« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »

2015年3月の6件の記事

2015年3月29日 (日)

■お漬け物の家~SS『ヤマノススメ』(後篇) -更新第978回-

 (前篇はこちら

 
 
     △    △    ▲
 
 
 
 山頂での休憩を終えて下山ルートに入ると、周りはじきに雑木に覆
われて展望がなくなり、距離は長いが緩やかだった登りと裏腹に短く
急峻な斜面の断続になる。急激に下っては短い平坦、下っては平坦、
の繰り返しだった。時に岩場で四つん這いにもならなければならない
ような下りを、楓さんを先頭に、ここなちゃん、あおい、ひなたと列
を作って、時に手を貸しあいながら下っていった。
 小一時間も下って膝と背中にそれなりの疲れがこごり始めたあたり
で、道は比較的なだらかな林の道にさしかかった。足もとは、いつも
ほんのりと水を含んでいそうな土の地面がどうにかひと二人すれ違え
る程度に顔をのぞかせて道をつくり、右手と左手には緩やかな斜面に
青白いブナの幹が立ち並んで、遠く視界の奥まで天然の格子柄を作っ
ている。
 ここなちゃんの前を行っていた楓さんが足を止めた。それを察して
ここなちゃんも耳を澄ませてみると、忘れもしない、先週テレビで聴
いたのと同じ、チュクチュクというさえずりが視界の先に幾重にも重
なる林の奥の木の陰の、そのまだ先から聞こえてきた。
「楓さん、これって」
「そうみたいね。あおいちゃん、ひなたちゃんも」
「はい、わかりました」
「任せて! 見つけるよ、あおい」
 さえずりは右と左、林の両側どちらからも聞こえているように思え
た。もしかしたら山と木々の響きの加減で、本当は片側からだけで鳴
いているのかも知れなかったが、あおいとひなたは右側を、ここなち
ゃんは楓さんと同じ、左側に生い茂るブナの林の根本からてっぺんま
で、幹を避け葉をかわして、奥の、奥のさらに奥まで、あの青い小さ
な体を見落とさないようにと視線を走らせた。
「近くではないわねえ」
 普段と変わらず平らかな楓さんのトーンが目の前の木立の海をより
広く深く感じさせて、どこに注意して目を凝らせば良いのかわからな
くなる。だまし絵のように、縦に、横に、木々が縞模様を描き出し、
青い鳥の声は渦を巻きながら少しずつ遠ざかっていってしまっている
ように感じられてきた。
 そうだ、双眼鏡。
 さっと胸元へ走らせた手が空を切る。登りの間中首から提げていた
双眼鏡を、さっきお昼を食べたときに背中のザックにしまいこんでし
まった、そのことに気付き、ここなちゃんは小さな体を素早くひねっ
てストラップの片側から腕を抜くとザックを体の前に滑らせ、双眼鏡
を探した。
「あれかしら」
「え、いたんですか?」
「どこどこ?」
 楓さんの息を殺す一言にひなたとあおいが色めき立つ。双眼鏡はす
ぐに見つかり、ふわふわの髪を器用に逃がしながら首に提げ直したま
では良かったのだけれど、コンパクトにたたまれたそれを広げて自分
の目の位置と合わせ、楓さんのゆび差す方へ視界を動かしながらダイ
ヤルを回してピントを合わせる……その間に、声はまた、どこからも
聞こえなくなってしまった。風が木々の葉を揺らす音と、まばらなメ
ジロの鳴き声……町や道からはなれ、さほど名の知れた訳でもない森
は、ひと気もなく静まりかえった。
「楓さぁん」
 最後列にいたひなたがすがるような声を上げてからも、楓さんはふ
た呼吸ほどの間、眼鏡の奥の瞳を固めて耳を鎮めていたが、やがて長
い息とともに姿勢をゆるめて肩をすくめてみせた。
 そのニアミスを最後に、この日の登山でルリビタキに出会うことは
とうとうなかった。「登山道入口」の立て札の背中を見つけた楓さん
の、はい到着、みんなおつかれ、という「もう一山、オカワリいこう
か?」とでも言い出しかねない溌剌とした声は、やはりいつもと変わ
りがない。
 麓に温泉のある様な山でもなかったので最寄りの町に見つけておい
た銭湯で汗を落として電車に乗る。その銭湯で湯船に浸かりながら
「ここなちゃん、ちょっといい?」
と、不思議な鼻をきかせてきたのはやはりあおいだった。
「あの双眼鏡って、誰かから借りたの?」
「あ、はい、そうなんです。わかっちゃいますか?」
 山頂で一休みしていたとき、景色を見たいと言うひなたとあおいに
双眼鏡を貸した。モスグリーンの鏡筒にちょこちょこ迷彩のような斑
紋の入ったその双眼鏡はどっしりとした重量感があり、しっかりと構
えればその重みは安定感に変わって取り回し易いのかもしれないけれ
ど、女の子が首に提げて歩くにはいささか重すぎたし、ダイヤルも、
折り畳むための機構も、ゆび先や手首などの力の入りづらいところに
力を要した。あまり使い込んだ風ではないものの、どことなしに油臭
さを感じさせる風合いとデザインのそれを、あおいはいちいち、重っ!
 とか、固っ! とか分かりやすい悲鳴を上げながら一頻りいじり回
して楽しんでいた。
「うん、なんかね、ここなちゃんっぽくないなーって」
「やっぱりですか。クラスの友だちが貸してくれたんです。私、ああ
いう道具は持ってないですから、鳥を見るなら要るだろって言って」
「ふーん。……男の子……だよね?」
 まだ、日が傾き始めて間もない。きっとこの町と同じくらいの年齢
であろう、昔ながらのタイルを敷き詰めた古めかしくも広々とした浴
場には、自分たちを除いては、湯気の向こうに腰の曲がったシルエッ
トが一つか二つかすんで見える程度で、広い壁面をいっぱいに使って
威風堂々と描かれた時代物の富士山も、半ば貸切だった。持て余した
ような空間のどこかで天井から水滴が垂れて、ぴちょんと細い音が響
いた。
「はい、そうですよ」
「ほ、他の山のことも教えてくれたっていう?」
 正直なあおいの瞳の中に、きらきら、というよりぎらついた輝きが
芽生えて勢いを増してくる。上気しているのも、鼻息が荒いのも、ど
うやら湯あたりなどではなさそうだ。困ったことになったなあ、と思
いながらも、ここなちゃんは「はい」と正直に答えた。
 貸してくれたのは、あの図書室の小峯くんだった。つい昨日のこと、
小峯くんは日直の仕事をしているうちに移動教室に出遅れて教室にひ
とり残っていたここなちゃんを見つけ、席までやってきた。小峯くん?
 次、生物室だよ? 移動教室遅れるよ? そう返したところへ手渡
されたのがあの迷彩柄の双眼鏡だったのだ。小ぎれいな百貨店の紙袋
に入れられ、添えられていたのは「鳥、見るなら使うかと思って。も
う持ってるなら持って帰るけど」という、やはり木訥な一言だけだっ
た。違う山へ行くことになったと告げたとき、小峯くんの瞳に差した
影の色が、南中を前にした教室のほの暗させいなのか、落胆とかそう
いう気持ちのせいなのかはわからない。悪いことをしている様な気に
なりつつも、必要なことは確かだし、話をしてから三日も経つのにわ
ざわざ持ってきてくれた、そこにふわりとはさまった不思議な緩衝地
帯のような気持ちの正体に触れてみたかったから、その道具は素直に
借り受けることにしたのだけれど。
「なーるほどねー? なんかゴツいからお父さんのかなーって思って
たんだけど、そういうことかー」
 眼鏡を外し、長い髪をタオルにまとめているから別人のように見え
るけれど、そのさっぱりした口調はやはり楓さんだ。あおいは興奮気
味にひなたのところへ戻り、ほらやっぱり! やっぱり男の子のだっ
た! と、いくぶん潜めた声で報告しているが、壁に描かれた富士山
に反響して丸聞こえだ。
「そうなんです。だから余計、会えたら良いなって思ってたんですけ
ど。仕方ないですね」
 ちいさな手のひらに湯を掬ってぱしゃりと顔をすすぐ。くったりと
背中をタイルの壁に預けると余分な力が抜けて、ただ水道水を温めた
だけの湯でも、肩や腋や膝、体中の色々なすきまから入り込み、使い
古したものを運び出してくれるような心地よさに包まれる。長い息が
漏れた。
「また来ればいいんじゃない? あの山にいるのはさっきので大体分
かったんだし、もう一つ、アテもあるんだしね」
「はい、そうですね。今度は……」
「ねえここなちゃんここなちゃん、飯能に帰ったらさあ、あのお漬け
物のお店教えてよ。あたし、あれ気に入っちゃった。買って帰りたい」
「あ、それいいわねえ。あたしも買って帰ろう。いい?」
 ひなたはお漬け物の方に興味津々のようで、さっきのここなちゃん
の話ですっかりスイッチが入ってしまったあおいのコイバナに辟易し
たのか、ざぶざぶと湯船を泳ぐようにして割り込んできた。
 もちろんです、お店のお婆さんも喜ぶと思います。振り返って答え
たとき、壁に広がる富士の裾野に画面の端から退屈しのぎみたいに張
り出して描かれた梅の木の枝に、これまた小さく小さく、一羽の鳥の
描かれているのが目に入った。
「ああ、これもメジロね。この辺、メジロで有名なのかしら?」
 三人を置き去りにし、お湯をかき分けて顔を寄せて見るここなちゃ
んに、眼鏡を外した楓さんが眉をしかめて言う。その小鳥はくるっと
丸い体に鮮やかな苔のような緑色をしていて、少し驚いたようにも見
える愛嬌のある面差しは、見間違いようもなくメジロだった。
「そうかも知れませんね……そうだ、メジロと言えば、ひなたさん」
「ん、なに?」
「今日たくあんと交換してくれた、『冷めると余計においしい目玉焼
き』の作り方、教えていただけませんか? 黄身にしっかり火が通っ
て、固くなってるのに味が残って濃厚で。お母さんに作ってあげたい
んです」
「え、い、いいけど……ここなちゃん、メジロからそれを思い出しち
ゃうんだ……」
「え、あれ? お、おかしいですか?」
 最近のお母さんは仕事の時間がときどき不規則で、夜半を過ぎて帰
ってきたかと思ったら翌日は昼からの出勤、などということがままあ
った。そんなときは先に起きたここなちゃんがお母さんの分まで朝ご
飯を作り置いて出かけるのだが、卵焼きならいざしらず、目玉焼きだ
とどうしても、作り置いておくと美味しくなくなってしまうのがここ
なちゃんの目下の悩みの種だったのだ。今日、ひなたがお弁当に入れ
てきていた目玉焼きは、その名に恥じず、驚くくらいみずみずしい味
わいを残していた。
「別におかしかないけど。いいよ。帰ったらメールする。忘れてたら
言って」
「じゃあじゃあ、今度はそれをお弁当に持って、ルリビタキにリベン
ジだね! またその男の子に、双眼鏡借りてさあ」
「あおい……あんたホント、そういうの好きだね」
 瞳をときめきで輝かせ、我がことのように割り込んでくるあおいに
ひなたがまた憎まれ口をたたき、いつもの漫才が始まる。
「ここなちゃんの家は、お母さんととっても仲がいいのね」
 さて、と豪快に、楓さんが頭のタオルをほどいていつもの姿に戻り
ながら湯船に立ち上がると、四人の中の誰よりたくさんの曲線を有す
る体のラインの上を、水の帯が滑り落ちていく。女らしいのに頼もし
い。はいっ、と銭湯に響いたここなちゃんの声の大きさに、絵に描い
たメジロの目が、いっそう大きく見開かれて見えた。



     ▲    ▲    △




 それから少し経った何度目かの休みの日、空は抜けるような快晴で、
それなのにあおいとひなたはそれぞれの自室におり、なぜ自分たちが
この佳き日を持て余しているのかについて「あたしは遠出しようと誘
ったのにあおいが渋ったから!」だとか「ひなたがいつまでも電話に
出ないから!」だとか、電話越しに責任をなすりつけ合っていたのだ
が、そこへブーン、ブーンというお定まり小刻みな振動を伴ってここ
なちゃんからのメールが届いた。
「今日もダメでした~」という件名に涙マークをあしらったそのメー
ルには、ルリビタキさんまた会えませんでした、というシンプルな本
文に一枚写真が添えられていて、どこかの山の頂上なのだろう、今日
の青空とそれに負けないくらいどこまでも連なる緑の山の遠景をバッ
クに、片想いの相手に巡り会えなかったとは思えない笑顔でここなち
ゃんがブイサインを作っていて、その首からは、水色の、いかにも彼
女にぴったりな、小さな双眼鏡が下がっていた。
「ひなたひなた、この写真!」
「あー。ここなちゃん、双眼鏡買ってもらったみたいだねー」
 またぞろ鼻息の荒いあおいに、ひなたはわざと芯を外した打球を返
したのだが、その山なりの球も何やら大きくあさっての弧を描いて写
真の青空に吸い込まれていったような錯覚を覚えて、スマートフォン
の空にぐぐっと顔を寄せた。放った打球の消えていった辺りだけ、ぽ
っちり一点、何かが横切っているようにぶれて、空の色が違っている
気がするのだった。
 もー、ホントひなたは分かってないなー。そうじゃないでしょ、こ
の写真。自分で撮った写真じゃないじゃん! 誰かと一緒だったんだ
よ、誰かなあ? あの男の子かなあ? そうだよね、絶対!
「ああはいはい、そうかもねえ」
 その違和感の正体が気になって、画面を見る角度を変えたり、明る
さをいじってみたり……思いつくことを試してみても、不自然に色を
変えた空の理由は分からない。似た色の鳥が横切っているのではない
か--。それは真っ先に思いついたことではあるけれど、口にするこ
とはなんとなく憚られた。
 それにしてもこの写真は、見れば見るほど、山と空と、丁寧にフレ
ームに収められた木々の枝、写真に興味はないけれど、とても大切な
おもてなしのために部屋をしつらえ、料理を運ぶときに磨き上げた廊
下をすべるつま先と同じ繊細な高鳴りを秘めている。額装を思わせる
巧みさで画面に呼び込まれた幾本かの枝のひとつに、あの日の大きな
双眼鏡がこっそりと、しかしわざとらしく引っ掛けてあるのも見つか
って、ひなたはへへへと声をひそめ、やるじゃん、と笑った。あおい
の腐ったようなコイバナもあながち間違っていない。なるほど気持ち
を少し足して見てみれば、ここなちゃんと木々と雲と稜線に囲まれて
切り取られた空の青は、鳥のかたちと思えなくもない……。
 画面をゆび先でつまんで拡大してみても、そこだけ色の違う空の理
由はやっぱり見えてこず、それは光の加減かもしれないし、携帯のカ
メラのいたずらなのかもしれない。ただの目の錯覚。勘違い。『もし
かしてこれ、鳥なんじゃない?』とあてずっぽうを口にすることは、
ここなちゃんを糠喜びさせるだけかも知れないけれど、それならそれ
で、別に構わないではないか。
「ひなた? もしもし? どしたの?」
「べーつに。あおいは相変わらず、肝心なとこが見えてないなーって
思ってさ」
 そんなやりとりのところへ、同じ写真を受け取ったらしい楓さんか
らもメッセージが届いた。
『ここなちゃん、またほっぺにお弁当つけてないw?』
 改めてみればなるほど、ここなちゃんはにっこり微笑んだ唇の端に、
またあの刻んだたくあんの粒をくっつけている。この写真を写し手は、
その肝心なことに気付けなかったのか、それとも、気付いていながら
それを言い出すことが、まだ出来なかったのか……。
 あのたくあんよっぽど気に入ったんだね、さすがの女子力モンスタ
ーも食欲にかかっちゃ形無しだねと笑い合い、青空に粒と滲んだ朝露
の様なルリビタキの幻と、舌先をのばせば届く先にある、糠がほどよ
く香る黄色い粒の喜びを、いつか取り替えっこする日も訪れるのだろ
うかと考えたけれど、お母さんに買ってもらったばかりの双眼鏡では、
口元についたたくあんに気付く日はまだ少し遠いのかもしれない。
 それじゃあびっくりさせようと謀り合い、『ここなちゃん、口元に
たくあんついてるよ』と文面を揃えたメールの送信のボタンを三人同
時にタップしたあと、ひなたはベッドを飛び降りた。お父さん、ちょ
っと出かけてくる。お漬け物買ってくるから、夕ご飯和食にしてよね
……。
 あの日から、倉上家でも例のお漬け物は定番になりつつあった。歩
き飽きた飯能の道を駅に向かって歩きながら、思い出すだけで十分に
反芻できる歯ごたえと糠の風味にほくそ笑んだ自分を、ひなたはちょ
っと、お爺ちゃんみたいだなーと思った。
 
 
 
 
 
 (終わり)
 
 
 
 
 
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

■お漬け物の家~SS『ヤマノススメ』(前篇) -更新第977回-

 ルリビタキに会ってみたい、というここなちゃんの希望からスター
トした今回の登山は、残念ながらその願いが叶わないまま、既に行程
の三分の二が終わろうとしていた。いびつな山容がへの字を描く今回
の山は、ながく緩やかな登りを経て山頂へ至ってしまえば下りは急で、
残る山行は登りの半分ちょっとしかない。今はその山頂で、四人、昼
食を広げているところだった。

「ごめんねここなちゃん。確かにこの山で見たっていう話は聞いてき
たんだけど」

 今回、行き先の山を調べてくれた楓さんは然して悪びれもせず、い
つものレトルト行動食を口に運ぶ。山では人の思惑通りに行くことな
んかほとんどない。人間の方で山の都合に合わせるしかない。口に出
すわけではないけれど、楓さんの居住まいには、いつもそんなところ
が見え隠れしていた。

「いえ、とんでもないです。ルリビタキさんにも都合があると思いま
すから」

 ここなちゃんもそれは同じみたいで、さっぱりとした笑顔で今日も
お手製のおむすびにかぶりついたあと、沸かしたてのお湯でいれたイ
ンスタントのお味噌汁をすすった。それはつまり、都合さえ合えばあ
ちらから会いに来てくれるという心構えなのだろうか? 高い女子力
がそのまま形になったようなふわふわの髪を風に遊ばせ、ここなちゃ
んは気持ち良さそうに一度空を仰いでのびをした。今日は、慣れない
双眼鏡を首から提げて上ってきたから、いつもよりもちょっと肩がこ
わばっている気がする。
 森林を抜けてたどり着くこの山の頂には高い木がない。展望はよく
開けて、いくつかの町や山が見渡せ、頭上には空が広がっていた。体
を通り抜け、風が渡る。耳をすませばいくらか野鳥のさえずりも通り
過ぎて行くのだけれど、「今日はメジロの声ばっかりね」という楓さ
んの言葉通り、近所でメジロの全国集会でもあるのかというくらい、
ここまでメジロの姿ばかりを見かけた。

「ちょっと借してね」

 楓さんはここなちゃんが首から下ろして置いていた双眼鏡で取り上
げて立ち上がり、ぐるりと辺りを見回してみた。ここなちゃんの手に
はちょっと大きい双眼鏡だったが、楓さんが持つといくらか様になっ
て見えた。

「仕方ありませんよ……また、会いに来てみます」
「ねえここなちゃん、ほっぺにたくあんついてるよ? こっちこっち」
「え、こっちですか?」
「ね、そのたくあん、一切れもらってもいい?」
「はい、どうぞどうぞ」

 おむすびに刻んで混ぜたたくあんの欠片が、唇のすみにちょこんと
乗っているのに気付くのがあおいなら、歯並びの良いここなちゃんの
頬の中から漏れてくるポリポリという可愛らしい音が、いやに食欲を
そそると気付いたのは誰あろうひなたで、ひなたはここなちゃんが頬
のたくあんを舌先で回収しながら差し出したランチボックスから一切
れ、半月切りのたくあんをつまんで口に入れ、確かめるように何度か
口を動かしやがて目を見開いた。

「何これ、うっま! ちょっとあおい、楓さんも! 食べてみなよ!」
「そんなに美味しいの? どれどれ」
「ってかアンタそれ、ここなちゃんのでしょ」
「いいからそんなの! 減るもんじゃないし!」
「いや確実に減るから」

 今日の山行食は四人とも大体簡単なお弁当で、調理といったら湯を
沸かすことくらいだった。二段になったここなちゃんの藤編みランチ
ボックス、そのごはんの段が楓さんたちにも回され、おのおの一切れ
ずつたくあんをつまむと、ひなたと同様目を見開いた。

「ほんとだ、美味しい」
「絶妙な漬かり具合ね。自分で漬けたの? もしかして、糠から自分
で? え? まさか大根から育てたとか?」
「ちがいます、普通に買ったやつです。でも、すっごく美味しいです
よね。私も気に入っちゃって。あ、よかったら、お隣のかぶも美味し
いのでどうぞ」
「ありがとー。じゃああたしからはこの、お父さん直伝、冷めて尚お
いしい不思議な目玉焼きを上げよう!」

 目を輝かせて追求してくる二人に困った笑顔で答え、ここなちゃん
はまた自分の弁当箱が三人の間へ出かけていくのを嬉しそうに見守っ
た。そのお漬け物は確かにスーパーで当たり前に買ったものだったが、
飛び抜けて美味しいのも、ここなちゃん自身すっかり気に入ってしま
ったのも本当のことで、味も歯ごたえもしっかりしているうえ、ほど
よい糠の香りと塩味と、噛んだときに歯から顔中に伝わる小気味よい
感触と音が元気を生み出すような気がして、次に山へ登るときは必ず
持って行こうと決めてもいたのだった。
 そもそも今回のルリビタキの山登りを決めたときも、このお漬け物
が彼女の傍にあったのだった。



     △    ▲    ▲



 一週間前のその日、「帰りが遅くなる」とお母さんから連絡が入っ
てここなちゃんが夕飯の買い出しと支度を任されたのは常のことだっ
たのだけれど、掃除当番や友達とのおしゃべりが重なってしまって学
校を出るのが遅くなってしまったことはいつもと違っていた。それで
も買い物を済ませて家に戻り、母の帰宅に合わせて風呂を沸かしてお
膳も立てて、二人で座卓に向かい合い「いただきます」と手を合わせ
たら、互いに一日の出来事をとりとめなく話すのはいつもと変わらな
かった。ただもう一つ、
「ちょっとテレビつけてもいい?」
と、時計にちらりと目をやったここなちゃんが切り出したのも、いつ
もと違ったことだった。
 ホワイトシチューの鶏肉を口に入れたばかりだったお母さんが、も
ごもご動く口元を手で隠しながら小さく頷き、ここなちゃんは部屋の
隅まで這っていって主電源を入れる。特にルールがあるわけではない
のだけれど、普段二人で食事をするとき、リビングダイニング--と
いえば聞こえはいいが、ただの畳の居間--の隅にあるテレビがつけ
られることはあまりない。
 そのテレビのチャンネルをいくつか送ったその先にいたのが、ルリ
ビタキだった。
 鮮やかな青い羽根を日の光にきらきら濡らせ、朝露をついばむよう
なチュクチュクと声を立てる愛らしい瑠璃色の小鳥を見て、ここなち
ゃんは食事中であることも忘れて思わず「わあっ」と歓声を上げた。
「あら、きれいな鳥ね」
「うん! とっても……」
「また、探しに行ってみるの?」
 お母さんがお漬け物を盛っている小鉢にかぶせてあった蓋代わりの
お椀を取り除けてみると、いつもならたくあんの盛ってあるスペース
が、ぽっかり空いたままになっている。他の白菜やかぶといった白い
野菜のお漬け物も、今日は半分ほどしか盛られていなかった。しっか
りものの娘にしては珍しく切り忘れたのだろうかと、ここなちゃんが
テレビに気を取られているすきに座布団を立ってキッチンへ向かいは
したものの、そうすると今度は、いつものパックのお漬け物が冷蔵庫
の定位置に見当たらない。
 ねえ、ここな? とキッチンから振り返ると、しっかりもののはず
の娘の瞳と心は、テレビの向こうの青い鳥が、さえずり、羽ばたき、
ピントを外れた緑の木漏れ日が丸いぼけを作る中で、何をするでもな
く、ただ宿る姿にすっかり釘付けだった。
 確かに、ルリビタキの青色は美しかった。砂漠の岩の中から掘り出
される宝石の色に似たその鳥が画面に現れた瞬間から、クラスのお母
さん連中にも評判の娘の大きな瞳は、その羽根の色一色に染まってい
る……今はその視界から外れてしまった母にも、娘の胸の、うずうず、
うずうずとした高鳴りが伝わってくるようだった。
「いいな、いいなあ……」
 山の生き物のことになると、それもまた珍しいことではなかったの
だけれど、その日の娘の様子が普段と少し違っているように、お母さ
んには感じられた。
「ああ」
 ルリビタキの出番が終わり画面がパッと切り替わると、ここなちゃ
んは糸が切れて大事な凧が風に巻かれて飛んでいってしまったような
声を漏らして我に返った。ものの数分、番組は山の野鳥と木々との関
わりについてのものであったので、ルリビタキの出番はさほど長くな
かった。ナレーターの口ぶりでは、この先も出番は多くなさそうだっ
た。
「あー……。お母さん? あ、お漬け物?」
「ああ、いいのよ、お母さんやるから。それより、ここな」
「ううん、ちがうの。ごめんなさい」
 ちがう?
 ごめんなさい?
 何が違って、何を詫びなければならなかったのだろう? 察しの良
い娘は、自分がお漬け物用の鉢を持っているのを見て座布団を立って
来てくれるが、それよりも、お母さんは自分の中で繋がらないアンバ
ランスな言葉に一瞬膝がぐらつく思いがした。
「今日ね、友だちとおしゃべりしてたら特売のお漬け物売り切れちゃ
ってて。いつものスーパーのお漬け物じゃないの。小売店の方のお漬
け物屋さんで買ったから」
 そんなお母さんの様子には露も気付かず、キッチンに追ってきたこ
こなちゃんは冷蔵庫の普段と違う段から大きめのタッパーを引っ張り
出した。
 んっ、と踏んばらなければ、タッパーの蓋も開けられない。その力
加減も間違って、勢いよく開いてしまったタッパーに二三歩よろける。
中には、普段買っているパックのお漬け物のゆうに倍はあろうかとい
うほど立派なたくあんが丸々一本と、これまたごろりと立派なカブの
塊がけだるげに横たわっていた。
「そうだったの。それじゃあ、ちょっとだけ贅沢気分ね」
「ううん、それがね、お店のおばあちゃんがおまけしてくれて、随分
安くついちゃった」
「そうなの?」
 サイズだけを見れば普段の倍はあるから、値段が倍でなければそれ
だけでも安上がりなのかも知れない。曰く、その大きなかぶのお漬け
物は丸々おまけなのだと言うから、安いどころの騒ぎではないのでは
なかろうか。しかしそうなると、そんな侘びしい嬉しさの影で、果た
して何が「ごめんなさい」だったのだろう。
 それでね、とここなちゃんは続けた。
「あんまり美味しそうだったから、先にちょっとつまみ食いしちゃっ
たの。ごめんなさい」
 取り出したまな板にたくあんとかぶを寝かせると、なるほど、既に
どちらもへたの部分を落とした跡がある。さしずめ、切って鉢に盛っ
て出そうとしたところ、つまみ食いを済ませたところで満足してしま
ったというところだろう。
「なんだ、そんなこと」
「えへへ」
 すいすいと包丁を無理無く引き、たくあんもかぶも、見るからに歯
応えの残る厚さに切り並べると、ここなちゃんは器用にそれを刃の腹
に乗せて鉢の中へと滑らせた。スーパーの特売真空パックにあるよう
な、漬け物らしい味や風味を材料に与えるための不思議な液体に濡れ
ているのとはどこか違う、糠に磨かれたつやつやとした輝きが、黄色
と白に加わっていた。
「はい、お母さん」
 食卓に戻り、鉢を傾けてひと箸目を譲ったあと、ここなちゃんは自
分でも一切れ、また一切れと、漬け物を箸で摘んだ。ぽりっ、ぽりっ、
とひと噛みごとに残る音の余韻が、彼女の歯の健やかさをくり抜いて
見せている。健康第一。テレビではさっきの番組が続いていて、たく
さんの野鳥が短い時間で入れ替わり紹介され、中にはいま切ったばか
りのたくあんとかぶの漬け物のような、黄色、つややかに光る白い鳥
もいる。ここなちゃんはそれら他の鳥たちにはあまり興味が持てずに
いるようで、あまりに鮮烈だったあの青い鳥がもう一度テレビの画面
に現れるのを心待ちにしながら、また出るかな、もうおしまいかなと、
よほどその漬け物の味も気に入ったのか、それともただ手持ちぶさた
なのか、ポリポリ、ポリポリと、かぶとたくあんを交互に口に運んだ。

 結局ルリビタキの出番は、最初のその数分だけと、最後のエンドテ
ロップで一カット挿入されただけで終わった。
 食後は、二人並んで流しに立つ。お母さんが流し、ここなちゃんが
拭き上げる。調理器具などは作りながら洗ってしまっていたから、あ
るのは二人分の食器類だけだった。
「ここな。今、なにか欲しい物はない?」
 シチューを食べるのに使ったスチール製の、銀というよりも黒と灰
色の間に近いくすみを有したスプーンの泡を流すお母さんがここなち
ゃんに訊ねてきたのは、要るものではなく、欲しいもの。些細な言葉
の選び方の違いかも知れないけれど、訊ねる調子がなんだか少し叱ら
れているみたいで、きちんと答えないと良くないような気がして、唐
突な気はしたが理由は尋ねなかった。
「うーんとねえ、ヘアピンと、靴下かな? また、穴あいちゃって」
「また?」
 ここなちゃんは靴下によく穴をあける。山で使う物は言わずもがな、
普段履いている物でも、たくさん歩くからなのか、あるいはたくさん
歩くせいで足の裏が堅くなっているからなのか、同級生や母よりもよ
ほど頻繁にだめにした。楓さんからは「あまり決まった場所にだけ穴
があくようなら、歩き方に偏りがあるのかも知れないわね。それって
疲れを呼び易いから気をつけた方がいいわよ」と教えられていたから
気を付けているつもりなのだけれど、あまり気にし過ぎるとかえって
歩き方がおかしくなっているのではないかと不安になることもあった。
 申し訳なさそうな、照れくさそうなここなちゃんの告白を聞いて、
お母さんは呆れて笑った。最後のお皿を流し終えてかごに上げれば、
あとは娘の領分だ。手の水滴を拭って、さっきのスプーンを念入りに
拭き上げていた娘の頭をぽんぽんと撫でた。
「はい、了解。じゃあ、ヘアピンは好きなのを買ってきなさいね。靴
下はお母さんに任せてもらっていい?」
「うん」
「行くなら気を付けるのよ」
「え?」
「ルリビタキ。会いたいんでしょ?」
 髪に触れたお母さんの手には、まだ若干湿りが残っていた気がする。
「うん。みんなにも相談してみる」
「そうね」
 スプーンのくすみはこれまで使い続けてきた中で表面についた無数
の小さな傷によるもので、布巾でいくらこすってみてもきれいになる
ものではない。二、三度拭ってのぞき込んでみたら、妙にきょとんと
した自分が映っていたのだけれど、ふとテレビの青い鳥の声と姿を思
い出すと、スプーンにぼんやり映った頬は、丸くたわんで優しい微笑
みになった。



     ▲    △    ▲



 あくる日の学校での休み時間、図書室でコンピュータをいじってい
たら小峯くんから声をかけられた。あおいとひなた、そして楓さんの
三人には、昨日の夜のうちに、どこか近くでルリビタキの見られそう
な森や山を知らないか、あわよくば週末にでも一緒に出掛けないかと
布団の中からメールを送ってあって、自分でも調べてみようとパソコ
ンコーナーに足を向けたのだった。
 ここなちゃんとクラスが同じの小峯くんは、体は大きいが運動部な
どに入っているわけではなく、どちらかといえば物静かな男の子で、
あまり話をしたことはなかったけれど話すことに怖さや難しさを感じ
させるところがない。インターネットの検索ページを開き、ル、リ、
ビ、タ、キ、と、それだけで思わずにんまりとしてしまいそうになる
のをこらえながら名前を打ち込んだ。生息場所や目撃情報だけを見よ
う、動画や写真は見始めると止まらなくなりそうだから避けようと心
に誓っておいたのにどうしても誘惑に勝てず、ちょっとだけ、ちょっ
とだけと言い聞かせながら開いた写真のページの三つ目のリンクを押
してしまい、いけないいけないと頭を振ったときに、大柄な小峯くん
のシルエットが視界の隅にあるのに気付いた。
 蔵書の検索端末の列に並んでいた小峯くんは、一度何かを気にする
みたいにふっとここなちゃんの方を振り返り、目が合うとまたすぐ視
線を前へ戻して、自分の番になるとあっという間に検索を終わらせて
しまった。そうして踵を返すと、ここなちゃんのいるパソコン席へや
ってきた。
「青羽。珍しいね」
「えっと、うん。小峯くんはよく来るの?」
「うん、まあ、ごく稀にだけど」
「そうなんだ」
 小峯くんの言う通り、ここなちゃんが学校の図書館を利用すること
は多くない。たくさん本を読む方ではないし、今日みたいに何か特別
な用事でもない限りは足が向かない、それはその通りなのだけど……
と、答えも返事もなんだかちぐはぐなそのやりとりのうちにあれっと
思うものを感じ、ここなちゃんが考えを一瞬止めたのと、小峯くんの
視線が、すっとパソコンの画面を気にしたのとがほとんど同時だった。
「その鳥、ルリビタキっていうの」
「ああ、うん。綺麗だね」
「知ってるの? 私、本物を見てみたくなっちゃって」
「青羽、山登りしたりするんだっけ。どこかあてがあるの?」
「それを調べに来たんだけど、見入っちゃった」
「ふーん」
 気のなさそうな小峯くんの返事がこしらえた沈黙には、どこかむず
むずする成分があった。ここなちゃんは一度画面に向き直ると手持ち
ぶさたに二、三回マウスのボタンをかちかちと鳴らしてみる。右のボ
タンをクリックすると現れるいくつかのメニューはあまりちゃんと使
ったことがない。それを出しては消し、出しては消しして、小峯くん
をのぞき込むように首を傾げた。
「どこか、知ってる?」
「昔のことだから、あてになるかわからないんだけど。電車でちょっと
行くんだ、日帰りで行って帰って来られるくらい」
「もしかして、見たことあるの?」
「一回だけ。小二か小三のとき、親戚のおじさんにその山へ連れてか
れて」
「本当? すごい! その山の名前っておぼえてない?」
「おぼえてるよ。確か……」
 物静かな小峯くんの胸か肩が、いつかの体育の時間、男子は五十メ
ートル走、女子は走り幅跳びで、校庭の隅にある砂場からほとんど対
角線の反対側に設けられたスタートラインに立つ小峯くんに見た、両
手を砂についてお尻を上げるクラウチングスタートの構えをとる直前
のようにぐっと前に張り出した気がして、ここなちゃんは我知らず膝
と膝をそっと寄り合わせた。それでも小峯くんの話す調子はほかの男
子と同い年とは思えないくらい訥々と流れて、ここなちゃんはうん、
うんと、邪魔にならないように相槌を入れる。
 つっかえながらでもどうにか出てくる、山の名前、駅の名前、だい
たいの道のりをメモに取り、パソコンの地図でもかちかちと、ふたり
してその場所や風景を確かめてみた。
「そうだね、ここで間違いないと思う」
 話の途中で、一度ここなちゃんの携帯電話が震えた。ブーン、ブー
ンと組み紐を縒り合わせたような中太の振動が図書館の小さな空間に
広がったので、断りを入れてから慌てて電話機を取り押さえてその小
さな液晶窓をあらため、またしまい込んだ。
「ありがとう、もう少し調べてみるね……どうかした?」
 マウスを奪った小峯くんが慣れた手つきでホイールをくるくる送り
ながら「あ」と呟いたから、ここなちゃんも釣られて訊ねてしまう。
「ん、なんでもない。結構きつい山だった気がするから、行くなら気
を付けて」
「うん、ありがとう」
「青羽、一人だとときどき意固地だし、誰かと一緒だと気を使いすぎる
とこあるだろ」
「え、え? そうかな……」
「それじゃあ」
 大きな背中が遠ざかり、入り口近くにある新しく入った本と返却さ
れたばかりの本が並ぶ書架の向こうに消えるとき、また一瞬だけ、さ
っきのようにむずむずした時間を作って立ち止まった気がしたけれど、
今度はそのまま隠れて見えなくなり、やがて小さく、扉の開け閉めさ
れる音がした。
 なんだか不思議な気分に包まれながら、いすを回してパソコンに向
き直ると、眩しすぎる夏山の緑をバックに双眼鏡を覗く知らないおじ
さんと、ルリビタキの写真が並んで映し出されている。それよりもと
ここなちゃんはマウスではなく携帯電話を取り直した。先ほどのメー
ルの送り主は楓さん。パカリと開いた液晶画面には、小峯くんに聞い
たのとは違う山の名前が記されていた。
 
 
 
     △    △    ▲
 
 


                            (続く)

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月21日 (土)

■流浪する疑問の魂~表現の自由の話とか -更新第976回-

最近、
何者でもない自分が、何者でもないままでいられる場所がものすごく安心する。
とても落ち着くし、安心するなあとしみじみ思う。

世間は、自分に対して何者かであることを要求してくる。
何者でもないはずの自分に、何者かであること、かりそめにでも何者かになることを。

Dsc08322


そういうことから解放される場所として、近頃は世間一般的にも、
山とか森の自然の中とか、手近なところで町なかのカフェなんかがありがたがられてるんじゃないかなあ……
とか思う。

家にいたら家にいたで、家の主である自分とか、家族の中の自分とかであることを、
場やものが要求してくる気がして。

自分のものでない、自分のもののない場所。
遊牧民、ジプシーみたいに。
大きな大きな大きなものの中にある、何でもない自分。

だから、自分のものではない、自分のもののない場所、
だれのものでもない場所(が本当は一番望ましいのだろうけど)に出て、
そこで外殻に何のテクスチャも張り付けない、
何も持たない素体の自分でいると、途端にとてもボーッと出来て安心する。
最近、そういう時間がすごくありがたい……。

公園のベンチとか、コンビニのイートインコーナーとか、
見知らぬ施設のロビーとか。
意図のいらない、
そういう場所でうたたねをしたり、ふっと意識を広げると……とても安らぐ。

どっか、心の具合が悪いのかねえ、自分。

まあ、遊牧民やジプシーだって
どこかに軸や極を持っていて、責が実際に歩かないかは別にして、
自らに課して生きているに違いないのだけど。


ども、オイサンです。
最近、「どっか行って来たぜウェーイ」みたいな話ばっかりだったので、
今回は心に移り行くよしなしことを述べ立てるだけの、
ザ・日記回。



●○● 英語と疑問 ○●○



最近、シゴトバで受けている英語研修がたのしい。
会話の授業と、文法の授業があるのだけど、特に文法の授業がたのしい。
ちょうたのしい。

知りたいこととかききたいことが自然とボコボコ生まれてきて、
授業中も質問しまくりになる。
たのしい。

「分からないこと・疑問に思ったことは質問しなさい」とは、
普段の暮らしの中でも言われるけれども、
「不明」であることが「疑問」へと結びつく流れを自分の中に発生させられることも、
一つの才能……ではないけれど、
なにか、一種の力によってなされているものなんだな、と実感している。
興味のないものは、「不明であること」が出てきても
「そういうものなんだ」と無意識に結論が結ばれてしまって「疑問」にならない。
それは故意に送り込んでいるわけではなくて、
放っておくと無意識にそれで納得してしまっている。
強い意識を使って、ある意味「無理やり」疑問に仕立て上げないとならなくなる。

「疑問」とは既に、「不明」という状態に主体性がともなった一つの「姿勢」なのだなと気付いた。
そこには意思が介在しているんだ。
「分からないこと」の全部が「疑問」にまで育つわけではなかった。

「不明であること」を
「そういうもんなんだ」と思ってしまってチャートがそこで終わってしまう場合と、
「どうしてそうなるんだろう?」にまでチャートを進められる場合とで
何が違うのか分からないが。

「不明であること」にぶつかった時、
そのシッポにちょろっとだけ伸びた次への手がかりに対して、
オイサンの場合、語学でないものは無意識にぶった切ってしまっているだけなのか、
はたまた語学のときに目聡く見つけやすい脳みそになっているのか……
なんとなく、語学という背景があることで
「そこには何か、理由や意図や、歴史があるはずだ」と、
私の脳みそは強く確信を得るのだろう。

それを人は「興味がある」と称するのだろうけど。
語学をやっていると、明らかに
「む、なぜだ?」「ではこの場合はどうだ?」と、
ぐりっとおかしなダイヤルが頭の中で回る瞬間、感触がとても多く発生する。


「疑問」にならないものに対して、意識的に追及を薄くしているわけでは、決してない。
気を付けていても、気が付くとそれらは過ぎ去っているし、
そこに疑問点・不可思議なポイントが存在していることに気付けない。
……不思議なものだ。


いずれにしても、英文法の授業たのしい。
ちょうたのしい。
知りたいこと、面白いことが一杯だ。
そこには情緒が多数存在している。
理屈で追いきれない、感情と感触の歴史とが超多重に作り上げた、
人間の心の地層をスパッと切って断面を眺めるような面白さと楽しさが、
言語にはある。
温度と湿度のかたまり。

質問をする。
先生にだってわからないことが山のようにある。
言葉の問題なのに、言葉では説明出来ない、体系立たないことがいっぱい隠れている。
その理屈でないことの、気持ちの部分をなんとなく理解できる時が一番うれしい。
言葉はツールじゃない。
通じればいいってもんじゃない。
感情の歴史そのものだから、大事に美しく扱う必要がある。
たべものとおなじだ。

英文法楽しい。ちょうたのしい。
前置詞がなー。難しいよなー。



●○● ペンケースが見つかった ○●○



ここ数週間、行方知れずになっていたペンケースが帰ってきた。
見つかった場所は、オシゴト相手の会社のオフィス。
前の打合せのときに置き忘れたらしく、
「そのままずっとそこに置いてあった」
……と先方の方は言っていたのだけど、
中を見てみると、自分のものではないシャーペンが一本増えていた。
同じように置き去りにされたものを、誰かが気を利かせて入れてくれたのだろう。

  その子はそこに置いてきた。
  一緒に迷子になり、しばらく同じ施設で過ごしてきた子をひとりだけ見放してきたような、
  なんだか気の毒な気もするけども、そうせざるを得ないだろう。

ケースは、いつか実家に帰ったときに地元沿線の駅で買ったちょっとかわいい布性のもの。
地元らしく鹿のシルエットがうっすら描かれている。

中に入っていた筆記用具類は大概がありきたりのものだけれども、
一つだけ特に思い入れがあったのは、この『エヴァ』のシャーペン。

Dsc08535

ただのキャラグッズのくせにえらく頑丈で、20年近く前にアニメイトで買って以来まだまだ現役。
軽いのに持ち味もよく、帰って来てくれて良かった。

  何となく、就職活動のときに初めてやってきた関東の、アニメイト池袋で買ったもの、
  という記憶が焼き付いていたのだが、
  これを機に記憶を揺り起こしてみたらどうもそうではないっぽい。
  最初に買ったのは関西にいた頃で、
  同じものをあとからまた一度、アニメイト池袋で買った、という方がどうも辻褄が合う。
  色々忘れているものだな。

行方をくらませて以来、ずっとペンケースのないままやりすごしていたのだけど、
こないだテストがあったのでさすがに何かないと便利が悪く、
なんやかや、もとのケースの内容を再現+αするくらいに買い揃え直したところだったので
ちょっと間が悪かったけど、マ別に、二つあって困る物でもなし、
帰って来てくれてよかった。



●○● 自由に表現する権利 ○●○



ここんとこ、ぽちぽちと表現の自由に関する話を見かけることがあった。
なんかきっかけがあったんだけど、マその辺とは直接関係はない、
もう少し一般的な話。

なんというか、「表現の自由」、「自由に表現を行う」という権利が、
アタカモ直接的な表現を携わる人たちが表現するときだけに働いていて、
それをしたい人たちと、
その(過激な)表現者たちから身を守りたい人たちの丁々発止、みたいになってる気がしたのだけども、
果たしてそれでいいのか? と、考えておった。

えーと、自由に表現を行う権利は、
……いまさら改めていうほどのことでもないとはわかっているのだけども……
別に、直接的に表現を行う人たちのためだけにあるわけではない、
もっといえば、直接表現者を守るために主としてあるものではなくて、
それを受け取る人たちの利便性を守るためにもあるんだよなあ?
というのがオイサンの考えなわけです。

  マ実際、法律というか、その権利の理念の出発点がどこにあったかはよう知らんけど。

自由に表現することの権利が守られていることで、
自分が直接的に表現する立場にいない、
主に表現物を受け取る側の立場で暮らしている人たちも、
何らかの恩恵に浴している。



……と、思う。



……うん。思うのですよ。



その権利が守られていることで、あまたの表現の中の
何かが「より分かりやすい」であるとか「より面白い」であるとか。
「より深く」「より直観的に」「より強く」理解できる、意識できる、とか。

  その利益・利便を、言語化や視覚化することはとてもとても難しいと思うのだけど。
  「自由に表現することの権利」が守られていない世界を別でもう一個作って、
  比較でもしてみないと。

そういう「良さがある」こと、「そういう恩恵を受けている自分」は、
なんとなく分かってもらえるんじゃないかなあ、と思う。
「チョットナニ言ッテッカワカンナイ」というんであれば、
これ以上読んでもらってもあんまり実りはないと思う。

デそういう前提で話を進めると、
デあれば、「主に表現物の受け手として暮らす人たち」も、なんというか、
自分たちの利益を守るために、
「受け取るときに細心の注意を払って、『出来るだけ』積極的にその自由が守られる」ような方向性で、
受容の仕方を考えた方が、あとあと、色々嬉しいんじゃないかな?
という風に思うわけです。

ただ、あの、先に言っておくと、だからといって
「多少気に食わねえ表現があるからっつってガタガタ抜かすんじゃねえ
 大義のためにはそんくらいガマンしろよしみったれヤロウ」
とか言う気はないのでご安心下さい。
耐え難い不快感を感じるものまで、権利の保護のために我慢して許容せえ、
なんてのはおかしな話で。

ただその『出来るだけ』が曲者で、まあ、それはもう匙かげんでしかなくて。
別にね、自分がイヤなものをものすごくガマンしてまで「クッ……表現の自由のためだ!」
って、キライなニンジンをゴックンするような顔をしてまで
することではないとは思う。

  それはなんていうか……「権利」が「人」の上に立つ結末ですから。
  本末が転倒している。

なんていうのかなあ。

たとえば自分の中で、許容:不許容=49:49で迷った時に、残った2票をどっちに入れるか、
っていう話で、
「自分にとってどちらでも良い話なら、守られ、広がる方向に働きかけよう」
くらいの気持ちで良いと思うのですけども。
マもし出来ることなら、49:51とかの、
「まあ……あんまり見たくはないけど、こういうのも必要だよね」
っていうものに対しても「アリ」のボタンを押して上げてくれるといいと思うけど。
その辺の線引き・さじ加減は程度とキャパの問題。

例によって何が言いたいのかわかりにくい話になったけど、
あまりにも「表現の自由」が「表現者のためだけ」みたいに捉えられて
悪者にされているように見える瞬間がポチポチあったから、
そうじゃないでしょってことを言いたかった。

大きく言えば「文化の・表現の多様性」を守るために当然あるのだけど、
その書き方でもやはり「表現する人」のことしか守ってないように見えがちだから、
ハッキリと「その権利によって見る人にも嬉しいことがある!」っていうことを言いたかった。

マ繰り返しみたいになるけど、
だからと言ってそれをカサに着て受け手に忍耐を要求するのはアレなので、
お互い広い心を持ちたいものですね、っていう話でしかないんだけど。

毎度、玉虫色のツマラン結論ですね。
はいはい、退散退散。
つるかめつるかめ。
 
 
 
マそんな感じで一つ。
オイサンでした。
 
 
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月14日 (土)

■アマガミ・SS「ホワイトデーだ! 絢辻さんにお返しを渡そう!」 -更新第975回-

 
 
 
主人公「絢辻さん、今日はホワイトデーだね!
    はいコレ、チョコのお返しだよ。おいしかったよ、ありがとう!」

絢 辻「……」
主人公「……? 絢辻さん?」
絢 辻「……え? あ、ごめんなさい。何かしら?」
主人公「ホワイトデーのお返し……なんだけど、どうかした? 具合でも悪い?」
絢 辻「あ、そうね、そうだったわね。ううん、そうじゃないの。
    嬉しいわ、上げた甲斐があった」

主人公「……だったらいいんだけど……」
絢 辻「ちょっとボーッとしてただけ。ありがとう」

主人公「……」

主人公「(なんだか上の空だな。機嫌も、あまりよくないみたいだ。
     あれかな、ブルーデーってやつかな……)」

絢 辻「(なんてこと……迂闊だったわ……
     売り抜けるタイミングを逸して、あんなよけいな損を出してしまうなんて……
     金額は大したこと無いけど、悔しい!
     とんだブラックマンデーだわ……)」

 
 
 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 7日 (土)

■涼宮RX1の憂鬱 -更新第974回-

涼宮パラサの拡大。
オイサンですにゅう。

一瞬風邪ひいたり、治ったり、また小諸へ行ったり、
秩父へ行ったり、その帰りの足でまた飯能へ行ったりしています。
あとついでに武蔵五日市なんていう、あきる野の果てへ行ってみたり。
……迷走しとるなあ。



■秩父と飯能



Dsc06329


本当はね、小諸へ行く予定だったんですよ。
土日共にそこそこ天気は良い予報だったんで、
土曜は朝早くから動くには無理があるから、日曜にしようと思って。

しかし日曜の夜になって予報が急変、「晴れ時々曇り」だったのが一転「曇り時々雪」の予報に。
しかも日曜は、ぼくらのキャンディライトがまさかの定休日。

  なんてことだ……行く意味ないじゃないか……orz
  (小諸をなんだと思っているんだ)。

などという理由で先送りにしたら、日曜日にすることがなくなってしまった。



  だったら秩父に行くしかないじゃない!!



……と、前回の飯能へ行ったときその線路を見て興味がわいていたのと、
『ヤマノススメ』の7巻で読んだ
「飯能アルプスを縦走して秩父の方まで抜けられる」
なんて話から芽生えた秩父熱(病名みたいだな)に浮かされ
秩父くんだりまでノコノコと出掛けてきましたぜヘッヘッヘしめしめ(誰だ)。

Dsc06365

Dsc06416


実際なにも大したことはしていないのだけど、
武甲山が印象的だったことと、
町から少し外れればすっかり山で川でなかなかに魅力的な土地だったこと、
あとはお昼をいただいたレストラン「エデン」さんがとても美味しかったことと
謎の喫茶店のコーヒーもプリンも大変美味しかったことが記憶に残った。

Dsc06521
スパゲテー。
Dsc06542

そうそう、駅の中にある仲見世も大変に賑わっていて、買い物をしていてちょっと嬉しくなった。
なかなか活気のある街だと思った。

Dsc06558
木亭さんのプリン。ちょううめえ。

Dsc06569
仲見世でみかけた「あの花」イラストその1。味がある。すごくいい。

Dsc06575
その2。これまたいい。

アニメ『あの日見た花の名前を、ぼくらはまだ知らない』の存在感も、
マ『なつまち』や『ヤマノススメ』ほどの現役感はなかったけど、
それでも十分すぎるくらいいまだ健在だった。
観光案内所なんかは、キャラクターのPOPやらが満載で……ちょっと居辛いくらいだった……。

Dsc06341


もうチョイ「ほんのり」でエエと、おいちゃん思うねん。
それこそ上のイラストくらい。
なんだかんだで、愛されているというか、地元に寄与しているんだなと思った。
それ目当てで来ているらしき若者の一団も見かけたしね。
大したものだ。



■飯能3



デその秩父の帰りに、せっかくだからちょっと寄っていくかってんで、
飯能にも寄り道。
これまた何をするわけでもなく、お寺をのぞき、飯能河原でしばらくぼさっとしただけ。
死ぬほど上手いここなちゃん絵馬なんかを見つけたりする。
……他になんかやったっけ? 何にもしてないよなあ。

Dsc06590
おなじみ、あの鐘楼のあるお寺の絵馬。上手すぎる。

Dsc06604


ねえここなちゃん? 何にもしてないよねえ?

Dsc06643
入間川、飯能河原の流れ。なんかグッとくる。




■小諸8




その翌週、8回目の小諸。

Dsc06801


これまた大した目的を設けず行ってしまったものだから、着いてからちょっと途方に暮れるというプレイ。

強いていうなら、駅前のそば屋さんのきざみそばが食べたかったってことと……
そんだけだな。

Dsc06733
きざみそば。

キャンディライトでゴハン食べたかったってのもあるけど。

▼▼懐古園

8回目の小諸、この日は天気も良かったにも関わらず、
懐古園にはほとんど人の気配がしなかった。
幾人かすれ違う人はあれど、
水の手の展望台に30分近くとどまっていたにもかかわらず訪れる人は無し。
貸し切りに近かった。
静かだ……。



   \パオーン/



誰も、私の心の平穏を邪魔するものがない……。



   \パオーン!/



本当に静k



   \パオーン!!/



象がうるせえな!!

※この日は本当に、動物園(*1)の方の象さんがやけに興奮して(*2)吠えておられました。

 *1:懐古園には、小諸市動物園が併設されています。まだ見たことないけど。
 *2:ふと思って調べてみたんだけど、小諸市動物園さんには、どうやら象さんはおられないご様子。


   ではあの日、私の聴いたあの鳴き声は一体何の動物の声だったんだろう???
   絶対象だと思ったんだけどなあ……。
   他に大型の生き物ってライオンくらいみたいだし……。

   おかしいなあ、と思って調べてみたらこんな記事が見つかった。
    → http://musicastre.naganoblog.jp/e310613.html
   ((((;゚Д゚)))) 
   ま、まさかあの声は……若くして世を去った象のタイ子さんの……!?
   こ、怖い……を通り越してレアだな。
   真っ昼間から象の怨念の声を聴くって、どんだけだ俺は。ちょっと面白いわ。


Dsc06827
神社の池の噴水が面白い凍り方をしていて見ごたえあり。


▼▼ダム~田んぼ~キャンディライト

懐古園の、中をひと巡りしたあとは、散策路の斜面をダムに向けて下る新しいコースの開拓。
落ち葉がふかふかと柔らかく、
雑木林の間から見下ろすダムの姿が少しずつ近づいてくる様子が新鮮である。

Dsc06920

前日から気温も高くなり始めていて、雪融け水のせいなのか、流れに勢いのある千曲川。
きんきんと冴えた様子が、澄んだ水から伝わってくる。退屈しない。

川縁でしばし巨乳降臨を祈願した後は、
懐古園のある丘のふもとを巻くようにしかれた道を抜けて田園方面へ抜け、
大久保橋のあたりぐるっと回って町へ戻る。途中、野鳥観察のグループとすれ違ったりする。

Dsc07009


  ……しかしまあ、本当に何をしに行っているんだろうね。
  散歩、散歩だなあ。

お昼ゴハンはキャンディライト。
そうとも、キャンディでゴハンを食べたいがために、土曜日に来てるんだぜ。
この日はお客が多く、
カウンターとテーブルにオッサンが一人ずつ(オイサンを入れると一人客のオッサン×3)、
4人掛けにちょっと年のいった知り合いグループみたいなのが一組と、
中学生男子の集まりみたいなのが、3人。
おお、こんなに人のいるキャンディライトは初めてだ。

Dsc07030

この日のランチはヒレカツ丼。ワクワク。
ゴハンが出るのを待つうちに、中学生グループが去り、
代わりに若い女子中学生か高校生くらいのグループがやってくる。
なんてことだ、実は地元のナウなヤングにバカウケなのか、キャンディライト!?

  ……もしかすると、『あの夏で待ってる』の彼らも、
  このキャンディライトでゴハンを食べたり、だべったり、
  なぜかオロナミンCの空きビンをつかって延々水を飲むマスターの奇行に
  心を奪われたりした
のかもしれぬ(そんなわけがあるか)。

でオイサンの所にも料理が運ばれてきたのだけど、
食べてるところへマスターがやってきて、
「今日は何を撮りに来たの?」
と、いつもの気さくな笑顔で話しかけてくれる。
いやあ、今日は特に目的もなくてブラブラ、って、
話しかけてくれるのは嬉しいんだけどさ、
さっき入ってきた女子の一団、注文取りに来るの待ってっから!
先そっち行ったげて!

常連と雑談してる場合じゃないから! ってかオイサンも別に常連ってほどじゃないから!

何やら営業を滞らせる恐れがあるので早々に退散して、次のお散歩へ向かう。
以前も行った、飯綱山公園へ。
雪化粧の浅間山さんを、なるたけ近くで臨もうという魂胆。

  他にも、まち全部を使って開催されていた「お人形さんめぐり」の展示を見に、
  本陣主屋と、町屋館も覗いてきたりはした。
  この日のみはらし庭からの眺めは、これまでで一番良かったような気がする。
  何も変わるワケはないんだけど。
  なぜか、広く、遠く、それなのに大きく、全部の山が見えた感覚があった。

Dsc07066
本陣主屋にて。

Dsc07057
喫茶マモーさんのしぶいカップ。小諸ファン垂涎のキャラグッズ。売って欲しい。

Dsc07093

Dsc07084

  あと、みはらし亭の入り口で売っていた石焼き芋を食べなかったことを、
  私はこの先、一生後悔して生きていくことだろう(そこまでか)。
  ……来年、また来て食べよう(来るのか)。

  あとは駅前の喫茶店・マモーさんで新たにお茶を飲んでみたり。
  開拓開拓。
  いきなり、お店の人ではなくて、常連さんがテーブルを拭きに来てくれたりして驚いたけど。
  アットホームな喫茶店です。


▼▼小諸バイヤー

そうそう、もちろんキャンディライトへ向かう前に、
小諸のカルチュアコンビニエンスクラブこと、TSURUYAさんでお買い物も致しましたよ。
懐古園ぶらついてるときに
 「コーヒー豆を買ってこい!
  あとカワキもん(ドライりんご)も忘れるな!」



「おやき」

とご注文を頂いたので。

コーヒー豆は、あとで自家焙煎珈琲こもろさんで買うけど、
おやきとツルヤオリジナルのドライりんごは先に調達。
この日はやけにおやきのストックが潤沢で、全種類コンプできました。

あと、ツルヤオリジナルブランドのドライりんごがとても美味しかったので、
調子に乗って同じツルヤブランドの「サバの味噌煮缶」と「くるみのだし」を買ってみた。
どっちもジャスティスだった。ちなみにサバは銚子産。


▼▼飯綱山公園

デ、飯綱山公園からの眺め。
まちも、山も、とてもよく見渡せた日でした。

Dsc07235
あまりほめられた写真ではないと思うのだけど、この日の自分の気分を一番よく表してたのはコレ。

この日も順調に、品の良い感じの年輩の女性から声をかけられるオイサン。
モッテモテやで。ちなみにこの日の女性は神奈川の方でした。旦那さんいました(何を言っているんだ)。

Dsc07196


山のてっぺんで小一時間、風に吹かれて山を眺めて過ごす……
うーん、もっとボーっとしていたい……。
ポカポカと暖かな春先に来たりした日には、空気に溶けてなくなってしまいかねない。
でもそんな日には、もっと人が多くて騒がしいのだろうな。




なんかなあ。




ほんとになあ。




もっと……人生には、こういう時間が多くても良いと思うのだけど。




昔から人はずっとこんなにあくせく、切羽詰まって生きてきたんだろうか。




……いや、今の人間はきっと、昔の人間よりもよっぽどゆとりある暮らしをしているのだろうけど。




なんだろうなあ。




なんでだろうなあ。




▼▼そば七~自家焙煎珈琲こもろ

晩ゴハン……には、まだ早いんだけど。
そば七さんの、みぞれを食べずに帰るのはなあ……。
いいや、食べちゃえ。山登ってお腹もそこそこ減ったし、何よりもカラダが冷えている。

というわけで鉄板のそば七さん。

安定のみぞれ(豆腐+大根おろし)。うまい。

シメは自家焙煎珈琲こもろさん。なんともまあ鉄板のコースですね。
などと思いながらドアを開けてみると、先ほどそば七でそばを食べていた御仁が!

「さっきそば七にいましたよねw 巡礼ですか」

と、フランクに声をかけて下さる。
マ巡礼なのだか何なのだか、正直自分にもなぜ小諸に来るのか分からなくなりつつある昨今、
皆様いかがお過ごしでしょうか。

Dsc07206


あとからもうひと方、その方のお知り合いらしき御仁が合流して話をされるのに耳を傾けてみれば、
何やら今夜はツワモノのお知り合いが集まって飲み会があるのだそうな。

ふーん。

ツイッターなのかFacebookなのか、はたまたLINEなのか存じませんが、
リアルタイムにお仲間が続々と小諸へ集結してきているらしく、
スマートフォンとタブレットを眺めながら、
誰それさんが来た、
ナニナニさんとはいついつにこんなことがあった、などと、
さほど楽しい風でもなくお話をされている。

うーむ。

彼らもきっと、こういうインフラがなければ出会わなかったお仲間たちなのだろう。
すごい時代だなあと思うし、
自分たちに照らし合わせれば、それは幸せなことなのだろうけども、
こうして外側から眺めてみると、少しグロテスクな感じもある。
グロテスク、というと語弊があるかもだし、
何がそう感じさせるのか分からないけど、
なんかこう……あるベクトルに極まっていく感じ、研ぎ澄まされていく感じ、そぎ落とされていく感じ。
自分に関係のあること、欲しいと思う物、思い合う物だけが合流していく感じが、
近親婚的な畸形の誕生を予感させて、ちょっとゾワッとさせるものがある。

  ところで「グロテスク」って、
  本来の意味は美術様式の1ジャンルのことなのですね。
  知らなかった。

別に特定の集まりや人たちをさしてそう思うのではなく、
多分自分たちを外から見てみても同じだし、
今の世の中は全体的にそういうグロテスクなコロニーが、
時空間的なレイヤーでなく、もう一段上の抽象的な距離のレイヤーで寄り集まって出来ているのだろう。

そこにグロテスクさを感じるのは、オイサンがオッサンだからなのかも知れないケド。


▼▼Closing


そんな具合に、8回目の小諸、おしまい。
今回はいつもより1時間ほど早く引き揚げた。
みやさかさんではピリカラのお味噌とりんごのジャムを買って、時間ぎりぎりになってしまった列車に滑り込む。


……何をしに来たんだろうねえw?


でも、なんだろうか、オイサンの感覚で言うとこれはきっと、
ヨノナカの人々が1日使ってディズニーランドに遊びに行く感覚と大差ないんじゃないかと思うわ。
誰かが用意してくれたアトラクションに乗っかるわけでなく、
小諸の空気に一日浸るアトラクション。
明確な、「あれを見た!」「これをやった!」っていうずばーんとしたポイントがないから分かりにくいけど。

一日使って、面白い場所を訪れ、楽しいことをする。
今日も小諸は、面白くて楽しいところでした。
ありがとう。

Dsc07227





●○● あきる野の果て○●○




最後は武蔵五日市、あきる野市のどんづまり、秋川渓谷なる渓流のあるまち。

Dsc07569

えーと、結果から言うと、駅から歩ける範囲では、もう一つでした。
クルマ道の近くを結構歩くことになって……「あ、いいな」と思える辺りまで時間がかかった。
残念。
川沿いの山に入っても大きな車道が主たる道で、
渓流の景観を楽しめるのは特定のお遊びスポットくらいだったご様子。

Dsc07343 Dsc07347
「とッ、止まれねえ!」って言ってるスピード感溢れる『止まれ』。

もっと奥までクルマで入り込んでしまって、入り込んだ先で川遊びをして帰ってくる、
というスタイルの場所だったご様子。
惜しい。
典型的な、レジャー施設化された都会のための田舎、みたいな印象を受けた。
イマイチぴんとこなかった。
綺麗な川だったけどね。

  バーベキューだウェーイ!

みたいなことであれば、上手に楽しめる場所のかもしれませぬ。
あ、バーベキューで思い出したけど、この武蔵五日市近辺のコンビニでも、
やっぱり薪を売っていました。
やっぱ青梅あたりのコンビニでは売るんだなあ、薪。
ていうか、24時間売ってた方が有難がられるし、
セブンアンドアイホールディングズが売り場面積を割くに値すると判断するくらいは
商材として目があるってことなんだろうな
(ていうか大概店外に無造作に置いてるだけだから売り場面積もクソもねえけど)。

Dsc07603
ガードレールに片思いしてる三角コーン。


一軒、目当てのコーヒー屋さんがあったのだけれども、
9時開店のつもりで行ったら開店時間が10時に変わっおり、やむなく断念。
駅前の別のお店が開いてたのでそこに入ったら、美味しいチャイをいただくことが出来ました。
まあラッキーだったかな。

Dsc07541
水を撮るのは楽しいなあ。何が何やらさっぱりだろうけどw

そんなんで、7時半到着、11時退散、という短めの滞在。
さらば、武蔵五日市。縁があったらまた来よう。



……などという、ここ数週間の休みをまとめる乱暴な日記を、
岐阜のホテルで書いているという暴挙。
暴挙、暴挙、菜の葉にとまれ。
「なのはは完売しました」。

あー。

オイサンでした。


 

 

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2015年3月 1日 (日)

■星空のメッセージ~笑顔をさがして。 -更新第973回-

……うーん、もっと早くに更新するはずだったのに
まるまる一週間空いてしまった……。

オイサンです。

ちなみにアレだ、2月25日でこの『ゆび先はもう一つの心臓』9周年を迎えました。
10年目突入。
なんかやれや。

トップ記事の日付を2015年の8月にしてあるんだけど、それももうあっという間だな……。



■笑顔をさがして~二回目の飯能~



二度目の飯能訪問記。
また行ってしまいました。こんにちは、病人です。

Dsc05854



  ……っつってる記事を書いてる最中に3回目いっちゃったんだけど。
  それもまた書く。なにも大したことしてないけど。

前回、主に飯能の西側(天覧山~)をぶらぶらしたので、
今回は反対の東側、入間川沿いに子どもの森公園まで行ってみる。

  分かる人には分かると思うが、
  つまるところ天使回(『ここなの飯能大冒険』)でここなちゃんが歩いたルート。
  マそのままをトレースしたわけでは全然なく、
  目的地だけ同じで、途中はてきとうにぶらぶらです。

実はこの日、飯能からも足を延ばしてさらに先の秩父まで行ければとも思っていたのだけど、
時間が余計にかかるのと、
朝の良い時間に着こうと思ったら睡眠時間が取れなくなりそうだったので、
マ起きられたら……という心構えでいたら、案の定起きられず飯能になった。

  ちなみに秩父(西武秩父)までは、東飯能から西武線(池袋線 → 秩父線)で40分チョイ。
  案外近いんだな。
  ついでを言うと、飯能~所沢は20分くらいだった。
  近いんだな( ← 以前所沢に住んでいた人)。

  さらにちなみに、この日、飯能から帰った足で買った『ヤマノススメ』7巻では、
  この飯能~秩父までを縦走する「飯能アルプス」なる縦走ルートのことが紹介されていて、
  秩父に行くんだったらそこを歩いてみるのもいいな、とか考える、
  ハートは既にリタイヤオヤジは私です。

この路線は、山登りに行く人が本当に多い。
朝早い時間帯は、同じ電車に乗ってる人の半分くらいが山ルックで身を固めている。
たいがい60代くらい。

東飯能駅でコンコースに上がってみると……やたら人が多い。
何ごとかと思ったら、駅伝大会があるらしい。
オイサンのようなナンチャッテジョガーとは違う、本格派のムキムキランナーの皆さんが大挙して
フトモモとフクラハギを滾らせておられました。
大学の陸上部とかいろんな層がいた。



●○● ニンニキニキニキ、ニンニキニキニキ ○●○






コレと言ったプランもなしに、町を抜けてひたすら東を目指す。
クルマ通りの多い道を歩いても面白くないし神経使って疲れるだけなので、
出来るだけ裏道や路地を選んで歩く。

マそれも町を抜けるまで。
入間川沿いに出てしまえば、あとはそれに沿っていけば自ずと目的地である阿須運動公園方面に出る
……ハズ。

Dsc05710 Dsc05713 Dsc05722


年明けからこっち、自分に課している
「ここなちゃん主人公で、出来るだけ短めのSSを一本上げる」
というお題目の材料集めの意味合いもある今回のぶらぶら。
出来るだけ大きな視野で風景を捉えるようにしたい。

……日々の疲れを抜く意味でもね。

やっぱりこう、普段ギュッと集中しているからくたびれるんであって、
ふわーっと広げた視界のどこにも注視せず、全体を一枚の絵を見るように、ボンヤリと歩きたい。

Dsc05734_2 Dsc05748


やがて入間川沿いに出、その土手を歩いていると、
静かに広がる空に、野鳥のさえずりがぽろぽろと聞こえてくる。
春先に来ると、結構やられそうだなあ。ここ。
気分いいわ。
野鳥の種類も豊富なようで、帰り道にはカワセミのダイブを見ることも出来た。
へー、こんな身近で見られるモンなんだな。

  無論、その姿を狙う望遠ハイスピードカメラのオッサンもセットで見かけます。
  「小熊がいたら、そのすぐ近くに母熊がいると思え!」っていうのと同じです(同じなのか)。
  ジオラマだったら「川でハンティングをするカワセミ」と
  「望遠ハイスピードカメラを構えるアウトドアルックのおっさん」は
  絶対セットです。

飯能の空は、とても広い。
実はこの日は、日々の憂い、心配事なんかが心にありまして、あまり晴れ晴れと気分が良い、というワケでもなかった。
そうするとまたえらいもんで……
遠い昔に聴いたお歌が、ふんわりと鼻をついて出てきたりするわけですね。


  ♪ なぜ欲しいものを 大好きと 声に出して 言えないの?
     (中略)
    繋いでるその指をはなさないで 笑顔を探して……

    ありがとう、明日また、会えるのかな……? 笑顔を探して……


さすがに、先日書いた『星空のメッセージ』のように、2番までソラでというわけにはいかず
サビだけになっちゃったけど、
この歌だって、最後に聴いてから一体十何年経っただろう? というレベルで聴いていないお歌です。
アニメ『YAWARA!』の何代目かのエンディング、『笑顔をさがして』。

  ……今調べたけど、『YAWARA!』って124話もあったのな。すげえ。
  足かけ3年?
  
うーん。歌ってすごいなあ。

なんだろう、全然関係ないのに、
「ここなちゃんがこの歌のような気持になる日も、いつか来るんだろうか?」
とか勝手に考えて、一人泣きそうになっているナイーブなオッサンがいますよ?

その日、その時、ここなちゃんのとなりにはやさしい誰かがいてくれたらいいなあと
心から願うばかりです。
ここなちゃんは、オイサンなんか相手にしてくれないだろうから。
この野郎! 絶対幸せにしてやれよ! ← うざい

ここなちゃんは天使だけど、それだけに悲劇の影を背負っているように時々見えてしまって、
なんだかオジサンは不安です。どうか健やかに幸せになって欲しい。


そんな風にうす気味の悪いオイサンが一人、てくてくと涙ぐみながら歩いていく、飯能は入間川のほとりです。
通報しないで上げて!


▼YAWARA! ED 笑顔をさがして




入間川沿いに入ってからは、本当にひたすら川に沿って、
水の音、鳥のさえずりに耳を傾けながら歩いただけで、
これと言って面白いことも起こらなかったので何も書くことがない。

写真を撮るにも、何をとらえたものか迷うような有様で……
この日、このときの気分を、うまく切り取った画が、ちょっと見当たらん。

Dsc05977


ただ、家に帰ってからここなちゃん回を見返したら(『ここなの飯能大冒険』の回です)、
この八高線の高架をくぐるシーンはしっかりあって、ちょっと嬉しかった。
一応少しは足取りが重なっていたのだな。

Dsc05787 Dsc05805
 Dsc05812 Dsc05997


しかしまあ、東飯能の駅あけぼのこどもの森公園まで、オイサンの足で大体約1時間半。
慣れない道をブラブラしながらだから無駄があるにしても、小一時間。
中学生女子の足で、ここなちゃんは一体ここまでどれだけ時間をかけたのか。
しかも、物語の舞台は、おそらく真夏。
いやあ、よくやるよ。
オイサンだって、冬だからまだいいけど、夏だったらちょっとうんざりしてると思うよ。

暑い暑い。

作中で、ここなちゃんのお母さんが「あんなに遠いところまで?」って驚いていて、
そんなに遠いもんか? と思ったし、
実際行って帰って来ても、まあこんなもんかと思ったけども、
自分の15歳の子どもが、歩いて往復10㎞行って帰って来たって言ったら、
確かに「遠くまで歩いて行って帰ってきた」と思うかな。

電車に乗って出掛けるならともかく、車でないと行き難い場所に、自力で行って来たら、
それはなんだから全然遠い所へ行って帰って来た、っていう感じにはなるかな。
自分の実家から10㎞ってどこの辺になるだろうなあ。



●○● あけぼのこどもの森公園 ○●○



そんなこんなでたどり着いた、飯能あけぼのこどもの森公園。

Dsc05839


正直、ちょっとバカにしてたけど、想像していたよりずっと雰囲気のある場所だった。
何より建造物が、メインのあのムーミンの家がとてもこだわって作られていて圧倒された。
曲線の美しさや、屋根にむした苔や。
何やら建築関係の、有名な賞もとっているような代物らしい。
それも納得のディティールだった。
一見の価値あり。

Dsc05847


公園の規模自体は小さいけど、
行って1、2時間雰囲気に浸る分には十分楽しめる。
建物の後ろ、木々の影から、ムーミンではなくここなちゃんがひょっこり顔を出しやしないかと……
心待ちにしていると思しき気持ちの悪い大人も、オイサン以外に数人いたように思う。
早く家に帰ってコンカツしなさい! 余計なお世話だ!

Dsc05863

Dsc05884

Dsc05935

公園の中をぐるりと、道に沿ってひと巡りし、
メインとなるムーミンの家には、……正直、オッサンが一人で入って良いものか躊躇した。
だって、大抵は小さなお子様連れのご家族やお母さんなのだもの。
そんな中、こんな気持ちの悪いアニメオタクのアラフォーがのそのそと一人で入った日には、
ムーミンならぬ食人鬼が、まだ肉のやわらかい人間の子供をさらいにやって来たとか思われたって、
文句が言えない。


イヤ、別にそんな保身的な意味でなくても、
なんというか、お邪魔になったらイカンとか、怖がらせたらイカンとか。
そんな気分で。

けど、まあ、ちょっと覗いてみるくらいいいだろう、場違いだったら出ていけばいい、
という気持ちで入ってみた。

Dsc05968

Dsc05964

イヤ、中もまあ素晴らしかった。
本当にちゃんと、中で暮らせるくらいの空間があって、
まあ人間サイズの大人が暮らすには不便はするだろうけども住めないことはなく、
きちんとした建築だったし、ファンタジーな感じを損なうこともなく再現していた。
温かみのある風合いで、まさに妖精の住む家、
ここなちゃんの住処にふさわし……そうではなくて。

見ごたえ十分のときめきスペースでしたよ。

それとまあ、痛感したのが、子を持つ親というのは、
子を持っていることによって正しく年を取ることが出来るし、
と同時に、いつまでも自然に子供でいられるのだな、ということを学んだ。

やはり世の中には、
「子連れでないと足を踏み入れがたい・事実上踏み入れない場所」が存在していて、
そこでは子どもの社会・子どもの世界を垣間見ることが出来るし、
自分が子どものこころを取り戻すことも出来る。

マ大人なんてものは子どもの自分も心の片隅に変わらず持ち続けているもので、
それが失われることはないのだけれども、
そのスイッチを入れるための何かが必要なこともある。
それがそういう場所であったりする。

別に場所でなくても、ただ子どもと一緒の時間を過ごすことで、
そういうスイッチが入ったり、ふっと自分を、何十年も前の自分の時間に引き戻したりすることも、
きっとあるに違いないだろうし。

子を持つ者は、持たない者よりも、ずっと多くその機械や時間を得るのだろうなあ、
それをまたきっと「健やか」と呼ぶのだろうなあと、
子どもたちの手を引いてムーミンの家の中を徘徊する若いお父さん・お母さんたちを見て、
オイサンは思ったのであったよ。

だからまあ、今回、ちょっとだけでもそういう機会をくれた、
そういうことに気付かせてくれる機会をくれたここなちゃんは、
きっと俺たちみんなの娘なんだな、というこれまたなんとも気持ちの悪い結論にたどり着いたオイサンでしたよ。

Dsc05901 Dsc05902_2


ああそうそう、
件のムーミンハウスの中には本物の暖炉があって、
お役所の方なんでしょうかね、管理のご老人がそばでずっと火を絶やさないように、
薪をくべたり、炭を崩したりしていた。
本物の暖炉に当たるのはオイサンも初めてだったのだけど、いやー、あんなに暖かいものなのですな。
知らなかった。
熱の及ぶ範囲は広くはないけど、近くにいる分にはすごく暖かい。
寒い国で、人が集まるには十分な理由になるものだった。

サテそうして、おぼろげな記憶を辿って
ここなちゃんが本を読んでいたあたりだとかを周ったら公園をあとにする。
後でアニメの方を見直してみて気付いたけど、
自分で撮った写真も公園内では結構作中のアングルを再現して撮れていて、
あー、大体こういう風に撮られることを想定して作られているんだな、と思いました。

帰りは、ほぼ元来た道を帰るだけ。
川のほとりで、アウトドアベストに望遠レンズでカワセミのダイビングを狙っているカメラ親父がいたけど
これはもう先に書いちゃったからイイや。

そのくらいだったかな。

Dsc05820 Dsc05988_2


しかしまあ、本当に飯能は空が広い。
前回、天覧山を登った時は、モノが山登りだっただけに殊更大きく感じることはなかったのだけど、
町から川へ、平地を歩いていると、ちょっとこの広さは無いな、というくらい広く感じる。
これで空気がもっときれいだったら、良い星空が拝めるのだろうに。



●○● 突撃! アニメキャラのバイト先 ○●○



町に戻って来て、今回のもう一つの目的であるお菓子処、夢彩菓すずきさんへ。
なんかっつったら、『ヤマノススメ』の主人公、あおいちゃんのバイト先です。
この辺はすっかり聖地巡礼ですな。
ていうか、お前こんな分かりやすいところ一回目で抑えとけよってハナシですが。

お店の前に来てみると、
ババァ~ン! あおいちゃんのPOPが!!

Dsc06030


……なんか、申し訳ない。いいのかなあ、こんなんで。
マこの飯能の商店街は、あっちこっちにあおいちゃんだったり、ひなただったり、
ここなちゃんだったりババアだったりのPOPが、お店の人のコメント付きで立っているわけですが、
若干こう……低年齢向けを感じさせるコメントになっててオッサンには気恥ずかしいものがある。

  「ひなたちゃんと一緒にたい焼きを食べよう!」みたいなノリ。
  まオイサンなんかは、これにつられてやってくる中では、
  多分もう年齢が一番上の方だろうから、お若い人たちとも若干感じ方は違うのだろうけど。
  ……そうなのかな。

飯能市では成人式で『ヤマノススメ』の1話を流したのだそうだけど、
なんか、よくわかんないですね。

あとね、前にもちょっと言ったけど、飯能の『ヤマノススメ』キャラPOPやキャラグッズは、


   絵  が  荒  い  。


解像度の低い元絵をガーっと拡大したんでしょう、
ちょうザラザラで、遠目にはいいんだけども、近くに立つと結構残念。

ところで、そのお菓子屋さん、すずき/夢彩菓さんには先客がいて、
スポーツサイクルに乗ってやってきていた男性2人+女性1人のパーティが甘いものを買っておられました。

オイサンも、自分用にシュークリームを一つと、
アラフォーへのお土産に、あの大人気声優の阿澄佳奈さんも収録現場に買って行ったという
夢馬(むーま)ちゃんクッキーを買って帰りました。

Dsc06180

この夢馬(むーま)ちゃんクッキー、非常にパンチの効いた甘さです。
甘さっつうか、バター……かな? とにかく、結構腹にたまる味。
中途半端な空腹とか甘いものほしさで食べると
ゲージが振り切れること請け合いの、相当しっかりしたスイーツです。
とにかく甘いものが食べたい! という時に、ちょっと濃い目の珈琲とかと一緒にいただくとてきめんにおいしい。

お店は、アニメ本編中で描かれているの全くそのままで、
小ぢんまりとしてながらも、地方の個人経営洋菓子屋さんとは思えないくらい、
おしゃれで行き届いたお店でした。
びっくり。
……とか思ってたら、なんと二度びっくり、
もとは創業100年を越す超ド級の老舗だったのね……。
し、失礼こきました……。
そんなお店にアニメキャラのPOPとかどどんと置いてていいのかしら……
そんな柔軟さ、気取らなさこそが、100年も続く秘訣なのかもしれませんわね。
いやあ、100年も続けてると、ホント何が起こるかわかったもんじゃねえですね。

そんな夢彩菓すずきさんの、100年の歴史をしのばせる飯能銘菓がこちら。

Dsc06037_2


「げどう」です。
藤村Dではありません。

さすが100年ともなると、きれいごとだけでは乗り切れないこともあったに違いなく、
ときにはげどうと化して、畜生道に身を落とさなければお菓子屋としてはオロカ、
その命を永らえることすらままなr(中略)はサクサク、中はふんわり餡子でとってもおいしいです。

これからお越しになる方々は、
美少女キャラのパンツのことばかり考えていくのではなく、
そういうことも頭に入れてから行ってみるとまた何か違う見え方がしてくるかもしれませんな。



●○● Closing ○●○



デこの日は、ゴハン食べて……おしまい。

実はこのあと、入ろうとしたおそば屋さんが満席で、
じゃあ仕方ないと前回も行ったお店(駅から結構遠い)まで歩いたら今度はそこが貸切、
他に行くアテもなく、目についた中華屋さんに入ったら、
多分隣駅でやってた駅伝大会の余波なんでしょうな、これまた激混みで30分近く待つことに。
まあちょっと、のんびりして終わるには巡り合わせが悪かったですかね。
残念。やむなし。

Dsc05975


……こうして、我々探検隊の、2度目の飯能探検は幕を閉じた。
伝説の幻獣と呼ばれるムーミンの家を見つけることはできたが、
天使……ここなちゃんは、巣の痕跡はおろか未だその影すらも我々の前に見せることはない。
文字通りしっぽもつかませないというやつだ。

  しっぽ……ここなちゃんの、しっぽ……?
  毛とか生えてるんだろうか……( ← 何やらいろいろ考え中)。
  そういや昔、『天使のしっぽ』ってあったなあ。アレなんだっけ。アニメ? ゲーム?

しかし我々は諦めない。
いつの日か必ず、天使・ここなちゃんの前に跪き、

  「えへ、見つかっちゃった♪ よく頑張りましたね、えらいえらい」

って頭をナデナデしてもらうその日まで!
い、いやあそんなことないよ、ここなちゃんの方が全然がんばりやさんだお……///


  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
  いつぞやも書きましたが、この人は別にそこまでここなちゃんが好きなわけではありません。
  ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※


マそんな感じでヒトツ。

子どもの森公園は、やはり主役はお子さんだけれども、
ムーミンの家は大人でも見て入って、十分に楽しめる意外性を持っているし、
本物の暖炉は一度当たってみる価値ありの代物。
まちからはチョイと距離がありますが、
これからの暖かくなる季節、野鳥のさえずりに耳を傾けながら、
入間川のほとりをブラブラ歩いてみるのもオススメでやんす。

Dsc06003


その時にはヒトツ、夢彩菓すずきさんでげどうをお供に是非どうぞ。
買って食べながら歩いていれば、ふわふわヘアーのJC天使の一匹や二匹、釣れるかもしれませんな。

あー、今度は本物の囲炉裏にあたってみてえなー、
などと危険な思想にとらわれ始めるオイサンでした。




 

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2015年2月 | トップページ | 2015年4月 »