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2014年2月の11件の記事

2014年2月26日 (水)

■DANCE WITH FOXES~よく歌う神様と眠る湖の歯ぎしり~ 北海道旅行19・阿寒編-5・3日目 -更新第909回-

中学生くらいのジャージ女子が
朝食バイキングでやたら真剣にお味噌汁よそってる姿を見るだけで若干こうふんできる人生って、
……すてきやん?(徐々に近づくパトカーのサイレンを聞きながら


お早うございます、オイサンです。

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ここは夢見るオッサンの雪中夢。
北海道旅行の19回目・阿寒編、三日目の様子をお届けします。


ちなみに冒頭ので書いたお味噌汁少女は
白とライトグリーンのツートンジャージをお召しになられ、
やたらと真剣な眼差しでお味噌汁をよそっておられて実に印象的だった。
部活でもきっと、あんな感じなのだろう。
普段は家で、自分でお味噌汁よそったりしないのだろう。

彼女とはたまたま席が同じ方向だったようで、オイサンも自分のお味噌汁をよそったあとで
前を行く彼女に続く格好で席へ戻ったのだけれども
(決してあとをつけたとか、ジャージのお尻に吸い寄せられていったわけではない)、
フと目に入った彼女のテーブルは……


  一族全員、ジャージでした!!


柄やデザインは皆マチマチだったのでたぶん一族の正装というワケではないと思うのだが……。
テーブルには、父母と彼女と、彼女の兄弟とおぼしき年齢の子どもが数人。
のみならず、もう一組夫婦らしい大人の男女がいたので
親戚二世帯での旅行だったのかも知れないが、いずれにせよ全員がジャージ。
ジャージ一族。
うーん。
そういう一家なんだろうなあ。
いろんな家があるよねえ。



____________________________________
▼おーざっぱな予定表

 1日目、1月17日(金)。羽田~釧路~阿寒湖移動。釧路で珈路詩に寄る。
  ↑ Complete!!
 2日目、1月18日(土)。阿寒湖滞在。雪山軽登山。
  ↑ Complete!!今日ココ
 3日目、1月19日(日)。引き続き阿寒湖滞在。大きな予定ナシ。温泉街散策。
  ↑ ★今日ココ

 4日目、1月20日(月)。阿寒湖~旭川移動。バスで5時間。喫茶花みずきでお茶したい所存。
 5日目、1月21日(火)。朝から美瑛散歩。花みずきでスコーン食って帰る。

____________________________________



■三日目



さて、そんなハピネスの予感溢れる阿寒滞在も今日で三日目。

この日は特に何をするということもなく、
朝、午後近い時間まで部屋でブログの更新するなどしてから街の散策に出かけた。
阿寒湖の南端、温泉街の東のはずれの森の中にちいさな自然探勝路が設けられているのでそこを歩いてみる。

宿の人間は、冬の期間中、探勝路は雪で埋もれて入れないようなことを言っていた気がするが、
昨日安井さんが
「明日の朝は、団体さんをぼっけの方へスノーシューで案内するんですよ
 (だからオイサンの最初の予約希望は断られた)。
 普通の靴でも入れるくらい、固められてるはずですけどね」
と言っていたので、恐らく立ち入ることは出来るのだろう。
ダメそうなら引き返してくればいい。

「ぼっけ」というのは阿寒湖のみどころの一つで、
探勝路の中にある、高熱のガスが噴き出ているポイントのことだ。
湖もその付近は凍らず、湖面の方から近づこうものならたちまちドボンのデンジャラスゾーン。
さすがにその近辺は危険地帯として、湖側からは近づけないように囲ってある。

それだけならまあ時間は余るだろうけど、
昼ゴハンを食べて、適当な喫茶にでもしけこんで、よその宿の温泉にでも浸かってのんびりしよう、
というのが今日の趣旨。
はっはっは。
ぜいたく極まりないな。
いい温泉旅行だ。

昼間は
あまり天気も良くなくて、山へは昨日のうちに登っておけて良かったとつくづく思う。
ワキ腹さんの痛みの方も、一切チカラをゆるめない容赦のなさですがすがしい。
旅ってのはこうでなくちゃいかん。



■凍える湖の朝



早朝、目を覚ました5時半頃には湖の上は雲も晴れており、
冷え込みも絶好調の-18℃超えだったのでこらダイヤモンドダストワンチャンあるでと思い
喜び勇んで氷の上をイヌハヨロコビニワカケマワリしたけども
日が昇り始めるとあっというまに山は雲をかぶってしまった。

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ソウナノヨネー。
日が昇り出すと急に雲が湧いて出るのよネー。
マいいんだけど。

そんなことで、この日も元気に朝っぱらから氷の湖の上をずんがずんがと歩いていく。
危ないからやめとけって言われたのに。
大丈夫。
今日は、昨日観光案内所で言われた通り、
スノーモービルのコースの旗の立ってるところしか歩かないから。

  ↑昨日はそんなこと知りもしないでガンガン湖のド真ん中方面まで攻めてたヤツ。

氷上祭りの受付に貼ってあるコース図を見るにつけ、
どうやら1周8㎞のコースに沿って歩くと、神社のある湖上の島へ行けるらしい。
んじゃそれ目指してみましょ。
湖さんは今日も元気に、ズーン、ドォーンと朝のビートを刻んでおられます。
オイサン調子に乗って鼻歌なんか歌いながら歩いていると、突然

  ビキッ!!

……という、ものすごいイヤな音にかすかな振動を伴って、
今オイサンの歩いている目の前の足下に新しい亀裂を走らせたりもなさいます。
正直、シャレにならない。

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こ、こいつ本気で俺を殺りにきている……!?
いや、でもね、あの不思議な音を聞かされ、こんなことが目の前で何度も起こったりしたら、
そりゃどこかで神様が見てるんだって思っても不思議はないですよ。
マジビビりますよ。
いきなり足下に線引かれるわけですからね。
「人間! これより先は我々神の住む領域。
 何人たりとも迂闊に立ち入ることまかりならん!!」
という声が聞こえてきそうです。
んなわきゃあない。

そんな調子で2、3回、足下ビキン! をやられながらも小一時間氷上をうろついていると、
さすがはマイナス20℃の氷の上、足先ががちんがちんに痛くなってくる
「へっ、今日はこのくらいで勘弁してやる」
とお決まりの捨てぜりふを残して引き返すことにする。

結局神社までは未到達。
そりゃそうだわ。
あんな氷の上なんか7kmも8kmも歩けるかー!! ← 別にその気になれば歩ける

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とは言ったものの、結構歩いてきてしまっていて、
帰りはいい加減寒いわ遠いわで半分飽きてしまい
「タクシー通らねえかな」
などと無茶を考え出す始末。
もちろんそんなことがあるはずもなく
(つーかこの温泉街、タクシーなんてメインストリートにだって通りやしないよ)、
♪やーぶれかーぶれのやーぶ医者がー♪
と、れんちょんよろしく、氷の上を歌いながら帰ったのだった。
つま先が壊死するかと思った。



■朝風呂~朝食~探勝路を行く



手先足先がこわばって痛み、
このままではまともに朝食をとることもままならない状態だったので(大袈裟にあらず)
宿に戻るとまず真っ先に温泉をいただき、
それからたらふく朝ゴハンを食べ、webに駄文を垂れ流し終えたらさあ出発です。

うえー、寒みィー。
外出たくねえー。
お前何しにきた。
あと嘘つくな。
お前寒いのも外も大好きだろ。

先ずは、宿の裏手……というか、
湖側の出口からほとんど繋がっていると言っても差し支えないくらい近くにある、
探勝路の入り口へ。

入り口が何かの植物の棚になっているが、これが異様に低い。
オイサンの身長だと余裕でアタマつっかえるので注意が必要だ。
足下は、全然ふつうに歩ける程度に踏み固められている。
誰だ、冬場は入れないって言ったの。
っていうか、普通に散歩してたり、
犬つれて散歩してたりする地元らしき方々数人とすれ違う。

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弁慶の足湯。弁慶ちょうのんびり。
しかし神威岬の方面といい、北海道にはあちこち義経・弁慶がらみの伝承が残っているなあ。
全部が本物ではないのだろうけど、
これだけ残ってるってことはやはり何らかの関わりがあったのだろうなあ。
どういうものが見つかれば史実に認めてもらえるのか分からないけど、
いつか、北海道まで落ち延びた説が立証される日が来るんだろうか。
研究してる歴史家とかいるのかね。
歴史研究の中ではどういう位置にあるんだろう、この説は。


  ▼湖~鳴き声とようせいのしろ、そして外人部隊


いま自分が歩いているのは、位置的には、阿寒湖の南端のちょうど真ん中あたり。
すぐ先に小さな島が見える。
歩いているとときどき、湖側の林の木々が途切れてぱっと視界の広がるポイントがあって、
目の中がすっかり青と白で二分される。
研ぎ澄まされた風景のシンプルさよ。
余計なものがそぎ落とされて、心がとても落ち着く。

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ぼーっと眺めていると、また
……例のあの不思議な音が、ひゅーんひゅーんと聞こえてくる。
本当に一体、なんの音なのだか。
お祭りの会場近くにいるといろんな雑音に紛れて分からなくなってしまうのだけど。

  このときは
  「もしかしてお祭り会場の方で、氷に穴をあけてスピーカーか何か沈めて、
   湖の中に音を流しているんじゃないか」
  とか勘ぐったものだけど。
  そのくらい、自然の音とはオイサンの感覚では思われない、
  不可解で奇妙な音だった。

夜はドーンドーンと鼓を鳴らし、
朝方にはギシギシと氷の歯ぎしりを響かせて、
昼近くに起き出してきてはこうしてエレキな笛を吹く。
阿寒湖の神様はロックだ。

そしてまた、それとは別に、
こうして森の中から湖を眺めていると、心に流れてくる音楽がある。
『ドラゴンクエストⅤ』の妖精の城……天空城の音楽がそれで、
澄み切って、神秘的で、厳かなのに心安らかになる。



まゲーム本編の方では、春が訪れなくなってしまった妖精の国に、
主人公が春をもたらすために奔走するエピソードだったりするけども。
神威岬で見た風景が竜王の城に見えたりと、
つくづくオイサンの風景の原体験はゲームから受けたインスピレーションで出来てるなあと感じる。

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この時なら、目前の氷の湖上に妖精の城が現れても、
驚きこそすれ、その有り様を疑うことはなかっただろうと今振り返っても思う。
四十近いオッサンの考えることでは、まあないんだろうけども。
だいたい当の『ドラクエⅤ』でだって、大人になった主人公の目に妖精は映らず、
子供たちの導きでようやく妖精の城にたどり着くんだけど。

もしオイサンがもう少しオイサンでなければ、
そういう者たちとここで出会うことが出来たのかも知れんなー。
……などと考えてしまうくらいにはメルヘン脳だし、
この風景や空気には説得力があるのでした。
というよりも、堀井雄二氏のアタマの中にこういう風景の引き出しがあって、
それを明確にイメージしながら、彼は世界をこしらえているのであろう。

ぷらぷらと何の緊張感もない。

そこからまた少し行くと、行く手に人影のある。
ライトイエローのスノースーツに身を包み、
スノーシューにストック、中型のザックを背負った屈強そうな三人組……
一人は女性だったかな。
オイサンには理解出来ない言葉で、ストックの先で植物にかぶった雪をどけてやりながら
なにやら話をしておられる。
恐らくはそういう研究をしているか、雪・山界隈の専門家の集団であろう。

それにしても、一体どこから現れたのか? オイサンとは逆回りでやってきたのか?
訝しんで辺りを見てみれば、なんとまあ、彼らの足跡は湖面から続いていた。
ははあ、湖を渡ってやってきたのか!

……ヤベエ、なんだそれ。ちょう楽しそうじゃないですか……。
いいなあ。
やりたいなあ。
オイサンもスノーシュー履いて阿寒湖縦断してえ!

昨日の山登りといい、自分の世界はなんて狭いんだと、
こうしてたかだかしょうもない温泉旅行をしているだけでも痛感させられる。
こういうことを当たり前に暮らしている人たちがいるんだからねえ。
イヤになる。
楽しそう。
いいなあ。

……などという。
オイサンに新たに滾る欲望の芽を植え付けて、
謎のノルマンディー上陸外人部隊はざっこざっこと雪を踏みしめ
森の奥へと消えていきました。



  今日、森の中で、妖精の城を見て、三匹のトトロに出会った。



もしオイサンが子どもだったら、そんな風に日記に書けたのかも知れない。

 ▼地割りて出でよ、炎と氷よ

ぼっけの手前で、大きな地割れに出くわした。
遊歩道が道なりに1m近く裂け、高いところでは10㎝近く隆起している。
何があったのかはすぐにわかった。
霜柱だ。

霜柱ってこんなパワフルなシロモノだったっけ? と思わせる、
否、
ほとんど氷柱と言ってもいいくらいの大きさの氷のつっかえが、
地表を突き上げ、持ち上げていた。

  ここは俺が支える!
  お前は先に行け!
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……と言わんばかりの霜柱のみなさん。
パワフルやのう……。
しかしなんだ、ぼっけが近いっていうことは地下の温度なんか高そうなもんだけど、
こんな霜柱が出来たりもするのね。

デまあ、ぼっけ。
なんかここにたどり着くまでに、
妖精の城と謎の楽の音、謎の外人部隊上陸作戦、謎の大地割れ大会など、
次から次へとに出くわしたせいで肝心のぼっけさんの印象は薄い。
食われ過ぎ。
もっと頑張れ(無茶言うな)。

こうしてぽっこんぽっこん言ってぼっけさんがガスを噴き出している間にも、
湖からはあの、ぴゅーんぴゅーんという音が鳴り続いている。

しばらくそこで地球が屁ぇこくのを見守ってから(言い方)、
森の中を抜けて町の方へ戻った。

その途中でも、遊歩道ではない森の中から突然スノーシュー履いたご婦人二人が現れてビックリしたりする。

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■町巡り~アイヌコタン~昼食



しばし町の中を巡る。
小さな路地とか、なんてことのない神社、公園。墓地。
何か自分たちの暮らしとちがうもの、変わったところ、
ここまでは同じなのに、ここだけが半歩分ずれている……
そういう、旅先で出会うちょっとした自分とのちがいが、なんだかとても嬉しかったりする。
だからオイサンは、旅先の小さな町では
公園、お墓、神社に学校、郵便局。そんな場所に好き好んで近付く。
まあ観光客のやるこっちゃない。
けどそれが楽しい。

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お昼ゴハンの目当ては、エゾシカ肉。

昨日はあてにしていた店が二軒とも休みという憂き目に遭った。
一軒は完全に営業期間の情報を見落としていたから仕方ないが、
もう一軒は営業しているはずのところを予告なしの休業だった。
まあ、それもやむなしなのだろう。
必要なときだけやりたいようにやればいい。
無駄に頑張る必要はないと思います。

今日も同じメに遭わないとも限らないけども、調べられるだけ調べてそれらしい店に向かう。
アイヌコタンにある喫茶と軽食の店。

……はい残念お休みー。
まじでかー。

まあしゃあねえ。ついでに、このアイヌコタンをぐるっとひと巡りしてみよう。

 ▼アイヌコタンの様子

包み隠さず書くけれども、昨日このアイヌコタンを初めて見た時は、正直ギクリとした。
この看板の字面。
これはどうやら関西で同和教育を受けた者特有の感覚らしいのだけども、
「部落」という言葉には被差別的な意味合いとイメージがセットになってついて回る。
それが全国的なものだと思っていたので、
自らこうしてデカデカと名乗っていることに驚きを禁じ得なかった。
しかし言葉本来の意味合いだけを考えると、おかしなことは何もない。
「○○集落」「○○村」というのと同じことだ。

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  今でも、あの道徳の時間とかやってんのかなー。
  道徳……道徳ねえ。
  道徳を、無言のプレッシャーでどうにかしようとい授業であったような気がするのだが。
  どうでもいいけど「道徳ねえ」を「道徳姉」に変換するのやめろ。
  ただの礼儀作法に厳しいおねえちゃんに見えてくるから。

とまあ、頭でそう理解しても長年沁みこまされてきたものはそうそうぬぐえるわけもなく、
その言葉のイメージに引っ張られて、オイサンにはこの一角がちょっと重苦しい空気を纏ってるように見えてしまった。

  マだからといって、
  「この看板は関西のお客さんウケがよくないので、商業的に配慮してやめた方が良いですよ」
  なんていう風には思わない。
  ビックリさせときゃいいんだ。
  そしたら自分たちの感覚の方が偏ってることに、ここにきて気付くだろう。
  「関西」でくくっちゃったけど、そもそもオイサンが過敏なだけかも知れん。

立地もちょっと特殊で、
お写真を見てもらえれば分かると思うが、
奥ゆき数十メートルほどのドン突き袋小路が結構な斜面になっていて、
その上り坂のカタカナのコの字型の小路にお店が並んでいる。

入り口のゲートにも、最奥の建物にも、アイヌでは最高の神とされるフクロウの巨大な
……これは大げさでも何でもなく「巨大」と表すに相応しい……木彫のオブジェが、
見下ろすようにあしらわれている。

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ぶっちゃけます。
オイサンはこの場所ちょっと怖かったです。
開放感というものと無縁で、追い込まれ、圧迫感みたいなものに押しつぶされそうになる。
根室の納沙布岬で感じた怨嗟のような重苦しさ、
夜の羽幌で日本海を臨んで感じた、くらやみの海の向こうから何かがやってくるような恐れ、
それらに近い重圧と垂れ込めるくらさをちょっと感じた。

  これもまた、『ドラゴンクエスト』に出てきそうな、
  非常に特徴的な「町」の風景として成立しているように思う。
  すぎやまこういち先生に
  アイヌの要素を取り込んだ明るいまちの音楽でも作ってもらって
  流せばいいんじゃないかとか、適当なことを言ってみる。
  べつにすぎやまこういちじゃなくても、アイヌの音楽の第一人者にたのんでもいいけど。

時期が悪かったというのもあるだろう。
観光客がそう多い時期でもなく、ほぼすべてのお店が開店休業状態で、
店の中も暗く、静まり返っている。

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トーテムポールのような木彫の柱に備え付けられた宣伝用のスピーカーからは、
アイヌの民謡と、
ここで扱っているのはアイヌの伝統的な物産であって配送も出来ますよという旨のアナウンスが
交互に流れている。
耳慣れない言葉のうたと、無機質なアナウンスが、自分以外聴く者のない、広々とした湖の空に散っていく。
活気のある時期にこの一角がどんな様子なのか分からないけど、
少なくとも、昨日とこの日、この一角を見た者としての感想は、
「陰気で圧迫感があるのにものさびしい怖い場所」だった。
人が多く、明るくて活気ある時期の様子を見てみたい。

アイヌコタンの裏手には、アイヌの伝統舞踊や音楽を披露する専用のシアターがある。
これがなかなか立派な建物で、毎日20時から上演しているらしい……が、
これもオイサンの泊まっていた時期に演っていたかはわからない
(毎日上演! とかそれ以外の断り書きなしに書かれていても
冬場やってねえのは当たり前だろ! とかワリと当たり前なので)。
一回くらいのぞきに行ってみても良かったかなー、といま少し後悔している。
人、入ってるのかなあ。

マあんまり良くないイメージのことばかり書いてしまったけど、
一種独特の雰囲気は味わえて面白いし、何よりフクロウがカッコイイ。
本当の神様は山と湖そのものなのかも知れないけど、
その依り代としての小さなフクロウというモチーフは、とても力のあるデザインだなあと思う。

 ▼ラーメン屋でグラップラーと出会う

結局目当ての店は閉まっていたので、第二候補だった民宿がやってるラーメン屋を覗いてみることにした。
昨日の温泉街の西のはずれ、阿寒ネイチャーセンターの向かいあたり。
そちらは無事営業していたのでお昼ゴハンはそこ。
店に入るなり、メガネが盛大にくもる。

  よく言われるように、冬の北海道の人家の中は過剰なくらい暖房が焚かれている。
  これはうそじゃない。
  本当に、どこへ行っても建物の中はカンカンに暖かい。
  初めての北海道で、旭川から稚内まで3時間半列車に乗った時は厚着をし過ぎていて、
  終盤アタマが朦朧となったことも今や懐かしい。

エゾシカのシチューと、
エゾシカ肉で作った叉焼の乗ったラーメンが売りらしかったので
シチューを注文してみたところ、

  「ごめんなさい、今そっちはやってなくて」

と。
あー。
じゃあラーメンで。
うぬう、ままならぬのう。
やっぱり客が少ない時期はこういう不便があるねえ。
まあそれも致し方なしか。
マイノリティの辛いところよ。

店のテレビでは、「ぇらっしゃぁい」が合言葉の落語家が、舌足らずのバラエティタレントと一緒に
新婚さんをいじる番組が流れていた。
この番組まだやってたのか……。すげえな。

  気になって調べてみたところ(調べんな)、1971年からやってるらしいこの番組。
  長寿にも程があるな。
  "桂文枝は第1回の放送から現在まで司会を担当しており、
   これは60年以上の日本のテレビ番組史上でも最長の司会記録を誇る"(wikipedia)
  ってそりゃそうだろw 
  テレビの歴史60数年のうちの43年やってんじゃないですかw タモリ目じゃねえw
  あと全然関係ないが、アニメ監督のナベシンさんも出演されたのだそうです。
  何やってんのw

そうして、筋トレマニアの新婚さんのワイヒーなエピソードなど聞きながら
ぼんやりとラーメンの出来上がるのを待っていると、
店の入り口の上に並んでいる、過去に来店したのであろう有名人(主にローカル)たちのサイン色紙の中に一つだけ、
異彩を放つ色紙を見つけた。

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ダヴァイ(来い)ッ!!
板垣先生なにしてはるんですか……。

マ恐らくはアレでしょう、
勇次郎が北極で白熊を倒したというエピソードを描くときにでも
この辺りで温泉合宿でもはったのでしょう。
ウーム、おかしなところで希少なものに巡り会ったぜ……。

ラーメンは普通だった(コナミ感。
普通のラーメンにエゾシカの叉焼が乗っていた。
エゾシカの叉焼もコレと言った特徴を感じられなかった。

個人的には、北海道のなんでもかんでもラーメンにしちゃう傾向はキライではないのだけど、
変わり種の具を乗せておしまいにするのでなく、
具に合ったスープだとか麺だとか、少しずつでも工夫してくれると嬉しいと思う。
ラーメンに合わないのだったらいっそそばとかうどんとかにするとか。



■突撃!となりの豪華温泉!



昼食を終えると、案の定時間を持て余してしまった。
しばし氷の湖上を彷徨ったあと、喫茶店・エルムさんにもぐりこんでのんびりお茶を飲んだりしていた。

この日は日曜日で、
おまつりの湖の上は珍しい氷上モービルやスケート目当ての家族連れと、
わかさぎ釣り目当ての客でなかなかの賑わいを見せていた。
湖上の駐車場に並んでいる車のナンバーを見るにつけ、
近隣や道内からの来訪者がほとんどらしい。
中には、朝見かけたような謎の外人部隊もいたりするのだろうが。

  あとから考えてみれば、
  太鼓と笛の音をかわるがわるに鳴らせる湖の上でのお祭り、というのはなんとも趣のあることだし、
  八百万の神を奉る日本の、本来の祭祀という意味で至極全うであるように思う。
  山も湖も、きっと喜んでいることだろう。

どうれ、ここはオイサンもいっちょうスノーモービルで伝説でも作ってみるか!
山よ、湖よ! 俺の疾走り<はしり>に震えろ!!(神奈川県在住・38歳・男性)
と勇んでみたものの、なんと、
まだ遠くまで一人乗りさせてくれる大型スノーモービルの催しはやっていないらしい。
じーざす。
温泉街の近くの湖面だけ走る、4輪スノーバギーみたいなのはやっていたのだけども。
残念。

 ▼激突! となりの豪華温泉!

地元の方々の世間話に耳をかたむけたあと喫茶店エルムを出、
さてどうするかと思案して思い出した。
そういえば、鶴雅ウイングスの温泉も使えるのだったっけ。

  オイサンの泊まっているお宿・花ゆう香と、
  温泉街の西の端にある鶴雅ウイングスは同じ鶴雅グループの経営で、
  温泉利用のためのシャトルバスを走らせている。

何か面白いことがあるかわからないが
露天風呂はあったはずなので行ってみるとしようと決意する、
何年か前に訪れた旭岳の温泉で、雪見露天風呂の味をしめてしまったオッサンであった。
ワーイワーイ。



……。



結論。



鶴雅ウイングスさんの宿の豪勢さはケタ外れだった。
フロントホールからしてなんかもうお城の様相。
地元の有名作家さんの作であるらしい木彫が十分な空間の中に多数展示されて
宿泊客を出迎えるかと思えば、
川が流れ、
みやげ物屋やブランド品のショップがちょっとしたショッピングモールほども立ち並んで、
温泉たまごやスープのサーバー、ふかしポテトが無料で振る舞われている。

  こ、ここが妖精の城の中か! なんかじーさんばーさんばっかだけど!

とまあちょっと大げさに盛り上げてみたくなるくらい豪華でした、鶴雅ウイングス。
確かここ、予約するときのお値段も結構高かったはずなんだよ。
花ゆう香だって十分立派すぎるくらい立派
(ところどころ壁に穴が空いてたり飛んでるはずのwifiが繋がらなかったり
行き届かないところがあったりはするけど)なんだけど、
いわゆる高級ホテル(「超」高級ではないが)とはこういうものだろう。

風呂も遊びに満ちた豪勢さで、
やたらと浴槽が小分けにされて色々な趣向が凝らされていた。
全部試せばまた何か発見があったのかも知れないがそこまではせず、
一目散に目当ての露天風呂へ向かうと、
一時間近く、緩やかに日が落ちて気温を下げていく中ぼんやりと湯に浸かっていた。
贅沢……。

北海道の人は案外道内で旅行をすることも多いのだろうか、
道内の会社の、社員旅行のような一団にたびたび出くわす。
このときも、一時間も風呂にいると人が入れ替え入れ替えするもので、
同じ会社らしき面々の噂話がとっかえひっかえ聞こえてきた。
庶務課のあさこさん、そろそろ年齢も考えて、火遊びはほどほどにした方が良さそうですよ。

ところでこの鶴雅ウイングスには、地下~2Fにかけて庭園露天風呂、8Fに屋上空中露天風呂があって、
日にちと時間帯で男湯・女湯が入れ替わる。
オイサンの泊まった期間はこんな感じだった。

 ▼奇数日
    2F 8F
 昼間 男 女
 夜間 女 男

 ▼偶数日
    2F 8F
 昼間 女 男
 夜間 男 女

この日のこの時間帯(夕方)の時間帯は男湯が下だった。
屋上露天風呂も試したかったと、これまた非常に悔やんでいる。
次回必ず来よう。

2階の庭園露天風呂は湖の方へ張り出していて
ちょうど湖面が見下ろせるくらいの位置にあるのだけれども、
外風呂へ出る扉には
「露天風呂は湖に面しており、近くまで釣りに来る方もおられることをご承知下さい」
という注意書きが実に男らしい。
よーするに「下手すると見えちゃうかもだがガタガタぬかすな」
ということだ。
つまり、日付と時間帯によっては……
……さて、今日は何日だっけ? ム、ちょっと、釣りがしたくなってきたな……。
双眼鏡双眼鏡……。

などとすてきなことを思い描きつつ、
極寒の雪見露天風呂を堪能したのだった。
いやあ……露天風呂最高。

北海道へ旅行しようとか思わなければ、こんな楽しみを知ることもなかったのだろうなあ。
つくづく『北へ。』には感謝だ。
広井王子は偉大だ。



■Closing



この日は、このあと特に変わったこともなく。
食事をいただき、湯に浸かり、夜中にまた、星を見に湖上へ出てみたりして眠りについた。

鶴雅ウイングスのお風呂から帰ってくるとき、
宿のとなりのおいしいパン屋さんでシュークリームを買って帰って戴いた。
部屋にコーヒーメーカーが備え付けになっているのは大変にありがたい。

  いっぺんだけ、コーヒーがサーバーに入った状態で保温にしたまま寝落ちしてしまい、
  目が覚めたらコーヒーのほとんどが蒸発していて
  お部屋がちょっとした焙煎室みたいな、アローマいっぱいになってて
  びっくりした。
  て言うかコーヒーメーカーの空焚きで普通にあぶなかった。

夕食後、ロビーやみやげ物コーナーをぶらぶらしていたら
託児スペースがあるのを見つけ、ちょっと覗いてみた。
自分には無縁のコーナーではあるのだが、
誰もいなかったし(誰かいたら通報されるわ)、
絵本がたくさん並んでいたのが気になったのだった。

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絵本ってのは息の長いもので、数冊パラパラめくってみただけでも
オイサンの生まれる以前の物が結構ある。
一冊、子どもの頃に読んだ記憶のある『ムッシュムニエル』のシリーズが置いてあった。
その中の一節。

  ほむんくるす・ほむんくるす…… うまは きゅうりのさらだをたべない。

魔法使いのムッシュムニエルが、弟子にする子どもをさらってくるために
瓶に魔法をかけるための呪文なんだけど。
ホムンクルスかー。
今でこそオイサンなんかには意味が分かるけど、
親が読んで聞かせるときに、知らなくても無理のない言葉だな。
さらっとこういう言葉が紛れ込ませてあったりしたのか、子供向け絵本。
なかなか興味深い……。
自分が子どもの頃にも、こんな風に訳の分からない言葉を刷り込まれていたりしたんだな。



……などと。
朝、森の中で妖精の城とトトロに出会い、
夜に自分の子ども時代へ導かれ、なんだか不思議な気分で眠りにつく。
今夜も凍った湖上に月は明るく、ドーン、ドーンと深い響きをとどろかせておったのでした。

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衝撃の4日目へつづく。 ← てきとう



 

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2014年2月23日 (日)

■DANCE WITH FOXES~よく歌う神様と眠る湖の歯ぎしり~ 北海道旅行19・阿寒編-4・2日目-2 -更新第908回-

 
はいどうも、オイサンです。


四十路目前のオッサンの超個人的な北海道の旅の19回目。
はじめての阿寒編、今回はその2日目(後半)のご様子をお伝えします。

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午前中、調子に乗って温泉街をうろついていたオッサンが、
滑って転んで右側のろっ骨を完全にイワしてしまうところまでが前回。

午後からは雪山軽登山だというのに、さあ、このオッサンはどうなるんでしょうねえ!
ワクワクしますねえ!
別にどうもなりませんねえ!
普通に登って降りて来るだけなので、あまり過剰な期待はなさらぬように。

それではどうぞ。



■双岳台に散る(散るな)



山登りのガイドさんとは、12時半に宿のロビーで待ち合わせ。

マ雪山登りだなんだと書いているけどもそんなに大げさな話ではなく、
道のない雪の山を、ちょっと眺めの良いところまで
それっぽい身支度で登ってみましょう、
というスキーに毛の生えたようなものだと思ってもらえれば良い。

  ……とはいえ相手は遊戯施設でなく自然の山は山なので、
  あんまりチョロまかした書き方をしてるとその筋の方々から
  「冬山を舐めるな!」と怒られかねない。
  どの程度のアクティビティだったかは行って初めて分かるワケだし、
  大体、スキーもしたことのないオイサンの心構え的にはお気楽なものではなくて、
  ガッツリと山。
  ワリと緊張していた。
  オマケに、右ワキ腹には出来たてのハンディも背負っている……
  マ格闘家には五体が完全に満足な時などあるハズもなく
  手負いこそがベストコンディションなワケですが。
  オイサン別に格闘家じゃねえし。

恰好はこんな↓感じ。

 ▼上半身
 スポーツ用のインナー / 長袖Tシャツ(タートルネック) / 薄手のセーター
 登山用フリース / 長袖ダウンベスト / レインジャケット / 手袋(インナー+アウター)

 ▼下半身
 スポーツ用のインナー / 防風パンツ / レインジャケット
 トレッキングシューズ

インナーに「スポーツ用」と書いたのは、
いわゆるヒートテックは、汗をガッツリかく運動には向かん、という話を
以前どこかで読んだのでジョギング用のヤツを。
皆さんもご注意下さい。

 ▼ヒートテックを山岳ガイドが使わない理由 [ IT技術者ロードバイク日記]
 http://rbs.ta36.com/?p=16205

手袋は二重で持って行ったけど、インナーだけで十分なくらい暖かかった。
ザックには軽い食べ物と、マグボトルに入れたコーヒー、あとタオル。
そのくらい。

このアクティビティのために、
スキーウェアか雪山用のジャケットを買おうかと
一度テラジさんにお買い物に付き合ってもらったのだけど
(て言うかテラジさんがプラモ買いに行くのについて行ったらそこに山ショップがあったんで
ちょっと覗かせてもらった)、
以前買った山用レインジャケットがあったのを思い出してそれを持っていった。

  ただしこれはホントにただの上下に分かれた雨用ウェアで、
  内部の湿気を外に逃がすような高性能なものではないので、
  もっとハードな山になったらちゃんとしたのを持っていないと
  ムレムレで体が冷えてしまうのではないかと思われる。

約束の5分ほど前にロビーへおりると、
何やら手持ちぶさたゲな、カラフルな山ジャケットに身を包んだ細身のお兄さんが
手持ちぶさたゲにしておられた。

  なんかこう……アレですね、RPGとかADVとかで、話が進むと、
  さっきまでいなかった人物がいかにも目立つ感じで現れていて、
  話しかけると次が始まる、みたいな……そんな感じでした。

 ▼安井さんと阿寒

そうして現れたのは、阿寒のネイチャーガイド、安井稜さん。
要潤のアゴをがっと鋭く削って10倍くらいナイーブにした感じです(偏見)。
イケメンです。要潤大好きです。

  ドラマ「動物のお医者さん」で、彼を二階堂に抜擢した人間にぜひ主演男優賞を上げたい。
  無茶苦茶言ってますけども。

お互い軽く自己紹介をして、装備を上から下まで確認してもらいます。

「ズボン、外側ありますか」(この時点ではオイサンまだレインジャケット未装備)
「あ、あります。レインスーツの上下が」
「靴、見せてもらっていいすか。……もうちょっと上まであった方が良いかな、スパッツいるな。
 すみません、一回事務所に寄りますね」

で、ワゴン車に乗せてもらってまず寄ったのは、
午前中ぶらぶらしていた時に見かけた、温泉街の西の端にあった「阿寒ネイチャーセンター」の建物。

  ▼阿寒ネイチャーセンター 
  http://www17.ocn.ne.jp/~akan.n.c/tokubetukikaku.html


なるほど、ここがそうだったのか。
私の足元、靴が足首まで覆うようなものではなかったので、
それをカバーするためのスパッツなる装備を取りに戻って下さったのでした。
スパッツっつってもあの、
スポーツ系ショートカット美少女のみが履くことを許される(掟)、ピッチピチの奴じゃないからな。
砂利やら水やらが靴に入るのを防ぐ、足首カバーみたいなものです。
ほな参りましょう。

 ▼双岳台

登りのスタートポイントまでは、温泉街からクルマで15分ほど。
阿寒湖とも兄弟湖であるペンケトー・パンケトーが見渡せる「双湖台」から更に少し行った、
双岳台というところ。

クルマで走る道々、安井さんが教えて下さるには、
このペンケトー・パンケトー、もとは阿寒湖と合わせて一つの湖だったのだそうです。
そこへ雄阿寒岳さんがムクリと割り込んで、三つに分断してしまったのだそうな。
言われてみればなるほど、
確かにGoogleMapを「地形」モードにして見てみるとなんだか納得がいく感じです。

  
大きな地図で見る


  あと、オイサンは何となく、本当になんとなく勝手に、
  阿寒湖、屈斜路湖、摩周湖の中では阿寒湖が一番でかいと思い込んでいたのだけども、
  そんなん全ッ然うそで、阿寒湖が一番小さい。
  なんでそう思ってたのかはワカラン。
  阿寒湖・ペンケトー・パンケトーの三つがもとの姿にドッキングして
  ようやく摩周湖よりちょっと大きいくらいになると思われます。
  なんでだろうなあ。
  たまにそういう、地理的な変な思いこみの勘違いがある。
  阿寒湖、すげえでかい印象あったんだけど。
  がっかりだ、見損なった(ひどい)!

クルマは山間のワインディングな道を軽快に走る。安井さん曰く
「今日はあったかいですねー。ここんとこ雪も少なくて。
 道路が見えてますからね。湖が凍るのも遅くて、今年に入ってからやっとですよ」
とのこと。
例年なら12月中には凍ってしまう。
やっぱりそうなのね。
日本海側の豪雪や寒波がハデに報じられているので寒いように見えるけど、
太平洋側はずいぶん暖かいご様子。

 ▼湖の、謎の鳴き声について尋ねてみる

車の中で、例のあの、謎の湖の音についてお尋ねしてみたけれども、
確かなお答えは得られなかった。
早朝と深夜の、どーんどーんという音については、
やはり氷の伸び縮みにともなう物らしいということは分かったけども、
昼日中のピューンピューン音については、どーもオイサンがうまく伝えきれず
(そりゃそうだ、さっき聞いたばかりのあんな意味の分からん音伝えきれるもんか)、
的確なお話を引き出すことが出来なかった。
無念。

 ▼双岳台より

さて……どうみてもただの道端に、安井さんはクルマを止めます。
あ、ちゃんと駐車スペースはあるところですよ。
「じゃこの辺に停めて、登りましょう」

  安井さん安井さん、大変です!
  なんかもう、ここからでも十分絶景です!

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そう、ただの道端なんだけど、雄阿寒・雌阿寒ともに見通せて素晴らしい眺め。
「そうなんですけどねw」
がしゃがしゃと色々器具を用意して、落ち着きのないオッサンをなだめる安井さんです。
落ち着きのないオッサンはその間に初めて袖を通すレインウェアを着たり、
初めて着けるスパッツをつけたりと自分の支度をする。

器具的な装備は簡素に、スノーシューにストック。
以上。
そうは言ってもスノーシューも初めてだし、
こちとらスキーしたこともないからストック持つのも初めてのスットコドッコイです。
冬も雪も大好きなんですけどね。

 ▼山田登郎

さて、ここからは山の中。
雪の積もったナカナカの急斜面を、安井さんの後について登って行くのだけれども
きついとかしんどいとかは一切なかった。随分ゆっくりと歩いてくれたのだろう。

傾斜はいきなり急。
どーなんだろう、オイサンはスキーもやったことない=スキー場も見たことないんで
あの傾斜が雪道的に常識的なのかどうかわからないけど、
少なくとも、「さー山登っぞ」という気構えがないと、
とてもじゃないけど踏み入ろうとは思わないレベル。

けど、これがもうね……楽しいのなんのって。

この日は天気も良く、雪をかぶった森の光差す景色を眺め、
自分の足音と呼吸と心臓の音だけ聞きながら、
一心に歩くことがもう……この上もなく心を踊らせる。

雪は、少ないとはいっても深く、
スノーシューを履いていても一歩ごとにくるぶし辺りまで埋まるくらいはある。
それをまたがばっと持ち上げて、ざくっと踏み出して、
雪がさらさらとスノーシューの隙間からこぼれ落ちていく、
一歩一歩の感触が、とても柔らかくてやさしい。

意識が景色の中に霧散していくように錯覚する。
あー、俺はいま森だ。森か木かなんかになっている。
この冬の山の一部分になりながら、ゆっくりゆっくりとうねるように上へ向かっている。

自分の中のにごった澱のような部分が、
さらっとほどけて落ちていく感覚に見舞われる。
自分の中の目詰まりした排水溝のふたを掃除してるような気持ちになる。
他にもっと言いようはないのか。



■安井さんと、山と森と雪~山は眠っている




登っていた時間は、多分片道1時間くらいだと思う。
しばらく歩いていくと、
前を行っていた安井さんが足を止め、右手に生えている木の枝から垂れ下がっている
なんだかモジャモジャした物を指さした。

 「あそこの、木の枝から垂れ下がってるとろろ昆布みたいなの、
  あれはサルオガセっていいます。苔と藻類の共生体で……云々」


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……ああ、あれは生き物なんですか。

 「生きてます」

共生体と言うことは、一つの生き物ではない。

 「そうです」

ほほう。私はてっきり、木の皮とか葉とかが朽ちたものとか、
なんかそう言う死骸的なものかと思っていました。

 「実は違うんですよ。他にも色々種類があるんですけど。
  あれも生き物なんです。じゃいきましょう」


そしてまた、光差す雪の森を、ざくざくと登っていきます……
すると今度は、比較的手近な左手の木を肌をざらっと撫でて、

「この木の表面についてる星みたいな模様、これも地衣類ですね。
 こーゆー生き物です」


  ※※※※※
  ……あ、ここでちょっと注意。
  安井さんのコメントはオイサンの曖昧な記憶で書いてますんで、
  なんか間違いがあったらそれは多分記憶違い・書き間違いだと思って貰って間違いないです。
  地衣だとか藻だとか苔だとか菌だとか、
  その辺オイサンの認識では全然ちゃんと区分出来てないので聞いた話をごっちゃにしてる可能性高し。
  注意せよ。
  それでは引き続き、オッサンのうたとおどりでお楽しみ下さい。
  ※※※※※

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あ、これも、木とはまた違う生き物なんですか? 冷えて乾いてめくれた木の皮じゃなくて?

 「ちがうんです。これも木とは別の生き物で、生きてるんですよ」

そこからさらに登って、そこそこに高度の上がってきた辺りで途中、
木々の隙間から左手……北の方角だと思うのだけど、そちらを指し示して
「屈斜路湖が見えますね」
と。

Ksshrk



ああ、屈斜路湖。
オイサンが行ったのは2008年の正月のはずだから6年前。
なぜか雪の上で蝉の亡骸を見つけて「???」ってなったのを強烈に覚えている。
その後、去年摩周の喫茶店で、クッシャロコタンの近くでクラフト工房を営んでいる方の絵を見て、
それが余りに格好良かったんでもう一度行こうと密かに思っている。
あの時は美幌峠から見下ろしたんだったか。

「上まで行くともっとよく見えますよ。摩周湖の方も見えます。
 今日は天気いいから斜里岳も見えるでしょうね。
 このコースは天気良くないと面白くないから……
 曇ってたら違うところへ行こうと思ってました」


ああ、じゃあ私、運が良かったですね。

「そうでしたねw」

とがったアゴをゆるめて、ゴーグルの奥でにやっと笑う安井さん。
そう、実は予約の電話を入れたときは、
この翌日のAMにツアーを組もうと思っていたのだけど、
生憎その時間は別の団体の予約で埋まってしまっていたので一日早めてこの日にしたのだった。
ちなみにこの時点での明日の予報は、曇り。

そんな調子で、登りと下り、車での移動を合わせても3時間ほどの時間だったんだけども
結構色々とお話をさせてもらった。
オイサンのお仕事の話もしたし、
北海道に来るようになったきっかけとか、どこを回っただとか、
安井さんがどんな勉強をしてきたとか、どんな生い立ちだとか、
町での暮らしと山での暮らしだとか、何がよくて何がよくなくて、
みたいな話をぽちぽちとこう……それこそ雪に足跡をつけるみたいにとつとつと。

ちなみに安井さんは帯広のお生まれで、
お父さんも帯広で山岳ガイドをされていたという、まさに山のサラブレッド。
子どもの頃は家に電気も通っておらず、
小学校くらいまではランプの光で暮らしてたのだそうで。
お、おおう……。
想像以上だ……。

  イヤ、その話を聞いた時は、「オオすごいですね(小並感)」としか言えなかったんだけども、
  今冷静に考えてみると、
  オイサンよか7コほども年下らしいので……82年生まれで?
  小学校まで……まあ10歳までとしましょうや、92年まで電気がない暮らしをしてたって、
  ……すごいな!!(結局小並感)
  プレステが出る二年前まで、電気がない!!
  どうやって『ときメモ』やるんだよ!! ← マストか
  たき火か! 火力プレイステーションか!(斬新)

  ……まあ、多分そんな環境で『ときメモ』やろうもんなら、
  パラメータ上げてもクマとイノシシしか出てこないんだろうな……。
  読書家で体の弱いクマと、動物の言葉がわかる内気なイノシシ。

あとでお兄さんの存在も明らかになりますが、お兄さんのお名前は「岳」さんというようです。
岳さんと稜さんのご兄弟。
分かりやすいですね。
小野田坂道くんと真波山岳くんのようです。
なんというか……憧れます、そういう力強いド直球さ、芯の太さといいますか。
ちょっとやそっとじゃ揺るがないものを感じます。
山のごとし(ドヤ顔)。

  そんな岳さん・稜さんご兄弟のblogはこちらです。

  ▼稜線の稜 http://ryosen-ryo.com/ryosen-ryo/toppu.html
  ▼阿寒にくればいいべさ。 http://akannc.blog63.fc2.com/

雪、冬、山、生き物、
話がそんなワードにさしかかると、明らかに語りのトーンが変わる安井さんは
ものの3時間ほどしか一緒にいなかったにもかかわらず、
ものすごく魅力的な人物に、オイサンには映った。
好きな物を語るとき、ホントに言葉が、とても素直に華やぐ。
声のトーンが変わりますからね。
初対面のオイサンにわかるくらいだからw
「生きてるんですよ」って言葉を口にするとき、妙に熱がこもる。
なんとも気持ちの良い御仁でした。
よい人にガイドを頼めて、これもまたついていたと思います。
皆さんも阿寒をお尋ねの際はぜひどうぞ。

 ▼サルノコシカケと鉄塔とツンデレフォックス

ぼちぼち頂上が近づいた辺り。
尾根伝いに引いてある鉄塔の電線が見えてくる。
あー、あれが天辺ですね。鉄塔、よく建てたな。

  「ほんとですよね。……邪魔なんですけどねw」

ああw あんまり良く思ってないんだw まあそうだろーな。

そんな話をしながら進んでいくと、
傍らの木に不自然な雪の積もり方をしてたのが気になってふと足を止めてしまった。
オイサンの足が止まったのに気付いて、安井さんも振り返る。

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「これはサルノコシカケですね。ああ、この子はりっぱだなあ」

おお、これがうわさに名高いサルノコシカケ。
でかい!

「そうですね。子どもだったら本当に座れますよ」

ホンマに座れるんかい!
イヤ、でも本当に座れる大きさと、がっしりした感触がある。
オマケに……硬い! かちんこちんだ。

「それは凍ってるってのもありますけどね。でも生きてますよ」

  ちなみに、上でご紹介したブログを見てもらえれば分かると思いますが、
  安井さんはキノコ愛がハンパないです。
  皿田キノコ嬢が実在したら求婚していると思われます(個人の感想です)。
  知識も豊富。
  こういう山の生き物やなんかについて専門に勉強をされたわけではなさそうだけど、
  日々、好きで勉強してるんでしょうね。

今回のことで、オイサンもキノコには興味がわいた。
すごいきれいなんだもの。
姿かたちも色も豊富だし、被写体としてもとても魅力的だと思う。
見ていて飽きない面白さがあることに気が付いた。

ちなみに、森とか生き物とかキノコとか、
そういうものについて専門に勉強したということはないそうです。

さあ、山頂だ。



■山頂からの眺め



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真正面に見えているのが斜里岳(知床の根本)、中央右、電線のかぶっている山に摩周湖があります。


「ちょっと誤算だったんですけど」

安井さんが残念そうに切り出すには。

「さっき、雪が少ないって言ったじゃないですか」

ああ、はい。

「だからちょっと、視点が低いんですよね。
 この雪の量だと、そこの……林が邪魔をして、雌阿寒が見えにくいんですよw
 誤算だったなあ」


おー。なるほど、そうか。積雪が少ないと足場が低くなるんだ。
確かに、雌阿寒さんは手前の林の向こうに見える。
例年の積雪量であればもう少し地面が底上げされて、遮るものなしに雌阿寒を見通せるのだそうで。
当たり前のリクツだけど、そんなに「地面の高さ」が変わるっていう感覚は、オイサンたちにはない。
雪の世界に暮らしていると、そんなことも当然起こり得るわけだ。

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左、林がかかっているのが雌阿寒さんで、右が雄阿寒さん。


「あれがさっき見えた屈斜路湖。で、東の方にずーっといって……
 湖面は見えないですけど、あの辺が摩周湖。その向こうが斜里岳です」


はい、はい。わかります。摩周岳は特徴ありますものね。
斜里岳もよくわかる。
すごいなー。
知床辺りまで見えるんだもんなー。
摩周湖から斜里岳が見えただけでもすごいなーと思ったけど、こっからでも見るのか。

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ちなみに、摩周湖が大好きで行ったらレストハウスで一日中ぼーっと眺めてるって話をしたら
笑われました。
「それは相当ですねwww」
とかなんとか。はっはっは。安井さんも、今でも摩周湖に行くと感動するのだそうで。
あそこ行ってビックリしない人は、そうそういないと思いますよ。

「天気良くて良かったです……ココア飲めます?
 あとはこれ、兄が焼いたスコーンなんですけど。なんだろ、無花果か何か……入ってます」

お兄さんがスコーンをお焼きになる!? これは随分と女子力の高いお兄さんだこと。
スコーンもココアも大好きなので、戴きます!(CV:ほたるん)


  ▼つんでれぎつね参上!

この日は本当に天気がよく……風もなくて、しばらくボーっとしてたって
全く寒くないくらいで、快適でした。
そうして景色を眺めておると……

「きつねがいますね」

と。見れば、斜面を下り切ったあたりに明るい茶色の毛玉がなにやらウロウロしている。
あーほんとだ、きつねですね。
言われれば見つけられるけど、よく見つけるな、あんなの。

「こっち来たそうにしてますけど……僕らがいるから上がってこれないんでしょうね」

ははは、悪いことをした。
……とかなんとか言いつつしばらくそこで話をしていると……

「あら、来ちゃったの?」

何かもう目の前まで来てた。近い。
写真も普通に撮らせてくれた。
逃げませんね。


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「逃げませんけど……人間に慣れてる感じでもないですね。
 餌付けされてたら、もっとすり寄ってきたり、ねだってくるようなしぐさを見せますけど。
 これ以上は寄ってこない」


確かに、1m程度の距離を保ってそれ以上は寄ってこない。
ホントに人間慣れしていて餌の欲しい子は、足元まですり寄ってくるんだそうで。

「人間を知らないわけでもないけど、すっかり慣れてるわけでもない、
 あわよくばおこぼれをってところですかね」


お前らさっき上手そうなモン食べてたやないか! ってことですなw
しかし人間になれさせるわけにもいかないのでやるわけにもいかない。
とはいえ、ここでやらなかったことによって飢えて死んでしまうということだって
あるのかも知れない。

これだけ人里が攻め込んでくる現状で、
野生でしか生きられない状況が果たしてどれほど良しとされるべきなのか。

やがて、日が傾き始め、
ほんの陰っただけで信じられないくらい風が冷たさを増す。
山も、木々も、少し眠たそうに面もちを変える。
彼らが眠りに落ちるまでここで眺めていたい気持ちをぐっと抑えて、
凍えてしまう前に山を下りなければならない。
あな、名残惜しや。
しかしイザ、山を下りはじめても……

「……来ますね」

さっきの狐がついてくる。
10数mの距離を置いて、我々のあとを、木に隠れたりコースを少しそれたりと、
一応用心をしながら追ってくる。

「ついてきてるのかなあ。行きたい方角がおなじなだけかなあ」

安井さんも図りかねている様子。
結局、最後の最後までではなかったものの、
帰路の半分くらいまではついてきてたんじゃなかろうか。
一度、追い抜いて先に行ったときはたまたま方向が同じだっただけかと思ったが、
気が付くとまた後ろに回っていて付いてくる、なんてこともあった。
案外粘り強かった。お腹すいてたのかねえ。
オスかメスかは分からなかったけど、安井さん曰く、大人のキツネではあったみたい。
冬のキタキツネは、毛皮がフサフサもこもこしていてとてもきれいです。
あのあと食べ物が見つかっていればいいけれども。

  ……オイサンみたいな文明の中に暮らしてる人間は、
  「食べ物がなくて飢えて死ぬ」なんてついぞ考えず、
  こうは言っていても「何かしら見つけて食べたんだろう」という結末しか思い描いてないんだけども……
  一体、冬場に飢えて死んでるキツネ(に限らず中型以上の大きさの動物)って、
  一体何割くらいいるモンなんだろう?


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最後の後ろ姿

  レアケースなのか、日常的なことなのか、あるいは生き残れる方が少ないのか……。
  その辺の現実ってわかんないもんだよなあ、と
  帰ってから宿で考えたオイサンなのでした。
  閑話休題。


 ▼ももんが殺人事件

「これ、エゾモモンガの巣です。
 ここ、去年までは使ってたはずなんですけど……今もういないみたいですね」


傍の木にぽっかり空いた穴を指して、また安井さんがこともなげに言う。
去年までって。
モモンガ相手に賃貸のあっせんでもやってるんですか。

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「中にいたら、この辺の溝にフンなんかがたまるんですよ。
 この巣に、14、5匹くらいいたんじゃないかな」


15!? こんな小さな穴の、こんな細い木に!?

「中は結構広くなってると思いますよ。たくさんでいた方があったかいですから」

おお……まあその理屈はわかるけど、この穴に15匹とか、にわかには信じられん。
モモンガって、ナンボ小さくてもそこまで小さかったっけか。
しかし、それにしてもそんなに広い物件をなんで手放しちゃったんでしょうかね?
そうそう条件のいいものが見つかるもんですか。

「物件w 他にいい物件が見つかったのか、なんか都合が悪かったのか……」

内輪もめがあって人死にが出たとか。

「www
 多分、低すぎたんだと思います。あんまり低いと他の動物に襲われたりしますから」


ぬおお、動物の世界でも高層階の方が物件として価値が高いのか!
確かにその巣穴は、地上1m50cmくらいしか高さがなくて、
人間でも簡単に覗き込んだり、なんなら棒を突っ込んだり出来てしまう。
色々と学ばされるぜ……。

そうそう、他にも安井さんには、足跡での動物の見分けかたもいくつか教わりました。
うさぎと、タヌキと、キツネと……テンだったか。
タヌキは脚が短くて、ウサギは跳ねるから後足の跡が前足よりも前に出る、とか。

  こんなページがあった。

  ▼足跡図鑑
  http://www.enyatotto.com/animal/animal.htm



■おしまい



「さあ、もう少しですよ」

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さあ、もう道路とクルマが見えて来てしまいました。
ぐぬぬ、名残惜しいンヌ……。
あと1時間でも2時間でも歩けるズラ……。

  なぜですかカントク!
  私はまだやれます! 私はまだやれます!!

この時間が終わるが、本当に惜しかった。超惜しかった。
楽しかったんだよう……。
もっともっと登りたかったし、もっともっと下りたかった。
雪はやさしいなあ。あったかいなあ。

そんな感傷に浸っておったらですね。



……ズルっと。



ホントにラスト、あと20mも下ればゴールってところで、
バランスを崩して尻もちをついてしまった。
惜しい。
あとちょっとで転ばずにゴールできたというのに。
そしてその時の転び方が、ものすごく……
昼に拵えたばかりの脇腹の傷を、これ以上ないくらい痛い方へねじってしまい
声にならない激痛に、しばし打ち震えることになった。

イヤ、傍目にはすっげえ地味な、ずるん、べたん、みたいな尻もちだったと思うので、
なんであんなに痛そうな顔してるんだろ? と思われたに違いない。
しかしあの時は、よくまあ叫び声を上げなかったなってくらい痛かった。
最後の最後にやられたワイ。

あー痛かった。 ← まだちょっと痛い

山を下り、装備をといて車に乗ればあっという間に宿に着く。
帰り着いたのが15時半を少し回ったくらいで、
ツアーの概要説明にも「全行程約3時間」と書かれていたので
概ね想定・予定通りということだろう。

クルマを降りた別れ際に
「よくあったまって下さいね」
と、最後、サングラスを外した安井さんの笑顔は最後まで穏やかなイケメンでした。
いやー抱かれたい。

  安井さん「いやー抱きたくない」(想像)

そのお言葉通り、一旦部屋へ戻ってサッと湯に浸かると、
……そのあとまた町を歩いたり、湖の上に出たりしようと考えていたにも関わらず、
すこんと眠りに落ちてしまった。
17時くらいに一度目を覚ましたものの、その次に目を覚ましたのは、
夕食の時間も過ぎた19時を、回った頃だった。



■Closing



この日は結局、ワキ腹の痛みもあって、
このあと特に何をするでもなく眠ってしまいました。
食事をとり、湯に浸かり。

夜、やはり星を見ようと湖畔に出ることは忘れなかったものの、
いくら月が明るいとはいえ足下は暗く、
またどこで転ぶか分かったものではないのでそれを恐れて湖上に出ることまでは出来なかった。

しばらく、明るすぎる月の湖畔でぼんやりと、
夜の湖が奏で出す、どーん、どどーん、どさっ、どさっという
これはこれでとても不思議な楽の音を聞き、おとなしく眠りについたのでした。


  まっくのっうちっ! まっくのっうちっ!


あ痛たたたたたた。
ういー、ホンマに痛いぜ。


ではまた明日。



 

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2014年2月20日 (木)

■雪乃日。-更新第907回-

またよく降りましたね。
オイサンです。

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日本は一体どうなってしまったのか。
地軸でもずれたんでしょうか。
温暖化仕事しろ。
寒冷前線さんはもっとこう、夏場に頑張るべきだと思います(無茶言うな)。

  山梨、甲府の辺りは大変なことになっていたご様子で、
  昨年の夏気まぐれに大月まで遊びに行ったりして中途半端に思い入れがあるのでちょっと心配。

雪なぞが降ると、もう本当に生活の全ペースが狂わされてしまって大変です、
といってもそんなもん人間が勝手に考えた予定だろとお天道様に言われてしまうと
グウの音も出やしない。
雨の降るように、風の吹くように、
人間はその日の空の機嫌に合わせて生きられるように生きるしかないのだなあと
つくづく思い知る。







雪のおかげで金曜の夜はまともに帰るコトがままならず、
家にたどり着いたのは土曜の朝8時だった。
まさかこんなメに遭うとは。
とは言え、稀にしかない大雪なのだからむしろこういう経験もありか。
びしゃびしゃに溶けた朝の雪道を歩くのも、普段使わない路線で家路に着くこともワリカシ面白かった。

お陰で足元はすっかり死んでしまったけども。

金曜の朝に降り始めた時にはまさかここまでの大ごとになるとは夢にも思わなかったけれども、
これぐらいあってようやく大雪という感じがする。
今なお大変なメに遭われている方々には申し訳ないが。

おかげで土曜日はほぼ寝てない状態で朝を迎え、
なんか変なテンションで眠くもなかったのでそのままいたけど
まあそんな状態でまともな活動が出来るはずもなく。
なんかこう……うすぼんやりして、日々の些事をこなしているうちに終わってしまった感じ。
やたらwebラジオを聴いていたような気がする。

最近『ディーふらぐ』のwebラジオを面白く聴いている。
小西克幸のハイテンションなトークも、伊藤静のさばけた感じも、
スタッフのぐだぐださも何もかも良い方に回っている。
これは息が合うように良い方に回るように、皆が噛み合わせてるんだろう。
やってる人たちがみな大人なんだと思う。
うん。
バランスよく面白い。

ジョギングなども当然出来るワケもなく、部屋で筋トレでもしようかと思ったが
ロクに寝ていないのが響いてふにゃふにゃだったため、素直に休養とした。
筋肉を傷めつけて回復するのに十分な下地がない状態でやっても
良い結果は得られない。

また、いつも使っているクリーニング屋が
この雪だから集配もまともにいかないだろうからと慌てて早めに持って行ったのに
「大雪のため」
という男らしい理由で普通に休みだった。
おのれ。

  「明日もやるかどうかワカリマセェーン。だって雪だしぃー」
  みたいな貼り紙(そんな書き方のわけあるか)がしてありコレマタ男らしい。

こちらとしてはモロに不便を被ってしまったワケだが、それ以上に大切な勇気をもらった。
賞賛に値する。
よくやった。
褒めてつかわす。
その勇気を我々は決して忘れない。見習おう。
多分アレだ、TOPがハメハメハ大王の直系の親族経営なんだろう。
さすが、帝王学を学んだ大王の血筋は一味ちがう。

  いやあ、でも、それくらいでいいと思うよ。ホント。
  大雪の日にまで無理してお店開けたって……ねえ。
  こんな日は家でコタツでもあたって、ゆっくりしてるのが一番だよ。
  早朝、帰りの電車の中で、どこぞのてんちょーさんらしき人が電話で
  「バイトの子たちは帰さないでね! いつでも開店出来る様に、従業員は準備させておいて、
   今日は帰っていいよっていうことにはしないで! レジは大丈夫?
   うん、うん、じゃあそれでよろしく!」
  とかって鬼の様な電話してたけども。
  どーかしてると思うですよ。アタマおかしいって。

そうは言えども、昼ゴハンのお店くらいは開いててくれないと困ってしまうのだが。
開いてなかったら開いてないでどうにか凌ぎはするけれども。

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あとは……たまっていたアニメを消化。
『キルラキル』。12話から18話まで。
一気に話の核心に迫ってきた……けど、然して目新しい話でもなし。
生命繊維が宇宙怪獣で、皐月母がそれに魅せられたマッド悪の帝王で、
皐月と流子が異父(?)姉妹だった、という展開はありきたりといえばありきたり。

ありきたりな話を古めかしい画で、超ハイテンポとキテレツな演出で描くという……
相対的に物珍しい作風にはなっているけれども、
全体通して見ると「結果として」懐古趣味的になってしまってる気がする。
作り手が懐古趣味でやってるわけではないのは明らかなのだが、
全体通しての狙いがよく分からないな。

あとはもう、本当に何をしたかよく思い出せないくらいぼんやりと過ごしてしまった。







日曜日はそこそこに早起きをし、せんでもエエ活動に精を出す。
さすがにジョギングをするつもりはなかったんだけども
トレッキング靴を履いていくらか歩いてみたところ
気を付ければウォーキング的なことくらいは出来そうだったので、
調子に乗っていつものコースをたったかたったか、
走れるところは走って危ないところは歩いて、とやっていたら気付くと1時間以上歩いたり走ったりしていた。

  ただしコレは朝7時前後の、氷は溶けるけど雪のしまりはまだゆるまないくらいという
  短い時間帯でしか出来ないことかと思う。
  アスファルトの氷が溶けないとそこらじゅうツルンツルンであまりに危ないし、
  雪が完全に解け始めてしまうと地面がべっしゃべしゃになってしまって走れたもんじゃない。
  冷えて締まった雪の部分をザックザックいいながら腿上げみたいにして走るのは楽しかった。

いつも行く割烹のランチが休みなのは分かっていたので昼ゴハンのアテを探しているうちに
何故か座間にあるうどん屋を目指すことになっていた。
なぜそこまでのことになったのかは忘れてしまった。
店を探すうち、なんとなく座間へたどり着いてしまっただけだろう。
なんもこんな日に、あんな急な坂だらけの町まで行かんでも、と我ながら思う。

座間の駅前でオーバーニー少女を目視で確認!
オーケー。座間オーケー。

うどん屋は休み。

ゆるすまじ。座間ゆるすまじ。

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仕方なく、適当にみつけたそば屋ですき焼きそばを戴く。
そば屋の評価はむずかしく、自分の中では
「美味しい」以外は「美味しくない」に分類されてしまう。
「不味い」わけではなく「美味しくない」、あるいは「美味しくはない」である。
「普通」という線が非常に引きづらい。
そういう意味でこの日のそば屋は「美味しくはない」。
なぜか頭の中で、そばは基本的に「美味しい」もので、「美味しいが普通」になっているようだ。
そのハードルは決して高いものじゃない。

帰りみち、近くで見つけたコーヒー屋に入る。
喫茶かと思ったら豆の販売を主にやっているお店のようで、
喫茶スペースもあるにはあるが豆の陳列スペースの脇に申し訳程度に椅子とテーブルがあるきりだった。
コーヒー好きの高じた男が脱サラで始めたような店だ。
販売・喫茶スペースからは仕切られて焙煎室もある。
この日は焙煎を行っていなかったのか、焙煎香はしなかった。
豆を買って帰るつもりもなく、
かといって一旦入ってしまうと冷やかしで出るのも不自然な間合いの空間で、
しかたなしにその場で一杯頂いた。
素直に美味しかった。

いただいている途中で一組の若いカップルが入ってきてテイクアウトを買って帰った。
なんとも仲睦まじい様子で、それを見送るオイサンはただの怪しいオッサンですね。

クラリネットの細い音が美しいクラシックがかかっていて、
時間と時間を無理なく結び付けてくれるので、耳と心がとても穏やかになる。
クラリネットの生み出す小刻みなのにまろやかな震動は、コーヒーにとてもよく合うと思う。



帰りの電車は、ダイヤが少し混乱していた。



そこからしばらく、記憶があいまいだ。



帰りみち、前をカップルが歩いていて、
女性の方は足元がなんだか危なっかしい……と思っていたら案の定、一度大きく
ズルッ!!
っと滑って、転びこそしなかったもののあわやオイサンと同じく横倒れの幕の内寸前まで行った。

こわいなー、あぶないねー、なんて言いながら、
今度はヤロウドモ手を繋いで歩き出したもんだから
こちとらもう追い越すことも出来ずリア充爆発しろ、と言うことしか出来ないワケですが、
如何せんただでも広くない歩道に雪がかぶさって二人分ギリギリしかない幅です、
向かいからオッサンが歩いてきたので、お二人はまた手をはなして一列で歩き出す。
そしてしばらく歩いたところで今度は
ステーン!
……と、お嬢さん、今度は完全に尻もちをついてしまわれました。
オイサンもびっくりして「あー!」と声を上げてしまったほど。

 男「なんでころぶのー」
 女「もー、なんで早足で歩くのー」
 男「知らないよー人のせいにしないでよ」
 女「ついてくの大変だったよー」

と、このカップルは、転んでもけんか腰にもならず、
なにやら甘ったるい声で言い合っておられましたね。
ンモーバカー、みたいな感じです。
ンモーバカー。


雨降って地固まるではないけれども、
雪降って、地凍ると言うか。
普通だな。



■なんか妙に『ディーふらぐ』がツボに収まってきた。



そもそもこういう高速+連発ツッコミものが好きなのでワリとそれだけで肌には合う。
気になっていた『未確認で進行形』よりも先に、原作に手を出してしまった。
なぜか書店に3・5・7巻しかなかったのでとりあえず5巻から買ってみた。
船堀さん大活躍。

アニメのテンポの方が好みなので、少なくともアニメ放送分までは原作で押さえる必要はなさそうだけども、
アニメ放映分以降は原作で読み進めるのはアリかなーと考える始末。
6話での高尾部長のうめき芸が素晴らしすぎた。
伊藤静さんGJ。
これは個人の感想だが、伊藤静さんの印象が、最近と『アマガミ』の頃とで随分違う。
もっとエッジの利いた人のイメージだったのだが、最近はなんだか丸い。
結婚して変わったんだろうか?

あと普通に、船堀さんがかわいい。
船堀さんがかわいい。
船堀さんがかわいい。
あー船堀さんかわいい。
今期はかわいい子が多くてお父さん嬉しいよ(父親ではない

今期は他にもかわいい子はいるのだけど、船堀さんの
「クラスメイト → 彼女」にしたいかわいさはまた特別。
クラスメイトから始まることが重要なのよ、
わかる?  ← わかるものか

『ドリームクラブGogo』の美月ちゃんといい、
最近自分は髪を左右で短く縛ったのに弱いのかもしれない。

あと、6話で出てきたヘンタイ王子の声どっかで聞いたなと思ったら
『弱虫ペダル』の杉元だった。
どうしようもない男の役ばっかりやってるなこの人。
でもこのテのスネオポジションの役がお話からなくなることってないと思うので、
定番の役者としては良い位置につけたなあとも思う。

登場人物の名前の多くが京王線・都営新宿線を主とした首都圏路線の駅名からとられているらしく、
鉄道会社とコラボしてスタンプラリーとかやってるみたいだったので
気になる高尾と船堀だけ行ってみよう! と思ったんだけど……
と、遠えいー!!

京王線と都営新宿線のほとんど端っこ同士だった。
ホンマに端と端やな……。
遠い。

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雪の降ったせいか、男と女の距離がなんだか近いような。
そんな気がした、
人恋しさのあまりフィギュアをぽちってしまいたくなる二度目の大雪の日。




オイサンでした。
ぬくもり。


 

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2014年2月16日 (日)

■DANCE WITH FOXES~よく歌う神様と眠る湖の歯ぎしり~ 北海道旅行19・阿寒編-3・2日目-1 -更新第906回-

2014年、1月18日、未明。
阿寒の日の出の時刻は6時50分前後。

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夕べぽっくりと眠りに落ちてしまい、支度も心構えもないまま寝直したため、
目覚めても、心が外の世界へしっかりと向いてくれなかった。

朝まだき、空も山も、真っ白に凍えたはずの湖も大きく開いた窓に暗く、
寒さに備え、靴を履くまでに、少し時間がかかってしまった。
まだいいんじゃないかな、
無理に起き出さなくても、今日はゆっくりしてもいいんじゃないかな……と、
ボンヤリした気分が心に語りかけてくるけれども、
何かの衝動がどこかでまさって毒虫のごとく蠢き始めると、
布団の熱にくるまれた眠りの余韻の真ん中に
はつらつとした強い動機が芽生えているのがわかる。

そんな感じでモタモタやってたせいで、
外に出たのはほとんど日が昇ろうかというタイミングになってしまった。
部屋の窓から見る分にはダイヤモンドダストが起こった様子はなく、
機を逸した、ということはなかったけれども、朝食の時間がもうすぐに迫っていた。



お早うございます、オイサンです。


四十路間近のオッサンの超個人的な北海道の旅の19回目。
はじめての阿寒編、今回はその2日目のご様子をお伝えします。

_____________________________________
▼おーざっぱな予定表

 1日目、1月17日(金)。羽田~釧路~阿寒湖移動。釧路で珈路詩に寄る。
  ↑Complete!!

 2日目、1月18日(土)。阿寒湖滞在。雪山軽登山。
  ↑★今日ココ

 3日目、1月19日(日)。引き続き阿寒湖滞在。大きな予定ナシ。温泉街散策。

 4日目、1月20日(月)。阿寒湖~旭川移動。バスで5時間。喫茶花みずきでお茶したい所存。

 5日目、1月21日(火)。朝から美瑛散歩。花みずきでスコーン食って帰る。

_____________________________________

今日は、午後からガイドさんつけての軽登山なんていう
これまでやったことのない類のイベントを組み込んである。

まだ今回の北海道旅行の行き先を決める前に、
そろそろ阿寒はどうだろう? と調べていた時にこのツアーが目に留まり、
ごく自然に「あ、これやろう」と思ってしまった。
だから、今回の旅が阿寒になったのは、この軽登山ツアーが決め手になったも同然だ。



■朝



サテ、朝の湖。
まだ暗い暁光の湖畔に立ち、ここでひと思案。



……湖上へ、出たものかどうか?



ハッキリ言ってこの湖面の氷とやら、なにがどこまで安全なのか、わからない。

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どこが安全なのか? どこまでが安全なのか?
そもそも、観光客が一人で勝手に湖上へ出ても良いものなのか???
許可がいるなら、いつ、誰にもらえばいいんだろう?

見渡したところ、湖上のあるポイントにはテントがフジツボの様にかたまって張られているのが見えた。
アレはどうやら、ワカサギ釣りのためのテントであろう。
そしてまた、その近くにはやはり氷上にプレハブ小屋が設えられていて、
どうも氷上祭りの受付がその小屋であるようだった。
その近くには車も停まっている。

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……ああ。
普通に、クルマで乗っかってきちゃうんだ。
すげえな。
氷の厚さは、厚いところで6、70cmはあるらしい。

  このあとも何度かこの湖の上を歩きまわったけど、
  一度、ごく当たり前の顔をした軽トラックが湖の上を走ってるところを見た時は
  ちょっと笑ってしまった。
  普通かw

よそのホテルの裏手から湖に降りるクルマ幅の道が敷かれているので……
まあ、これはここから降りられるってことだろう。
見たところ、危なそうなところや、水の温みそうな湖岸のあたりであるとか、
湯の湧き出るポイント辺りには立ち入れないように赤いネットが張られているので
そこへは当然近付かないものとして……

  「せっかくだから俺は、湖面におりる方を選ぶぜ!!」

色々なフラグが立つのを感じつつも降りてみる……うおお、
足裏に感じる感触がたしかに氷だ。
そしてちょっと、……フワフワしている。
地面が、下まで詰まっている感じがしない! ……気がする。

あと、すべる。
上に雪のかぶっているところは大丈夫だが、氷むき出しの所は普通にスケートリンク……
いやそれ以上に、濡れているのでとぅるっとぅるに滑る。

  あとどうでもいいけど、確実に笑いが取れるたぐいの話を
  「鉄板のすべらない話」って言うけど鉄板だって滑ると思うぞ(そういうことじゃねえよ)。

サテ。
どん、と氷の上に立ってみて感じるのは、
地面に比べるとごく薄い膜の上に立っている感じがする。
……たとえて言うなら、
「自分がちいさくなって、太鼓の上に立っている」ような感じがある。

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実際に音が鳴るワケでも、震えが伝わるわけでも決してないが、
自分の足を運んだその振動が、ドゥン、ドゥンと波になって、氷の下の水をわずかでも震わせている、
という音の感触が足の裏にある。
ごくごく、低く。
ごくごく、鈍く。
これまた当たり前だが、地面に比べれば厚みと密度が異なるわけで、
その感触をまざまざと感じる。

  今回阿寒辺りでは、雪・山用のトレッキングではなく、
  雪道に強いという謳い文句の、底の薄いただの歩き靴を履いていたので
  尚のことそういう微弱な振動を感じ取れたのかもしれぬ。

まずはおっかなびっくりの立ち上がり、
氷上祭りのメイン会場となっているらしい周辺をぶらぶらと歩いてみて、
もう少し先へ、もう少し先へと歩を進める。

結局このあと1時間ばかり、どんどこどんどこと湖の上をさまよった。
一応、一歩一歩、先を確かめつつ歩きはしたのだけれども、
これはワリと危険行為であったことがあとで判明する。
阿寒は温泉地なので、湖の底からも、ところどころ温泉の噴き出しているところがあり、
それが水流によって冷やされずに湖面まで上がってくる箇所がある。
これを「湯壺」と呼び、そういうところは湖面の氷も当然薄くなっていたり、
ポッカリ穴になっていたりして。
人が乗ると、もちろん……
アウトー。



……。



と、いう様なことがあとからわかった。

 ▼自然と向き合う時の安全ということ

これは、オイサンの触れ合ったごくごく狭い範囲での印象なのだけど、
現地の方々は安全に対してワリと淡泊な印象だった。
過敏でない、過保護でないというのが正しいかも知れない。

たとえば上で書いた湯つぼ、氷上の危ない箇所についても、超メジャーな観光地なら
「危ないよ! 落ちるんだよ! 落ちたらまず死ぬよ!」
という警告がうるさいくらいに出されたり、
ここまでなら確実に安全、みたいな仕切りが張られると思う。
が、ここ阿寒にはそれがない。

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仕切りの張り方が、
「ここまでなら確実に安全」というよりは、
「ここからは確実に危険」の方が、感覚として近いのではないだろうか。

  「安全なんです?」
  「いや、わかんないです」
  「落ちたら?」
  「まあ、死にますよねw」

みたいな調子で……「それは当たり前」みたいなノリに見えました。
なんかこう……覚悟が自然に出来ているというか。
人間のありようが一番大事! っていうよりも、なんかいろいろ大事なものがあって全部同列で
それは当たり前のことですよね、みたいな力の抜け方を感じました。
「危ないことは特別じゃねえよ」、みたいな。

ちょっと……独特だったなあ。

「危ない」とも「危なくない」とも書いてないから安心だと思っていたら大間違いで、
とりあえず明確に危ないと分かっているところは危ないと書いて貼っておくけども、
そうじゃないところは「ふつう」なのであって、
「ふつう」とは危ないかも知れないし危なくないかも知れないことなんだな、と。
思いました。

「ふつう」=「安全・既知の領域」ではなく、
「ふつう」=「わかんねえ・未知の領域」。
30%くらいの危なさは「危ないかどうかわかんない」で、
7、80%も危なければ「危ないって書いとこうか」くらいなんじゃないだろうか。
まあ人間の手の届く範囲の方が少ない場所なので、そういう認識なのは当たり前の気がします。

いえ、のんびりした人里に生きてきたオイサンの基準としては、
基本的に安全に生きられる状態が「ふつう」で、「未知」は「危険」だと考えていたので、
話をしていてときどきふわっとかみ合わない気配を感じ、
思い返してみるとそれがその部分だったな、と思う。
「死にますが何か?」みたいなことが、ネタでない意識としてあるような。
そんなことなかったらすみません。<阿寒の皆様

上で書いた湯つぼも、出現場所が日々変わるらしい。
つまり、あのクソ広い阿寒湖の上に危険ポイントが日替わりで発生するわけで、
そんなもん気を付けたって100%追い切れるワケがない。

それを踏まえて、氷上まつりの目玉の一つスノーモービル体験では、
素人が一人でスノーモービルを運転していいらしいのだけど、そのコースはワリとらんぼうに敷かれている。

  「らんぼうに」というのは「広大に」くらいに捉えて下さい。
  つまり素人目に「ホンマに大丈夫なんか」というレベルで、というくらいであって、
  彼らにとって「ホンマに大丈夫」なんてものは基本、存在しない。

これは後でネイチャーガイドのヤスイさんに教えてもらうことだけど、
「スノーモービルで走ってたら、湯つぼにはまって落っこちる例もありますよ。
 人間はモービルが沈むまでの隙に這い上がれたりしますけど、
 モービルは間に合いませんから、そうして沈んだのは結構あります」
んだそうで。

だから多分、あの氷上遊びも、安全がガッツリ確認された上で行われていることではないのでしょう。
無論、毎日下見走行がされるとか、やれることはやっているに違いありませんが。
マ「大丈夫と言われたから大丈夫」という判断を、
普段オイサンがアタマおかしいレベルで信じてしまっているというだけかも知れませんけどね。

 ▼美しく、不思議な世界

凍った湖の上を歩きながらそんなことばかり考えていたわけではなく、
とりあえず危ないことに気を付けながら、
目につく美しいもの・不思議な光景を出来る限り拾い集めておったのだけれども。

……このときも、やはり、音がする。

夜とは響きが異なるが、やはり氷の下から、何かのぶつかるような音。
ドュョン、ゴョトュン、とでも表記すべきか……重さと硬さと柔らかさの同居した、
普段の会話ではあまり使わない音がとどろいてきます。
かといってそれは、おどろおどろしいとか恐ろしいとかではなくて、
どちらかといえばユーモラスな響きです。
大人が子供を諭すような、温かみのある音です。

  イメージで言えばすごく納得のいく感じなのですが、
  ものすごく大きい氷の塊同士を、水の中に沈めてゆーっくりぶつけたらこんな音なんじゃねえか、
  という想像のつく音です。

  もしかするとアイヌの方々の話す言葉の音というのは、
  こういう音を聞き、それらを自然にとりこんで話せるような音なのかもしれんですね。
  このあと、これよりもっと不可思議で不可解な音を湖から聴かされることになるのですが……
  それはまた、あとのお話。

氷は透明度が高く、雪さえかぶっていなければ20cmくらい下までは見透すことが出来る。
氷の中に走る亀裂や気泡が見えるが、そこから先は光が届かず、ただ黒い。

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その黒さはやはり恐ろしい。
湖上の真ん中(湖全体で見れば全く真ん中ではなく端っこも良いところだけど)に立って見渡せば、
東に雄阿寒岳、西に雌阿寒岳。
雌阿寒は、その名に恥じず雪で白く化粧をしているけれども、活火山らしくせっせと噴煙をあげてもいる。
雄阿寒はどっしりと静かなものだ。
朝焼けで、雪肌にほんのりと薄紅のさした雌阿寒はの美しさはお嫁にもらいたいくらいだけれども
そうなると雄阿寒さんが黙ってないだろう。

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西の雌阿寒さん。


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東の雄阿寒さん。

そんなことを考える間も、足元ではドォン、ドォンと音がして、
ときにはビシッとかバキッとか、どこかでヒビの増える音がする。
夜と、朝とで趣の違う音が、あちこちで鳴り止まない。
時には目の前で、びしり、びしりと、氷に、雪に、新しい亀裂が生じるのを見ることもある。

二つの山と森に見下ろされてこんな音を聞かされた日には、
そりゃ昔の人は「神様が何か言ってる!!」と思うでしょうよ。
オイサンだってちょっと思うくらいだ。
畏怖と言うものはどうしたって生まれる。

サテ、今朝の気温は-19℃。
着込んでいるとはいえ、いい加減、手先足先がシビれてまいりました。
宿に戻って風呂に浸かって、朝ごはんを頂きます。



■阿寒の朝~温泉街を歩く



朝ゴハンは、前回も書いた通りバイキング。
先にネタばらしをしておくと、3泊して、レパートリーは変化なかったと思います。
細部でひと品ふた品、増えたり減ったりがあったかもしれないけど。
朝ゴハンなんかは、決まりきったものでも全然問題ないです。

午後からは上でも書いた山登りだけども、午前は特に予定はない。
温泉街を歩けるだけ歩いて、早めのお昼をとって午後に備える手はず。

阿寒の温泉街のようすは、この辺↓の観光マップなんかを見てみて下さい。
温泉モーラの方はちょっと古いのかな。

 ▼阿寒観光協会 
 http://www.lake-akan.com/areaguide/index.html

 ▼温泉モーラ 
 http://www.onsen-portal.jp/sozoro/onmap006.html

阿寒湖の温泉街は、
平行する二本の道路(クルマの走り抜ける大きな国道と、観光客向けの目抜き通り商店街)の間で
構成されているだけなので、迷ったり、位置関係を把握するのが難しい、ということはない。
ホテルと飲食店と土産物屋が立ち並んで似たような景色が続くので、
建物の順番が混乱するくらいのものだ。

ぶっちゃけると、長居するほど面白味のある場所ではナイ。

オイサンみたいに、神社を見て、郵便局を見て、小学校を見て……などという
ワケの分からんところまで見て歩く観光客でもなければ3日もとどまるのはレアケースと言えよう。
多分。
山登ったり森に入ったりするのでなければね。
そういうことをする人たちは、長逗留したりするのだろうか。
そういう人たちはキャンプかな。

  前回もちょっと書いた通り、夜遊びするような施設のほとんどない場所だった。
  バーとか、スナックとか、おねーちゃん侍らせてガーッハッハッハッハ!みたいなの(なんだそれは)。
  ガチン! グビグビグビ……前回のラブライブ!
  海辺の町だとワリとそんなんばっかなんですけど。
  内陸でも、摩周あたりには結構あったような。
  そんなにこの辺りに住んでいる人が多くないから、成り立たないのかもしれませんけども。
  いずれにしてもオイサンにはあまり関わりのない話でござんす。


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メインストリートである「まりもの里商店街」と「幸運の森商店街」を
端から端まで歩いても、合わせて片道1km程度の規模なのでそう広くはない。
ただし、雪があって道が凍っているので、あんまり行ったり来たりすると消耗は激しい。

オイサンの場合、商店街を抜けてその先の林道の入り口辺り
(上の温泉モーラの方の地図の、ホントに右端)まで歩いたりするので2㎞くらいはあるのだけども
それでも大した距離ではない。
山登りの方は、12時半にホテルのロビーにガイドさんに来ていただくお約束になっているので、
ゴハンをチョイ早めに終えて戻ってくる算段。
朝ゴハン食べた後にまた少しダラダラしてしまったんであまり余裕はない。
シャッキリせえw

  全然どーでもいい情報なんだけど、
  温泉街のなかほどにある「菅原美容室」さんは早くから開いてて遅くまでやってて、熱心だなあと思いました。
  なんかいつ前を通っても開いてたようなイメージ。
  さすがに夜中の1時とかは閉まってたけど。
  当たり前だっていうか知らない土地をそんな時間にウロウロすんな。

先ずは観光センターに行って、湖まわりのことをお尋ねしてみることに。
……結論。
別に氷上に出るのは勝手に出ていい。
けど、ワケも分からずずんずん遠くまで行くのは危ない!

「今、お祭りの準備でスノーモービルのコースはったりしてますからその辺は大丈夫ですけど、
 あんまり誰もまだ通ってない様なところは、わからないですからやめた方がいいですね」

とは、観光センターまりむのお姉さんの弁。
……はー、ソッスカー。デスヨネー。  ← 朝ワリと攻めてしまった人
うむ、あれはどうやら危険行為だったらしいので……
明日からはもう少し控えめにしよう。 ← やめる気はないらしい。

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クルマ停まってるところは湖の上です。

温泉街、午前の早い時間だと、まだお店の大半は閉まっている。
何軒か開いているお店を覗いて回るうち、あっという間にメインストリートの端っこにたどり着く。
外れにある「阿寒ネイチャーセンター」という小さな建物がなんとなく気になりつつも、
アイヌコタンなどは後回しにしてひとまず行けそうなところまで、
林道の手前に橋があり、その途中に小学校やスポーツ施設などがあるようなので
その辺りまで歩いてみることにした。

道は、ただただ単調なクルマ道。
マ普通の生活道路、通学路ですしね。面白かったらその方がおかしい。
つーか、そんなところを歩いてる見知らぬオジサンが偏にアヤシイ。
右手は雑木林をはさんで阿寒湖で、
左手は林。山の方へ続きます。


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小学校の門柱、というかオブジェ……コワイ!
夜間はコイツをライトアップとかしてみると……コワイ!!!
この丸みのある木彫はアイヌの伝統工芸のデザインを踏襲してるのでしょうね。
でも慣れないとコワイわ。

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途中にあったスポーツ施設。
屋外に大きなオーバルのスケートリンクが作られて、子どもが14、5人近く、軽快に滑っておられた。
小さい子もいたけどみんな上手い。 ← 滑れない人
大人もついて見ている。
ただの親子関係のようなペアもいれば、コーチと生徒みたいな関係も見受けられる。
まあオイサンは、スケートしているところを見に来たわけではなくて、
雌阿寒岳が近くに見えたからそれをおさめに来たんですけども。
スケート靴のブレードが氷を蹴る、コシュ、コシュという音は軽妙で、力感もあるのに儚げで、独特です。

橋を渡ったところで引き返そうと思っていたのだけども、
水の流れに沿って小道が湖の方へ繋がっていたのでついでにそちらへ歩いてみた。
雪の中を凍らずにさらさらと流れている様が美しかった。

  まあ、なんですね。
  このオッサンは、ついて行ったらアカンよと言われてるのに真っ先に雪女とかにユーワクされて
  危ない目に遭うタイプですね。
  ね、絢辻さん。

しかしそうすると、なかなか眺めの良い場所に出た。
湖をはさんで、雄阿寒岳さんが真正面。

  マ雄阿寒さんデカいから、対岸側からだったらどこに立っても大体真正面なんだけど。

町からも、お祭り会場からもそこそこ離れてきたのでとても静かで水音もあってとても落ち着く。
マ落ち着きますっつってる場合じゃないくらい寒いんだけど。

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するとその静寂に混じって……またしても、
目の前の巨大なスピーカーから奇ッ怪な音が、耳を澄ますまでもなく聞こえてきた。



  ピューン……ピューン……ヒュイーン……ヒュイーン……

    ゴォーン……ゴゴォーン……




……なんだ? この音。
また、湖が鳴らしてるんだろうか???
こんな、インベーダーゲームみたいな音を????
ご冗談でしょう、ファインマンさん!

    

それからしばらく……15分ほどそこでボーっとしていたのだけども、
この音はやむこともなくひっきりなしになっている。
ずっと、ずっと、湖底のインベーダーゲームは続いているらしい。

実はこの音を録音しようとして色々試みたのだけれども
手持ちの道具(デジカメの動画撮影機能・携帯電話とウォークマンの録音機能)では
うまく音を集めることが出来なかった……。

  どーしてこの瞬間に専用のICレコーダーを持ってないのヨこの役立たず!
  甲斐性ナシ! 安月給! 童貞! 
  ああっもっと罵って! 顔を踏んで下さい!!
  ……JapaneseNinjaNo.1は面白いなあ。

  ICレコーダー、所有してはいるんですけどね……。
  まさか出番があると思ってなくて、旅行へは持ってきませんでした。
  同じことを考えた人間がいないかと思い、帰ってきてから動画を探してみたら
  ……あった。
  でも数は多くないな……。

  ▼凍った阿寒湖 不思議な音 鳴き声
  



  これこれ。まさにこの音です。今聞いても不思議な音だ。
  ホントに、何の音なんだろう?
  屈斜路湖でも、結氷すると同じ音がするのか。やはり氷由来の音なんだろうなあ。


  


時刻は、11時を回ろうかという頃合い。
夜中には間違いなく聞こえなかったし、早朝にも聞かなかったので、恐らく時間帯によるのだろう。
日が昇り、気温が上がって水が温んだり氷がゆるんだりすることが関係あるにちがいない。

この音についても、このあと、宿の人や観光センターの方、
午後についてもらったネイチャーガイドのヤスイさんにも尋ねてみたのだけれども、
回答らしい回答が返ってきたのはヤスイさんくらいのもので、
他の方々は首をひねるばかり。
「さあ……聞いたことないですねえ」
と言うんで、フツーに暮らす地元の方はあまり気にしてないんだなあとつくづく実感。

  確かに、お昼前に静かな場所で、凍った湖を眺めたりは……
  フツーにしてたら、あんまりしないかも知れない。

以前、結氷するかしないかくらいの時期(やはり1月の上旬だったと思うけど)に屈斜路湖を訪れたとき、
薄く割れた氷が風に吹かれ、岸に打ち寄せて、
まるで鈴の鳴るような、シャララ、シャララという音を聞いたことがあった。
あれはあれで美しい、不思議な響きであったけれども、
正体が知れないということもあって、美しさ、不可思議さでこちらはその上を行く。

  ▼川湯・屈斜路湖・摩周湖旅行編「雪に空蝉」(2008年1月12日~14日)
  http://yukini-utsusemi.cocolog-nifty.com/blog/2008/01/post_8a61.html

「また明日も来てみるか……」

いい加減、ゴハンを食べてしまわないと昼からのお約束に間に合わない。
後ろ髪を引かれる思いで元来た道を引き返す、あやしげな見知らぬオッサンです。



■おっさん、こける。



ぎゃー。



こけた。



不思議の湖畔から人里へ戻り、
アイヌコタンの入り口でどうやら関西人しかびっくりしないらしい単語にびっくりし、
来る時とは違う、大外から広い方の道路沿いの道を歩いて宿まで戻る。
昼ゴハンの目星は2軒つけてあり、1軒は宿の近く、もう一軒は商店街の中ほどにある。

P1183181_2 P1183184 P1183190 P1183199


えー、結果、2軒とも休みでした。
くそう!!


その2軒がそこそこ離れてる
(そもそも温泉街の東はしにある宿から西の端のさらに向こうまで行き、
1軒目のお店のために一度東はしまで戻り、
2軒目を探してまた真ん中まで戻る、というアホみたいな動きを繰り返した)モンだから、
いい加減時間も押してしまい、慌てて3軒目へ向かう途中、
……盛大にころびました。
右わき腹、強打。
超まくのうち。

  2/11日現在、まだ全然痛いです。
  多分、肋骨が若干アレなことになっていると思われます。

いやあ……人間、いかなる時でも焦ったらいかんね。
ロクなことがない。

転んだ直後は呼吸もままならず、
ゼーヒー言いながらとりあえず通行の邪魔にならない場所によけて体勢を整える。
そんな時でも真っ先に心配したのはコートの右ポケットに入れてあったデジカメだったっていうんだから
このオジサンはどうしようもありません。
カメラは無事でしたけども。

わき腹がちょっとおかしな方向へ伸びたり、
右腕をついて立ち上がったりしようとするとえもいわれぬ激痛が走ります。
むう……こんな調子で、午後から山のぼったりして大丈夫なんだろうか……。

  へっ、俺は手負いの方が怖いんじゃぜ?(真っ青

まあ真っ青は言いすぎですが、とにかく下手に動くと痛いのなんの。
ぐぬぬ……こんなに痛くてインカ帝国! ← 意外と余裕がある。
山登りは言わずもがな……昼ゴハンもまともに食べられるかどうか……。

  お昼ゴハンといえば、
  結局「奈辺久」さんでわかさぎのかき揚げ丼と鳥そばのセットを頂きました(食うたんかい)。
  はじめからセットになっているワケでなく、
  こちらの奈辺久さんでは丼物もおそばも全部ハーフに出来るという新設設計なので
  半々サイズのセットに。

   P1183202 P1183205

  こういう気遣いというか、融通が利くのは旅行者にはありがたいですね。
  地の美味しいものを、限られた食事の回数で出来るだけ種類多く頂きたいですからね。
  美味しかったです。

さあ、宿へ戻って山登りの準備をせねば……(登るんかい)。


ここらで一旦後半へ続く。



 

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2014年2月12日 (水)

■雪の日(後篇)~2014年1月期アニメ感想とか~ -更新第905回-


はいどうも。
前篇では何故か急にほむらちゃん愛が盛り上がってしまって
あんまり書く気のなかったことまで書いてしまったオイサンです。
どうしようもないですね。


んでまあ話の発端は関東で大雪が降りましたねってコトだったんですけれども、
ワタクシ先月行った釧路にて、一回雪道で見事に転倒し、
右ワキ腹を強打しまして、今なお絶賛まくのうち(※)中なのですが。

  ※まくのうち:
    『はじめの一歩』で一歩が結構しょっちゅう相手のアバラを粉砕していくことにちなんで
    アバラを傷めたり、そこが疼いたりする様を表すスラング。
    主にこのブログの中でのみ通用する。


実は昨日の朝にも出勤途中にやっぱりすべって転んでしまい、
今度は左ワキ腹をやってしまいました。
なので今、オイサンは両ワキ腹ともに激しく弱点です。

  まっくのうちっ! まっくのうちっ!

とはいえ、右をやった時ほど激しくなく、
痛いは痛いでズキズキしてるんだけども
「この痛みは知っている……来ると分かっているなら、耐えられる!」
という幕の内理論の通り、あんまり気になってません。
すごいね。人体。

  まっくのうちっ! まっくのうちっ!

しかしそんなことよりも……
転んだときにどうやら鞄の打ち所が悪かったご様子で……

P2110527

おおおおお……。
許さんぞ舛添要一……(マスゾエ関係ない)。

いつか別れの時が来るとは思っていたが、こんなカタチで訪れようとは……。
ヒビのいっていない部分は映るけど、日々の部分はもうまともに映りやしないし
タッチパネルも機能しないので……さすがに、これはもうだめだな。
まいったまいった。
他のものはとりあえず無事でよかった。

それを思うと、釧路で転んだときに何も壊れなかったのは幸運だったのかも知れんなあ……。
代用機をどうするかは目下考え中。
いにしえの名機・シグマリオンⅢを再起動させようかと思ったんですけれども、
バックアップ電池の交換が必要っぽく、
それをするには結構な手間とお金が必要なようなのでちょっと見送り。

今のところは、シグマリオンさんの次に使っていた富士通のLOOX Uさんを甦らせて対応中。

 ▼富士通「FMV-BIBLO LOOX U/G90」~500gを切る超軽量モバイル[ PC WATCH ]
 http://pc.watch.impress.co.jp/docs/column/hothot/20100129_345183.html

しかしこの子、起動時間が短いんじゃよねえ……。
はやいとこどーにかせんと。



■今期のアニメの話



そーいえば、今期ナニ見てるかとか全然書いてなかった。
とりあえずざっとだけでも並べてみよう。

ちなみに、(OP)とか(ED)が書いてあるのはそのOP/EDは楽曲購入希望で、
★印がついてるのは入手済みのもの(1/31現在)です。


▼1軍 (そこそこの割合でリアルタイムに見られている)
 『未確認で進行形』(OP/ED)
 『ディーふらぐ! 』
 『スペース☆ダンディ』(OP★)
 『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』
 『桜Trick』(OP★)
 『世界征服~謀略のズヴィズダー~』(OP)
 『となりの関くん』(OP★/ED★)
 『てさぐれ!部活もの あんこーる』
 『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』
 『お姉ちゃんが来た』(OP)
 『生徒会役員共*』
 『ウィッチクラフトワークス』(ED)
 『Wake Up, Girls! 』

▼2軍 (1回は見て、録画は継続していて、積極的に見る気がある)
 『咲-Saki- 全国編』
 『いなり、こんこん、恋いろは』
 『バディ・コンプレックス』
 『プピポー! 』
 『マケン姫っ!通』
 『ノブナガ・ザ・フール』
 『ノブナガン』

▼録ったけどまだ見てない
 『魔法戦争』
 『中二病でも恋がしたい!戀』
 『とある飛空士への恋歌』

▼見たいけど何かの都合で見られていない
 『のうりん』
 『ハマトラ』 (アニメ)

▼残念! 君の冒険はここで終わってしまった!
 『ニセコイ』
 『ノラガミ』


……大体こんな感じ。多いなあ……。
なんだかこのところ、ものすごい数、増えてません? 過当な気がする……。
適正ってなんだって話はあるけどw

以下、それなりに見ているものだけちょっとだけ感想。


 ▼『未確認で進行形』(OP/ED)

今期の総合力での筆頭。すごく丁寧です。

ワリと普通の女子高生・小紅と、超シスコンなその姉・紅緒の所にやってきた、
あ~る君をイケメンで朴念仁にしたような謎の高校生男子ハクヤと
そのお付みたいな謎のロリ小姑・マシロの四人が織り成すファンタジック・スラップスティック。




メインの二人(小紅とハクヤ)が、あまりアニメ特有の極端な感情の持ち主ではないので
見ていて楽しい、疲れない。

第二階層のキャラクターたち(紅緒・マシロ 他)はわちゃわちゃと賑やかで
見ていて楽しい雰囲気やフックをばんばん作っていってくれますが、
話の大幹、コアを担う二人がしっとり系なのでお話し全体が極端になり過ぎないで、
そこがしっとりしていれば、ああこうなるんだ、と見ていて気付かされました。
とてもあざやか。
メインヒロインが新人さん3人とのことですけど
たどたどしさなんかは全く感じません。
最近の若い人はすごいなあ。
OP/EDともに大好きです。
ちょっと古めかしい感じがある。
あと、合間に入るCMの、一迅社のCIが毎回トチ狂ってて目が離せませんw
こういう遊びとサービス精神は嬉しいですね。


 ▼『ディーふらぐ!』

ダメダメかつキテレツな、女の子ばっかり・ボケばっかりのゲーム制作部に、
ヤンキーで良識あるツッコミ型の主人公が巻き込まれて
延々ツッコミ続ける、みたいな、
まキャラクター配置としては『はがない』と大体同じな感じの作品です。
「友達が少ない」みたいな別テーマがなくて、
「ゲーム制作部というダメな部活をライバルと闘いながらどう存続してくか?」
みたいなコトが軸に(一応?)なっている話。

ドタバタハイテンションコメディ!
……というべたなアオリがすごいしっくりくる。
そういうノリ、ワリと高打率でスベるネタが苦手な人はダメでしょうコレ。

個人的には男性陣が充実していい味を出しているのでオススメです。
主人公のヤンキーの素晴らしいツッコミを筆頭に
その仲間のキャラが立ってる二人(うち一人はオイサンの大好きな安元さん)、
ヤンキーと幼なじみで副会長のドMの人、他の不良グループなど、
かわいい女性キャラも多いのにそれ以上にヤロウ勢が充実していて余計な見ごたえありです。

  ……別に、ヤロウが多ければ見ごたえがあるってわけじゃないんですけど、
  オイサンは男女比率があまりにも女子に傾すぎているのは、
  見ていて現実感に乏しいというか、
  その世界にちゃんとしたバックボーンが説明されているか、
  あるいは状況的にそれが正しいことが把握できるようなことがないと
  その世界で起こっていることを真面目に受け止めようという回路が働かないので、
  あんまり良くないよなあと思ったりします。

Webラジオの方も面白いです。
ヤンキー役の小西克幸さんと、伊藤静御前の無茶な掛け合いw
小西さんの引っ張り方がすごい上手ですね。
OPとEDがちょっと独特で、当初好きになれなかったんですけども段々クセになってきた。
一期に一本くらい、こういう変なフックを持った曲があるのはいいのかな、という気分。


 ▼『スペース☆ダンディ』(OP★)

1話目を見た時は「こりゃなんじゃい」と思いましたが、
今ではHDDに録画マークがつくのが一番楽しみな作品の一つです。





宇宙人ハンターをやってるスカジャンリーゼントのあんちゃんが、
ブービーズ(ぱっつんぱっつんでお酒の飲めるアンミラ的な店だと思いねえ)で遊ぶ金欲しさに無謀な騒動を起こしてまわる、
ダメな『スペースコブラ』みたいなアニメです。

  番宣キャッチは
  「"研ぎ澄まされた適当"をやぶれかぶれに描く、SFスペースコメディ!」
  なんですけど、これもかなり適当に決められた感あって好感度高いです。

1話完結で、前の話で死んでても次回では生きてるような投げっぱなしアリ仕様の、
古めかしいと言えば古めかしい作り。
まあ、丁寧ですよね。
この作品を、5分10分15分のショートアニメにしなかったのはナイス判断というか、
コンセプトのブレを許さなかったエライ人がエラかったと思います。
エラい。

昨今、こういう純粋ネタモノは短くしてしまえという風潮があるように思いますが、
みっちりねっとり30分、じっくりと間を取っておっさんの哀愁を塗りたくる方向性にしたのは
オッサンにとっては嬉しい限り。
この間の長さを、もしかするとお若い人はタイクツと思ったりもするのかも知れませんな。

何が面白いんだって言われると困ってしまいますが、
笑いの浪花節みたいなもんで……
なんだろなあ、『こち亀』みたいなもんだと思ってもらえたらいいんだと思います。
バカ話メインでたまに人情話がまじったりする。


 ▼『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』

魔法使いがマイノリティの世界で起こる
魔法犯罪を「裁く」「捕まえる」ではなく「弁護する」側の魔法弁魔士たちのお話。
ロリ巨乳が若本声のカエルに毎週セクハラされるのがハイライト。



梅津カントクお得意のピカレスク成分・アクション成分・ぷりぷり女子成分を差っ引いてみれば、
お話的な主ファクターは法廷人情モノ、っていうとても分かりやすいお話です。
色々ゴテゴテくっついてるのが「何がやりたいんだかようわからん!」みたいな感想を生みがちですけど
……まあ、得意なコトでファンの欲求はしっかり満たす、分かりやすいコトで新しいお客さんを先ずは引き込む、
その上で自分的に新しいコトをやり、面白いドラマで+αの評価を狙う、というところなのだと思います。

んー……個人的には面白いと思います。
肝心の法廷ドラマが売りになるほど濃密だったり鮮やかだったりせず、
他のファクターときれいに結びついてないので、分解しそうではありますけど。
なんとかアリかなあという感じ。
オイサンの視聴動機は「セシルかわいいよセシル」。
公式の発音が『「ウィーザード」・バリスターズ』なのも、なんか個人的には好きです。


 ▼『桜Trick』(OP★)

OP脳内再生率は今期最高。

2人×3組のガチレズJKカップルが、周囲の目もロクに気にしないで
あっちでイチャイチャこっちでイチャイチャするアニメです。
なんかもう、イメージ唾液まみれです。
タイトルが『唾液まみれ』でもいいくらいじゃないだろうか。
イヤ、実際そんなに唾液の出番はないんですけど、
ていうか唾液の出番てなんだ、そんな日本語初めて聞いたぞ、まイイや、
実際の直接的な品のなさで言えば『生徒会役員共』とか『妹ちょ』の方がヨッポドなんだけども
こっちの方がにじみ出る品のなさがすさまじい。




なんでしょうね、このキラキラした品のなさは。
その謎を解くために見ていると言っても過言ではない。

  うーむ。
  『妹ちょ』の方が垂れ流す分泌物のレベルとしては格段に下のハズなんだけど、
  全然こっちの方がゲヒンな気がするなあ。
  なんでだ???

シャフトっぽい演出が色々話題。
だからというわけじゃないですけど、見ていて『ひだまり』に似てるなあと思います。
それは見た目じゃなくて、女の子同士のきもちの距離感が『ひだまり』の距離感だと思う。
そこを本作の彼女らは、節操もなくダイレクトに肉体的なところまで体現してしまうから
ガチ百合・エロスになってしまうだけで、
ひだまり荘の面々には美術や創作といったそういうパトスをぶつける場所があるけど、
こいつらにはないんで、こーなっちゃっただけだな、って思います。

なのでまあ、アホだし、品もないけど、微笑ましい気持ちで見ております。
言うほど悪くない。


 ▼『世界征服-謀略のズヴィズダー-』(OP)

これ、『-謀略のズヴィズダー-』が副題だとすると、
主題は『世界征服』だけなんですね……すごいタイトルの作品だw

幼女筆頭の、何が発端で何が目標か分からない悪の組織が、
それを阻止しようとするよく分からない組織と衝突する様子を、
それに巻き込まれた一般的な男子の視点で描くお話。
ウム。よくわからない。





4話まで見てみて……面白いのかどうか、まだ分かりません。
どういう物なのか分からない、という意味での面白さはある。
イキオイはある。
画もいい。
間もいい。
だから気持ちよく見られるけど、お話として作品として、面白いのかはまだわからない。
気持ち良く楽しく見られるんだからそれでいいとは思いますが。

オイサンは今のところ、
「非日常な人たちの、けちくさい日常」を見るのが楽しくて見ている感じです。
あとはヴィニエイラ様かわいいよヴィニエイラ様。
お話的には、前半は無茶やってるように見えてドタバタの範疇を超えない、
ある意味では「おとなしい」展開なので、
こっからアホみたいに転げていくんだろうなーという期待がある。
もっともっと、意味が分からなくなっていくと良い。
OPの比較的ハイテンポな真綾もツボです。
作詞も坂本真綾なのか。すげえな。
このひと、

 ♪ 英雄は裁かれない! 勧善懲悪のからくりに

なんていうガチムチな歌詞書くんですねえ。


 ▼『となりの関くん』(OP★/ED★)

webラジオ『あすみさん@がんばらない』と『絶園のテンペスト』で
自分の中の花澤香菜的な何かに目覚めたので、
とりあえず花澤香菜の一人上手が見られるという理由で見始めた。

となりの席のキテレツ男子が授業中にいらんことばっかするのを見て
花澤香菜が台本通り(当たり前だ)にツッコむアニメです。

  関くんのアニメパートだけ作っといて、
  それを見た花澤香菜がアドリブで突っ込むアニメにしたらどうだろうか。
  無茶言うな。人気声優の負担をこれ以上増やすな。

そんなにコンスタントに、高い水準で面白いわけではないw
まあ、原作のコンセプトからして出だしはこういう感じだろうな、とは思っていたけど。
だから多分、花澤香菜が絡んでいなかったら見ていなかったと思う。

積み重ねが出来て来て、「囲碁」の会で隣の席子ちゃんが
「また音の出るものを……」って言い出したのはおかしかったw
そろそろ「音の出ないものだったらまあいいか」と思い始めてるってあたりが。
こうなってくるともう熟年夫婦みたいなもんですね。
そういうこなれ方というか、積み重なることで出せる
じんわりしたおかしみが出てくるようなら楽しみです。

最初、EDの妙にこじゃれた演奏が
ギャップ的な効果を狙ってるのかなあとよく分からずにおったんですけども、
なんかアレ、その筋では超有名なドラマーさんが演奏されてるんだそうですな。
あの画のセットと同じ器具でw
わかんねえよw





 ▼『這いよれ!部活もの』

若干タイトルが違うような気がするがまあいいでしょう。
えー、一応見てます。
カメラが下からグイッとパンしてタイトルロゴがどーん! するアニメの二期。
一期が始まってから来期(つまり今期)も二期をやるコトが急きょ決まったというのは本当か。
それでも間に合ってるんだからMMDというのはすごいですね。

  イヤ、間に合ってないけど。2話とか3話とか。

まあ……特にいうことはないですね。
1期と同じ。
「ただでさえラジオで良いんじゃないかって言われてるのに」って
自分で言い出すとは思わなかった。
この楽屋落ちの開き直りっぷりはお見事です。
これだけ突き抜けたらもう見てる方は却って安心できますね。

面白いのかと言われたら、
1期1話でOPを見た瞬間よりはどう頑張ったって面白くはならない……と思っていたら、
6話のOPでやってくれました。
逆手に取られたwww
もう完敗です。最後まで好きにやってくださいw


 ▼『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』

横綱審議委員会の査問にかかって時間帯移動を余儀なくされた、普通に問題作な本作。
女子中学生の膀胱の限界に挑戦するアニメです。
ちがいます。
義理のお兄ちゃんに素直になれない女子中学生の膀胱の限界に挑戦するアニメです。
だからちがいます。
義理のお兄ちゃんに素直になれない女子中学生が、
そのお兄ちゃんのことを思いながら世を去ってしまった女の子の幽霊にとりつかれ、
「私を祓いたければこの貞操帯のラブゲージが一杯になるまでお兄ちゃんとイチャイチャしなさい」
とかもう、
完全にこの幽霊もカドカワが考えたゲームシステムにのっかってんなー感満載の設定で
謎の貞操帯を取り付けられた挙句、膀胱の限界に挑戦するアニメです。
よし、OK。

もういっそのこと
『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。SIN・~限界への尿意~』
とかいうサブタイトルを付ければいいじゃないと思うんですが。
そんなんで2話目辺りまでは女性声優のおしっこをガマンする演技が聞きたくて見てましたが(さいてい)、
なんかもーいーかなーと思っていたところ、
3話目がワリとフツウにちゃんとしていて若干イラッとしました(どないせえっちゅうねん)。

  なお、この膀胱の容量世界チャンピオン(JCの部)を演じる声優、
  橋本ちなみさん(21)は本作がデビューらしいです。
  大変だなあ。
  ご趣味は雑貨屋めぐり、音楽鑑賞で、
  特技はポジティブ思考、秘書検定2級を所持してらっしゃるご様子(Wikipedia調べ)ですが、
  色々ポジティブに考えて頑張って戴きたいと思います。
  アニメ雑誌の作品のインタビューとかで
  「どのくらいおしっこ我慢できますか?」とか聴かれてなければいいけど。

せっかくだから、全話むりやりにでもおもらしシーンが必ずある、くらいの方が
コンセプトとして、作品のエッジとして、面白いかったかなーとは思います。
たまに漏らさずに終わりそうな回があってもなんだかんだで結局もらしてしまって
「今回は漏らさずに済むと思ったのに~!」
って終わるのが芸になるくらいのイキオイが欲しかった。
某パン焼きアニメが最後までパン焼きを貫いたように。


 ▼『お姉ちゃんが来た』(OP)

TLで名前が挙がってるのを見かけていたけどTVの番組表検索で見つからなかったので
どこでやってんだろうなーと思っていたら、
AnimeTVという情報番組の中でやってるショートアニメでした。





義弟激ラブの義理のお姉ちゃんがグイグイくる漫画です。
それだけ。
おしっこは我慢しません。
Webラジオの方の「ラジオにまでお姉ちゃんが来た」っていうタイトルが
オイサンのセンスにファイナルストライクだったんでつい見始めてしまいました。
すみません(なぜ謝った)。

お姉ちゃんの声がものの見事に甘ったるくてやたらクセになります。
ひざまくらで耳掃除とかして欲しい声をしています。
自分の名前が「トモくん」でないことをこんなに恨めしく思う日が来るとは。

個人的には、変人お姉ちゃんがトモくんの前以外ではワリカシふつうなのがポイント高いです。
弟の部屋に入ってきて、何するかと思えば普通にファッション雑誌読んでたりする。
画の動き方も好きですねえ。
のっぺりまったりロングスカートなお姉ちゃんの造形も良し。
このお姉ちゃん、うまいことフィギュアになりませんかね。


 ▼『生徒会役員共*』

えー……おっと、ここにもそこそこおしっこをガマンする感じのアニメが。
マガジン原作のゲヒンな漫画のアニメ化2期です。
すげえな、2期あるのか。
1期見てなかったけどなんとなく見始めた。

……なんか、やけに幸せそうなアニメですね。
何だろうコレ。出てる連中がみんなすごい幸せそう。

面白いかって言われたら……原作ナリですけど、
出てくる人間もれなくゲヒンなのに、みんななんか幸せそうなんですよね。
悪い人、不幸な人が見受けられない。
ハツラツとしている。
ツッコミがカーーン!! といくばかりでなく、
テレッとしていたり緩急があって面白いです。

うーん、案外人間、ここまで全員であけっぴろげになれば
社会がハッピネスに包まれますよっていう作者からのメッセーj
だまされるな俺!!
何を考えているんだ僕はー!!

某見る目のある人が「背景が綺麗」と言っていました。
オイサンは気が付きませんでした。
そうなのかな。
今度しっかり見てみよう。


 ▼『ウィッチクラフトワークス』(ED)

うーん。あんまり面白くない。

なんかものすごい寡黙系(恐らく)クーデレ魔女が押しかけてきて
コレといって取り柄のない主人公を、暴れん坊名魔女たちから守ってくれるマンガです。

最近の落ちものアニメは、厄介者が降ってくるのではなくて
厄介ごとと一緒に都合の良い防衛手段がセットで降ってくるのでいいですね。

まあ……それだけなんですね。
強いて言うなら悪役側の魔女のグループがやたら間抜けで可愛らしいとか、
バトルシーンが底抜けで、
面白いわけではないんだけども、見ていてポカーンと出来るとか、
そういう売りがあります。

4話目だか5話目だかで、
巨大化したぬいぐるみのクマとウサギで濃密なプロレスを見せられたときには
なかなかのビジュアルショックで、かなりポカーンと出来た。
そういう面白さが主である気がする。
ストーリーラインの面白さとか、鮮やかさみたいなものを期待する作品ではないですね。

エンディングだけは無条件にクセになる感じです。
ピッピコピッピコ鳴らせ!

あと、どーしても気になるのが、主人公の少年役の小林祐介さん、
絶対『Little Lovers SHE SO GAME』のドラマCDで主人公やってた人だと思うんだけど……ちがうのかなあ。


 ▼『Wake Up, Girls! 』

3話目くらいまでしか見てないはず。
劇場版がTV版より先にあったらしいけどそれも見ていない。

監督・山本寛さんの言行の方が作品そのものよりもよっぽど盛り上がってしまっている
仙台ご当地アイドルアニメ。

アイドルアニメには『アイマス』『ラブライブ』という偉大な二大先人がいるわけですが、
それらお気楽キャイキャイアイドルとは路線をたがえて、
より薄暗く、よりスポ魂よりに! という方向性を感じます、が……
それがなんか各方面からは反感を買っているご様子。

面白いか……と問われたら、まあ、積極的に消化しようとは確かに思わぬ。
描こうとするものは分かるし、
それに対して描き方もこれでいいとは思うんだけども、
如何せんそれがあんまりみたいものではないというか。

山本監督はきっと「コレ」を「こういう風に」描くことを望んでいるのだろうから、
……うん、それで良いんだと思います。
描きたくないものを描いているだとか、
描きたいものをあるけどそのやり方がわからなくてこうなってて、
ちがうんだそうじゃないだって自分でも思っているんだったらそれは問題だと思うけど、
多分その、「確信犯」という言葉も正しくないくらい、
間違っていないという確信の元に描きたいものを描きたいやりかたで描いているのだろうから
いいんだと思います。
真っ当かと。

如何せん、それが受け手の期待したもの・想像したものと違ったというだけだから。
作り手は受け手の求めるものに寄り添うべきかと言われたら
全然そんなことはないとオイサンは思うので。

  「そうしないと作り手が食えない」というだけなので、
  食う食わないを気にしないならそれでいい、というのが、「受け手としての」オイサンの考えです。
  マ放送の電波に乗るものなんで公共に寄与するものであるべきなのだけれども、
  それはイコール「大衆の嗜好に迎合する」コトではないと思うので

これを求めていた、という人もいるでしょう。
ただ、オイサンとしては、やはりコレを描くにしてもちょっと古めかしいというか、
新しさを見出しがたいのでちょっとどうかなとは思う。

楽曲はOPの『タチアガレ』はそこそこ好きですけども、
飛びぬけてというわけでもないなあ。



■Closing



えーと……大体こんな感じだろうか。
『ノブナガン』は1話は面白かったけど以降がちょっとベタ過ぎるというか。
なんか1話目でやたらと、寝坊・朝食・遅刻っていうシーンをたくさん見せられた気がする。
いいのか?これで、とちょっと思ってしまった。
なんかやたらと「魔法」っていう言葉と概念を聞く期でもありますな。
やっぱり期によってそういう流行みたいなものがある気がする。
『魔法戦争』『中二恋』『いなり』あたりは見たいと思っている。
『のうりん』も『WUG』なんか見てないで、こっち見たほうが良かったかなあとちょっと後悔中
(時間がかぶってたんすよ)。
『プピポー』も最初は喜んでみてたんだけども、なんかこう……
短いワリに中途半端であまり箸が進まん。


しかし……本数が多いな( ← 減らせ)。



以上。

Blendyのスティックタイプのコーヒーで
「エスプレッソ・オレ」ってのを見つけて何となく買ってしまったんだが……
それってカフェラテじゃね? と飲みながら思ったオイサンでした。






カフェオレはコーヒーに牛乳を加えたもので、
カフェラテはエスプレッソに牛乳を加えたものですからね。

ではまた。


 

 

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2014年2月11日 (火)

■雪の日(前篇)~ほむらちゃんのフィギュアと『劇場版 魔法少女まどか★マギカ 新編 叛逆の物語』ざっくりな感想~ -更新第904回-


雪どけの水が流れを作り、
ジョロジョロと音をたててどこかへ注ぐ音を聴くのは
なかなか趣深いことであるなあ。

こんばんわ、平成の吉田兼好、オイサンです。
僭越すぎるだろ。呪われろ。

P2080070


サテ先週末の土日、関東は前日から
何かの脅しみたいに大雪の予報が出ていて
ジッサイよく降ったわけだけども、
果たして「大雪」と言うほどのモンだったかと言われたら、
そーでもなかったような。
確かによく降ったしそこそこ積もったとは思うけど。
電車も道路も飛行機も、あっちゃこっちゃでしっかり止まってたので
各所への影響も甚大ではあったんだけど。
ええとこ2、30cmだったようだし。

どーなんでしょうかね。

町の様子も、もう少し違う顔になるかと思ったけど案外変化がなかった。



■雪の西麻布



しかしまあこの雪もタイミングが良くなくて、
各所では試験やら選挙やら、ナンダカンダ行われておったようですね。

気象庁さんが「外出は出来るだけ控えて!」と青筋立てて叫ぶ中、
「選挙すっぞ! 投票には来いよ!」
「試験は予定通り行います!!」
って各所で好き勝手言ってて実にエクセレント。
人間社会というヤツはこうでなくてはなりません。
ざまあみろ(誰がだ)。

しかし選挙はともかく、
試験なんかはこういうとき、予定通り行うのがいいのか、延期するのがいいのか、結構悩みどころだなあ。
移動やらのコンディション考えたらそりゃ延期が正しいとは思うけど、
受ける側のメンタル考えると「今日に!」って構えてたのが延期されるのは決して良いとは思えぬ。

そう! 選挙といえば……

  ぬおおおおおおおーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!

選挙特番のために時間帯をずらされ
『スペースダンディ』を録り損ねたので、オイサンはもう一生マスゾエを許しません。
お前なんか一生ファミコンの変なゲームでキャラクターにされてろ!!

▼舛添要一 朝までファミコン



▼岡村靖幸 - ビバナミダ



……くだらねえ……。
都政なんてやめちまえよもう……
アニメずらしてまでやるほどのことかよ……。
お前らの投票率なんて、どうせこないだのサザエさんの視聴率よか低いんだろ?
だったらもう、波平にやらしちまえばいいじゃんよう……。
ヤツぁ日本のお父さんだってお前らの大好きなセロン言ってんだろ?
じゃあいいじゃん。

  ……って言うとまた各方面から、
  「『東京都=日本』みたいに言うのやめて下さい!!」って怒られますな。
  すみませんでした。クワバラクワバラ。

……にしても、
「火だるまで死ぬか血だるまで死ぬか、どっちがいい?」
っていう程度の投票へ、のちのち当選者がヘマこいた時に
「いや、俺は投票行ったから文句言う権利あるよ?」
って言う権利を得るためだけにわざわざ雪の中行くのなんか、ヤだよねえ。
そらそうよ。

いっそもう投票とかやめて、
国民生活の様々な要素をめっちょトレースしてビッグデータ解析した結果で
自動的に国家元首を決めるシステムの構築を急いdうそです。
んなことしたら、毎回みのもんたとタモリと阿部寛と堺雅人と秋元康の争いになる。
ちなみにそのシステムではカレーをたくさん食べるとインドに対して友好的な外交政策が自動的に採択され、
ラーメン食い過ぎると政策が中国よりになるので注意が必要だ。

  いや、でも投票は行かないとダメですよ。
  ね。
  行かなくて良い、なんて言ってませんからね。
  行く気しませんよねー? って言ってるだけですよ。
  ヨノナカそういうモンでしょ。
  ただし雪の中の無理な外出は控えて下さいby気象庁。



■雪の朝に、ほむらちゃんがキター!



そんな雪の中……まだ降り始めの土曜のAM、
宅急便のおじさんが、ほむらちゃんを届けてくれました。
……宅急便のおじさんよ、すまない。
何も、こんな雪の日でなくてもいいのにね。
さすがに2週間前にはこんな日になるとは思わんかったんや……。
ホンマ堪忍や……。

ワリと顔見知りの、とても真面目で純朴な宅配便の人だったんで、
大変申し訳なかった。
配達人があの人じゃなくなったらちょっと心配になるだろうなあ。

  世間では宅配ピザのバイトのお兄さんが
  「こんな雪の日に注文すんじゃねえ」
  と憤ってましたけど。
  うーむ……それもどうなんだろうな。
  悪意があってやってるなら問題だけど、
  営業してるサービスを利用するのは悪いことでもなかろうし、
  社会的に道路やらのインフラが混乱していることを考えれば、
  そこをさらに混乱させるようなことは
  市民としては極力控えるべきではあるのかもしれない。

でまあ、ほむらちゃんなんですが。
……う、美しい……。
箱から出してみて、ひとしきり眺め回してみて出た感想が、
「ほむらちゃんて女の子だったんだなあ……」
というですね、えー、



……。



お巡りさんこの人です。
お巡りさん僕です。

なんともうす気味の悪い一言だったわけですが、
しかしなんともこうフォルムがしっかりと女の子女の子してるというか、
艶めかしいプロポーションをしていて
見ていてため息がもれる思いです。

P2090304


禍々しささえ漂う、深い紫(濃紺とはまた違う)のタイツに
ぴっちりくるまれた脚線美が実に妖しく、刻み付けられた表情には深みがある。

どうにか写真に収めようとしたけれども
自身の撮影環境と腕ではとらえきることができずにおります。
ナンボかマシなのかなーと思えたのがこれ。

ちなみに、バックの赤い布は
『劇場版新編』を見たときに買った杏子のバンダナ。



■ほむらちゃん



しかし、なんでしょうねえ。
どーしてここまで、ほむらちゃんにハマってしまったのか。
まあきっかけは『劇場版 新編』なんだけど。

うーん……。

うつくしかった、んですねえ。劇場版の彼女が。
彼女のかなしみが。
彼女が、かなしみへと落ちていく様子が。
もう、なんかこう……人間って、なんでこうあんぽんたんなの! っていう強さ、大きさが。
分かり過ぎて痛かった。

まどかが理である世界で、魔女に堕ちてしまった自分を、
理であるまどかの導きでみんなが一丸となって助けてくれたのに、
それを軒並み裏切ってまで、まどかを理から「お持ち帰り」したかった、
しなければならなかったほむらちゃん。

いかにまどか自身が、理へと転化したことを「自分で望んだこと」だと言っても、
理であることを忘れた……まどかがまどかだった頃のこころが、「ひとりはつらいこと」と漏らしてしまったが故に、
ほむらちゃんにはもう、彼女を救い出すしかなかったのでしょうな。

だって、お友だちだもの。

ほむらちゃんにとってまどかは、
魔法や魔女を知る前の、変わる前、大きくなる前の、純然たるまどかこそが唯一のまどかだから、
なのでしょうね。
TV版のエピソードで彼女が守り抜こうとして守り切れなかったまどかが、
やはりほむらちゃんは欲しかった。

  ……「女の子がおんなのこを欲しがる」とか書いてると、
  文字と言えども若干感じてしまうオイサンです。
  病気かわしは。
  あ、おまわりさーん、こっちこっちー。

他の誰を裏切っても、「今」のまどか自身を裏切ってでも、
「まどかを守る」という「誓い」を貫かずにはいられなかった、という……
この彼女のこころの在り様というのは、はたして幼さなんですかね?

オイサンにはものすごく共感せざるを得なかった。

彼女にとって、まどかは「すべて過ぎた」んでしょうねえ。
まどかがどこまでも「みんなのための自分」の人だったのに対して、
ほむらちゃんは「一人のための自分」の人だった。

  前者が「みんなから」神と「呼ばれた」のに対して、
  後者が「自ら」悪魔と「名乗った」ことも、なんだかとても意味のあることの様に思います。
  コレ多分、偶然なんだと思いますけど。
  神様を愛し、守り続けると誓ったために、悪魔になるしかなかった悪魔のお話。
  いやあ、人間って面白いですね。

まあオイサンがこの映画にここまでやられた理由で一番大きいのは、
エンディングの『君の銀の庭』に因るところが大きいと思います。
あの歌が、ほむらちゃんの抱えるかなしみをあまりにまっすぐに歌い上げ過ぎているので、
それにドカーンとやられてしまったのは自覚しておる次第。

  あのー、アレですよ。
  スーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』で、
  ……マタこのオッサンは突然なにを言い出すんだとお思いでしょうけどまあ聞きなさいよ、
  スーパーファミコンの『スーパーマリオワールド』でですね、
  画面の半分くらいある大きさのキラーが飛んできたりするでしょう。
  あれを真正面から顔面にくらったような、そういうやられ方です。
  顔面に喰らって鼻血が出る。
  そういうくらい方です。

一つ、すごく疑問なのは……
ほむらちゃんのあの感情、行動、それらはすべて「幼さ」「子供っぽさ」なんだろうか?
ということで。

『君の銀の庭』の中でも、


 ♪ 大人になる門はかたく閉ざされて


なんていう一節も歌詞にあり、メロディも終始、泣く子をあやし、ともにかなしむような優しい空気を醸し出していますが……
ほむらちゃんの起こした今回の事件が、「こどものわがまま」だとは思われんのです。
わがままはわがままだけども。

世の中にはわがままな大人はナンボでもいる。
彼らのわがままが人を殺すこともあるし、
反面、彼らのお陰で世界が前に進んだり、世界が守られたり、日夜している。
自分の考えと、求める世界のすがたをわがままに追い求めて、
世の中との折り合いも時には力技で引きちぎって結局世の中の姿を強引に押し曲げ
その結果を認めさせている大人は、大人のまま、世の中に存在している。

  『プラネテス』に出てくる、ロックスミスみたいな大人のことですよ。

けど彼らはやはり大人で、
自らの欲するところへ向けて、
考え、
行い、
人の恃まず自らの手を汚し穢れて結果を負う、
あの姿、あの振る舞いが、わがままとはいえ子どものものだとは思われない。
彼女の様な「大人」が世界を動かしているのだと……オイサンには思われます。

「耐えられる」ということと「つらくない」ことはイコールじゃない。
その言葉をいかに抱き留めるかが、このお話の印象を決定づけるのだと思います。

「今の自分は幸せだ」というほほ笑みを、そっと受け入れて身を引くことが大人なのか、
「ちがう、そんなのは欺瞞だ、まやかしだ」と、己の真実を突きつけることが大人なのか、
それはもう色々と……一人の人間の中でも場面や時間で変わることだと思うのだけども。
このほむらちゃんが大人だとは言わないまでも、
子供ではなく、今回の決断が彼女を一歩階段を上らせたと思える。

不器用な彼女の、純粋すぎるがゆえに圧倒的な心の力は、
それに見合った大きなかなしみを負ってしまったわけですが、
そこの力加減が出来ないことであるとか、
最終的に現時点でのまどかのこころを尊重できず、
まどかのことを愛している自分を愛している、みたいな状態になってしまって
自分のこころまで自己矛盾に引き裂くようなことになってしまったことは、
やはり幼さであるようにも思いますが……
……それもねえ。
結局、時間軸の話だけではなくて、
まどかが円環の理に転化する時点で世界が一つ大きくずれているから……
そこは、ずれる前のまどかを求めてしまうほむらちゃんを、
子どもだと断じて責めることは出来ないと、オイサンは思いますけどね。
受け入れるには、何か勝手が違いすぎますもの……。

そんな成熟や、不純の論理はいらないわけですよ。

自らの存在すべて消して宇宙に溶け込んだまどかも子どもを脱した存在なら、
その宇宙の中心に、どす黒く巨大にツッパッてトンガって、仁王立ちし続けるほむらちゃんもまたそれに等しいのだと。
オイサンは思いました。

  オイサンの好きになるコはなんかこんな子ばっかりだよ。
  ねえ絢辻さん。

本人の「こうしたい」という気持ちのままに見送ることが愛なのか、
そのうそ(?)を見破って優しく引き留めてあげるのが愛なのか……
理から零れ落ちたまどかのこころが漏らした言葉が、
果たして、どの世界のまどかの、いつの心の真実であるのか、
その糸をどこに結び付けるかでこのお話の姿は違って見えるんでしょう。

結局ンとこ、このお話が澄みきったかなしみに満ちて終わるのは、
「正しさ」を提示しないで終わるからなのであって、
それを提示したところで当のまどかがああいう状態になってしまったので
提示されたそれも真実なのかどうか、物語の上では語り様がないという……
そこがまた、オイサンを惹きつけてくれる部分でもあります。

  これはもう、死人の残した言葉の真実味を探り当てるようなお話です。
  こういう言い方をすると多分怒られると思いますが、
  私は、「故人の残した嘘」というものが大好きでして。
  やさしさからか、憎しみからか、わからないけども
  残されたのはその「言葉」という事実のみ。
  残されたその言葉さえも、その瞬間の前後に拍動していた文脈によって異なるものになりかねない。
  真実は、その場、その瞬間の流れのかたちにしか保存されていない。

  お墓なんてのはとても豊かだと思うのです。
  あれは、亡くなった方のこの世への未練ではなくて、
  生きている人間の、故人への未練なのでしょうね。

ただ、まあ……一つ、今の彼女らの状況を好意的に解釈するなら、
もしかして、こうして互いを相克に置いて、曲がりなりにも遠く、大きく意識し合えていることが、
彼女らの幸せなのかも知れんと、思ったりもいたしますが。
お世辞にも、素直な愛と呼べるような愛ではなくなっちゃったけど。

  ……そんでまた、お前らのよけいなちょっかいのお陰で
  ほむらちゃんかなしいことになっちゃったじゃないかよ!!
  という意味で、インキュベーターの悪者ぶりにハクが付くわけですね。

あとどーでもいいけど、キュウべえがボコられてしまった今、
もし次作があるとするなら『ドラゴンボール』的にさらなる悪の黒幕がでてこないといけない様な気がして、
そーなったらまたえらく安っぽい感じになっちゃいそうだなと
要らぬ心配をするオイサンでございました。



……。



えーっと何の話でしたっけ。
そうそう、ほむらちゃんのフィギュアが届いてすげえ可愛いっていう話ですね。
ンであと、今期のアニメの話をしようと思ったんですけど、
全然アサッテの方向に向けてテンション上がってしまったんで
ちょっとここで一旦切ります。


続きはCMのあと。
第2部は、2014年1月からのアニメのお話のコーナーです。
オイサンでした。






 

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2014年2月 8日 (土)

■老人と小鳥の死を運ぶガチメンチバトル-更新第903回-

じゃきんと起床。
寒い日が続きます。
おはようございますオイサン(CV:花澤香菜)です。

先日の朝、いつものコースをジョギングをしていると、
オイサンの走る歩道の先にひとりのおばあさんが信号待ちしているのが見えました。

しかしどうも様子がおかしく、死んだみたいに動かない。
信号が青に変わっても渡ろうとする気配がない。
遠目によく見ると、どうも信号の方を見ないで、歩道の上のある一点をじっと見て動きを止めているようでした。

  もしかするとあのおばあさんは伝説の一点見つめの血族……
  未来からやってきた阿澄佳奈の姿なのかも知れない……!!
  (ていうか一点見つめは血の為せる業なのか)

おばあさんと、そのおばあさんの視線の先を追いながら徐々に近づいていくと、
歩道の上、地面に、あざやかな苔の様な緑色をした
まるくてちいさなものがコロンと鎮座しているのが見えました。



鳥でした。



おばあさんもオイサンの視線を感じ取ったのでしょう、
こちらをちらりと見て目が合い、
それとオイサンが鳥を見つけて「ああ、あれを見てるんだな」と気付いたのがほぼ同時でした。
おばあさんは、なんとなく目と目で通じあったMUGO……ん、色っぽいな関係が嬉しかったのか、
オイサンに話しかけてきました。

▼MUGO・ん……色っぽい(by皆口裕子)




  婆すみん「ねえ。全然うごかないのよ」


    オイサン「ああ、ですねえw」(お前もな!!)


  婆すみん「死んでるのかと思っちゃった」


    オイサン「ほんとですよねw」(お前もな!!!)


鳥もおばあさんももちろん生きていて、
鳥がどうして飛ばずに地面に座り込んでいたのかはわかりませんでしたけども、
もしかすると鳥の方も


  「(……このババア、ひとっつも動きやしねえな……死んでんのか?)」


と思って婆すみんを見ていたのかもしれませぬ。
そんな、朝の一幕。



えーとね。



そんだけ。



ちなみに鳥はメジロでした。
コロッとして、綺麗な緑色で、ビックリしたみたいな目してて可愛いのね。

Mezziro


あ、おばあさんは特に可愛くなかったです。
若干うす汚れてました(言わんでエエ情報)。
なんか緑っぽくはあった(言わんでエエ情報その2)。
……ありゃ未来のあすみんじゃねえな。


マそんな感じでヒトツ。
今日も元気に参りましょう。

オイサンでした。



■オマケ



今ふっと思いついて、
花言葉みたいに「鳥言葉」みたいなものがあるかなーと思って
てきとうにGoogle先生にお尋ねしてみたら、
……出てきた。
ついでに「誕生鳥」なんていうワケのわからんものも。

  ▼誕生鳥と鳥言葉
  http://birthdaybird.web.fc2.com/08.htm

うーむ、自分でも思いついておいてアレだが、
なんかこう……勝手に作ったんだろうなコレ。安っぽいというか、てきとう感満載だ。

  まンなこと言ったら花言葉だって誰かがてきとうに決めたんだろうけど。
  てきとうの歴史が古くて、より広く流布しているっていうだけで。

  ……それを思えば、花言葉の方がよっぽど罪深いよな!
  星占いとかな。
  世界規模、ワールドクラスのインチキだからな。
  ……ああゴメンごめん、インチキじゃないや。
  メルヘンな、メルヘン。
  あーオイサンもメルヘンでお商売してえー。 ← ロコツ

ちなみにメジロは「素直な心」だそうです。
やっぱりてきとうっぽいな。


▼MUGO・ん……色っぽい(ご本家)


 

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2014年2月 4日 (火)

■あとがき~『GJ部』SS・コタツじかけのオみかん~みかんのすじは俺のすじ~ -更新第902回-

はいどうも、オイサンです。
いきなりの『GJ部』SS、いかがでしたでしょうか。

  間にいっこ、なんか変なSS挟まっちゃいましたけど。
  マたまにはいいでしょ。

どのくらい需要があったもんかわかりませんけれども。
今度pixivとやらにも、試しにのっけてみようかしら。
アカウント作らなきゃだわ?

本当にいきなり『GJ部』だったのでナンデヤネンとお感じの諸兄もおられましょうけども、
これには深いような、そうでもないような理由があって、
今回はこういうカタチに落ち着きました。
何卒ご容赦のほど。

理由っつったって大したことはありません。
今回のお話は、まず題材ありきの所から始まっておりまして、
その題材をうまく転がしてやってくれそうなキャラクターとして、
名乗り出てくれたのがこの二人だった、というだけです。

ではどーしてこんな(どんな?)題材ありきで始まったのかと申しますと、
実は今回の話、コレ半分くらい実話なのです。
オイサンが正月に帰省した時にちょろっとこういう話を聞いてあーおもしれーなと思い、
そのまま日記に書くのも味気なかったので、うまくお話し仕立てに出来ないもんか、
とこねまわした末にこうなった。

  ……と書くと、昨年のクリスマス頃に「年明けに一本上げるよ」という予告を聞いてた誰かさんは、
  「じゃあの時点でネタは決まってなかったんかい!!」
  と怒るやらビックリするやらかもですが、
  それはそれで別に予定していた別作品のものがあったのでそんなに面白い顔しないで下さい。

何がどう事実なのか?
正月早々、山の神社にお参りに行ってきたってくだりと、
家系図にあった謎の話。
お正月に親戚がやってきたときにポロッと話題に上りそうなことでしょ?

人物の名前や時期はもちろん変えてありますが、
古くに三人の兄弟がいて、長男がなぜか養子に出され、
次男・三男がよその姉妹とあーいった事情で一緒になっていた、というあたり。
アレ、オイサンの血筋で実際にあったことらしいです。

長男云々については、
まあ、フーンというか、ヘーというか、
今でもこだわる人たちはこだわるところなのだと思いますけども、
時代的なことを思うとやはりなにかあったんだろうなあ、と想像してしまう程度ですけど、
むしろ今の時代で問題視されそうなのは、
姉のために妹が自分の結婚を制限されるということの方なのかなあと思います。
プリプリ怒る人いそう。

まあそんな、なんてことのないと言ってしまえばなんてことのない話を、
彼女ら自身の身にも少し感じるものを持ちつつ話し合ってくれそうな人たち……
と考えた時に、天使真央と皇紫音、この二人が頭に思い浮かんだのでした。

 ▼ぼくと『GJ部』

『GJ部』のことを、オイサンがそんなに好きなのかと言われたら……
あー、まあ、好きは好きなんですけども、
面白い……作品として客観的に高い評価を与えているかと言われたらそうでもないです。
実際、原作には手をつけてませんし。

  だもんで、アニメでは描かれていないけど原作で描かれている部分で、
  今回のSSと矛盾する点があっても、マそれはスルーして戴けるとありがたい。
  あくまでもアニメ版『GJ部』に準拠した内容ってことで。
  ……とはいえ、実はアニメ版とも食い違う内容が少なくとも一つ、
  混入してしまっているんですけどね……。
  根幹を揺るがすような部分ではないのですけど。

ただ大好きな世界であって、
はしばしに垣間見えるキャラクターを大事にしようという気持ちですとか、
狙ってか偶然か、ふとした瞬間にキャラクターの深みのようなものがぽろっと零れ落ちる瞬間が
とても好きではあります。

なかでも真央部長は、無邪気勝手な子どもみたいな部分と、
ホントさりげない瞬間に(もしかすると脚本的に大した意図はなく)挿入される
年相応+αの思慮の面があるお蔭で、
オイサンの中では人間くさい、魅力的な人物になっていますです。

  まオイサンは、本能全開無邪気がらっぱち系健康美女子がそもそも好きなので、
  そういう属性としても大いにアリなんですけども。
  『ときメモ2』の赤井ほむら会長とか、『みなみけ』の夏奈とか、
  あと『TLS2』の丘野さんとか。
  まあ『TLS2』では同時に風間さんも中里さんも好きなので
  「おまえ節操なしか」と言われたら、マありませんけど。

  2次元美少女はみな等しく、お姫様であり、宝石のような宝物であります、サー!!

そんな背景もあってですね。
実際の所、天使真央部長が、今回の話の中でちらつかせたような、
自覚や、立場や、事情を抱えてるかなんてことは実際ンとこわかりませんし、
原作(アニメね)のバックボーンには当然一切出てきません。

ただ、彼女が時おり見せた……否、オイサンが勝手に垣間見た、
彼女の「自覚」に照らし合わせると、
そういうことも「無邪気に」心に持っているんじゃないかな、と思って
こういう形に納めさせてもらった次第です。

アニメの画面で見せてくれたあの傍若無人で溌剌とした感じが無理をして作り上げられたもので、
実は裏でこういう若干湿った面を持っていて、こっちが本当なんですよ。
……という話ではなくて、ですね。
こういうことを、あの元気な真央部長のまま、持ってるんだよねきっとね、
こういうことを考え語るときにも、ふっと表情を変え陰らせるんじゃなくて、
あの調子のまま心の隅っこに「まいっか。ンなコトもあんだろ」くらいの重みでもっていて、
ときに考え、語るんだろうな、ってことです。

紫音さんは……あんまりいじってません。
アニメよりもちょっとだけ、ぶすっとしてるかも知れません。
そんくらいかな。

いかがでしょうね。
まあ毎度のこと、余計なことをしている様な気がしないでもないですが、
『GJ部』好きな人にも、
『GJ部』よく分かんない人にも、
いくらかでも楽しんでいただければ幸いです。

ほなまた。
オイサンでした。


しかし更新900回超えたかー。
今月末で丸8年だから、まあ不思議ではないか。
数字が『こち亀』っぽくてアレですね。

マ900回っていうキリのいいところを書き物で超えられて良かった。


 

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2014年2月 3日 (月)

■PSVita版『アマガミ』発売記念SS 「クローズアップ・節分 迷走する『アマガミ』ビジネスの行方~東北東へ針路をとれ!~梨穂子と恵方巻きゲームをしよう」 -更新第901回-

 

 
主人公「うーん……。
    このところ、梨穂子とのポロツキーゲームもちょっとマンネリになってきたし、
    新しい遊びを開発して刺激を求めたいところだ。

    何か良いアイディアは……。
    今日は節分。
    ……豆まき。

    ……だめだ、ありきたりすぎる。
    ……!!
    そうだ梨穂子! 今日は、節分らしいゲームをしよう!

梨穂子「『
節分らしいゲーム』? いいけど……どんなの?
主人公「『恵方巻きゲーム』だよ!



  パ ッ パ ラ ー ☆



梨穂子「『恵方巻きゲーム』?
    へえー、なんだかわからないけど、面白そうだし美味しそうー。
    じゃあ私、他に参加する人がいないか、探してくるよー。

主人公「え? 他に? 参加?」
梨穂子「うん! じゃあちょっと行ってくるねー。
主人公「あ、おい? 梨穂子ー?



   ……15分後……



梅 原「よう大将、なんで俺らまで呼ばれたんだ?
主人公「わからん。
    僕はただ、ポロツキーを恵方巻きに置き換えた

    『恵方巻きゲーム』を提案しようとしただけだったんだけど……


香 苗「相変わらずのバカップルぶりね……。

    そんなもんにあたしらどうやって参加するのよ?
    ……。
    ……まさか梅原君と!!?!」


主人公「ごめん、香苗さん。

    それはさすがにないと思うけど、
    正直、梨穂子が何を考えてるのか、今回ばかりはさすがの僕にもさっぱり。
    それより肝心の梨穂子はどこへ行って……
あ、梨穂子!


梨穂子「みんなお待たせー、クジ作ってきたよー。
主人公「あ、ああ、ありがとう……(クジ?)
梨穂子「はいみんな順番に引いて引いてー。
    あ、まだ見ちゃダメだからね。


主人公「あ、ああ(まさか……
梅 原「(この流れは……
香 苗「(もしや……

梨穂子「ハイ、みんな引いたよね、それじゃいくよー、






    恵方巻きだーれだ?





 
 
  _人人人人人人人人人人_

  > 恵方巻きだーれだ <

   ̄Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^Y^ ̄

 
 
 
 

完!


 

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■『GJ部』SS・コタツじかけのオみかん~みかんのすじは俺のすじ~(3) -更新第900回-

 

その(1)その(2)その(3) Interval


 
「うまく逃げたな」
「まあ、そういうことになってしまったね」
 唇の端をにたりとゆがめて笑う真央の調子を、紫音はごまかさ
ずにまっすぐに受け止めて、混じりけのないブラックコーヒーを
つるりと口に含んだ。艶のある、深い深い、殆ど黒と見分けのつ
かないブラウンの液体はそのなりに違わない豊かで濃厚な苦みと
香りで、兄の買い貯めから適当に持ち出した豆を挽いたものだっ
たが、今まで飲んだ経験からどこかアフリカの豆であると推測が
ついた。もう一口。苦い、けれど芳しい。半ばうっとりとその味
と香りを味わう紫音を見、そんな苦いのよく飲めるな、と真央は
舌を出して顔をしかめた。
「よーし、じゃあ妹ちゃんの代わりだ。あたしが聞いてやろう。
紫音さんはそれ、どー思んだよ?」
 ブラックを涼しい顔であおるのがそんなに癇に障ったのか、真
央は意地悪く笑って尋ねかけてきた。別に、答えそのものはさほ
ど難しい問題ではない。ついでに言えば、この話を始めた時点で
真央がこんな風に言い出す可能性も、高くはないが予測できたこ
とだ。いつもなら京夜相手に差し向けるような質問を紫音に向け、
値踏みする目で動向をうかがっているのだ。
「そうだ、なあキョロ、お前、タマと付き合っちまえよ」
とけしかけた真央がいた。昨年の文化祭が終わった時分の話だ。
文化祭でくっつくカップルが多いとかそんな話からの思いつきだ
ったはずだが、当然京夜はしどろもどろになり、ぶぶ部長、急に
何を言い出すんですか、なんだイヤなのか、タマが嫌いなのか、
きき嫌いじゃないですけど、じゃあ好きなんだな、という右や左
の押し問答を繰り返す中、その場にいた環もその趣旨を理解して
便乗し、結局話は何を答えるかよりもどう答えるかが大事な類に
収斂していく、今回の話もその延長だ。
 それをこともあろうに自分相手にふっかけようとは本気なのだ
ろうかと紫音は一息おいて横目で真央を窺ったが、ニタついた笑
いをまだ崩してはいなかったから、カップをソーサーに戻した。
「私は」
「ま、時代だろうな」
 自分から尋ねておいて、真央は自分で投げたボールがバッター
ボックスに届く前に、自分で打ってしまった。呆れた紫音が「真
央」と困った笑顔でたしなめるが真央はどこ吹く風で、届かなか
ったボールの代わりに、ほれ、と持参したスーパーの袋から、み
かんを一つ放ってよこした。その回転と放物線があまりに見事で、
それを目で追い受け止めることに気を取られ、様々な感情がどこ
かへ散ってしまいそうになる。しかしそれでは相手の思う壺だ。
紫音は気を取り直し、手のひらにおさまったみかんを一旦カップ
の隣に置いて一呼吸おいてみたが、真央はもうさっさとみかんの
皮剥きを始めてしまっていた。
「あたしとしちゃあそっちの話より、その、なんだっけ? 長男
さんの方に興味があるね」
「ア太郎さん、かな? 面白い名前だからね」
「そうじゃねえよ。そいつ長男だろ? なのに、なんでよそへ出
されちまったんだよ」
「うむ、その点については私も気になっていたんだが」
 けれどもその不可解さを読み解くにはヒントが少なすぎて、考
えれば考えるほど、無意味な憶測の枝分かれが増えて見たことも
ない時空に繋がる大樹が心に育っていくばかりなのだった。たと
えば、政略的ななにか。家督的な何か。たとえば愛憎のもつれ、
表に出せない不徳。たとえば、駆け落ち。
「しかもお前、それこそ時代が時代だろ? よっぽど何かあった
んだろうな」
「よっぽど、とは……」
 紫音は、言い出してから思い直して語尾を収めようとした。真
央が続けたがるならこの話に付き合うことはやぶさかではなかっ
たが、あまり積極的に追求したい気持ちもない。みかんの皮をす
っかり剥いでしまって白とオレンジの実をむき出しにした真央は、
いつものように、みかんの実の表面に走る白い繊維を爪の先でぺ
りぺりととる作業に、いよいよとりかかっていた。しかし子供の
頃から変わらない不器用さと大雑把さで、なかなか思うようにい
かない。にぎぎ、と並びの良い歯を剥いて、ひどく集中していた。
聞こえていなかったのならその方がいい。紫音もみかんのお尻の
側から、ゆびに色が付くことを気にかけつつ皮に穴を空けた。
 そういえば、昨日のあの店で、キョロくんもみかんを買ってい
たなと思い出す。小振りなものの方が味が良いと店主に唆され、
僅かにだが値の張る方を買わされていた。真央が買ってきたこの
みかんの味はどうだろうか。実際のところ食べてみるまでわから
ないが、ゆびに感じる皮の厚ぼったい感触は、酸い甘いに選らず、
それだけでユーモラスで、心を和ませてくれる力があった。
 真央が口を開いた。
「さあな、事情まではわかんねーよ。よっぽどはよっぽどだ。ま
あいずれにしてもだ、キョロ様の代で四宮家のお家は断絶、せっ
かくのオモシロ血筋もハイそれまでよ、ってわけだ」
 やはり聞こえていたのかと思ったがそれよりも、衝撃的な真央
の言葉に紫音はみかんを取り落として身を乗り出した。
「そ、それは衝撃的な展開だな! 何故かな、何故かな? それ
はつまり、キョロくんにはお相手が見つからないということかな?」
「ああ。あいつにゃあそんな甲斐性ないだろ。誰かもらってやら
ないとな。でないと、せっかくのオモシロ血筋の謎を語り継ぐ奴
がいなくなっちまう」
「はあ」
 気のない息をもらしたあと、紫音は声を立てて笑った。真央に
「おい、声がでかいぞ」とたしなめられて慌ててトーンを抑えた
が、それでも普段にはないくらいの空気の固まりが腹筋に押され
てのどを通過していくのを、自分でも感じていた。
「なんだよ、そんな笑うところか?」
「いや、すまない。けれども、すごい話だね、さすが真央だ。個
体にその気がないのに、血の方でどうにか勝手に生き残ろうとい
ろいろ画策しているみたいだね。まったく、したたかというか、
我が強いというか」
 まるで血がひとりで生きているみたいだと、体の中に一つ、別
の生き物を飼っているみたいだと紫音は笑ったが、対照的に真央
はきょとんとしてみかんを置いた。すじの撤去完了まで、あと少
し。
「そうかあ? そんなもんじゃねーの? 家とか、血筋なんてさ」
「そうなのかも知れないね。うん。そうなのかも。過去にそうい
う本が流行ったこともあったね」
 今日はもう、最後までこの話に付き合おう。そう決めて紫音は
自分のみかんをひと房摘んで口に押し込んだ。房を包む薄皮とす
じのほのかな苦みと渋みはあったが、実はとてもみずみずしくて
甘かった。その満足げな紫音の表情を、真央も詰めの作業にかか
りながら上目で盗み見ていて、よし、と意気込んだ。
「まあ、あたしは貰ってやれねーからな」
「おや、どうしてだい?」
「どうしてって、おま……」
 今度は躊躇なく踏み込んだ紫音の問いに、真央の手が止まった。
真央は一瞬顔を上げ、古くからの友人の目が、幼い頃二人で親の
目を盗んで河童を探しに忍び込んだ遠くの沼に映り込んだ陽の光
とよく似た揺らめき方をしているのを見て、唇をとがらせた。あ
の沼はどこにあったのだったか? たどり着くだけでへとへとに
なるほど遠かったことが記憶に刻まれているが、子供の足だった
から、実はそう遠くもなかったのかも知れない。それでもあのと
き足にねっとりとこびりついた重さと遠さ、次第に落ちてゆく日
に追い立てられる帰り道の心細さの真実を分かちあえるのは目の
前のこいつしかいないのだと思うと、悔しいような心強いような、
なんとも果てしのない気分にさせられた。
 真央は、そんなん当ったり前だろ、としか答えず、ついでに
「言っとくがな、メグもダメだぞ!」
と矛先を微かに逸らせて作業に戻ったふりをする。紫音もそれに
逆らわない。
「おや、そうなのかい?」
「ああ。その辺で差ぁつけるつもりはないみたいだ」
「そうか。それは……」
 そういえば、もう長いこと真央の両親と会っていないことに、
顔を思い出そうとして気が付く。紫音が家へ遊びに行くことはあ
っても応じてくれるのは家付きメイドの森さんばかりで、二人が
姿を見せることは最近ではあまりない。父親の方は特にだ。最後
に会ったのはもっと最近のはずなのに、一番印象に残っているの
は十年以上も前、真央と二人だけで、どこか遠くの水辺まで出か
けたときのことだった。帰りが遅くなってしまって、二人並んで
両方の両親から手ひどく叱られた、あのときの真央の父親の、厳
しく、悲しそうな顔が自分の親や兄兄ズの顔よりも強く心に残っ
ている。
「……良いことだね。うん。良いことだ」
「出来たー!」
 つるりと綺麗に白い繊維の除かれた真央のみかんは、オレンジ
色の鉱石のごとき鮮やかさと凹凸で、時間こそかかるがその仕上
がりたるや毎度の見事さだった。
「おめでとう。しかし、そこまでしないと食べられないものかい?」
「うっさいな、みかんくらい好きに食べさせろ。お前はキョロか」
 もちろん、好きにすると良いさ。真央の買ってきたみかんだ。
「家にあったやつだけどな」
 それだけの執念の産物を、惜しげもなく食べてしまう気っ風の
良さもまた見事で、真央は丸いままの実を大きく二つにむしり、
さらにひと房ちぎって、今度はその房の薄皮をむく。
「おや、一糸まとわぬ姿だね」
「……お前、言うことがヤラシイね。いただきまーす」
 ようやく求めるみかんにありついた友だちの笑顔を見届けて一
安心し、紫音はカップの底で冷めてしまったコーヒーを飲み干し
て時計を見た。コーヒーの粉はまだあるし、PCに休ませたまま
のチェスも途中だった。もう一杯、落としてこようか。みかんと
は合わないけれど真央も飲むだろうか。真央、と尋ねようとした
ら先ほどまでの無邪気な笑顔はそこにはなく、五十年も年が経っ
たかと思うくらい顔をしわくちゃにして、うー酸っぺえ、と唇を
すぼめる真央がいた。
「そ、そんなにか」
 紫音は自分のみかんをもうひと房口に放り込んでみたけれど、
こちらはやはりほんのりとした甘みが勝っていた。
「こっちのは甘いぞ。半分こしよう」
「あー? すじ取れよ。そしたら交換してやってもいい」
「わかった、ちょっと待ってくれ」
 紫音は急いで、まだ手をつけていない方の半分の房から真央に
倣って丁寧にすじを取り除き、真央の半分と交換した。仕上がり
が真央ほど徹底した物になっていたか自分ではわからなかったが、
真央は「おう、悪いな」とだけ言って受け取ったので、そう悪い
ものでもなかったのだと思うことにした。そうしてお互い交換し
たみかんをひと房ずつちぎって口に放り込むと、紫音は真央の顔
になり、真央は紫音の顔になった。
「ん……! これは、確かに酸っぱいな」
「だろー? おほー、こっちは甘えなー。みかんはこうでなくち
ゃなー」
 甘い、酸っぱい、甘い、酸っぱい。ふたり交互に口に運んで、
房の数が違ったのか、二人とも、最後に食べたのは甘い実だった。
真央のコーヒーがまだ残っていたから紫音は敢えてお代わりを尋
ねることをせず、真央のカップが空くまでの時間を、くだらない
考え事と、時折真央が振ってくる話に答えるのとに費やして待っ
た。

 キョロくんのご先祖であるア太郎さんを見舞った、「よっぽど
のこと」とは一体何だったのだろう。それは彼にとって良いこと
だったのか、悪いことだったのか。真央は、自分や恵くんはキョ
ロくんを貰って上げられないと言ったけれど、もし真央にもその
よっぽどが訪れた暁には、そんな未来もあるのだろうか。無論、
恵くんだってかまわない。だとするならば、私はそのよっぽどを
歓迎したいし、ア太郎さんの身の上も、何かと引き替えにしたこ
とは確かだったけれど、そう嘆かわしいものではなかったのでは
ないだろうか。真実は図り知れず、たとえ神様であっても、結び
合った二人にしかそこで生まれた本当の感情はわからないものだ。
個々の意志を超えて生き長らえんとする、血という地脈を這うよ
うにグロテスクな意志にも思い通りに出来ないものがそこにある
ような気がする。
 真央断ずるところの甲斐性なしのキョロくんの血は、今、ア太
郎さんが仕組んだ謎めく振る舞いによって再び繋がれようとして
いる。真央や恵くんによってそれがなされるのならばそこにはよ
っぽどのことが必要で、その鍵はア太郎さん自身が握っていた。
くるりといびつな楕円を書いた物語の、端緒は果たしてどこだろ
う?

 ぽかぽかとコタツに足を温められながらそんな風に思っている
と、頭の中にふんわりと、淡い眠気の靄が立ちこめ始めた。カフ
ェインが効かなくなっているな。冷静に思って、一度深く瞼を閉
じてから真央を見ると、彼女はまたがさがさと、一体いくつ家か
らくすねてきたのかみかんをもう一つ取り出して、そのすじを剥
がしにかかっている。開かれたカーテンの、窓から差す日を受け
て鼻歌交じりだ。酸っぱい、甘い、酸っぱい、甘い……。
「真央」
「んー?」
「どうだろう、コタツでみかんもいいが、それを食べたら少し外
へ出てみないか」
 紫音の、やぶからぼうな提案だった。真央は最初何を言われて
いるかわからないといった風情で紫音の顔を見ていたが、じきに、
眉根に小さな皺を寄せるとみかんのすじ取り作業に戻った。
「どこ行くんだよ、何しに行くんだよ? 寒いのはヤだぞ。人混
みもヤだ」
 今日はもうどうあっても真央を部室の外に連れ出したい。みか
んにしがみついて乗り気でない真央に、紫音は眠気のこちら側か
ら強がって、ふっふっふとわざとらしく笑って見せる。アテはあ
った。昨日の店だ。面白い店だったし、昨日出された物が本当に
コーヒーだったのか検証する必要もあったから、機を見て誰かを
──そういう役は大概京夜にお鉢が回るのが常だが──連れて行
くつもりでいた。それを今日にするつもりはなかったが、一つ、
真央を釣り上げる恰好のねたにも目星がついているのだ。謎めい
たのれんの奥に提げられた、年始だけの特別メニュー。
「聞いて驚くな。ぜんざいだ。甘いぞ」
「ぜ……」
 真央が顔を上げ、目を見開き、息をのむ。そろそろストーブを
弱める頃合いか、頬にはひとすじ汗が伝った。
「……ぜんざいか!」
「ああ。ぜんざいだ」
「ぜんざい……。ぜんざいか……ぜんざいかよ……」
 おそろしい、なんておそろしいんだ。そう繰り返し、真央は平
静を装うようにもう一度みかんと向かい合った。ぺり、ぺりと幾
すじか剥がし取る……。
 よし、釣れたぞ。その手応えを確かめた途端、紫音は足を滑ら
せて、抗う間もなく深い眠りの淵に吸い込まれてしまった。そう
して紫音が次に目を覚ましたのは、それから三十分してからのこ
とだった。

「しぃ。おーい。しぃ先生よーい」
 呼びかける声に紫音が目を覚ますと、もうコートを着込んでマ
フラーまで巻き終えた真央が仁王立ちで待っていた。
「行こうぜ、ぜんざい。行くんだろ?」
「ああ、すまないね。なんだか急に眠くなってしまって」
 すぐに支度をしよう。そう言って紫音がコタツをで出ると、真
央は無言のまま、マフラーに隠れた顎でデスクの方を指し示した。
「ガスなんかはもうみたぞ。パソコンだけ、分かんなかったから
おいてある」
「ああ、うん」
 紫音は曖昧に返事をして、部屋を緩く見渡した。戸締まり、火
の元は確かに終えられているようで、ストーブは消えていたし、
カーテンもすでに引かれていた。あっさりしたものだな。そのま
まデスクへ向かい、立ったまま適当に処理をして、画面が消える
のを待たずにコートを羽織っていると、なぜかコタツの上だけ、
みかんのゴミが捨てられずに置き去りにされているのが目に付い
た。カップなどが片づけられているところを見ると、後回しにし
たのをうっかり片し忘れたのだろうか。真央は、綺羅々が根城に
している窓辺のソファでくつろいでいたから、紫音はさりげなく、
みかんの皮にまとめられたごみを回収した。

 ところどころこぼれ落ちていたみかんの白い繊維を皮の上に拾
ってまとめながら、しかし、と紫音は思う。キョロくんに相手が
見つからないと断じたその仮定からして、どこか仕組まれ事めい
た、失礼な話ではなかろうか。時を超え、意図を超え、巡って繋
がったいびつな楕円を描いたその起筆は、強くて失礼な、その断
定口調にあったのではないか──。
 少し眠って冴えた頭がそのことに思い至ると、また紫音は、腹
の底に芽生えた笑いを堪えきれずに、くすくすと笑い出してしま
った。
 
 

                         おしまい。



その(1)その(2)その(3) Interval

 

 

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2014年2月 1日 (土)

■『GJ部』SS・コタツじかけのオみかん~みかんのすじは俺のすじ~(2) -更新第899回-

その(1)その(2)その(3) Interval
 

 
 
 昨日、紫音が京夜と会ったのは本当にただの偶然で、隙を見て
家を抜け出た紫音がなるたけ家人に足跡を辿られないよう意図を
殺してふらふらと町をさまよい流れ着いた、駅前ならいざ知らず、
まさかこんな住宅地の店が開いていようはずもない、というひと
気の絶えたエリアにぽつんと建つ飲食店でのことだった。飲食店
と表したのは、果たしてその店が居酒屋なのかバーなのか、はた
また喫茶だったのか八百屋だったのか、最後まで分からなかった
からだ。
 
 年末年始とは独特なもので、髪の毛一本分の時間を境に、この
上もない慌ただしさと過剰なくらいの長閑さが同居する。その静
けさの住宅街の中に、その店は姿を現したのだった。一見した店
構えは居酒屋そのものだったが、窓から伺える店の中の様子は定
食屋か喫茶店のようだった。店の前には小さな黒板に簡単なメニ
ューが書かれていて、そこにコーヒーと一緒にアルコールの名前
も並んでいたのだった。そんな店で一人、紫音は然して旨くもな
いコーヒーをすすりながら、定年退職の前と後の気分とはこうい
うものだろうかと、年末年始の忙閑の境についてぼんやりと考え、
久しぶりの一人の時間に浸っていた。
「お前、よくそんなわけのわからん店に入れるなあ。ひとりで店
に入ったことも、ほとんどないだろ?」
 話はまだ始まってもいなかったが、感心するのと同時に呆れた
真央が横やりを入れた。

「まあ、そうなのだけれど。これが喫茶店というものかと思った
んだよ。興味はあったし、体も冷えてきていたものでね」
「ああ、昨日も寒かったからな……好奇心であんまり無茶すんな。
死ぬぞ。それで?」
「ああ、気をつけよう。それでだね」
 おっかなびっくり、居酒屋まがいの暖簾の外から店の様子を伺
っていると、店から出てきたバーテンダー風の男性が丁寧に応対
してくれたものだから紫音は安心してしまい、家から離れた場所
でもあったし、人通りもなかったので、通されるまま窓辺の席へ
ついた。そこへやってきたのが京夜だった。
「お! ようやくキョロ様登場だな! キョロのくせにやきもき
させやがって、今度会ったらせっかんだ!」
 身を乗り出させた真央の目がようやく、らしい輝きに爛々と満
ちる。それはいくらなんでもキョロくんが気の毒だねと紫音は苦
笑した。
「そうだ真央、そのとき私は確かにコーヒーを注文したんだが、
出てきたものは私の全く知らない味をしていたんだ。どろっとし
て、しぶくて、イガイガしていて、あれは本当に……」
「専門店でもなきゃ、メシ屋のコーヒーなんてそんなもんなんだ
よ。そんなのいいから、先を話せ」
「ああ……うむ」
 紫音は疑問が晴れず、またあの店を訪れて検証の必要があると
独り言を付け加え、先を続けようとして、開きかけた口をパタン
と閉じてしまった。
「なんだよ。もったいぶんな。早く話せ」
「いや、それだけなんだ」
「はあ?」
「昨日、そういう店でキョロくんに会った。それだけの話なんだ」
「待て待て待て。話くらいはしたんだろう」
「それはまあ、新年の挨拶くらいは」
「キョロは何しに、その、なんだ。そのおかしな店に来たんだ」
「野菜を買いに来たと言っていたね」
「野菜だ?」
「売っていたんだよ、カウンターのところで、段ボールに入れて。
喫茶店とは、ああいうこともするのだね」
「普通しないぞ」
 嘘ではなかった。その店はカウンターの足元で段ボールに入れ
た野菜を商っていたのだ。京夜の目的はお茶や食事ではなくその
野菜で、店に入ってくるなり紫音にも気が付かずしゃがみこんで
野菜の物色を始めたのだった。近所で作ったものだろうねと紫音
が付け加え、真央も納得はしたが、不満げだった。
「まあ、この辺は畑やってる家も多いしな……それで?」
「いや」
 真央が先を促すが、紫音の舌は滑らかでなかった。頭の中で、
右へ、左へ、何かをころころと転がしている。それが見過ごされ
る二人の間柄ではなかった。込み入った話を整理しているだけの
か……話しにくい話なのかは分からない。中学のときのことだ。
美術の授業で、石膏像のデッサンをとるという真央には何とも退
屈な課題の中、席を立った誰かが像に向けられていたライトをう
っかり蹴り飛ばしてしまうということがあった。それも、四つあ
ったうちの二つ。ライトはそれぞれ直されて授業はなにごともな
く進んだのだが、真央はそこから紫音の様子がおかしいのに気が
付いていて、昼休みに弁当をつつきながら尋ねてみたのだった。
「そうだ、しぃ。お前、あのあと全然モデル見ないで描いてたろ」
「見ていたのか。ライトが動いて、陰の具合が変わってしまった
からね。なんだか気持ちが悪いので、元の陰影は記憶していたか
らそのまま描いてしまったよ」
 その時のモチーフが本当に正しく描かれていたのか? それを
確かめる術はなかったが、後日教室に貼り出された不遇の哲学者
の面差しが、他と比べ妙にスッキリとしているように、真央には
見えたのだった。
 その紫音が、たかだか昨日の……彼女の少し細長い頭に一切の
過不足もなく記録されているであろう、そう長いはずもない京夜
との一幕をまっすぐ口に出すことが出来ずにいる。見る見る、真
央の顔と声色に、内心のわだかまりが醜い皺となって浮き上がっ
てくる。
「なんだよ。疚しい話でもしたのか」
「まさか」
「じゃあ話せ。一字一句、違わず話せ。出来んだろ、お前なら」
 そうも素直にすねた調子に傾かれてしまうと、紫音には為す術
がなかった。
「うん、ほんとうに大した話ではないんだよ。気を悪くしたなら
すまない」
「うるさい。そんな柄じゃないだろ」
「そうだね」
 話し始めるのに、腹を決めるほどの内容でもない。強いていう
なら、お互いにとって少しだけ、繊細で面倒な話というだけだっ
た。真央とて真剣に勘ぐったわけではないのは、紫音にだって分
かっている。すねた言葉と素振りは、言わばただの下剤のような
手続きに過ぎないのだった。

 先に、相手の存在に気付いたのは紫音の方だった。
 店の古い木戸が引かれると緩んだガラスが振動する乾いた音が
して、冷たい外気が夏の清流の様にしのんでくる。と同時に、興
奮の色を帯びた幼い女声と、それをなだめるのどかで弱気な京夜
の声が流れ込んできたのだった。

「なに! 女か! 女連れか! キョロが!」
「カスミくんだよ」
「なんだ妹ちゃんかよー」
 先を話せと言う割に、真央の横やりが多くて話が進まない。面
白い話ではないと前置きも済ませたはずだ。さすがの紫音の目に
も湿った色が滲んだのを見て、真央はわかったわかった、おとな
しく聞くよ、と乗り出した身を今一度、こたつ布団の中にコンパ
クトに押し込んだ。

「ちょっと、きいてる? お兄ちゃん!」
「分かったから、カスミ、ちょっと静かにしようね」
 何やら憤慨している妹をたしなめ、明けましておめでとうござ
います、今年もよろしくお願いします、と店主に頭を下げた京夜
はカウンターのところでしゃがみ込み、足下の段ボールからいく
つか野菜を取り上げ始めたようだったが、その様子は奥の座席に
座った紫音の目の高さからは見えない。前の席の背もたれの向こ
うに、空色のダウンコートとうさぎ形のイヤーパッドで寒さに備
えたカスミが、京夜の背中に目を落とし、唇をとがらせているの
が見えるきりだった。
 そのときカスミは手持ちぶさたに、何のしぐさであろうか、中
空に、不可思議な軌跡をゆび先でなぞり出していた。オーケスト
ラの指揮者が管楽器の奏者へ、抑えめに、抑えめにと指示を送る
慎重さで、彼女の淡い白桃色の手袋から先だけで描き出される動
きは、はずむようでいて、アドリブで描くあみだくじのようにも
見える。
 紫音は、距離も離れていたし、声をかける機も逸してしまった
からオーケストラの聴衆よろしく静観を決め込むつもりでいたの
だが、京夜が「じゃあ、これだけ」といくつかの野菜を抱えて立
ち上がったときに、一歩下がって姿勢を変えたカスミと目が合っ
たのだった。
 あれ? お兄ちゃん、ほらあれ紫音さん、紫音さんだよ。先ほ
どまでの怒りの調子がくるりと裏返る、その様子が以前京夜が部
室で漏らした、
「カスミの機嫌の変わりようなんて、ホントひどいもんですよ…
…トイレとかによくあるじゃないですか、三百円くらいで売って
るゴミ箱の、くるって回るフタのやつ。あんな感じなんですから」
という愚痴が的確であったと証明していて、紫音はその表現力に
密かに感心した。
 会計中だった京夜はモスグリーンのコートの背中を引っ張られ、
はじめは面倒そうに取り合っていなかったが名前を聞いてさすが
に驚いたのか、紫音の姿を認めると、はたりと目を見開いたのだ
った。

「そうだ、紫音さんの意見を聞かせて下さいよ!」
 二人は、家の方に思わぬ来客があったせいで足りなくなった雑
煮の材料を買いに使わされたということだった。
 買ったばかりの野菜の入った袋を提げ、わざわざ紫音のところ
までやってきて、明けましておめでとうございます、今年もよろ
しくお願いします、とゆっくり丁寧に下げられた京夜の頭をうっ
かり撫でてしまいそうになり、紫音はさしのべた手を慌てて引っ
込めなければならなかった。その隣でぺこりと素早くお辞儀を済
ませたカスミの口から飛び出た言葉がそれだった。
「こら、カスミ。紫音さん、ゆっくりしてるところだろ。つまら
ないこと聞くんじゃないの」
「つまんなくないもん! 大事なことだもん!」
「意見……? なんのことだい?」
 突然の意見伺いと、目の前で始まったちいさな諍い。紫音は戸
惑ったが、コクリと一つコーヒーに口を付け、せっかくだから、
もし時間があるなら少し座っていってはどうだい? もちろん無
理にとは言わないよと、自分の目にいつも部室で芽生えるような、
いたずらな光が灯るのも知らずに促したのだった。

 こうして年明け早々、謎めいた飲食店の四人席に一人で陣取っ
ていた紫音は、京夜とカスミは向かい合うことになった。
 カスミは紫音の横に、京夜は紫音の向かいにというなんだか不
安定な配席のところへ、ほどなく二人の分も飲み物が運ばれて来
た。店には暖房がきいていたけれども、それが、曇りのない澄み
切った寒さをあとから暖めたものだと分かる冴えが空気の底部に
残って見える。音楽はかかっていなかったが、未だ現役の十四イ
ンチのブラウン管テレビから、赤と、白と、ピンクと黄色の漫才
の声が小さく店内に流れていた。ふむ、三人目のあの方は三波春
夫さんというんだな。紫音はそれに耳を傾けながら、二人が落ち
着いて話し始められる状態になるのを待った。
「すみません、ごちそうになっちゃって」
「ありがとうございます、いただきまーす」
 京夜兄妹はお使い分の金額しか持っていなかったので、支払い
は一先ず紫音持ちになった。
「かまわないよ、私が誘ったも同然だからね。兄兄ズから貰った
お年玉がずいぶんと……それはそうと、キョロくんの家では、あ
まり年始に親戚が集まったりはしないのかい?」
「はい、うちは、あんまり。たまにこちらから出向いたりします
けど、それもあんまりですね」
「うむ、そうだね。それがいい。正月くらいは家族だけで……否、
一人でゆっくりするのもいいだろう」
「はあ……」
 紫音があまりに深く、繰り返しうなずくので、京夜は気詰まり
したように黙り込んでしまう。いつもの部室と同じ律動があった。
そのままコチコチと数秒が流れ、空気がすっかり居眠り運転を始
めてしまったのを感じたカスミに遠慮がちに顔をのぞき込まれ、
紫音はひとつ咳払いをした。
「すまない。それで、カスミくんは何をそんなに怒っていたのか
な」
「そうなんです! 聞いて下さいよ! ひ弱な姉のために妹が自
分の結婚を台無しにするなんて、そんなのあり得ないですよね!?」
 またもゴミ箱のふたは裏返り、その剣幕たるや火山の瞬間湯沸
かし器でさしもの紫音もたじろいでしまった。それと対照的に、
向かいでお茶を啜る京夜は弱々しい微笑みで、カスミ、それじゃ
紫音さん何のことか分からないでしょと、湯気をふいて店の古い
窓ガラスを曇らせにかかっている妹を諭した。そして訥々と、こ
との顛末を語り始めた。
「珍しく親戚が遊びに来たんですよ。それでお雑煮の材料が足り
なくなっちゃったんですけど……まあそれはいいです。で、小学
生の従兄弟がいるんですけど、その子が冬休みの宿題で家系のこ
とを調べたらしいんです。うちの……あ、うちっていっても僕の
直接の家系ではない、と、思うんですけど、どこからか家系図見
つけてきて。すみません、その辺ちょっとよくわかんないです。
で、その家系図におかしなところがあったらしいんですよ。どの
くらい前だろう……曾々祖父さんか、曾々々祖父さんか……その
あたりだと思います、三人兄弟がいて、ア太郎、徳治、鶴吉、だ
ったかな。まあ、そんな名前の三人です。それで長男のア太郎さ
んはよその家へ養子に入ってて、鶴吉さんは一度よその商家へ丁
稚奉公に出てたらしいんですが、徳治さんが会社を興すと言うん
で家に戻ってきて一緒に働いてた……らしいんですよ」
「そこからがひどいんですよ! 徳ちゃんと鶴ちゃんは二人とも、
同じ家の姉妹からお嫁をもらってるんです。徳ちゃんとその奥さ
んは好きあって結婚してたみたいなんですけど! 鶴ちゃんの奥
さんは徳ちゃんの奥さんの妹さんで、お姉さんの体が弱いから、
そのそばについて面倒を看ないとだめだからって、鶴ちゃんと妹
さんはその都合だけで結婚させられたんだって! あんまりだと
思いませんか!? 私、絶対信じられない!」
「カスミ、落ち着きなさい……。あはは、すみません紫音さん。
ちなみに、その姉妹の方の血筋が、うちの家系みたいなんです」
 話を聞きながら紫音は頭の中に、血筋のさかさになったトーナ
メント表を描いていた。
 なるほど、三人の男兄弟の家系と、二人の女姉妹の家系、その
男兄弟の下二人と、女兄弟が結ばれた。しかしその一組は互いが
望んだものではなく、家の都合で、もっといえば上の兄姉の婚姻
が抱えた問題点を埋め合わせるべく作り上げられたものだった。
そのことにカスミは女性の視点から腹を立てているのだ。ついで
にいえば、キョロくんたちの血筋はどうやら、その女姉妹側から
枝分かれして発生したものであるらしい。
「なるほど」
「ねえ、ひどいですよね! あり得ないですよ!」
「おまえが怒ったって、仕方ないだろ?」
「お兄ちゃんは黙ってて! ねえ、紫音さんはどう思いますか!?」



 ねえ、紫音さんは、どう思いますか──。



 なるほどねえ、とその時の紫音と同じように言って、こたつに
頬杖をついた真央は片目をつむった。
「そーゆー話か」
「うん。そうしたわけなんだ」
 あーあ、と真央は小さな体で一つ、目一杯大きく伸びをして首
をひねって音を鳴らせた。中でどうなっているのか知らないが、
体のあちこちが伸びたり縮んだりするみずみずしい音が聞こえる。
ゆびの先に厚ぼったい熱と小さな痺れが伝わるのを確認して、真
央はまた背中を丸め、コタツ布団に体の半分も潜り込ませた。
「それで、なんて答えてやったんだよ」
「答える時間はなかったんだ」
 となりに座ったカスミが、紫音の肩につかみかかろうか、なん
なら頬に口づけてしまいそうなくらい肉薄してきたその瞬間に、
京夜とカスミのポケットの携帯電話が同時にぶるぶると振動した
のだった。
「家からだ……ちょっとすみません。もしもし」
「あたしはメール……ママだ」
 カスミへのメールは「まだ?」とだけ書かれた簡素なものだっ
たが、京夜の対応ぶりからは野菜の到着が待たれずに今にも鍋に
餅が投入されそうな勢いがあり、京夜は電話の終盤からすでに腰
を浮かせかかっていて、半ば強引に電話を切ったようだった。そ
の兄と紫音を交互に見、悲しそうに眉を寄せたカスミには、紫音
も無言で、残念だが、と顔を作って見せるしかなかった。
 そうして、「それじゃあ今年もよろしくお願いします」ともう
一度繰り返して頭を下げる京夜に手を振り、カスミには、今日の
ことは宿題にしておくよと、やはり手を振って見送ったのだった。
 
 
 
 
                         (つづく) 
 
 
 

 
その(1)その(2)その(3) Interval 
 
 

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