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2014年12月14日 (日)

■SS『のんのんびより』 あやとりのソラ、夏海のストーン・ヘンジ(1) -更新第958回-

 

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 学校からの帰り道、調子に乗ってふざけていたら、うちだけバ

スに乗りはぐれてしまった。

 次のバスまで二時間ちょい。うちの足だったら、それだけあれ
ば家まで十分歩いて着けたけど、バスを待って帰るのとどっちが
先に着くか微妙なセンだったから待つことにした。夕暮れの校舎
で、うちみたいな美少女が一人で黄昏てるってのも絵になるじゃ
ん?
 かといって、一人では学校のどこへ行くあてもない。ぶらぶら
いつもの教室に帰って、なにか暇をつぶせる物がないか物色した
結果、じゃじゃーん。れんちょんのロッカーに寝かせてあった、
大きな図鑑を拝借することにしました。
 星や宇宙について書いてあるその図鑑は、子ども向けだからか、
やたらでかくて分厚い。とても立ったままじゃ読んでいられなか
ったんで、手近にあった兄ちゃんの机のイスを蹴っ飛ばし、腰を
下ろして開いた中身はさすがにうちには簡単すぎてちょっと退屈
だった。けど、そうかそうか。そういえばれんちょんは、一昨日
の晩、運良くみんなで見られたナントカ流星群にいたく感激して
たっけ。多分これはその余波で、星についてもっと見てみたくな
ってどこかから探してきたんだろう。れんちょんはそういうとこ、
勉強熱心だよね。感心、感心。今朝になったらもう流れ星のこと
なんかきれいサッパリ忘れて、ゆんべのドラマのことしか頭にな
かった姉ちゃんとはえらい違いだよ。……まあ、そのドラマの真
似ごとしてて、バスに乗りはぐったうちが言うことじゃないんだ
けどさ。それには一つ言い訳があって、そもそもうちは、ホント
はその裏でやってたピラミッドとかモアイとかにプロレス技をか
ける番組の方が見たかったんだよね。ジャンケンに負けちゃあ、
まあ仕方がない。
 けど、一昨日の流星群は本当にすごかったんだ。うちらの家の
周りはど田舎中のど田舎で、普段でも星はよく見える方だけど、
あんなにいくつもいくつも、間をおかずに星が尾を引いて消えて
いくのはさすがに見たことなくて飽きなかった。その最後、ひと
きわ大きな明るい粒が山のすぐ向こうへ落っこちるみたいに流れ
たときは、まるで花火みたいだってみんなから歓声が上がった。
天気にも恵まれた。その分その次の日、つまり昨日はバカみたい
な大雨で一日つぶれちゃったんだけど。
 さて、そんなどデカい図鑑もあっという間に読み終えてしまっ
ててきとーにロッカーに返したら、もう本格的にすることがない。
なにかないかと勢いで兄ちゃんの机を漁ってみたところ、なんか
色々出てきた。どーして学校の机から、ニッパーやらガラムマサ
ラやら出てくるんだろう? こんなの、どこで買ったんだ?
 するとそのさらに奥から、さして大事なものでもないみたいに、
ヒラッと滑り出た紙が一枚。お使いのときにかーちゃんに渡され
るメモくらいのそれには、名前を書く欄と三つの枠が印刷されて
て、確かに兄ちゃんの字で書き込まれてた。さてさて、これは一
体何でしょう? 名探偵夏海ちゃんの暇つぶしの時間だよ。
「あれ……。ほーい夏海ー、まだ残ってたのか? 閉ーめーるぞ
ー」
 みしみしと湿った廊下から足音が近付いてきたかと思ったら、
顔を出したのは案の定カズっちゃん先生だった。そりゃそうだ。
うちらが帰ってしまったら、ここには他にはヒト、おらんよね。
違う人だったら怖いよ。時計を見たら、いつの間にか小一時間が
過ぎてしまっていたのさ。
「ああ、カズっちゃん。ん、わかった」
 あれでも急かしてるつもりなのかなあ。いつもののんびり調子
でカズっちゃんが言うから、うちも引きずり出した兄ちゃんの
机の中身を適当に押し込み戻してぶらっと立ち上がる。戸締まり
なんてしなくても誰も入って来やしないし、取る物なんか何もな
いから放っといたっていいんだろうけど、さすがに学校はそうは
いかないんだろうか。カズっちゃんは教室の窓をほっそい目で確
かめながら教室を一回りして、遠回りにうちのところまで巡って
きた。
「一人とは珍しいねえ。他は? ケンカでもしたかあ?」
「んーにゃ。うちだけバス乗りはぐっちゃったんだよ……。ま
さか『転校前の最終日、バスに乗って別れ別れになる恋人ごっこ
』をやってたら本当に自分だけ置いて行かれるとは……」
「何をしとるのかね君たちは……。楽しむのはいいけど、周り巻
き込むんでないよ」
「ねえ、あのバスって田舎のバスのくせに、なんでああ時間にシ
ビアなんだろうね? どーせ次なんて、毎度三時間四時間あとな
んだから、ちょっとくらい待ってくれたっていいじゃんか。あの
運転手め、顔は覚えたからな」
「ブッソウなことは先生に聞こえないとこで言いな。仕事が増え
るでしょー。向こうだって、アンタらの顔くらい覚えてるんだよ。
アンタらの都合に合わせてたらキリないってわかってんでしょー」
 カズっちゃんは色々いい加減なくせに、たまに大人みたいなま
ともなことも言う。まあ大人だから当たり前だけど。それでも、
うちの覚えてるカズっちゃんの一番昔の姿は高校に上がるか上が
らないかくらいのはずなんだけど、あまり今と変わらなかった気
がする。
 それに、とカズっちゃんは続けた。
「そんな遊びしてたんなら、引き裂かれた二人は気分も盛り上が
ってちょうど良かったんじゃないの? 運転手さんも、気ぃ利か
せたんかもよー」
「その発想はなかったな……」
 大人のくせにたまに子どもよりも子どもっぽいことも言うから、
まあバランスもとれてるんだろう。そうか、あの運転手もノリノ
リだったのか。仲間に入りたいならそう言えばいいのに。
「そんなことより、忘れ物ないかい。そういうことなら乗っけて
ったげるよー」
「え、マジで。ラッキー」
「アンタ残してひとりで帰れんでしょーが」
 黒板を拭いたり、チョークの残りを確かめたり、教壇の中を覗
いたり。意外とまめな動きをしながらカズっちゃんは、今日だけ
だかんなー、と念を押した。
「そして今日は軽トラなのだが……それ、進路票?」
 振り返ったカズっちゃんは目ざとく……といっても、カズっち
ゃんの目はいっつも寝てるみたいに細くって見たこと無いけど…
…うちが指にはさんでた、さっきの紙っぺらに気付いた。
 そ、さっきの紙は進路票。三つの枠は第一から第三までの志望
を書く欄で、兄ちゃんのそれは、第一と第三は書いてあって、な
ぜか第二が空欄だった。
「ああ、うん。兄ちゃんの机漁ってたら……拾った」
「キミね。それは拾ったと言うのだろうか」
「なんか書きかけみたいだから、持って帰って渡しとくよ」
 うちは別におかしなことを言ったつもりはなかったんだけど、
カズっちゃんが「そ。お願いね」と返事をするまで、なんだか変
に間があった。変な溜めと、いつもよりも噛んで含めるような間
延びした言い方はどこかで聞いたことがある。面白い物を見つけ
たり、なにかが上手に出来なかったれんちょんに言葉をかけると
きはこんな感じじゃなかったかな。
「てか今日、軽トラなん? なんで?」
「うん、それなんだが。……なんでだろう。なんか理由があった
ハズなんだけど……」
「おいおい」
 普段は普通の車のはずだから、今日に限って軽トラなのには何
か理由があるんだろうと思って尋ねてみたらカズっちゃんの動き
が止まってしまった。そしてどうしても理由が見当たらないらし
く、しばらく首を傾げたままだったけど、「ま、走ってりゃ思い
出すでしょ」と威勢良く、ポケットから、いつもと違うキーホル
ダーのついた鍵を取り出すと歩き出してしまった。
「帰るよ」
 大丈夫かなあ。教室を出ていくカズっちゃんについて行きなが
ら、ちょっとだけ不安になる。まあうちは、最終的に家に着きさ
えすりゃあなんでもいいんだけどさ。
 
 
 
    ☆    ☆    ☆


                       ( 続 )





                
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