、お値段はお安いしで良いことづくめでした。

  3、4年前までは営業してるかどうかさだかでないような状態だったらしいのだけど、
  じゃらんやら楽天やらに登録してからはお客の入りも良く、
  随分キレイになったらしい。いいじゃないの。
  ただ、まだ壁紙が貼られてない部屋があるとか、駐車場が暗いとか、あったりはするらしい。
  マそんなの別にいいんじゃね。
  オイサン、「壁に穴開いてるから」っていう理由で2000円の部屋に泊めてもらったコトあるぜ。

もじゃもじゃアーミーの支配人(推定)も、ものごっつフランクで肩ひじ張らないユルさの好人物。
話すお声がとても良く、もてなしも、フランクだけどおさえるところを押さえていくので必要十分である。
無闇に丁寧なばかりなのより全然いいよ。オイサンは好きだなー。

あと、屋上(フロントで頼めば上げてくれます)からの眺めが大変良いので、
そこをウリにしたらいいのにねー、なんて、みやさかのお母さんとも話しました(話しすぎw)。

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グレイスランドホテルさんの屋上からの眺め3連発。ホント良い眺めですよ。



■忘れた歌を思い出すまでのこと~飯綱山にて
そうして懐古園をまわり終えたら、もう行く先がなくなってしまった。
こっから先、なにも決まってない。
とりあえず考えナシに、いちばん静かで、いちばん人の少ない道の方へと足を向けた。



……。



ここらでヒトツ、意味の分からない話をしようと思う。
ていうか、若干キモい話をしようと思う。キモい話なので、よく聞いて欲しい。



今回の小諸で、歌をひとつ思い出した。



小野正利さんの『いつのまにか君を』という、何かアニメのエンディングでかかっていた曲で、
聞いたのは高校生の頃だから、もう四半世紀近く前に聞いてそれきりになっていた歌だった。


 ▼小野正利 いつのまにか君を
 

  番組そのものも実は見たことがないのだけど、当時のアニラジで聴いて知った。
  あとで調べたところ『ママはぽよぽよザウルスがお好き』という、
  子育てマンガのアニメだった。

それを、二日目の朝に、飯綱山の山頂で思い出した。
まあ小諸とは何の関係もない歌なので、「なんでやねん」という感じなのだが。

そもそも今回、飯綱山はまったく行き先に組み込んでいなかったのを、
そう言えばあの山のてっぺんにポツンと一本桜の木があった、
春にここを訪れたら、浅間山をごく近くに臨む景観とあいまって、さぞかし趣があることだろう、と……
初めて登った日に思ったことを、日も傾き始めた頃になって思い出してしまったのだ。
懐古園を出、御牧ヶ原の梺に横たわる千曲川と、その手前に広がる田園をながめて
ひと息ついたときだった。


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正直、失敗したと思った。



どうして忘れていたのか……あの日空は晴れ晴れとしていて、
「春にここへ来たらキレイだろうなあ、人も多いだろうけど」
と、くやしいくらいに思ったはずなのだが。
なんなら「春こそ飯綱山」くらいに、その時は思っていたというのに。

しかし今のこの時間、ここから田園地帯を抜けてダムを巡った上で飯綱山へ向かうのはおよそ現実的でなかったし、
向かえばなに一つノンビリは出来ない。スパルタンコースまっしぐらだ。
翌日は朝から雨の予報だったから、何かを見て回れるつもりでいなかった。
朝ゴハンを食べたら、さっさと引き上げるくらいのつもりでいたのである。



失敗したかなあ。
どうも、かなり気の抜けた顔をして呻いていたらしい。
隣で背筋をしゃんと伸ばしていた向日葵ちゃんが「どうしたんですの」、と……



……ああそうそう、言ってなかったけど、この日は
向日葵ちゃんが一緒だったんです。
『ゆるゆり』古谷向日葵ちゃん

「え、どういうこと?」とか聞かれても困る。なんとなく一緒だったんです。小諸に着く辺りから、ずっと。





不思議なモンで、自分はそんな『ゆるゆり』に精通してるつもりはないし、
そもそもここは小諸であって、『ゆるゆり』(3期)の主な舞台であるらしい富山ではない。

懐古園で人と桜漬けになったあと、急に独り静かな場所に出てきたオイサンの脳が、
どこで何の回路が繋がったのか勝手につれてきてしまったらしい。
にしても、なぜ『ゆるゆり』で、そしてよりによって向日葵ちゃんだったのか……。
まあ連れて来てしまったものは仕方がない。
その向日葵ちゃんが、


 「それでしたら、明日の空もよう次第で行ってみれば良いんではないですの?
  せっかく連れて来て頂いたんですから、私も見てみたいですし」



というから、明日朝の天気を見て、電車の時間を考えてみることにしようという気になった。

……そんな経緯(どんな経緯だ)
今回の旅では、帰るまで向日葵ちゃんと一緒だったのです。

田園地帯を巡り、ダムへの小道を抜け、
気ちがいじみた坂を上る途中で枝垂れ桜と喇叭水仙に目を奪われた。

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日中は汗ばむほど暖かかったのに、日が落ちるにつれて高地の冷えを取り戻してくる空気に肩を震わせ、
そば七さんで温かいそばをすすった。
シメはいつもの自家焙煎珈琲こもろさんに逃げ込んで、
『なつまち』のホワイトデー企画で期間限定販売していた檸檬パイを食べたのだった。

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  キモいだろう?
  ……まあこれしきの事でヒいてはいけない。
  これくらいのことは、オタクだったら誰しも一度や二度、経験しているのだ(?)。

  尚、最後の珈琲こもろさんには、オイサンに負けず劣らず! なご同輩がいて、
  背丈60㎝(間違っても「全高」などと言ってはいけない)ほどはおありになる美人のドールを、
  テーブルに腰かけさせておられた。
  ボクにはまだ帰れる場所がある……こんなに嬉しいことはない!



時間はそこから、2日目・日曜の朝に飛ぶ。



飯綱山へは行くことにした。

向日葵ちゃんに言われたのもあったし、
夜の珈琲こもろさんで、檸檬センパイのパイパイのような檸檬パイをprprしながら
「せっかく来たんだから、ねえ。ゆっくりしていったら」
と、いつもの飄々とした声で言ってもらえたことも後押しをした。

6時頃、目を覚ますと、カーテンの隙間から差す光が思ったより明るい。
空は薄雲がかかっているものの、まだ雨の気配はない。
明るく晴れることは期待できないが、予報や雲の動きからも7時頃まではもつようだし、
降るにしても、肌をさらっと撫でられる程度で済みそうだ。
屋上へ様子見に出てみれば、南東方向には晴れ間も覗いていた。

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  ※肝心の飯綱山は小諸市街から見て北東である。

特段のドラマはない。理由もない。

飯綱山は町から離れて遠いが、残念なことに上信越道が近くを走っているため
そのたたずまいほどの落ち着きはない。
しかしその朝は、ずっと静かな飯綱山だった。
早い時間のせいで、走るクルマの量が増える前だったからだろう。
他はいつもと同じ、飯綱山だ。町が見下ろせて、木が有り、草が茂り、山がちかい。

つまらない爆笑ジョークをはげみに、汗をこぼして登る。
曲がりなりにも山である。朝のジョギング代わりにはちょうどいい。
静かだから、これまでも変わらずそこにあったはずのものの声が聞こえてくるようで、
なんてことのない岩の佇まいも、山に憧れでもあるかのように見えてくる。

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そんな目に見えない趣の、何がスイッチになったのだろうか。

カメラの液晶を覗きながら、うろ覚えの歌をぽろぽろと口ずさんでいた。
ハテ、これは何の歌だったかな。随分むかしの歌だったように思う。
長いこと聴いてもいない、口ずさんでもいない歌が急にこうして甦ってくることには、
なにか意味やきっかけがあるのだろうか。

  以前にも、飯能の川の畔を行きながら『YAWARA!』のエンディングが思い出されたり、
  休みに仕事に出た帰り、谷山浩子さんの「うさぎ」が口先によみがえったりした経験はあるので
  さほど不思議には思わなかったけれど。

「なんの歌ですのw?」

向日葵ちゃん(脳内)も気に入ったようだ。
少し離れたところで木々の枝や花を気にしながら、節だけまねて鼻歌に変えている。
うーーーん……思い出せない。帰ったら調べてみよう。

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これまで然して意識しても来なかった向日葵ちゃんが今日ついてきたことと、
今日まで思い出しもしなかったこの歌が口をついたこととは、何か関係があるのだろうか……もしかすると、
向日葵ちゃんとこの歌は、のうみそのどこか近い部屋にしまい込んであったのかもしれない。
何かの拍子にいちどきに蓋が開いて、そこから一緒に転がり出たのかもしれない……。

  「そうですかしら? ただ私、櫻子とずっと一緒にいますから……
   自分がここへ連れてこられたのは、桜に引きずられて、呼ばれただけのような気がしてますわ」

なかなか粋なことを言う。君は本当に中学一年生かね。

……などというのは、ただのアラフォーアニオタのクッソ気色悪い妄想話なのだけど、
この歌を思い出せたことや、こういう気分に巡り会えただけでも
今回小諸に来た意味は十分にあったと思える……オイサンももう四十だから、
これから先の人生では、案外、新しいものを拾い集めるよりも、
忘れてしまったことを思い出しながら過ごす時間の方が少しずつ長くなってくるのかも知れないなあ。

もともと、昔の物やことを捨てるのが上手でないのでね。

成田美名子先生が言っていた、「人生には向きを変える瞬間がある」、
誕生を発射台にしてその勢いで歩いていたのが、
あるとき、その推力は死が引き寄せるチカラに由来するものに取って変わられている、と。

今日このときがその瞬間だったのかどうかはあとになるまでわからない……のか、
もしかしたら「自分で決めていい」ことなのかも知れない。

別にね。
キモい自慢でこんな話を書いたワケではないのよ。
これは大切な瞬間だったかもしれない、
そのとき傍にいたのは誰だったのか、
それを書き残しておきたかったのです。
それを残すことにも、大した意味はないのかもしれないけども。

  イヤイヤ、隣には、ジッサイ誰もおらへんかったで!(真実の声

しかしありがたいもので、家に帰ってiTunesで調べたら、この曲もちゃんと売られていた。
すこし前までだったら、CD屋で探すかブックオフを巡るかしなければならなかったところだ。
しかもこうして買われたものの利益がちゃんとご本人のところまで返るのだ(ろう)から、
ブックオフで中古を買うのとはまたありがたみが違う。
どのくらいの利幅があるのか知らないけど、良い時代だとは思う。

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……といったところで今回も続くのです。
最終回の次回は、意外でも何でもない、超定番のあの人が、
いつも通り、オイサンの小諸旅の最後を盛り上げます。
そう、おみやげのみやさかのお母さんです(バラした)。

ではまた。
オイサンでした。



 

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2016年4月25日 (月)

■いつの間にか、きみを。~桜と向日葵と「思い出す」人生のこと・小諸、十一回目~(1) -更新第1054回-


『風月は百代の過客にして、散り咲く花もまた旅人なり』……。


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そんな歌があったかどうか、
見事に枝垂れた桜の枝の向こうで、空が今にも雨の幕を引こうとしているから、
彼女はいまどんな顔をしているだろうと思って振り返ったら、
となりの枝を愛でていたその横顔がずいぶん昔に聞いたままになっていた歌をさえずったものだから、
ぼくはもうたまらず、そのまま気を失いそうになってしまった。



オイサンです。



小諸に行ってきた(3か月ぶり・11回目)。
1泊2日、土曜の昼すぎに着いて、日曜の昼前に帰るような日程。

目的は……特にない。強いて言うなら、ノンビリしに。
マ結果から言えばノンビリは失敗。
うーむ。ノンビリするのって難しい……。どうしても、ウロウロ、ソワソワしてしまうね……。

オマケの小さな目的イベントはいくつか。

 ・懐古園の桜を見に行く。丁度さかりっぽい。
 ・おみやげのみやさかさんがフィーチャーされた、新しいポスターを見に行く。
 ・小山田いく先生がお亡くなりになったので、現地に悼みに行く。


あとはいつもの通り、
キャンディライトでゴハンを食べたり、
駅前のそば屋さんできざみそばを食べたり、
そば七さんでみぞれを食べたり、
珈琲こもろさんでお茶したり。

  そりゃ24時間もない滞在時間にこれだけ詰め込んだらノンビリなんか出来ないね。
  もっとこう、足を止めて……なんでもない眺めをただ眺めるだけの時間を持ちたかったのだけど、
  うまくいかなかった。
  だめだねえ、あくせくしちゃって。現代人だねえ。毎回そうなんだよねえ。
  こないだの秦野歩きもそうだったし。
  誰かとなりで、どうどう落ち着けと手綱を引いてくれる人が要る……のかもなあ。

  どうでもいいけど、今回巡った数件のお店のうち、
  半分以上で顔を覚えられているのはさすがにいかがなものだろう。
  特に、停車場ガーデンのおかみさんは、何も言う前から
  「水筒は? 2杯分でいい?」と、ぶっ込んでくるからビックリします。

  ※いつも散歩を始める前に、停車場ガーデンさんでコーヒー2杯分、マグボトルに入れてもらうのです。


▼小諸11回目の地図




■春・満席の小諸へ
昼過ぎ、小諸に到着して、荷物を宿に置き、まずは腹ごしらえでキャンディライトへ向かう。

  この「宿」が今回新しいところで、ちょっと面白かったんだけど、その話はまたあとで。

キャンディライト、かつてないくらい席が埋まっていた。
やはり桜がさかりで、人出が多いからだろうか。
マスターと奥さんからも「桜見に来たの?」と尋ねられ、お客もあとからあとからやってくる。
ムウ、大繁盛である。小諸のくせに。

だもんで居座っても申し訳なく、Aランチのトンカツを食べてサクサク席を空ける。
やはりこのお店は揚げ物が抜きんでて美味しい。
お味噌汁に小鉢も、いつもの素朴なのにしっかりしたお味で満足。

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……そして毎度のごとく、
オイサンより後からやってきた明らかにお客のお婆さん(自分もしょうが焼きかなんか食っている)が、
その更に後からやってきたカップルのお客に、
なぜか食べる手を止めて水出しをしていて、カップル客の方は見るからに戸惑っている。
相変わらずだが、どういう仕組みになっているんだ、この店は。この町は。



■懐古園~桜、最前線
駅前広場から三の門へつづく地下道をくぐると……御門の向こうが人であふれかえっていた。
う、うおう……。

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キャンディライトで得た「懐古園はすごい人だった」という情報の通りだが、
これもまたにわかに信じがたい、初めて見る光景だ。
私の知ってる懐古園は半径5m以内に人がいない世界だぞ。

駅前の広場からしてウカレ気味で人が多く、停車場ガーデンさんも満席の行列であった。
「駅前が一番静か」でおなじみ、こもろのほうそくが……み だ れ る !!
マ今回は早朝でなく、午後2時からの参戦だったので、時間帯のせいも多少あるであろう。
都心の雑踏の半分以下とはいえ、小諸にこれほど人がいるのを見るのは初めてだ。

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しかし人以上に、花、花、花。
タケちゃんマンではない。
花の洪水である。
冬が主戦場のオイサンには、目が痛くなるほどの淡いピンクのホリゾント。
どっちを向いても桜、どこまで行っても桜。



「花見なんて、行っても酒を飲んでばかりで花なんて見やしない」



というテンプレがあるが、ここではそれすら通じない。
だって360°、ドコ見ても桜なんだもん。
目を逸らしても「オイお前! ちゃんと見ろ!」と視界に割り込んでくるオレオレぶりです。
花見とも違う花見せられという新しいイベントか、なんなら拷問であるかもしれない。
なるほどだとすれば、ここは一種の刑場であったのやもしれぬ(ざんしんな歴史解釈)。

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懐古園は、城址ではあるけど城郭はなく、神社や天守閣跡の土台などが残っているだけのため、
敷地そのものはこぢんまりとしてるが高低差があり、広がりがある。
上から下を、下から上をと、眺めにバリエーションが豊富で飽きが来ない。
オイサンは冬枯れの木の陰が石垣に映るような季節ばかり見てきたので、こういう派手な眺めは新鮮だ。

「ここが人と桜の激戦区……桜最前線なんだな」と実感した。

桜が……有史以来、人類に見世物にされ続けてきた桜が、とうとう人類に対し牙をむいた。
あらゆる空間は桜に支配され、人類は桜に浸食されて滅ぶに違いない……
嗚呼、花の命が短くて良かった。



こうして、懐古園をひと回りした。



となり町の上田を盛り上げている大河ドラマ『真田丸』の余波か、
甲冑姿の武者が抹茶とお菓子をふるまってくれる、メイドカフェならぬ甲冑野点(のだて)をやっていたり、
その甲冑ヤロウどもと記念写真を撮れるイベントもあったりした。

さすがにオイサンは記念写真は撮らなかったが、野点のお茶とお菓子は頂いた。美味。
万が一、あれが甲冑ヤロウAチームだけでなく、
男性向けの十二単の美人さん忍風乱れくノ一を取り揃えていたなら、
さしものオイサンでも記念写真のみならず、そのアフター的なサービスまでご利用していた危険はあった。

  ちなみにグレイスランドホテルでは、デリヘル的なサービスはご利用いただけません
  (と、ご丁寧にエレベーターに貼り紙があった)。

なお、黒人のお兄さんが超嬉しそうに甲冑男子と記念写真撮ってて微笑ましかった。
海外に行ったらあのくらい無邪気になってもいいのかもね。
微笑ましいもんな。
国に帰ったら、どんな風に友だちに自慢するんだろうか。

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オイサンは桜という花や木が世間サマほど好きではないし、
花見というイベントも得意ではないので、
「桜を見に来た」などというのは、実はただの使い勝手のいい口実でしかなかったのであるが、
今年は例年にくらべ、よく桜を愛でているように自分でも思う。

仕事の行き帰りに見る四ツ谷~市ヶ谷の川沿いの並木や、
先日の秦野で見たものや、
今回の小諸でも、懐古園の中、乙のあたり、ダムのそば、飯綱山、まちの中、
と至る所に桜が咲いていたけれど、

そんな中でも、この日見た大手門のそばでに咲いていた八重紅枝垂れの花が、
色といい、大きさといい、形といい、今年見た中で一番美しかったと思う。

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……けど、
それが来年もそうなのかと言われればそんなことはないのだろう。
来年はきっと違う場所の花が一番美しかったりするのだろう。
月日は百代の過客にして、行き交う年もまた云々カンヌン……
とは松っちゃん(松尾芭蕉)の有名な言葉だけれども、花も同じだなー、などと。

二日目の日曜日、そぼ降る小雨を八重紅枝垂れ枝でしのぎながらしみじみ感じ入る自分がいた。
色即是空……
色、すなわち形あるものは是れみな空であり、うつろい留まらないものである、
とはまあ、よく言ったものである。

ちなみにこの花は、いわゆるポピュラーな桜ではなく、
小諸固有の「小諸八重紅枝垂れ」という超必殺技ライクなお名前の木です。
かわいいよね。

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……毎度のことながら、長くなってきたので続きます。
全3回を予定!
2回目になる次回は……なんと! 意外な「あの人」が登場しちゃいますよ~っ!
(↑意外過ぎて自分でもちょっとどうかと思いつつテンションおかしくなってる)



 

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2016年4月21日 (木)

■ミラクルガールズフェスティバルおじさん、秦野を歩く。 -更新第1053回-

……っていう記事タイトルを打とうとしたら、
しょっぱなから「スクールガールズ」と打ってしまった。
こんばんは、ミラクルガールズフェスティバルおじさんのオイサンです。

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『スクールガールストライカーズ』
『スクールアイドルフェスティバル』もやったことねえよ!
しかし似たようなタイトルばっかりだな。
最近のゲーム屋は「スクール」か「ガール」がないとゲーム作れねえのか! ← お前が言うな。

『ミラクルスクールアイドルガールストラーカーズフェスティバル』作れば全部OKじゃね? ← 何がだ



■ミラクルガールズフェスティバルおじさん、秦野を征く。
そんなミラクルガールズフェスティバルおじさんであるオイサンが、
秦野は丹沢の山すそから、相模湾……西湘地区ってことになるんですかね、
その辺まで歩いてきました。大体、12㎞チョイの道のり。
勿論『ミラクルガールズフェスティバル』は何の関係もありません。

キッカケと目的は、
何か面白いものがないかなー? と、GoogleMapを眺めていたところ、
神奈川県の内陸部に、水辺に囲まれた「厳島神社」なるものが見つかったので、
それを見に行ってみようかと。


▼地図 


その辺りには、電車ではまったく近付けない。
山側を走る小田急線と、海側を走る東海道線のちょーーーど中間地点にあり、
どちらの最寄駅からでも6㎞くらいある。
二つの路線はバスで結ばれてはいるけれど、
時間にしばられてあくせくしたり無闇に待たされたりするのもイヤなので、
今回は全行程歩くことにした。

  当初は、小田急の秦野駅か東海道線の二宮駅から目的地へ向かい、
  折り返して元の駅に帰るつもりでいたのだが、
  歩き切ってしまっても距離的には同じことだと分かったので突っ切ってしまうことにした。

  尚、もう一つ似たような計画として
  「国府津から曽我丘陵を伝って不動山を上り、そのまま秦野まで歩く」
  というコースがある。
  距離は大して変わらないが山を登る分よりハードになるだろう。


静けさを求めて神奈川の田舎を歩いてみたつもりなのだけど……
どこへ行っても、道路や空が低くうなっている気がする。

たしかに田舎ではあったが……否、田舎というか、ただ「不便な土地」と言った方がいいだろうか。
厳島神社のある中井町あたりはちょっと素朴さはあったけど、
なんというか、ただただ、「都会から便利さを取り払った土地」という印象だった。
都会のデメリットだけが残ったところに田舎のデメリットがトッピングされたような……。

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「田舎だから素朴、素朴だからいい」みたいなコト言うとまた色々難が出てくるけども。
「田舎」と「不便な町」の境目がどこにあるかといえば、
その不便さを、人々がどのくらい地のものとして諦め受け容れているかどうか、
不便であることをどのくらいギリギリの意識の外に置けているかで分かたれる気がいたします。
素朴さとは、それが選択的であったにせよ、そうでなかったにせよ、
諦めを潔く受け容れた先に生まれるものである……ような気がいたしますです。

マともかくそんな目的で、神奈川の片田舎に静けさを求め、
あい間あい間、ちょこちょこ写真など撮りつつブラブラ歩いた。

途中、結構な数の寺社を見かけたのだけど、うち3つの神社でお祭りをやっていて、
最後にたどり着いた二宮の駅前でもやっていた。そういう時期なのだろうか。

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……ああそうだ、写真には残ってないけど、ヒトツ、面白い風景を目撃した。



お祭りをやっていた神社のウチの一つで、
境内の方では出店やらお囃子やらの準備が進められていたのだけど、
それを抜けて少し外れた裏手から車道の方へ出て行ったら……
黒塗りピカピカの外車のそばで、
絵にかいたようなチンピラシャツのお兄さんと、
豊満な体型のスキンヘッドの男性
お祭りに関係あるのか、無関係なのか……
金銭の授受をなすっておられるのが認められた。

別に疾しいモノだとは思いませんが……なんつーかこう、
祭りの陰で、あまりにベタなお二人とシチュエーションだったもんですから。
オイサン嬉しくなっちゃって、思わず
「疲れからか、追突してしまったんだろうかw!?」
とか思ってしまttおや誰か来たようだ。



■厳島湿性公園
ここはなかなか、不可思議な光景の場所だった。面白かった。
すり鉢状の窪地にあり、高い場所から見下ろすとちょっとした魔法陣みたいで、
その中心に神社がある、というのがまた何ともそそります。

  ▼厳島湿性公園
  https://www.town.nakai.kanagawa.jp/forms/info/info.aspx?info_id=3710


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神社を中心に池が配され、その周辺には芝生の広場。
普通の公園といえばそうだけど、ちょっと他に見覚えのない場所だった。
独特。
行ってみて良かった。面白かった。
夏にはホタルも飛ぶそうな。

目当ての厳島神社……厳島湿性公園以外では、特に面白い風景には行き当たらなかった。
丹沢の山と桜がキレイに見えたのと、
二宮の町に入ってから、川沿いに咲いていた桜がやはり美しかったくらいだ。
厳島神社を出てから海までは。葛川の小さな流れがずっと寄り添っていて
それが良いアクセントになってはいた。


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■そして海へ。
最終的にはJR東海道線の二宮駅まで歩いた。
昼ゴハンは、駅近くにあったお店で頂いたのだが、
「山小屋」なんていうパワフルげな店の名前(二宮駅自体は海沿いだが)だったので、
ゴハンもそれに見合ったパワフル系だと期待したが思ったよりも上品な感じでチョイ拍子抜けだった。
あとは、一応「山裾から海まで歩いた!」って言いたいがためだけに、
海の見えるところまでワザワザ行って写真撮ってきました。何をやってるんだ。

時間的には、ゴハンや休憩時間含めて4時間半程度。
歩いていたのは3時間半程度だと思われる。

うーん……近場で、静かで、手ごろにのんびりボンヤリできる場所が欲しいなあ。
屋外でひと気が無くて、広々したところ。
どーにかならぬものか。

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■ミラクルガールズフェスティバルおじさんの日常
せっかくだから『ミラクルガールズフェスティバル』の話もするか。
どうもこんばんは、ミラクルガールズフェスティバルおじさんです。
なんかずっと『ミラクルガールズフェスティバル』やってます。

 ▼ミラクルガールズフェスティバル のうりん! アニメ比較
 


説明しよう!
オイサンは、昼間はありふれたサラリーマンに身をやつして働いているが、
夜になると小田急ロマンスカーが放つロマンス力(ぢから)を吸収し、
ミラクルガールズフェスティバルおじさんへと、変身を完了するのだ!

  お前は知ってるよなあ……?
  箱根のロマンスカーには、ミラクルガールズフェスティバルおじさんが出る。
  なお、ときどき普通の急行や快速急行にも出る。

  ちなみに上で書いた秦野行きの帰り道、
  藤沢からの電車の中でやってたらとなりに座ってたお姉さんの視線が若干アツかった
  クックック、なんだいお嬢ちゃん、アンタも俺の指で踊らされたいのかい?
  だったらきなよ。アツい夜を過ごそうじゃないか。

  あと最近、電車乗りながらプレイしててチョーシいい時に目的の駅に着きそうになると、
  「誰か飛び込んで電車止めろ!! 早く!
            間に合わなくなっても知らんぞー!!」

  とか、
  「……マひと駅ふた駅乗り過ごすのは致し方ナシかな……」
  とか、考えてしまうのは良くないクセですか??



■進捗どうでしょう
ツアーモードは当然ごく普通に終わらせて
(マつってもごく普通に2周しただけで、高難度なコトは特にやってはおらず)、
それを終わらせてからは全楽曲のビンゴ(※)を埋めたカンジ。
いまは、FULLでない楽曲全部をHARDレベル・MIRACLE評価で終われるよう挑戦中です。

  ※各曲に設定された3×3=9個の特定の条件を満たしてマスを埋めていって、
   タテヨコナナメの列が埋まると、
   高難度で遊べるようになったり、その曲のFULLコーラスがプレイ出来るようになったりする。


ウーム。
始めた当初は、
「リズムゲーム苦手な自分は多分、NORMALレベルをやり切るだけで精いっぱいだろうなあ」
などと思っていたのだけど。
マやってみればHARDもそんなに大して難しいことではないな、と思えてきた。
最近ではむしろ、NORMALの方が譜面の密度が低くて叩いててあんまりキモチ良くないとか、
スカスカ過ぎて却ってリズム感を保てないとか感じている。



■好きな曲
このソフトを買った動機は、
『ごちうさ』曲が収録されていたからと、
『WakeUp,Girls』の存在があまりに面白かったから、
あとはオマケで『てさ部』がいたから、みたいなところがあったんだけど、
気が付けば、いま一番回数打ってるのは『未確認で進行形』の曲だし、
他にも完全にノーマークだった
『ビビオペ』の「Vivid Shining Sky」、
『きんモザ』の「Jumping」、
『のうりん』の「コードレス照れphone」
などを大喜びで打ってるオイサンです。

存在感薄いのは……『アルペジオ』、『GoGo575』かのう。個人的に。

肝心の『ごちうさ』の曲は、一時期興味がうすれていたのだけど、最近またちょっと波がぶり返してきている。
この辺の相性の良い曲は、FULLでもHARDをMIRACLE評価でクリアできるんじゃないか、
というところまで来ている。楽しい。

これをプレイして『未確認で進行形』のキャラクターや曲の良さを思い出して、
狙い澄ましたタイミングで発売されたBD-BOXは買ってしまったし
(放映中からクオリティの高いアニメだと思って気にしてはいた)、
上で書いたような、ノーチェックだった楽曲の存在にも気付けたしで、
出演作品にとってはなかなか存在意義の高いソフトになっているのではなかろうか。



■リズム感
そもそもリズムゲームに苦手意識があって、
NORMALレベルだけでも楽しく遊んで、カワイイPVが見られたらいい、くらいに思っていたのだけども
やはり上手になってくると、いくらか欲が出てくるもので。
マ欲というか、ただ「どうせ楽しいなら、上手になった方がいい」くらいのことですが。

自分で言うのもなんだけど、別にリズム感が悪いワケではないと思っている。
……多分、だけど。悪いのかもしれないけど。
そもそも、自分のことを「リズム感が良い」「悪い」と思ってる方々は、
いつどういうタイミングで自分のリズム感の良さ・悪さを認識しているのだろうか。
オイサンも、カラオケ屋さんとかで、
「自分の歌はもしかして歌詞表示よりも速いかも??」
とか不安になることは多いし、
過去、『ドリクラ』のリズムゲームでイマイチ判定がよろしくなくて好きになれなかったこともあった
(リズムゲームの苦手意識も、大体このときの経験から来ている)のだけど、
それでもなんとなく「自分のリズム感が悪い」と思ったことはなかった。

「いや思えよ!!」

って言われそうだけど……。
でも『ドリクラ』のリズムゲームやっててよろしくない判定が出ても、
「明らかにオレの押すタイミングの方がリズム的にセンスいいだろ!!」
って思ってましたね。何なんだお前。
どーなんだろ。
オイサン、リズム感悪いんだろうか。

何にしても『ミラクルガールズフェスティバル』、
多分リズムゲーム的に、ことさら良く出来てるわけでも、豪勢なわけでもないと思うのだけど
(収録作品数とか、キャラモデルの出来的には良いものだと思うよ)、
とにかくFULLコーラス曲で遊べば1プレイでボタンを500も600も打たないとならないワケで、
なんかそれが妙に気分良くてやってます。嬉しい。



■体のバロメータ
しかし面白いもので、
ここまで調子の良し悪しがプレイに影響するものかな、と思うくらい、
体の状態が如実にプレイに表れてくる。

カラダの具合が悪い時にいいプレイが出来ないなんてのは、マ当たり前っちゃ当たり前のことなんだけど、
日々の疲労程度のことでもここまで顕著に差が出るんだ! ……と自分で感心してしまうほど、
自覚以上に、肉体的コンディションの影響を受ける。
ウケル~。  ← 言ってみただけ

  ちなみに、ここでいう「肉体的コンディションが良い」とは、
  「体調が整っている」、
  もっと具体的に言えば「休息が十分で、疲れが少ないとき」です。

例えば……曲の体感速度からして違ってくる。
聞こえ方がアカラサマにゆっくりになるワケではないけど、
ひとつひとつの音(音符)の中にたくさんのアクセスポイントが見えるというか、
音符一個分の時間が刻まれて見える。

オイサン音楽的知識や素養はサッパリなんでアレですが、
何分の何拍子とかあるじゃないですか、
アレによって音符一個分の時間って決まってたと思うんですけど、
具合のいい時は音符一個一個の長さの「刻み」が分かる。

フツーの時は、音符の前半・後半(なんならもう音符一個は一個!くらい)にしか認識できないのだけど、
調子がいいと、音符の中に4つとか8つとか、区切りがたくさん認識できるようになる。
そうなると、相対的に感じ方として、曲がゆっくりになったように「感じる」。
聞こえ方は同じですよ?
音符のどの辺を狙って押せばいいか、吸い込まれるように押すことが出来るようになる。
押し損じたら「あ、音符1/4分早かった」とか、ワカル。

逆に調子が下がってくると、今度は明らかに曲が「早く」感じられ始める。
こちらはホントに早く聞こえるからフシギ。
夜11時を回るとこれまた顕著で、自分ではそんなに疲れていない、眠くもないと思ってても、
テキメンにダメになってくる。

如実に疲れてくる・眠くなってくるともうひどくって、
次に押すボタンが何か目で見て分かっているのに、違うボタンを押してしまったり、平気でする。
●だと分かってるのに、▲を押してたりする。
不思議だねえ……。
何をしなきゃいけないか分かっているのに、
体の中で何かの線が混線しているように、違うことをしてしまうんですよ。
恐ろしいですね。

自動車の運転なんかでよく
「疲れたと分かったら運転をやめて休憩を」
って言うケド、アレはホントだな、って思った。
「分かってても操作を間違える」わけですからね。
テレビのニュースなんかでも、しょっちゅう老人の乗ったプリウスが、
ブレーキをアクセルを踏み間違えてコンビニに突っ込んでますけれども、プリウスが。
ええ、プリウスが、ですよ。
あれもきっと、こういうことの延長なんだと思います。プリウスとはいえ。
はあ、プリウス

そんなんで、『ミラクルガールズフェスティバル』をやりながら、
嗚呼これがゲームで、『ミラクルガールズフェスティバル』で良かった、
プリウスじゃなくて良かった、
コレがプリウスだったら、と思うとゾッとするわけです。

『ミラクルガールズフェスティバル』で良かった……。
イヤ良かあねえよ。
こっちだって一生懸命、FULLコンボ目指してやってんだよ。

「自分がどのくらい疲れている」とか、
「まだまだ大丈夫」とかいう自覚なんていい加減なもんなんだなあ、
事故なんて大概こんなときにおこるんだろうなあ、
などとヒシヒシと感じてしまうアラフォーであった。

睡眠をしっかりとった日のジョギング後なんかは、めっちょ調子がいい。
アドレナリンだかなんかが出てるんでしょう、いくらでも目も耳も判断もついてくる。
なんなら、分かってなくても必要なように押すことも出来る。
「調子がいい」っていうのは偉大なことだな、と思う。


その昔オイサンは、その日一日の調子を『F-ZERO』のMUTECITY-Ⅰのタイムとか、
『リッジレーサーRevolution』の中級コースのタイムで測ったりしていた時期があったワケですが、
今はそれが『ミラクルガールズフェスティバル』で測られている感じ。

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ミラクルまつり。



■そんな素敵な『ミラクルガールズフェスティバル』への要望
このゲームの各キャラクターの3Dモデルの出来は素晴らしく、
それだけでも見てて飽きないんだけど
(特に『のうりん!』のソロ曲での草壁さんのパフォーマンスは圧巻)
ビジュアルが、3Dモデルによるダンスばかりじゃなく、
作品本編のダイジェストPVみたいなものとか、
なんなら新作アニメPVが入っててくれたりすると嬉しかった。

モデルの良さとか再現度(作中でダンスシーンがあるものなんかはその再現度も)の高さは
素晴らしくいいんだけど……
ちょっとね、出てくるのが制服の女子ばっかりで、悪いコトしてるような気分になるときがある。
女子高とか女子中の文化祭と言うか、お遊戯会を覗き見してるよーな背徳感に苛まれるときが、たまにあるよ。

完全に考え過ぎ……なのかと言われれば、そうでもないのだと思う。

制作者のインタビューでも触れられていたのだが、
「ダンスの振り付けやモーションを、プロっぽくキレキレにならないように、
 ワザとちょっと簡単に、ちょっとたどたどしく」
味付けをしてあるのだという。
というのも、ゲームの設定が
「作品世界で歌やダンスのプロではない、フツーの女の子であるヒロインたちが、
 その素の姿のままステージに上がっている」
というものなので、キレキレ過ぎるのはおかしいだろう、という演出意図からのこだわりなのだそうな
(多分、『WakeUp,Girls』や『のうりん!』の子は除くと思われる)。

その、拙さの部分がその、より「お遊戯会の覗き見」感を高めていて……
ざ、罪悪感がある……。
あのね、ダンスがたどたどしいならカメラワークでフォローすればいいのに、
なぜかカメラワークまで素人くさかったりするのよ。

まあその背徳感・罪悪感はゴホウビみたいなモンなんでいいんですけども。



■次回作で入って欲しい作品
しかしこのゲーム、謎なのはどういう基準で収録作品を選んでいるか、ということなのだけれども。
ともかく、もしも次回作があるなら


『これはゾンビですか?』『のんのんびより』『ゆゆ式』
『少年ハリウッド』『ヤマノススメ』『戦国コレクション』


あたりを是非収録して欲しい……と書いて、ちょっとピンと来た。

そうか、主題歌とか収録曲を「作品のキャラクターが歌っている」ことがまず第一なのではなかろうかな。
確かに、上で書いた中では『これゾン』『のんのんびより』(OP)は、
キャラクターは歌ってないもんな。
なるほど。
てか『少年ハリウッド』は客層が違いすぎるかもしれないけど。好きなんだよ。



……マそんなんでね。



好きになると長いオイサンですので、まだもうしばらく、この奇跡の少女祭りに浸りつつ、
夜の小田急を彩るあだ花でいようと思います。
見かけたら声をかけて下さい。
「ゲームしてんの見て分かんだろ!! 邪魔すんじゃねえ!!」
ってキレますから(理不尽)。

皆さんも疲れたら無理をせず、一息ついてから行動に移した方が
良い結果が得られると思いますよ。
あとプリウスを見たら車間距離を取った方がよいと思います。


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「まあ落ち着け、座れよ」


ミラクルガールズフェスティバルおじさんでした。


 

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2016年4月 5日 (火)

■気になる掛川・千反田邸訪問~加茂荘花菖蒲園 -更新第1052回-

とある土曜日の夜、千反田さんに呼ばれた(ような気がした)


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千反田さんと言えば他ならぬ、豪農で有名なあの千反田家のご令嬢、千反田えるさんだ。

そのとき既に夜も11時を回っていたが、
明日、家に来て欲しいと言(われているよ)(な気がした)のだ。

なにぶん急だったので、お誘いを受けたものか、
千反田邸の場所もさだかではなく気楽に行って帰ってこられるものか分からず悩んだのだが、
調べてみると、家から3時間とかからず着けるようだ。



■千反田邸へ。
まず小田原まで出て、そこから新幹線で1時間強で掛川に着く。
掛川からは天竜浜名湖線というローカル路線に乗り換えて20分ほどで最寄駅の原田へ。
駅から15分も歩けば千反田さんの家に着くらしい。

これであれば、明日の早朝に出れば午前中には話の一つもして帰ってこられるとわかり、
お話をお受けして予定を組み、眠りについた。

翌朝、日も昇らぬうちから電車に揺られ、7時前には小田原へ着いていた。
新幹線のきっぷは駅ねっとで購入済みだったのだが、
そのきっぷ受け取ることの出来る券売機がどうも新幹線の小田原口に見当たらない。
駅員に尋ねたところ
駅ねっとはJR東日本のサービスなので、東海道線の窓口へ行って欲しい」
と教えられ、慌てて戻った。
なるほど、少し時間に余裕を持っておいて良かった。



■掛川、まどろみの町
小田原からこだまで小一時間、8時過ぎに掛川に着く。
途中、雨がパラパラと窓を叩き始めたときには慌てた。
昨晩の予報で天気は良いといっていたから、傘など持って来ていない!
それ以後は、特に降られることはなかったので助かった。

掛川駅のまわりも、少しくらいは寄り道して見て回ろうと、次の電車まで一時間ほど空けてある。


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……が、特に見る物もなかった。



千反田さんからは10時頃に着くよう言われ(た気がし)ていて、
昼過ぎまではいることになるだろうと思うから、何か軽くつまめるお土産があった方が良いだろう。
そう考えて、途中で調達していこうと考えていたのだが……
掛川の町は、まだまだまどろみの中だった。
曲がりなりにも新幹線の停まる駅である、
早開きのオサレブランジェリーの一軒くらいあるだろう……と考えたのが甘かった。

駅前に、ローソンが一軒だけあったのでそこで少しだけ食べ物を買っていく。

持て余し気味に駅前をうろついていると、駅前の広場のようなところに7、8人、
腰かけてコンビニコーヒーをすすったり、スマホをいじったりする人たちがいる。
なるほどここが掛川のハチ公前であるか。



■天浜線と原田のタコ焼き
乗り継いだ天竜浜名湖線――天浜線と略すらしい――は、なんとディーゼル路線だった。
一両編成で、整理券が出る。
ということは、無人駅も多いのだろう。
初めて北海道を訪れ、美瑛から旭川へ向かう富良野線に乗ったときのことが思い出される。
まさかここまで鄙びた場所だとは予想していなかった。
しかし乗客は多く、必要とされている路線らしいことはうかがわれた。

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なおこの路線、掛川から終着の新所原までは50分ほどで着くらしいので、
機会があったら最後まで揺られて踏破してみるのも楽しそうだ。
そのときは、帰りは東海道本線を使い、浜松から新幹線で戻れば良いだろう。

  ▼天竜浜名湖線
  http://www.tenhama.co.jp/station/
  webサイトもなかなか味わい深いセンスがある。

千反田邸の最寄である原田の駅までは約10分。案の定、無人駅だった。
その佇まいは、小諸のとなり、乙女駅を彷彿とさせる。

線路は山裾に沿うように走っており、駅が周囲よりほんの少し小高いところにある。
それで辺りを見合わすことができた。
と言っても、目に入るのは道と田畑、学校くらいのものだが。

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駅から下って道沿いに出ると、商店も何もない中に一軒、
赤いのれんのタコ焼き屋台が商っている。

店主はいかにも昔気質の、がっしりした壮年の男で、
そのまま『じゃりン子チエ』の世界から抜け出てきたような風体をしている。
さすがに関西弁は操らなかったが、浅黒く日焼けした肌に、剣道袴のような色のTシャツが男らしい。
年季の入ったナイロンののれんが風にはためく。
ちょうどこの前日、Twitterで知人とタコ焼きの話をしたばかりだったこともあって、
吸い込まれるように一つ所望した。
店主は

 「今日は早めに開けてて正解だった。いつもより1時間くらい早いよ」

と、読みの当たった嬉しさを隠さず笑った。
何か催事でもあるのだろうか? 
曰く、店は土日にしか開けないらしい。
毎年、近くにある大きな神社のお祭りの日には多くのお客がやってくるのだが、
そうして来てくれた客が味を覚えていて、休みには遠くから来てくれることもあるのだという。

紅しょうががたっぷり混ぜ込まれた生地のたこ焼きは十分に大きく熱々で、
味や香りだけではない、「タコ焼きを食べる」ことの喜びに満ち満ちていた。


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それをつつきながら、水がたまって春を待つ枯れた畑と
いまどき珍しい、プールが外から丸見えの中学校の間を抜けてゆけば、
やがて住宅と田畑が入り乱れる区域に入る。
空は薄い雲が垂れ込め、吹く風にはまだ十分な冬の水分を感じさせた。

道に起伏はない。
視界は広かった。

家々には垣はなく、道沿いを流れる川にも柵などない。
その代わりにではないが、土手に太く育った欅の枝からタイヤを吊るした即席の遊具が拵えられていて
奔放なたくましさがあった。
常暮らすまちの風景とは異界の趣きがある。
茂みから、低レベルモンスターの一匹も飛び出してきそうだ。
てってれー。



■加茂荘 花菖蒲園 花鳥園
千反田邸までもう一息、という橋の上で立ち止まって一服する。
河川敷のゲートボール場で元気な老人たちと、
小さな変電施設に生えた大きなメタセコイヤの樹がグレー基調の景色に彩りを添えていた。

そしてそこからはもう、千反田邸の、長い、白い壁が見えていた。

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田んぼの向こうにのびる長く白い壁と、静かなおごそかさを備えた瓦屋根を目指して歩いて行くと、
正面入り口らしき壁の切れ目の前に導かれる。
しかしここは入り口ではないらしい。
敷地の中を通りがかった年のいったご婦人に「入り口にお回りください」と案内されてしまった。


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約束の十時ほぼちょうどに着いたのだけれど、
門をくぐった先に広がる庭園には庭師が数名いるきりで、私の来訪を気に留める者もない。
庭園は時期が時期だけに花もなく、少しさみしいように思える。
なるほど、もう少し暖かくなって花が咲けば、見応えのある庭になるだろう。
冬の少しぶり返したような寒風の中、たくさんの鴨が羽の中に嘴をうずめて休んでいる。
私がそばを通っても、身じろぎしないふてぶてしい者もおれば、そそくさと歩き出して水に泳ぎだす者もある。

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しばらく庭園をふらついて、
なんとなく頃合いがこなれたのを見計らって母屋へと向かった。

母屋の入り口では、書生らしきメガネに天然パーマのイカニモな感じの若者
スマートフォンをいじりながら応対してくれた。
話し方がモゾモゾしていて非常に分かり辛いがここまでくるとある意味わかりやすく、
私のような人間としては好感すら感じる。
私には嘗て、彼に実に――生き写しと言っても良いくらい――よく似た後輩がいた。
彼はイロイロとアレなナニがあって職を離れてしまい、
今は郷里に帰ったと聞くが杳として連絡もつかず、その後どうしたのか知れない。



■潜入! 千反田邸!
サテ屋敷に上げられたは良いようなものの……どこへ向かえばよいのやら?
当の千反田さん、えるさんはどこにおられるのだろうか??
千反田家は近隣でも有名な豪農、名士でもあって来客は多いと聞いていたが、
今日は自分の他に訪うひともないらしく、しんと静まり返っている。

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玄関の土間から中庭に面した縁側のある部屋まで、
果たして間がいくつあるのか……すべてのふすまが開け放たれて繋がっている、
その広がりの中に物音ひとつない。

見取り図があるでなし、順路が示されるわけでなし。
薄暗く、広々とした屋敷のそれこそ異界の佇まいに飲み込まれ、
天パ書生は、土間のかまどの前にがっしりと陣取って、
何がそんなに面白いのかスマホに夢中であるし
――とは言いつつも、広い屋敷の中にときおり高く「パキリ」と響くのは、他ならぬ、
  薪が火に爆ぜる音で、彼はどうやらその番をしているらしい――
私はあてもなく立ち尽くす……。


しかし、いつまでも立ちすくんでいるわけにいかない。
招かれた以上、そしてそれに応えた以上、会いにゆかねばならぬのだ。



意を決し、私は靴を脱いで畳に上がった。



部屋は可能なかぎり広く、廊下はひとがすれ違えないほど狭く。
とりあえずいくつも続くふすまをくぐり、畳の上を進む、進む。
イ草のなめらかな感触が、靴下越しにでもしっとりとした水分を感じさせる。
板張りの廊下も、ほとんどヨーロッパの上等な家具のような肌触りだ。
きしみ、たわみこそするが、ささくれやひずみによる引っかかりに煩わされることはなかった。
薄暗いのに、ところどころに光の艶を白く走らせていて、ただの廊下が神秘的ですらある。
通り一遍の木材でつくられたフローリングやコンクリートの床に慣らされた私には、
これだけでも過ぎたもてなしであったように思う。

ときどき自分の居場所を確かめるように見回せば、小壁には日本画や槍がかかっていて、
ますます自分がどこにいるのか分からなくなった。
肝心のたずね人、千反田える嬢は人を呼びつけておいて一向に姿を現さない。
ある部屋では小壁にぼんやり浮かび上がった人影に肝を冷やし、
まさかえる嬢かと思ったが、大変よく似た女性の肖像であった。母君であろうか。

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ここはもしや下手に動かない方が向こうから見つけてもらえるかもと考え、
池と石灯籠のある庭に面した縁側に腰を下ろしてしばし待つことにした。
縁側からの眺めはこれまた水を打ったように静謐で、この時期、この時間に訪れて正解だったと喜んだ。
花の時期も、それはそれで良いだろうけれど、自分の求めたものは今日にこそあった。

すると、この庭だけの池だと思っていたのはどうやら表とも繋がっていたようで、
さらに奥の建屋の陰から、鴨たちが悠々と泳いでやってくる。
水の中には大きな鯉も泳いでいるのだが、互いに争ったりおびえたりする様子もない。
なかなか不思議な光景に、いっとき千反田嬢のことは忘れて心を奪われていた。


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大きな火鉢のある部屋まで行き着くと、もう屋敷の行ける範囲に探せる場所はなくなっていた。
探し忘れや見落とした部屋がないか、丁寧に見て回ったが、
やはりその揺るぎない静謐と、何もかもの手触りの上質さにため息が漏れるばかりで、
千反田嬢のあの、きらきらした気配を見つけることは出来なかった。
もしかすると彼女もこの静けさの中では常とは違う顔をしているのかも知れないから、
その気配を宛に探したのが間違いだったのかも知れない……ムッ!!
背後に千反田嬢の気配が! そこか!!




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<にゃー



なんだ猫か……。



■彼女の影
次に再び土間の前に戻ってきたとき、
初めに案内してくれたスマホボーイが奥の茶室で茶をふるまってくれるという。
屋内といえ、広い中を小一時間もうろうろしていくらか疲れもあったので、
一度土間におりて靴を履き、離れた茶室へ向かうことにした。

そこに、いた。
千反田嬢がではない。
ミミズクがである。
アフリカワシミミズクの朱雀くんです。

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いやいやいや。
「朱雀くんです」やのうて。おかしいおかしい。
暗がりにおかれた丸木の台座におとなしく爪を立てて、
見開けば黒々と深いであろう目を、眠そうな半開きにしばたたかせていた。

……まさか、館の主人の呪いでこんな姿に……!?

それで私に助けを求めて、昨夜救いのメッセージを送ってきたというのk
イヤイヤ落ち着け私。そんなハズがないだろう。

もし本当にそうなのだとしたら、その呪いを解くには間違いなく「ラーの鏡」が必要だ。
そしてそんな物がこの先必要になるのだとしたら、
あのタコ焼き屋の主人が私になにがしかのヒントを与えているに違いない。
なぜなら、ここに至るまで、そのようなヒントを与えうる機会を持っていたのは彼だけなのだから。

だからきっと……このアフリカワシミミズクの朱雀くんは正真正銘、
ただのアフリカワシミミズクの朱雀くんであって、
呪いによって姿を変えられた哀れな千反田える嬢のなれの果ての姿ではない、と
断言できる。
なんと理論的な説明であろうか。完璧だ。針の穴ほどの破綻もない。

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部屋の番人のように鎮座する朱雀くんの許しを得て部屋に入ると、
そこも先ほどの縁側の部屋同様窓が大きくとられており、他に比べると圧倒的に明るくて開放的だった。
敷居があり、靴のまま上がって良いものか躊躇ったが、どうやら問題ないらしい。

窓からは先ほどまで休んでいた縁側から見たのと同じ石灯籠が見える。
なるほど、池越しに見えていたのはこの茶室であったらしい。
お茶が運ばれてくるまで、しばし所在なくしていたのだが、
……どうだろう、この静謐は……。
鳥の声と葉ずれの音、少しばかりの水音。
こんな時間があるのだな。
否、常日頃、私たちがけたたましい音の海の中で息をしている時にでも、
この時間は並行してここに流れているのだ。同じ速度と重さであるものなのだ。
そう考えると不思議で仕方がない。
明らかに、ここに流れる時間の方が、粘度が高く、ゆるやかであると感じる。
ミミズクに見張られる時間……(そっちじぇねえわ)。


そんなこってりとした空間で、身の置き所にもようやくなれてきた頃……
ふと、ここにも自分以外の生き物の息吹があるのを感じた。

私が腰をおろした窓側のテーブルとは部屋のちょうど対角の、
障子で陰になっているところに、誰か……否、何かがいる。
もしやえる嬢が先に来て、私の来るのを待ちかまえていたのだろうか。



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クロワシミミズクのジェレミーくんです。




いやいやいや。
いやいやいやいやいやいやいや。
知らんがな。
「ジェレミーくんです」て。当たり前みたいに、そんーな。
ないわー。
二段鳥オチ。どんだけトリ好きなんジブン。えー?
ジェレミーくん? あらそうー。
ジェレミーくん。あなたが。こんにちわー。



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うっさいわウインクすんなボケ。



まあまあまあまあ、冗談ですよ? ジェレミーくん、可愛かったです。
しかしちょっと怒らせたらエラいメに遭わされそうですけども。
フラッシュ撮影はくれぐれもご遠慮下さい。
あと撫でたりしても噛まれるかも知れないそうです。こっわ。
指ぐらいソッコー千ン切られかねないクチバシしてるのでちょっかいかけないように。

ほどなくして、お茶とお菓子が運ばれてきた。
運んできたのは、やはり例の天然パーマスマホボーイで、
「ここで、満を持してえる嬢のサプライズ登場とかワンチャンあるで」と踏んでいた私の期待はたやすく裏切られてしまった。
自分がいったい何をしにここに来たのか、いよいよわからなくなってきた……

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まあ、える嬢に呼ばれた、というのも、そもそも私の妄想やも知れぬ。
取り乱したところで良い方向へは進まないだろうと茶をすすっていたら、
部屋の隅に文机があるのが目に入った。
青空文庫的なものもあるようだ。
せっかくだから今日はゆっくり本でも読んでここで待ち、
会えずに仕舞ったらそれはそれで、また訪ねれば良かろうと考え始めた。

こうして一度訪れてしまえば場所との縁は結ばれる、と、私は考えている。
来方も、来るために費やさねばならないものの大きさも分かるようになれば、
……案外、どのくらい遠くても人は訪れるようになるものだ。
その場所を気に入りさえすれば、だが。
幸い、私は今日ここへ呼ばれ、私ごときがおこがましいようではあるが、
この家に限らず、土地をいたく好ましいと思った。
ならばもうすべての目的を今日果たす必要はないのだ――

そんなことを思いながら文机に歩み寄り、その上に並んだ品々を見て――私は言葉を失った。

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……なんだこれは。
なんだこれは。
こんな風に物の並べられる光景を、私は見たことがあった。
知人が、まだ幼かったお子さんを亡くしたときだ。
そう、これではまるで思い出の品の数々……故人を偲ぶための空間ではないか。
まるで、生前の彼女を忘れずにおくための……忘れられないが故の。
どういうことなのだ。
そういうことなのか。
そして、机のほぼ中心に据えられた決定的なものに気付く。
もしかすると初めから気付いていたのかも知れなかった。
意図的に意識から遠ざけていたのかも知れない、臆病者の私は!



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千反田える嬢の、遺影……。

だとすれば、昨晩、私に呼びかけてきたものは果たしてなんだったのか。
彼女がいつこうなってしまっていたのか、私は知らない。
彼女が何を伝って、何を伝えたくて、私をここへ呼びつけたのかも分からない。
しかし、ことここに至って、ある一つのことは明白となった。


ここに彼女はいない。否、恐らくもう、地上のどこにも。



私は文机から一冊、彼女のアルバムとも呼べる青春の記録を一冊手に取り、
テーブルへ戻ると、その意味を探るようにゆっくりとページをめくっていった。

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■帰路、原谷の駅。
それから先のことはあまりよく覚えていない。
ひとつ、茶器をさげに来た天然パーマスマホボーイに

「あの、すみません。千反田さん、千反田えるさんは……?」

とお尋ねしたことは覚えている。
彼はハッと気まずそうな様子になり、決して私と目を合わせようとせず
小さな声で、しかし確かに一言
「そ……そのような方は、ここにはおられません……」
と言った。
それだけ聞けば、もう十分だった。

帰りの列車にはまだ早すぎた筈だったが、私はフラフラと屋敷を出てしまった。
それからどこをどう歩いたのか、
来るとき使った原田の一つ隣りの駅に当たる原谷に辿り着いていたから、
どうやらひと駅余計に歩いたらしかった。
そのせいで、だいたい列車の時間に丁度よく着いたようだ。

原谷の駅のオリジナルキャラが、ユルいを通り越して完全に雑の域にあったとか、
駅キャラですらない謎のカカシ的オブジェクトもまた、
雑を取り込んでファンタスティックになっていたことなども、私は覚えていなかったのだ。
覚えてなかったんだってば。

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そうこうするうちに、来るときに乗ったのと同じ一両編成のディーゼル車がホームに滑り込んできた。
しかし何故か、一向に乗降ドアが開かない。
田舎の鉄道にありがちな手動開閉式かと思ったがどうやらそうでもないようで、
見れば「貸し切り列車」と書いてある。
なるほど、どこぞの団体の貸し切りで、私含め一般客は乗れない特別運行であるらしい。


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車両は数分間、思わせぶりに停車したのち、私をひとりホームに取り残し……
ギシリと車体を軋ませて、ゆっくり、ゆっくり、線路の先へと滑り出していった。

次第に小さくなる列車が視界からすっかり消えたあと、私はハッとなった。
もしかするとあの列車は、世を去った者を乗せ、
此方と彼岸とを結ぶ幽霊列車だったのではあるまいか……。
そういえば、ジイサン・バアサンを満載したさながら老人会の様相の車内に、
ひとり似つかわしくない、黒髪の、細面の美少女の面影を見たような気がする――。

しかしそれもまた、今となっては真実を確かめるすべもない。
何もかも、
……える嬢の存在そのものさえ、私の妄想の産物だったのかもしれないのだから。

私は胸に去来するさまざまな思いを振り切るように、
その後にやって来た列車に乗り込んだ。



  ――この地を訪うことも、二度とあるまい。



胸に芽生えた、決然とした思いを抱いて。





……。




と思ったんだけど、
先に行ったその貸し切り列車は、オイサンが乗った列車が
15分ほどあとに掛川に着いた時もまだ駅に停まってて、乗客と思しき老人軍団がホームに残っていた。

老人軍団、グッタリしてるか、妙にハイかの二極化していて、
改札には救急隊員が2、3人。
……何があったか、マ推して知るべしなんだけど。

その天国と地獄絵図をしり目に改札をくぐると、
出てすぐのバス乗り場で、
革ジャン姿に、耳やら鼻やらピアスをジャラジャラぶら下げた若者が
数人たむろしている。


  ジャラジャラ1「なに? 駅、なんかあったの?」

  ジャラジャラ2「なんかw?
            ジジイが電車ン中でどんちゃん騒ぎしててツブれたみてえw
            ウケルww」


  ジャラジャラ3「なんかぁ,
改札出ようとしてぇ,ふらついてスッ転んで
            救急車呼んでんのw 
うぜえw」

  
ジャラジャラ1「なにそれジジイwww あたまオカシイじゃんwww」



……。



ご老人たち。しっかりなされよ。
馬鹿にされてる場合じゃないぞ。



 

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