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2012年1月の21件の記事

2012年1月29日 (日)

■二十年目の修練闘士<セヴァール>~我は無敵なり -更新第756回-

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この味が
  良いねときみが言ったから 
          一・二・九は あんきも記念日


オイサンです。
本日はぶらりと、王禅寺ふるさと公園まで散歩。

しかし折からの寒さでお目当ての公園には二十分ほどしかおらず、
途中見つけたケーキ屋さんでしっぽりぬくぬくしたのでした。

お写真は、サバランなるケーキ。
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ラム酒にどっぷりつけ込まれたスポンジがもう潤々でたまらん美味しかったです。
飲み物も、チョコフレーバーのアールグレイという変わり種。

ケーキは他にも、
見栄え的にはすごいオイサン好みの……ていうか、写真映えしそうなものが
ショーケースに並んでいて、もう一回来たいなあと思わせる良いお店でした。
お店の方もすごくいい感じ。
唯一難があるとすると、狭いこと。
店内六席しかないです。
隣の席ではご婦人が、地元の少年サッカーチームの運営について熱弁を奮ってました。
色々とご苦労の絶えない様子。
生っぽい会話が面白かったです。

途中立ち寄った白山神社では、なかなか立派な彫り物に遭遇。
龍神と七福神(↑冒頭のヤツ)ですかね。
眼福。
由緒ある神社なのかなあ。


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王禅寺ふるさと公園

あとはまあ……晩ゴハンをちょっと豪華に。
先日の『孤独のグルメ』でやっていて、どうしても食べたくなってしまったので……
あんきもを。
戴いてみました。
山口県産らしいですが……美味しいこと。
また要らぬものの味を覚えてしまった……。

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あとは自転車マンガを二冊購入。
継続購読中の『Odds GP!』と、自転車+ご当地ものという二大ツボを押さえられて
『南鎌倉高校女子自転車部』。

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ちょっと絵の線が細すぎて読むのが辛い部分もありますが、
背景はしっかりしてるし、
お話も、序盤ながらこの先のエンジン点火が楽しみな下地を作っている感じがあるしで
先が楽しみです。



■二十年の「絶 対 無 敵」



すごくうすボンヤリした話なんですけども。
先日、ちょっと懐かしいマンガを買いました。
懐かしいと言っても、新刊です。
昔買っていたマンガの続巻を、間は抜けているんですけども買ってみた。
そこには二十年の隔たりが眠っていたはずなのですが……。



今日は、そんなお話。



『SHADOW SKILL-影技-』って漫画があります。
『シャドウスキル』と読みます。
マンガのお話の中身は今回の本筋とあまり関係がないのでざっくりで済ませます。

ファンタジー格闘大河ロマン、という、
分かるような分からないようなご説明ですが、大枠はそんな感じ。
ものすごい強い武術(=影技)を身につけた
圧倒的に強い傭兵(=修練闘士(セヴァールと読む))たちが、
同じような特殊技術(魔法だったり獣人化だったり)を持つ敵と、
戦乱ファンタジーの世を戦っていくというお話。
国同士の大きな戦いの歴史の中で、
命のやりとりとか、
兄弟愛とか、
強さ・弱さとか、
そういう「志」方面のことを高らかに謳ういかにも90年代前半っぽい少年マンガです。

見開き2ページの大ゴマの四隅に、
極太のドデカフォントで漢字四文字「絶 対 無 敵 !」
みたいな演出が持ち味。
緻密なストーリーとか膨大な設定とかは、
背後にはあるのでしょうけども読み手からはあまり見えない感じで、
基本は膨大な設定によるハッタリで出来ています。
上でもちょっと書いたように、
修練闘士<セヴァール>とか、影技とか、武技言語とか、
魔道士<ラザレーム>とか符術士とか。
そういう、裏打ちのあってないような設定で話を大きくすごく見せる類の作品。

  イヤ、悪いって言ってんじゃないよ。
  それはそれで一つの芸風だとオイサンは思いますし、
  実際オイサンはそういうバカみたいなのは結構好きです。
  『天上天下』とか。


 ▼この作品が出てきた頃のこと

デこのマンガ、初めて出会ったのはオイサンが高校生の頃でした。
かれこれ二十年も前になりますか。
今回買った8巻のあとがきで初めて知りましたが、出自は同人作品だったようです。

  二十年前の同人業界か。
  今とは全然ちがう空気だったのでしょうねえ。

初めてオイサンの目に触れたのは、
アニメイトが当時発行していた、無料の情報誌。

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ケーキ屋さんのショーケース。 あ、今日はチョイチョイ話に関係ない写真がはさまりますw

まだアニメイトが今みたいに立派ではなくて、
コアデ企画という名前の会社に運営されていた頃のお話です。
「animate news」 だったか、「ちょっとAV」だったか、
2色カラーの10ページくらいの無料冊子が隔月で発行されていたのですが、
そのページの1/6くらいのスペースで紹介されていたのを見かけたのが
最初でした。
「緻密な描き込みがものすごい!」
みたいな推し方で紹介されていたのをよく覚えています。

今にして思えば、当時あまりない出来事だった様な気がしますね。
オイサンもまだ高校生でしたし、田舎の人でしたから、
同人はおろか、マイナーなコミックの世界のこともよくは知らず、
そうした聞いたこともない作品や作家さんが
いきなり大きめの扱いで紹介されていたので目を引かれたということもありました。

マそんなところから単行本を買い始め、
数冊出たところで連載されていた雑誌が休刊か廃刊になり、
その後も雑誌や出版社を転々として単行本も出たり出なかったり、
装丁だけ変えて同じのが出たりとか、なかなかフクザツな状況が続いたみたいです。
オイサンは最初に単行本が途切れた時点でもうあまり追いかけておらず、
先日、ちょっとした気まぐれで最新刊にだけ手を出してみた、という感じです。


 ▼二十年を「生きる」作品

何でまた急に続刊を? と言われると、なんというか……
すごいなー、と思いまして。
何がっていわれるとボンヤリしているんですが、
二十年「もつ」っていうのが、またすごいなあと。

「もつ」というのがどういうことなのか、これまたボンヤリしているのですが。

作者の中で、途切れずに生き続けている事がすごいと思ったのです。
二十年間、というか、
二十年前に物語なり、設定なり、その世界の持っていた勢いを、
同じ水圧で流し続けることが出来るということのすごさ。
それを意識して馬力上げてやっているのか、
世界がまだまだ自走していてそれの後押しをしているだけなのかはわかりませんが、
読む限り、
絵柄は随分変わってきていますが、
お話……というか、人物たちのテンションは決して変わっていない。
それは作者が、当時その世界に託そうとした気持ちやテーマが、
今も変わらず同じように生きている、
生かすことが出来ている、
当時の作品に乗せて伝えようとしたそのテーマに対する自分の
「伝えたい!」とするモチベーションが変わらずにいることに他ならないと思います。
オイサンはそれをこそ、何よりすごいと思ったのでした。

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白山神社では、フツーの木に絵馬が下がってました。

お話自体は、読み手からすると、
あまり一続きの連なりを感じられるようなお話ではないのです。
短いエピソードごとにブツ切れな感じ。
ただ、大河ものっぽくはあるので、
恐らく書き手の方には大きな流れやたくさんの設定があって、
豊かに息づいているのだと思います。
最後にはそのブツ切れのエピソードに現れた出来事や人物が織り重なって
(今でも端々には繋がるのですが)大きな流れになっていくのでしょう。
でも、今の時点では、あくまでも単品のエピソードの集合にしか見えてきません。

それを……なんていうのかなあ。
度重なる雑誌の休刊や休載にも負けず、
終息させることなく、
自分の中で火を絶やさなかったことが、
……正直「すごい」と思ってるかというとそれもよくわからないんですけども(どないや)
とりあえず口が開いてしまうというか、
感嘆の息が漏れると言うか、呆れるというか。
「はぁー、そうなんですかあ」
みたいな気持ちが、若干プラスの感情で漏れ出てしまう。

ビジネス的に、
オイサンが現役でアクセスしていた90年代の前半~中盤頃に比べて
拡大しているのか縮小しているのか
(当時はアニメになったりラジオドラマ、ドラマCDが出ていたりしたので
拡大しているってことはないと思いますが)わかりませんが、
それでも尚、連載が出来て単行本が出せていると言うことは
誰かがビジネスの恩恵を浴することが出来るくらい、
世の中で求められているものだと言うことです。

  その消費のサイクルが二十年経ってもまだ成立していることも、
  上と同じような気持ちで「すごい」と思います。

今回買った単行本のあとがきに、作者さんのことが書かれていましたが、
同人・連載をやっていた当初は二十代の前半で、今ではもう四十代なのだとか。
それでもまだ同じようなテンションで、
同じ土俵のお話を描き続けることも、これまたすごい。

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かばん。なんか良い感じだったのでw

二十年って伊達じゃないですよ。
自分の心は間違いなく変わるはずだし、体は絶対に変わってしまう。
体が変わってしまえば、やはり心も変わるはずなんです。
大事にしていた物を実はそうでもないと気付いたり、
その逆があったり。
二十歳から四十歳の価値観の変わり方は、
それまでの人生に比べても、そこそこ急峻な勾配をもっていると思います。

  まあ、その辺はそれぞれの人生の歩み方によるとは思いますが……
  全く変わらないと言うことは、そうそうないと思う。

それを乗り越えるだけの「分厚さ」を、
二十年前から作品に持たせていたということなのでしょうか。

長く続いている作品といえば『こち亀』とか『はじめの一歩』とかありますが、
なんかね、
あれらとは少し質が違う。
『こち亀』には時流であるとか時代性であるとかが感じられるし、
『一歩』は老成してきてる。
『影技』似ているものと言えば、
『BASTARD!!』とか『ヤマモト・ヨーコ』とかでしょうか。
「二十年前もあったけど、
 二十年間途絶えずにずーっとやってきたわけではない。
 それなのに(それだから?)二十年前とやってることが変わってない」
ということに、なんとなくですけど、すごみを感じているのだと思います。

  ちなみに『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』も、
  長らく動きを止めていたのを、ここ数年、過去作を新装リリースし始めていて
  続刊リリースからの完結も進めていく構えのようです。
  ファンタジア文庫時代の第一巻のあとがきに原作者の書いていた
  「最終エピソードのタイトルは決まっていて、『ハートウェア・ガール』です」
  という言葉。
  当時とはハードウェアもソフトウェアも進化して、
  寧ろそれぞれの言葉の意味、指し示す範囲もいくらか異なってきていると思います。
  そんな中、作者の思い描いたその言葉は、当時と同じ形で像を結ぶのだろうか。
  そんなことを確かめるために、最後まで読みたいと思っています。
  さすがに、既刊で持ってる奴は買い直さないけどね。

「途絶えつつ、途絶えない」すごみとでもいうのでしょうか。
時々死ぬ、みたいなことで。

人間、長くやっているとやっぱり死にそうになることはあるわけで、
死にそうになったらどうしても生き残る道を模索して、
必要があれば、「命を守るために」変わってしまう。
それは至極当然の行いで正しい道です。

しかし彼らはそこで敢えて、変わってまで生き残るのではなくて、
一回死んで、変わらずに生きられる状況が見えてきたら生き返る。

……そんな結果なのかどうかわかりませんが、
たくさん雑誌を移ってるってことは、無関係ではないのだろうなあと
なんとなく、書きながら思った次第です。

まあ、世の中には一つの思想を胸に抱いたまま死んでいく御仁もおられるわけですが、
果たしてその思想、思いは一体いつ芽生えた物なのか。
生きてるうちには認められず、死してようやく価値を見いだされるものも多い。

  ……あの、ちょっと関係ない話ですが、
  オイサン思うんですけどトンガった思想って、
  相手が自分と同じ、ナマミで生きてる間は褒めて上げ難いってところが
  すごくあると思うんですよね。
  それが没して肉体を失って、どこか二次元的な存在になって
  ようやく素直に褒めて上げることが出来るようになるって、あるように思います。

  「研究が進んで」とか「時代が追いついて」とかは、
  あるイミ認める側・旧来側のただのイイワケの部分が多々あって、
  生きてる間、相手が自分と同じ生き物であるウチには、
  相手を自分より上の位置においてやるわけにはいかん、
  何故ならそれは自分が生きる上で不利な位置に降りることに等しいからだ、
  みたいな、
  そういう打算が働いてしまうのではないかなあと思います。

  んでまあ、それをオイサンが苦々しく思ってるかというと、
  そういうけち臭さ、生きものっぽさはリアルだと思うし、
  いとおしいと思うんですけどね。
  ちっせえなあw みたいなところで。
  はい閑話休題。

だからその、思想とか、テーマとか、テンションとかノリとか。
そういうものは「時代にそぐわないから」「保持しづらいから」という理由で
適応のためにねじ曲げていくのではなくて、
あ、無理だな、と思ったら一回死んだフリをするってのはありなんじゃないかなあと、
そのように思った次第です。

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オイサン行きつけの割烹のコロッケ。美味!

人間は、まあ肉体的に子孫を残すことが出来るし、
それはやはり出来ることなら至上の価値であり続けるべきだとは思いますが、
たとえ肉や血をつなげなくとも、思想、思い、業、
そんなものを受け継ぎつなぐことでも、「人」は「残っていける」と思います。
オイサンは思っています。
少なくともオイサンらの暮らす「センシンコクw」では
そういう社会になってきていると思う。


……なんか、バカマンガの話してたはずがでかい話になって来ちゃいましたけど。


『SHADOWSKILL─影技─』の変わらなさを目の当たりにして、
作り手としての強かさ、そしてまた呑気さに、
いたく感心してしまったオイサンでした。


なんかまとまりはないけど。
そんな感じです。



■まとまりないついでに。



本日の『ドリームクラブZERO』日記。


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玲香さんは、実家の中学に上がったばかりの妹さんが
ヒキコモリで悩んでるんだそうです。
どうにか力になってあげたいですねえ。



オイサンでした。



もう一個の彫り物、龍神。
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2012年1月26日 (木)

■アロマ侍 -更新第755回-

世界で最初に、コーヒーにミルクを注いだのは誰だろう?
その人に感謝の意を表したい。

オイサンです。

豆を煎ってみた人と、
それを粉に挽いてみた人と、
ミルクを入れてみた人は別人なんだろうなあ。
最初の二つは同じ人かもしれないけど。

でもミルクはヨソの人だろうな。
多分、最初の人たちとは国籍がちがうと思う。
ちなみにオイサンはコーヒーフレッシュはあんまり好きじゃないです。
ミルクが好き。

ブラックで飲むのは、甘いものがあるときだけです。







今日は……指摘というかお叱りというか、
キビシイご指導を賜るであろうことが前日からほぼ確定していて
朝からものすごく憂鬱だったのですが。

そんでオイサンがどうしたかと言うと、
まず、そこそこちゃんと寝ることにしました。
オフロも入って。
ちょっとカラダ動かしたりもして。

デ、起きてから自分の今の考えと状況をスッキリ整理して、
出来るだけシンプルに説明出来るよう準備を整えました。
まとめて書き出して。
そしたらまあ、ダメージは最小限ですみました。

助かった。

あとで別な人から、説明にいっこ抜けがあったと怒られはしましたが、
それはまあオイサンのウッカリですので仕方ない。
冷静なつもりでいても、緊張もするし、びびりもしていたのでしょう。

  まああんまり冷静なつもりでもないのだけど。
  絶対、どっか気持ちがイカれてるに決まってますからね。
  こんな状態で、マトモなわけが無い。

デ何が言いたいかというと、



やっぱ睡眠大事。



あれで寝ないでテンパって、ゴタゴタして、
シドロモドロな説明になったらまたそこで要らんスパイラルに陥るので……
先ずはそれを避けるための処置と判断でした。
とりあえず、アタマをすっきりさせる。
まとめて、きっちり、それなりの説明が出来ること。

突っ張って頑張る、という選択肢もあったんだけど、今回はこうしてみた。
まあ、上手く運んだと思います。

全体から見てベストだったかどうかはわからないけど。
どうだろうね。



■パパの言うことはほどほどに聞いておくといい。



頭の中で、ユイホリエのcoloringのサビだけ流れる。
ので、ちょっとだけ、『パパの言うことを聞きなさい!』の感想。

……まさかああなるとはなあ。
お姉さんが既に苦労人ぽかったから、
まさかこれ以上つき落としてくるとは、ちょっと思わなかった。

やり過ぎというか、「ほかにやりようは無かったのか」という気はする。
ズバッと言うと、ちょっと芸が無い。
いや、誤解のないように言うと作品はすごい好きですよ。今のところ。

残された主人公とかヒロイン三人もキツイけど、
何よりもお姉さんが救われなさ過ぎじゃないかしら。
若くして両親亡くして弟を一人で育てて、
ようやく好きな人と結ばれて、
子供も生まれてかわいい盛りで、ちょっと自由になる時間も出来てきた、と思ったら……って。
重たいなあ。
現実さんは空気読めないトコあるから、ありえない話じゃないけど。
それにしたって、救いがなさ過ぎる。
別にそこは感情移入するところではないのかもしれないけど、
見ていて
 「現実って、頑張るって、幸せってなんなんだろう」
と、ちょっと思ってしまった。

この先、
ヒロインたちが主人公によってハッピネスを取り戻していくのが見所であって、
この「底」はそのためのお膳立てに過ぎないんだろうけども……
どう盛り返しても、オイサンの心には
「ものすごく報われないお姉さんが出てきた話」として、
作品全体に影を落とすことになると思うのでした。

まあそんでも、
1クール終わる頃にはお姉さんの影の重みもちょっと忘れて軽くなり、
同じように画面の向こうで、姉の、母の死を、
少しだけ重さの取れた思い出にしているキャラクターたちに同調して

「悲しみも時間とともに忘れて生きていける、人間のよさ・強さ」
みたいな物を実感してしまうんだろう。
そこまで、計算して物語としての効果を期待しているのなら、
それはそれですごいと思うけど。



ハテサテ。
いかがなものか。


オイサンでした。


 

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2012年1月23日 (月)

■銀幕ティータイム~映画『けいおん!』感想その二・ネタバレあり編 -更新第754回-

はいどうも。
今日も何かと文句の多いオイサンです。

前回に引き続き、先週見てきた映画『けいおん!』の感想、
今回は本編の内容にもちょっとふれたネタバレあり方面でお話したいと思います。

ナカミ知りたくない方は、まあその様になさって下さい。
ネタバレなしのざっくり感想の第一回はこちら。


  ■銀幕ティータイム~映画『けいおん!』感想その一・ネタバレナシ編
  http://ikas2nd.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/-752--68f9.html



■『映画 けいおん!』 感想 ネタバレあり編



 ▼あずにゃんに贈る歌

先ずはじめに、ストーリー展開をまとめつつ、
上で書いた「盛り込み過ぎ」の話から行こうかしら。

あの、エピソード四つ、あると思うんですね。
あずにゃんを喜ばせるぞ & ロンドンに行くぞ!編と、
ロンドンに来たぞ!編と、
教室ライブ!と、
あずにゃんに贈る歌!と。

全体を貫くエピソードの軸は、
「卒業する唯たち四人が、残されるあずにゃんに何か贈ろう!」
という気持ちであって、
あずにゃんに曲を贈ることに決まり、
それとはまた平行して走っていた卒業旅行の流れで一緒にロンドンに向かい、
そこで何か曲のヒントを拾ったりしようと(マそれもうすぼんやりとですけど)し、
ヒントを得て帰ってくる、そして曲を完成させる。

……という、ものなんですけども。

あの、教室でライブをするエピソードの、そのあずにゃんへの気持ちという面での位置づけが、
オイサンには読みとれませんでした。
そこ、要らなかったんじゃないの? と、思ってしまった。
何か見落としているのかもしれませんけど。
ただ、ロンドンから帰って来てから曲を完成させるために、
何かワンクッション、必要だったのはわかるので、
もっと違う、さりげないエピソードでも良かった。

  あそこで敢えて、放課後ティータイムとして、
  「放課後ティータイム ⇔ 他者」との場面を作らなくともよくて、
  もうこの映画の中では、全編
  「四人 ⇔ あずにゃん」の、五人っきりの世界で良かったと、思うんです。
  あそこであずにゃんと唯が、何かを送り合い、受け取りあった描写もあるんですが、
  それがなんだったのか解らなかった。
  上で書いた「絞って見せる」というのはこのこと。

イヤ、他の人間を出さないで良いという意味ではないですよ。
和ちゃんが出ないとオイサン困りますからね(どうでもいい)。
見せる関係性を、そこに絞ってしまえばよかった、という話です。
あそこでちょっと、脱線というか、間延びした感があった。
卒業ということを改めて意識させようという意図だったのかもしれませんが、
それはもう……良かったんじゃないかなあ。

起・承・転・結だったのかもしれませんが、
ここは敢えて序・破・急で良かったんじゃないかと。


 ▼緊張感をなくす物語

あと勉強になったなーと思うのが、
すごく、「緊張感を殺すことに心を砕いてるなあ」というのがすごくよく見えたことです。

このお話は、
「あずにゃんに歌を贈るためにそれを隠しつつ懸命な唯たち四人 vs あずにゃん」
の間で緊張関係の生ずるお話なんですけども。

見る側の視点て、基本あずにゃんにあると思うんですね。
デ主人公は唯だけど、あずにゃんの物語、みたいになっている。
見る人は、あずにゃんの目を借りて、唯たちを見ている気がする。

だったら唯たちが何を考えているかは見せないで、
その謎は謎のまま引っ張るのが、一番緊張を高めるやり方だと思うんですが、
それをもう最初から全部見せてしまって、そういうのはナシ、と
作り手がすっかり開いているのが、ああ、そういうことなんだな、
と感心させられました。

  マそうしないと作れない話でもあるんですが。

最低限に緊張をおさえつつ、きちんと流れに乗せて最後まで連れて行く、
というのが、もとが四コマ作品だからでもあるんでしょうね、
お作法になっているのだと思いました。


 ▼細やかさ

様々に細やかな組み立てで、受け手が意識するとせざるとに関わらず、
全てを盛り上げているというのは、上でも書いた通り。
上で書いた
「ある二人が、あることに対して真逆の反応をした」
の話の詳細。

ロンドンの回転寿司屋でイキナリ演奏することになったとき、
唯とムギは真っ先に「演奏したいよ、なんとかなるよ」と言ったのだけども、
ラスト付近で、イザ、あずにゃんに贈る歌を演奏しようという段になって、
「今までで一番、すっごい緊張する!」
って最初に言い出したのも、唯とムギだった、っていう……
あー、あずにゃん大事なのね、
ロンドンとか人前とか、そんなことより全然!
というのがそれだけでもう。
グワッと。
くるワケです。

どうでもいいような細かい話だと、
空港で感じるいろんな物事のデカさとか。
飛行機を見て、旅慣れない人間がテンションを上げる感じとか。
離陸のショックもそうだし、
国際線で、雲の上で夜を明かす、雲海に上る朝日の美しさもそう。
着陸近いときの、中途半端な高さからみる、街並みに感じる高ぶりもそう。
この辺は、良く飛行機に乗って旅行する人ならきっとわかると思います。

慣れてくると少しずつ失われていくけど、
あのときめきって決してゼロにはならないと思います。
遊びの旅行じゃなく、オシゴトで飛行機乗りまくってる人は
なんも感じなくなるかもだけど。

オイサンも海外経験は一回しかないですが、
赤く染まる雲の地平線を見て、あずにゃんを起こしてしまいたくなる唯の気持ちは
すっごく良く分かった。
まあ、話のスジには関係ないトコなんですけど。

旅ごころをかきたてるものとして、そのときめきがすごくよく伝わった上に
5人がとても可愛かった、良シーンだったと思います。
案外落ち着いてた律っちゃんが、すごく印象的だったなあ。
機内で携帯いじってたのは、誰に何を送ってたんだろう?
と思うと、ちょっと胸が痛みます。
恋?

……って、今気付いたけど、
機内で携帯いじってたらアカンやん。
さすが律っちゃん……。



 ▼あずにゃんは天使だった

個人的な気持ち。
あずにゃんを天使にしてしまって、四人は良かったのかな、と思うのです。
それはすっごい大事にしてるという気持ちの表れであると同時に、
やっぱりあずにゃんを一人、外側に置いてしまう行為でもあるとオイサンには感じられて、
そこを「そうじゃないんだよ」と納得させてもらえるだけの要素がなかった。

天使という言葉を持ち出したときに、
律っちゃんだけが「ちょっと恥ずかしくないか?」と異を唱えたんだけども、
その「恥ずかしさ」という部分を、
三人はもう少し良く考えても良かったかなあ、
ちょっと自分たちの気持ちだけで盛り上がってしまったんじゃないかなあと、
感じました。

おそらくあずにゃんはそのことを気に病んだりはせず
大事に思ってくれている気持ちだけを汲み取って受け取る、
それだけの関係があの四人と一人の間には出来ていると思うけども、
あずにゃんとして見ていたオイサンには、一抹の寂しさが、残ってしまいました。

あとはやっぱり、もうね。
TVで卒業式のエピソード見たあとなので。

どんな話だったのかあまりよく憶えてはいないのですけど、
唯があずにゃんに何か手渡して
「私たちみたいだね」
という台詞がすごく心に残っていて。
それを思うと、今更そこにエピソードを追加するのは、
ちょっとおなか一杯過ぎるなあ、という感じはいたします。

この件に関しては、もうそっとしておいても良かったんじゃないかなあ。


 ▼みんなの見せ場

みんなそれぞれ見せ場はあったんだけど、
澪とムギファンには、今一つ不完全燃焼だったのではなかろうか、と思われる。
この二人はメインの5人のうちではワリと不遇だったような。
もしかしたら、憂ちゃんの方が印象に残ったかも知れない。
オイサンごひいきの和ちゃんも無理なく出演してたし、満足です。

そんな中でも存在感出してたのは律っちゃんですね。
いやあ、こういう舞台になると律っちゃんは強い。
大胆さ、思い切りが必要で、かつ周りの意見をまとめないといけないというときに、
ものすごい手腕を、さりげなく発揮している。
大事な決断を、誰に無理をさせることなく、スパッと決めててかっこいい。

寿司屋で演奏するかどうかも、
イベントに参加するかどうかも、
サワちゃんの無茶な衣装への却下出しも、
空気を読んだり読まなかったり、周りも、自分も、殺すことなく前に進んでいく。
すごいなあ。生まれながらのリーダー肌。
すごい株を上げたと思います。無双に近い。

  「劇場版ではらんぼうものがイイ奴になる」

という、元祖「THE・らんぼうもの」の剛田さんが敷いたレールの上を
見事に走ってらっしゃいます。


  おーれーは律っちゃーん ガーキ大将ー♪
     ( ↑ ハマり過ぎだw)


ムギはスタンスとして唯に近いところにいるので、
今回どセンターだった唯が目立つほど一緒に目立って救われてましたが、
「一番何もしてない大賞」は澪っぺですね。
一番無邪気だったんじゃないかw?
基本のっかりキャラでした。マスコット。
マいいけどさ。
作詞のいいところくらいは、彼女の見せ場に上げて欲しかったと思います。
でも、本来の彼女の居場所はこのくらいの日向なのかもしれませんな。

もうちょっと律がバカで的を外さないと、
澪のすることがなくなる、ということが証明された感じ。


 ▼音楽について

映画が始まって、一番最初にうわっと思ったのは、
回転寿司屋でのライブシーンでした。
うわ、っというのは、なんかすごいことになった、という驚きで……
「放課後ティータイムがロックの国(というオイサンの認識)で演奏してる!」
という驚きと、
「怒られるんじゃないか、拍手もらえんのか」
というハラハラ感。

ガイジンさん相手に演奏するということは、
彼女らの土俵である(とオイサンは思っている)歌詞や世界観の面白さでウケるということは
ほぼ期待できないわけで、サウンドとメロディーで楽しんでもらうことになる、
果たして放課後ティータイムって、そこで勝負の出来るバンドなのかしら?
って、オイサンはその辺全然評価できる人じゃないので
すごくドキドキしました。

マその分、すんなり受け入れられていたのが
ちょっとうそ臭くてご都合っぽいなあと思ってもしまったのですが。
そのハラハラ感そのものが、『けいおん!』っぽくないといえば
そうだったかもしれませんね。

本当に音楽が好きな人たちが、一体何を持って共鳴するのかということを、
オイサンは多分分かってないので、
アレはあれで本当のことなのかもしれないな、とも思いますが。


 ▼Japan Pop カルチャー

あともういっこ、『けいおん!』っぽくないついでに。
ロンドン編のシメとして、
けいおん部の面々が日本のポップカルチャーを集めたイベントの舞台で
演奏することになるんですけども。

「日本にいる限り、ロックにしろポップスにしろ日本の歌は邦楽で、
 外国の音楽は洋楽なのだけど、
 海外に出た場合、日本の音楽はなんと呼ばれるんだろうか」
と、ふと考えた。

洋楽的な良い方をすると「和楽(Japanese Music)」とかになるのか?
と思ったんだけど、
でも、「洋楽」が日本で「洋楽」足りえているのは
洋楽がルーツからして日本の外にあるものだからであって、
外国人が三味線を弾いたところでそれは「洋楽」ではない。
となると、今現在日本で主流のJpop的なものやロックなんかは
ルーツが日本になく、日本人がそれをいくら頑張ったところで、
恐らく「和楽」とは呼ばれまい。
「和楽」と呼ばれるものがあるとすればそれは
お囃子や雅楽のようなものであるはずではなかろうか。

果たして、所詮は「真似に過ぎない」日本人のロックが
(けいおん部のアレがロックなのかどうかはオイサンには分かりませんけど)、
海外で一体どれほど響きうるものだろうか、
それが主流となってもてはやされている日本の文化感覚って、
ホント大丈夫なのかなー……
などと。
ちょっと、ほの暗い気持ちに……なってしまったのでした。
『けいおん!』見ながら。

  どうだい。
  器用だろ? このオッサン。
  なかなかいないと思うぜ、『けいおん!』見ながら暗くなれる人。

まあ、そこそこ長い時間、
日本は日本で日本のロックを温めてきたわけで、
本場のものとは違うロックのカルチャーが育ってはいるのだろうから、
そこを面白がってはもらえるんだろうな、とは思うのだけど。
「和」を冠するほどのスピリットは宿っているんだろうか?
マそれは別に、『けいおん!』見ながら考えることじゃないんだけど。

せっかく感じたことなので、書いてみた。
しかしホント、『けいおん!』見ながら感じることじゃないよな。
へんなひと。
でもそこが好きよ(誰だ)。



■まとめ



マそんな感じで。
『けいおん!』本体に関係あることからなさそうなことまで、
映画を見ながら感じたこと、ざらざらと。
なんにせよ、最初に言ったことに尽きると思いますよ。

  『けいおん!』は『けいおん!!』らしく、
  テレビと同じくらい面白かった。

それが忌憚のないところです。
やっぱりこう……「良くも悪くも」って言葉がついて回ってしまうんですけど、
それでも、良い:悪い=9:1くらいですからね。
もっとこう、映画映画しつついつもの体温を保てれば、
伝説になれたんじゃないかと思います。
そこまで突き抜けたパワーは感じなかった。
ああ、ああ。
おんなじおんなじ。

……みたいな。
安心しつつ、拍子抜けしつつ。
そんな感じ。

でも、なんていうかね、
部屋の外、自分の世界の外で『けいおん!』の力の大きさに触れることが出来たのは、
とても大きな収穫でした。
話に聞いているとはいえ、
「中高生に男女問わず人気絶大、小学生も!」
っていうところは、そーなんだーとは思いつつ、
肌で信じることはなかなか出来ませんでしたからね。
今回劇場でそれをリアルに感じて、
ああ本当だったんだ、すげえなって思いました。

『エヴァ』とは全然違う、世界への染み渡り方をしてるんだなあ。

小中高女子が、それぞれ果たして何を『けいおん!』に求めているのかは
わからないんですけど。
昔のアイドルモノや魔法少女ものの延長を見るように見ているのかしら。
等身大のアイドルや、憧れられる友達として。

  ……マそんなこと言ったら、オイサンたちだって明確にすることは
  出来ないと思うんだけど。

というわけで、前後編合わせてえらく長くなりましたが、
オイサンの『映画 けいおん!』感想でした。

あと、パンフに描かれている唯たちのイラストはすごくかわいいので
個人的には必見だと思います。
特筆するほどの話ではないのかもしれませんけど、
グッズとかほとんど買わないオイサンは好きだった。


ほなまた。
オイサンでした。




 

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2012年1月22日 (日)

■雨上がりの拾い物 -更新第753回-

本日はお休みでした。
オイサンです。

今日の町は、夕方まで雨のはずがお昼過ぎには雲が晴れ始め、
いきなり雲が去ってわあっと通りに光があふれ出す瞬間があって、
なかなか爽快でした。

R0046456

ううむ。
こんなことなら、晴れてた時の予定に従って、鎌倉にでも出かけておれば良かった。
失敗したわい。

そんなオイサンですが、
特に何かを買うつもりもなく、寄ろうか寄るまいか迷った挙げ句に
「何か見つかるかも知れない」という希薄な理由で寄った本屋で
『妹先生 渚』を見つけて目を疑う。
一目でわかる、村枝賢一先生の『光路郎』の続編だ。
中身も相変わらず。
すごい変わらなさっぷり。でもそこがいい系の話。

R0046509

前作は、田舎の港町に突然やってきたハーフの英語教師・光路郎が織りなす
学園人情モノだったのですが、
今回はその妹の渚がセンセになって似たようなことwをするというお話。
相変わらずの青春学園人情ものです。
でもいいよそれで。

『光路郎』を買って読んでたのが確か高校か中学の頃だから……
もう20年近く前になるのか。
全然そんな気しねえ。



■アニメの話の続き。



そうそう、こないだの日記のアニメ感想の中で、
今期見たアニメに結構抜けがあった。

 『アクエリオンEVOL』、
 『戦姫絶唱シンフォギア』
 『パパの言うことを聞きなさい!』

の三本。

『アクエリオン』と『シンフォギア』は
一話目時点では、どっちもやっぱりモ一つだなーと思ってましたが、
『シンフォギア』は2話目でちょっと面白くなってきた。

このアニメ、PSのゲーム『ワイルドアームズ』の中核となってる
金子彰一という人物が、どういうワケか監督をおやりになっているのですが、
その人っぽさが、脚本の端々に見えてきて。
いい感じです。
ちょっとヒネてるというか、ヒーローもんなのに
熱血じゃなくリアルでシビアで重たいというか。見ごたえがある。
事件に巻き込まれたヒロインに、
事件のことを外に漏らさないで欲しいとお願いする秘密機関側の言葉が、

  「俺たちが守りたいのは機密などではなくて、人の命だ」

というすっごい筋の通ったもので、それを聞いて
「あ、金子節キタ。これ面白くなりそうだわ」
と思ったのでした。


  ついでに、前回やっぱりイマイチかなーと言っていた
  『モーレツ宇宙海賊』も、若干上向きのカーブを描いています。

『アクエリオン』は、まあ面白いっちゃ面白いんですが、
身を乗り出すほどのもんではない感じ。
主題歌は相変わらず、テンションちがいますね。つかまれます。
それとは全然関係のないところで、
この河森正治って人は、やはり監督として、クリエイターとしては、
超のつく一流なんだろうなあ、と毎度思ってしまいます。

彼の作品は、なんというか、毎回「キワドイ」。
ボール半個分ストライクゾーンにおさまっていないボール、
審判や、投手の審判からの印象や、捕手次第でストライクにもボールにもなる球を、
迷いのない剛速球でぶち込んでくる。
すごいと思います。





そうそう、で『パパの言うことを~』は、
ここまででは一番面白いかもしれません。
オイサンの好みに近い。
『はがない』と『アスタロッテ』の中間、若干『アスタロッテ』よりのところにいる感じ。
ホームコメディの匂い。
演出とか萌えとかえっちくさいこととか、あるにはあるけども抑え気味で、
かなり自然だと思います。
面白いと思ったのに、リストに挙げるのを忘れるくらいにうっすらしているw
ぶっちゃけ、地味。
地味だけど、丁寧。

正直、抑え気味過ぎて、
若い人にはコレでウケがとれるのかなどと要らぬ心配をしてしまいますが、
でもオイサンにはこれが心地良いわ。
先々と楽しみです。
オススメ。原作にも興味湧くレベル。

にしても、今期はエンジンゆっくりめの作品が多いのかな。
特にロボ・メカ・SF系は。
後半までとっておいた方がいいのかも知れない。



■オッサン、また『ドリームクラブ』に通い始める



『ドリクラZERO』再開しました。
前回のアイリとはちゃんとハッピーエンドを迎えましたよ。

次はどうしようか、魔璃さんか、ずっとオアズケ気味のナオか、と思っていたんですが
ここんとこ何故か気になって来ていた玲香さんに。
まだ指名2回目くらいですけど、
ああ、このひと普通だわ。珍しく普通の人。
関西弁なくらい。

  ラジオのミニドラマの方では、
  樹を伐り倒すために、刃を付けたボーリング玉とか持ってくるキャラだったはずだが。

でも今回はそのフツウさに惹かれて彼女をご指名です。
るい先生、ナオとも仲が良いみたいなので、
その辺もつまみ食いしつつ、仲良くなっていきたいなあと思案中。

しかし、このヒト……フツウに可愛いなあ。
あのね、酔った後の、熱っぽい目がやけにグッときますね。
他のコたちとなんか変えてあるのかしら。


R0046492


話してても変に気張ったところとか、キャラっぽいところがなくてフツウで楽しいし、
くたびれた気持ちを癒して戴きたい、そんな今日この頃です。

マそんな感じで、大したオチもございませんが。
相変わらずなオイサンのマイニチ。




……。



とは言え。



一本、SSを書き終えたので、次の書き物に移らないといけない、
というか、
移りたい。
移ろう。



オイサンでした。



 

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■銀幕ティータイム~映画『けいおん!』感想その一・ネタバレナシ編 -更新第752回-

『映画けいおん!』を見てきました。
公開当初から、これは劇場で見よう、と思っていたんですがずるずると。

デぼちぼち公開終了の声も聞こえてきたのでちょっと慌て気味に行って参りまして、
例によってその感想をまとめておこうかなあという次第です。

  マ需要があるのかどうかわかりませんけども。
  せっかく感じたことなので、
  作り手・受け手に何か参考になればという思いもあって残しておこうと思います。
  ダラダラと書く中に、一つ二つでも新しい視点が落ちてればめっけもん、
  くらいの気持ちで読んでもらえたら幸いです。

構成としては、

 ・今回 ネタバレを含まない大体の感想
 ・次回 ネタバレ・内容に突っ込んだ話

としようかと思います。
ホントはこの記事の前半・後半で終わろうと思ったんですが、
長くなったので記事を分けます。
ネタバレを気にしつつも評判を見てみたい方は今回だけ読んで下さい。



ほな、ボチボチいきまひょか。



■『映画 けいおん!』感想 ネタバレなし・概観編





えーと、まずは何のヒネリもありませんけど、面白かったです。
うん、面白かった。
TV版二期の『けいおん!!』が面白かったって人は見に行って損はない。

  オイサンはフツウにボロボロ泣いてましたけど、
  それは毎度のことなんでアテになりません。

オイサンは原作はほとんど全く読んでおらず、
テレビアニメの第一期・第二期を、テレビ放映分だけ見た人間です。
なので、BD/DVDについていた(らしい)、番外のお話なんかは知りません。
そのオイサンの目で見て、TV版と大体同じノリ、同じクオリティで、
面白かったと思いました。

ただその言い方も実は不正確でして、
TV版『けいおん!』ではなく『けいおん!!』、
つまり第二期の匂いの色濃い『映画 けいおん!』だった。

オイサンは実は第一期至上主義者でして、第二期はちょっと語り過ぎるし味も濃い、
と感じています。
第二期は、一期でぐぐっと盛り上がってお客さんも増え、
メジャーを意識した、
お塩をひとつまみ、あるいは生クリームと砂糖をひと匙ふた匙
多く入れた作品に仕上がっている、と感じてます。

  個人的には一期前半の、
  「え? ちょっとそれなに?」
  「今のどういう意味?」
  という、少し物議を醸す様な、不親切さの残る、
  けれども作り手の後頭部の見切れてしまう様な作りが好きだったんです。
  分かりきらないところが表現として残るもの。
  でも二期に入るとその分からなさは殆ど顔をのぞかせないんですね。
  親切。
  みんなに分かる。
  今回の『映画 けいおん!』は、その二期の色を濃く継いだ作品だったと思います。
  マ当然ですけどね。
  そこで一期にもどるわけはないんです。

「映画だから、TVからものすっごいパワーアップした面白さ!」
……ということも、特にはないです。
1700円払って、TV4本分の時間の、舞台がちょっとスペシャルな『けいおん!』を見る。
そういう気分でした。
うん。

……あのー、だから、
とてもよく出来ているし、面白いし、褒めたいんですけども、
褒めるのがすっごい難しいんですよね。
「TVとおんなじくらい!」というのが、褒め言葉に聞こえにくいかも知れない。
そこを細かく語ることは出来ませんし。

でも、『けいおん!』って、アホみたいにヒットして、ウケて、
受け容れられてる作品なワケですよ。
オバケ作品です。
TVからしてクオリティが一段高い。

  今日もびっくりしたもの。
  劇場入って椅子に座ってると、小学生か中学生くらいの女の子がぞろぞろ入ってくるのね。
  別にそれが日曜朝の『プリキュア』の映画だったらビックリしないんですけど、
  一応深夜アニメですからね。
  ウワサには聞いていましたけど、やっぱりちょっと、
  異次元の作品なんだなあと実感した次第です。

  ちなみにフツーの映画同様、
  開始前にはコレから公開される映画の番宣が色々入るんですが。
  ……そんないたいけな小中学生女子に、

  『ストライクウィッチーズ劇場版』の予告を見せるのは
  いかがなものか。

  ケモ耳スク水女子のお尻やお股をどアップで映すのは、
  裂けた方が良……否、
  裂けた方が良……否、裂けた方が良……否、
  避けた方が宜しいのではないでしょうか。
  微妙な笑いが聞こえてきましたよ。
  オイサンは何も悪くないのに!
  ルッキーニもバルクホルンさんも、
  何も悪くないのに(ドン!!



  話が剃れまし……否、話が剃(×3) 話が逸れました。

今となっては『けいおん!』は、ちょっと過大に評価されてる向きがないではないと
オイサンなんかは思いますけども、
それでもやっぱり、始まった当初は他とは一線を画すオーラを感じて
「なんだこれは!!?!」と釘づけになりましたし、
そのオーラ自体は、多分今も変わってない。

それがクオリティを落とさずに、新しい、
ちょっと大きめのエピソードをもう一回見られる。
これはそれだけで贅沢な出来事だと思います。思うんです。
だから「TVと(少なくとも)同じ『けいおん!』がまた、2時間も見られる!」
というのは、ワリと大きな賛辞だという思いで、
オイサンはこの言葉でお伝えしています。

作りは変わらず、何かと細やかです。
言葉にしないで伝わることは、言葉にしないで伝えよう、
アニメーションで伝えようと一生懸命なところがキチンと守られていると思います。
昨今のアニメには珍しく。
その労力、姿勢はやっぱりすごい。
オイサンは動画については相変わらず無頓着な方ですが、すごかったと思います。
TVと遜色なかったというのはそういう面でも。

ヒトツ例を挙げると、
ある二人が、
ある行いをするにあたって、
ある二つのタイミングで真逆の反応を示すのですが、
その対比がすごく効果的で、グッときました。
細かいことはあとのネタバレあり編で書きますけど、これはすごかったなあ。

うん、いつもの放課後ティータイムだったと思いますよ。

とはいえ、お話的には肩に力が入っていたところも見えました。
第二期ベースだから、ということの延長でもありますが。
エピソードが大きく四つ盛り込まれているんですけど、
コレ、三つで良かったんじゃないかな、サービスし過ぎたんじゃないかな。
そんな風に感じます。
これも詳しくは後半のネタバレあり編で書こうと思いますけど……
やっぱ、映画って難しい。
2時間を過不足なく見せるには、見せるものを絞り込んで、
受け手をそこに惹きつけていかないともたないんだと、
それを、あくまで受け手としてですが、実感しました。


 ▼映画という体裁


……。



うーん。



でね。



今この映画って、アニメとしては異例のヒットを記録してるそうじゃないですか。
ジブリの向こうを張る、とまでは言わないものの、
それに次ぐくらいの動員数、興行収入を上げている。

でオイサン思うのが、映画としてのこの作品の面白さが
その数字に見合うものかと言われたら、それは実はそうでもないんじゃないかな、
とは、思います。
具体的な根拠はありません。
なんとなく、なんとなくです。
百万人の人間が手を叩いて、
「すげえ!面白え!」
とおひねりを投げるような「映画」かと言われたら違う気もする。
……まあそれは、『けいおん!』という作品の持つ体温の問題でもあるのですけど。

逆に、この平熱のアニメに対して百万の人間が喜んで帰るというのが今の時代であり、
その時代の映画という媒体の置かれた位置だっていうことなんでしょう。
オイサンの物差しがちょっと古いって話ですねこれは。
忘れて下さい。

ただその、「映画」を見に来た人がこれを見てお腹一杯になって帰れるかって言うと、
そうではないな、と思ったという感じです。
「けいおん!」を見に来た人は満足して帰るだろうけど。
映画映画してない、って言いますかね。
多分、『けいおん!』にイカニモ映画映画することは出来ないだろうし、
作り手もそこは狙ってなかったと思いますけども。

それでも『「映画」 けいおん!』を見に行った者としては、
……「話として肩の力が入り過ぎてた」と言ったのとは色々矛盾するんですが、
ちょっと食い足らなかった。
そんなことです。

これがね。

OVAでリリースされていたら全然違和感はないのですけど、
オイサンのような世代には、映画って、気持ち的に特別なイベントですんで。
もしかしたらそこは、「映画」という体裁をとってしまったことで
ちょっとソンしたかもしれないなあと、ボンヤリ思うオイサンです。
『ドラゴンボール』の映画みたいになってもヘンだと思うしね。

難しいな。


あーあとねー。
どうでもいいけど、テレビの番宣CMで流れる、コマギレのエピソードというか、
小ネタの数々は、概ねオイサンの思った通りの展開で出てきましたねw
それを狙って作られた予告編だったのでしょうけど、
面白いくらいにw
その快感も計算づくだったんだと思います。
これは上手いと思ったなあ。

あ、でも、「サイドビジネス!」だけは予想外だったww
あれはガチで吹きました。面白かった。

予告編の作りはすっごい上手いと思うわ。
特にいい話を強調したお話でもないのに、アレ、すっごいいい話みたいに見えますからね。
別モンだもの。


そんなことなので、
『ストライクウィッチーズ』の劇場版も
楽しみにしたいと思います。



サテ、ネタバレなしの感想概観はここまで。
ここから先は、本編の風景なんかを盛り込んで、
ちょっと細かくお話していこうかと思います。

いや、でも、結論は「面白かった」なんですけどね。

ほなまた。



 

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2012年1月20日 (金)

■こころを落ち着けるために何かを書く長七郎チョイ日記

こないだまた例の割烹へ行ったら、
調子に乗って食べ過ぎた挙げ句一人で5000円も食べてしまったオイサンです。

おいしかったから良いけどさすがにちょっとびっくりした。


慌てたり焦ったりすると心がざわついて、
自分が何を考えようとしていたかを見失ってしまったりする。

そういう時は、自分の考えの向いていた方向を確かめ、
流れの速さを落ち着けるために、
ゆっくりとした打鍵で、何でも良いから書きつけてみる。
自分の心の声を聴くように。

……とか書くと、きれいごとというか眠たいポエムみたいだけども、
オイサンのような人間にはそこそこ効果がある。
今考えているのとは全然関係のないことを、
ゆび先の動きをしっかりと意識して
それに合わせて画面に映る文字を追ってみる。

そうすると、ガサガサ乾いて
砂漠の上を風が吹いていたみたいだった気持ちがしっとりしてくるというか、
そこまで良いモノではなくても多少の湿度を取り戻してくる。
……様な気がします。

まあ本当は、こころを鎮めるのには
画面をじーっと見つめているのではなくて、
紙に印刷された文章を読んだりするのが効果があるなあ、
と、最近では思っているのですが。


いやー、しかし。


はぁー。


まだまだ、しんどい日々が続くなあ。


ここに、愚痴や恨み言を書くのは本意ではないですしね。
……こういうときにmixiとか使えばいいのかなあ。
でも、それもどうよって話ですよねえ……。

前もちょろっと書きましたけど、
お酒を飲んだりね。
人と会ったり。
こころが重たくて、週末、そうやって過ごす人たちの気持ちが、
オイサンにもようやく分かる様になってきた。
今まで、ラクして生きてきたってことなのかなあ。
それなりにしんどい気持ちのときも、結構あったつもりだけど。

ただ、今、タイミングよく、人やお酒が手と心の届く範囲にあるっていうだけ

だろうか。

寒いですよね。
寒い。
今年の冬は、なんだかすごく寒く感じます。
心象的な意味ではなくて、ふつーにです。
その分、月がすごく綺麗に見える気がします。



……というわけで、近場の人、誰か声かけて下さいw
大して面白いことも言いませんけど。



■ちょっとだけ、今期のアニメの話でも。



今のところまでで見たもの。

 『輪廻のラグランジェ』
 『モーレツ宇宙海賊』
 『男子高校生の日常』
 『キルミーベイベー』
 『アマガミSSplus』
 『BRAVE10』
 『あの夏で待ってる』

他にもなんかあったかな。
マ大体思い当たるところでこんなもの。
ひっくるめてしまいますが、どれもモ一つ、ピンとこない感じです。
グッとひきつけられる物を感じません。

『輪廻』『モーレツ』は、なんか似た感じのものだなーと思って見ていますが
メカにも物語設定にもヒロインにも、乗り切れない。
すごく綺麗で、面白そうだな、とは思うんですけどね。
何がいけないのかはおいおい考えてみたいと思います。

今の自分の精神状態があまり前向きでなく、
物語によって興奮状態になれないというのはありますが、
それは逆に冷静でもあるわけで、
過度に悲観したり、貶めたりしているわけでもないと……思うんですがね。

  『輪廻』のメカはちょっと好き。
  日産がデザインしたのだそうですけど、
  そのことは「日産にとって」どんな意味があったんだろう。
  彼らの本業に、今後意味のあることなのかだろうか。

『BRAVE10』も、今一つですね。
『男子高校生』がラクに見られて、
『あの夏』が、まだ一話しか見ていませんが、やや面白い。
でも、ググッと引かれるという幹事では、やっぱりないですねえ。
『キルミー』は……ゆるいけど、全てが予測の範囲内で
見ていてスカッとするところがない。

今期は日常系が見当たらず、オイサンにはちょっとキビシイ。
『たまゆら』にせよ『Aチャンネル』にせよ、
ものすごく良く出来ていて、ものすごく面白い! というわけではなくても、
終わってしまうと、あとあと尾を引いてさみしい気分にさせられます。
うーん。
なんかないかなあ。



では、そんなオイサンの今期イチオシはなんでしょう?



はい、『孤独のグルメ』です。



アニメじゃないじゃん。
いいだろ別に。アニメみたいなもんじゃないか。
立派な日常系ですよ。

え? 『アマガミSSplus』ですか。
うーん、なんていうか、もう別物として楽しむ構えです。
背景がよく分かっている作品なので、
新しく何か調べたり疑問に思ったりする手間がなく、
違和感やこだわりを抜きにすればすごくラクに見られる。

二期目ともなれば吹っ切れもしますので、
すっかり「アニメの『アマガミ』」として、まあ、
彼女らのアナザーストーリーを横目で流していこうかなあと、
そんな感じです。

とりあえず絢辻さん編を2話見て、
面白いかっつったら、作品単品として面白味はないです。
ベタというか、力抜いて作ってるなあ、という感じ。
「今回はこういう風なのね」という面白さはありますけども。
あまりよろしくない意味で、
昔ながらのギャルゲーのアニメ化だと思います。

ですんで、一縷の期待は残しつつ、それなりに見守っていきます。
一期みたいにキビシイ気持ちでいちいち苦言を呈したりはしません。
この子はこの子、という気持ち。
もちろん、キラッと面白ければ、そこは拾って褒めていきたい。
最終的に面白いと良いなあ。



マそんな感じでヒトツ。
オイサンですよ、ええ。




 

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2012年1月18日 (水)

■あとがき ……と、川底色の自転車 -更新第751回-

『ひだまりスケッチ×☆☆☆』SS「a white day~ミューズの座布団」、
先ずはお読み戴きましてありがとうございます。
私が書いた人のオイサンです。

  知ってる?
  あらそう↓。

  サインしたろか?
  いらない↓。
  あらそう↓↓。

いかがでしたでしょうかね。
意味わかんないですかね。

毎度のことながら、
のんびり、ふんわり、ときどきしんみりが信条の『ひだまりスケッチ』には
あまり相応しくない言葉や感情や雰囲気が、
道中ワリと見え隠れするお話になってしまっているので、
原作同様の空気だけをお望みの方々には
なかなか容れ難いものになってしまっているのではないかと思います。

  気分を害した方はゴメンナサイ。
  貴方の大好きなメ一杯天真爛漫なだけの宮ちゃんや、
  ひたすら内気で純真なばかりのなずなちゃんは、多分ここにはいません。

けれどもそれは、何かあざとさを狙ってそうしているわけでは決してなくて、
宮ちゃんにしろ、なずなちゃんにしろ、
オイサンが、原作のマンガやアニメやキャラクターソングなどから読み取った幾つかの情報と、
現実でのオイサンの体験や経験から
「こういう子なのであれば、こういう面があるに違いない」
「こういう面の反対側には、こういう面が隠れているのが自然だ」
と、ごく自然なもの・人として導き出した結果このようになってしまっている、
ということです。

「こういう光の当て方もあるのか」という程度に、寛い心で捉えて頂ければ幸いで、
その上で面白がってもらえたらいうことなしです。


 ▼クローズアップなずにゃん

今回なずなちゃんをクローズアップした理由は、
例によってキャラクターソングにインスパイアされたからです。
アルバム『ひだまりんぐ』に収録されていたなずなちゃんのキャラソン『white days』を聴き、
その曲の世界を言葉で絵にしたいなあ、と思ったのが最初の最初。

  その目論見は、お話冒頭のなずなちゃんの自室のシーンに表れています。
  うすぼんやりと暖かな、みかんイエローの世界。

そこに何故、宮子がからんできて今回のようなお話になったのか。


 ▼二人の橋渡し

あるとき、ヒトツ気になったことがあったんです。
原作の、ゆの・宮子・乃莉・なずなが四人でホームセンターに行く話の中で、
宮子・乃莉だけがトイレに行ったとき、
ハタと
「乃莉は宮子とも平気で二人きりになれるけど、
 なずなが宮子と二人になるところはみたことないなあ」
と気付いたのでした。

それでちょっと見返してみたところ、公式にしろ二次作品にしろ、
なずなちゃんと宮子が二人だけで長い時間からむエピソードはとんとおみかけしなかったので、
どんな風になるのだろう? という興味はありました。
多分そんな動機で、この二人をからめようと思ったのだと思います。

恐らくはあまり好き好んではからまない二人だからうめ先生も描かないのだろうし、
その空気をなんとなく察しているから、
創作系ひだまらーの皆さんもあまり手をつけないのだろう、ということは分かります。
そういう意味では、ある意味「やったらアカンこと」なのかも知れませんが、
同じ屋根の下で暮らしているのだし、
そういうタイミングもきっとあるだろうなあ、と思って。

あってもいいかなあ、と。

逆に、その「うめ先生が描かない」ということが、
その二人の「カンケイの存在感」の異質さをあの作品の中で
すごく大きなものにしているように思えてしまい、書いてみたくなった。
そこがぽっかり塗りつぶされていることが寧ろ不自然で、
って言うか、どうしても気になって。

何か触れ難いものがあるにしても、アッケラカンと触れられるべきだし、
それが出来ることが『ひだまりスケッチ』の世界でもあり
宮子の特殊性だ、というのが、オイサンの持論というか、
ひだまり観みたいなものだったのです。

  面白いモンで、なずなちゃんと宮子だけはホント二人ではからまないんですよね。
  『×SP』のOPだけをとってみても、
  なずなちゃんはゆの・ヒロ・乃莉とは同じカットに入るのですが、
  なずなと宮子、なずなと沙英、二人だけのカットというのはありません。
  多分なずなちゃんは宮子・沙英には、ちょっとした苦手意識があるのだろう、
  というのがオイサンの見立てでして、
  宮子もそれを無意識に感じているから、
  自分からプレッシャーをかけにいくようなことはしないんでしょう。

まあ、ちょっと……
今後、この二人が他の場所でも自然にからめるきっかけになればいいかなあ、
という、
すっごい僭越な言い方をすれば、二人の橋渡しもしてみたかった。
そのためには、なずなちゃんが宮子に対して、
ちょっと本気で感情を開かないとだめだな、怒らないとダメだな、
というのもあり、今回みたいなお話になったのでした。
怒ったなずなちゃんを見たかったってのもあります。
わかんねえ?
やっぱりねえ。

マそんな感じでひらひらと。
今回も、当初の想定とは随分異なる形でのゴールインとなりました。


 ▼異形ナチュラル

最終的には、実はひだまり荘の全員が出てくるはずで、
考えていたほのぼのエンディングがあってそれに向けて進んでいたけど
全然そうはならなかったとか、
ボンゴも叩くし宮子も踊るし、そんなお話のはずでした。
ぼんぼりのようにフンワリ明るく、ハートフルに。

……いやあ。
向いてないんでしょうね。
それがイヤなわけでは決してないんですけど、
書くと込み合って、次のシーンに流れていかなくなるのでした。
その時々でアタマを悩ませ、筆を止めつつも、
「しょうもない見栄で、要らんことまで書こうとするから手が止まるんや」
という……ちょっとらんぼうなですが思い切った境地を見出すことの出来た、
個人的にはなかなか実りのあるお話でした。

だからあとの三人の出番は切られちゃったし、
ボンゴも自然と鳴らなかった。
反対に、彼女らが、全く予想のつかない動きでオイサンを驚かせた挙げ句、
勝手に、キレイに、シーンをまとめてくれたりもしましたし。
なので、コレで良かったと思います。


とは言え、マそれもこれも、皆さんに読んで戴いて
位置づけ的にもようやく完成するシロモノですので……
なにかお言葉を戴ければ幸いです。



マそんな感じでヒトツ。

蛇足と知りつつ書かずにおれない、
素人くさいインチキ書き物士の独り言でございます。





……。





あ、そうそう。





昨晩は、実家の近所をロードレーサーで走る夢を見たんですよ。

Twitterでフォロワーさんが、
「若草山のヒルクライムに参加する」と仰ってたのを聞いたからでしょうかしら。
地元近くなんですよね。

夢で初めてまたがった深いブルーのロードレーサーは、
最初はオイサンのオペレーションが拙いせいでガクガクしてましたけど、
ギアチェンジンのコツが分かってくると
(多分実際はもっと難しいのでしょうけども)、
急な坂の多い郷里の町を、
まスイスイととはいえませんがとても軽やかに走ってくれました。

気持ち良い夢だったなー。

欲しいんですけどねー。
ロードレーサー。
『Odds!』とか『茄子』とか『弱虫ペダル』とか見ていると、
どうしても欲しくなりますね。

オイサンが自転車に乗る用途で言えば
ロードレーサーである必要はないのでしょうけど、
あの20何段というディレイラーで加速する感覚を味わってみたいのです。

置く場所と手入れの問題で、ずっと二の足を踏んでいるのですよ。
買って実家に置いとこうかなあ。
年に何度か、乗りに帰る、みたいな。
手元には町乗り用のを持っといて。





……なんでこの話を今したんでしょうね。
全然わかりませんけど。





それではまた。
『ゆび先はもう一つの心臓』で待ってます。
きっと見に来てくださいね。


オイサンでした。




 

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2012年1月16日 (月)

■空とお城と無関心 -更新第750回-

散歩の足を止めるにも難儀する世の中よ。
オイサンです。

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今朝がた、大変な物を見ました。
なんと、「食パンをかじりながら出かけていく女性」です。
どうだすごいだろう。本物見たことあるかお前ら。

学生じゃなくてOLさんだったことは若干の減点材料ではありますが、
トーストじゃなく生パンだったところはポイント高い。

  ……生パンっつっても、その、アレじゃないからな。

最初は、目を疑いました。
朝ゴハンを購った帰りしな、ほてほてとしょぼくれたいつもの道を歩いていたんですが、
何か白くてぎざぎざした物を、こう……胸のあたりに持った女性が、
向かいから歩いていらっしゃる。

お年の頃は二十代半ばから後半でしょうか。
髪をうしろで縛っているのかおでこをぴろっと出して、
黒縁のキリッとした眼鏡をかけて、
深い茶色のスーツとコートでまとめた落ち着いたファッション。

  もしかしたら、実際のお年寄りも若干老け目に見てしまっているかも知れません、
  オイサン。

最初遠目には、その手に持った物がなんなのかさっぱり分かりませんでした。
不規則に、はつられた様な、ギザついたシルエット。
丁度ゴジラの背ビレのようで、変わった形のお財布か何かかと思いました。
けれども違った。
ほんのりと温度の高い白を帯びたその物体は、
彼女が一歩踏み出す度にふわふわと揺れて、その柔らかさを露呈します。

そして決定的に、オイサンとすれ違うその瞬間に、
彼女はそれにかぶりつきました。
パンだった。
ぎざぎざのシルエットは彼女がかぶりついた跡……歯形だったわけです。

すぐには特に何とも思えず、
「ああ、パン食いながら歩いてんのか」
としか思わなかったんですが……
すれ違って数歩、足を止めて振り返りましたさ。
マ後ろ姿しか確認出来なかったんだけどさ。



いやあー……初めて見た。
本物のパン食い少女(少女じゃないけど)。



父さんは嘘つきじゃなかった。
ラピュタは、本当にあったんだ……!

そんな気持ちでいっぱいです。
ただ言い伝えと違っていたのは、


めっちょ見通しの良い一本道を!

真っ正面から!!

ワリとゆったり気味に歩いて現れたことだ!!!



ぶ、ぶつかれねえー!!
これじゃいくらオイサンがドジッ虎(こ)だったとしても、ぶつかれる要素がねえー!!
大体すれ違うまで気付かなかったし。
あと「ちこくちこくー!」とかは言ってなかった。


……。



いいかい野郎ども、よくお聞き。

いくらお前たちの父さんが嘘つきじゃなくて、
ラピュタが本当にあったとしても、
自分がパズーじゃなきゃ、結局全ッ然カンケーないんだからね。
未来少年は、コナン一人だけじゃないのさ!


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あとは『けいおん!』の映画を見に行ったり、
愛用してた手袋の替えを買いに行ったら、
もうその型を仕入れなくなるかもと言われてちょっとがっかりしたり。

  でもそれよりちょっと高い発熱素材の手袋かったら
  ちょうあったかいんでやんの。

デお写真は、放課後ティータイムの面々に引っ張られて
苺のケーキ。

しかしまあ、アレだね。
映画を見ると、一日が何か短いね。
ちょっと失敗したなあ。
いや、映画は面白かったですけど。


そんな休みでしたとさ。
映画の感想はまた書きます。



 

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2012年1月15日 (日)

■真夜中の無邪気 -更新第749回-

結局一昨晩は、心の凹みに耐え切れず、
ここ一年ばかりは連絡をとっていなかった、大学時代の友人に電話をしてしまった。

  へこむ、というよりも陥没に近かった。

時刻は、日付を跨ぐかという頃合。

その友人も激務系で夜が遅い人だと知っていたし、
勿論イキナリではなくて、
前もってメールであとで電話しても良いか聞いておいたので、
すんなりと繋がることが出来た。

こっちが電話する前に向こうから電話してきてくれて、
これまた気の良い人です。

  そのあたり、オイサンは世間的にはどう見えてるんだろ。
  自覚的には、自分勝手で人付き合いが良くない。
  自分の都合のいいときにしか絡もうとしないし、
  相手が何かをして欲しいときには、多分上手く助けになってあげられていない。
  そんなんなので、「おいしいトコ取りめ」と、
  煙たがられてるんじゃないのかなあといつも不安に思っている。

電話したからといって特段何の話をする気もなく、
弱音を吐いたり、グチをぶつけたりするつもりもなく、
誰かと他愛のない会話をしたかった。
実際、オイサンが話すよりも彼のしゃべりのテンポの方が全然上で、
変わってないなぁ、と思わされた。
オイサンは相槌を打ったり、時々話の流れを変えたりするくらい
(そうしないと彼の話はなんだか分からない方へすごい勢いで流れ続けるので)だったが
心はとても休まった。
ものの30分ほど、互いの近況を交換し合う、それだけの話。

  1、2年ロクに連絡してなかったと思うけど、
  お互いほとんど変化がなかった。
  似たペースで生きてる人とは、それだけで気が合う。
  その分、それがずれた時のショックはでかいけど。

大体そんなペースで、
大学に入学してすぐの頃にほんの偶然出会って以来……
かれこれ、もう15年近いお付き合いになるのだけれども。

  思えば出会い方からして、彼とのその後の付き合いを象徴していると思う。
  大きなつながりや接点があるわけではない、
  けれども、
  良く似たサイクルと流速で生きているからこそそこで出会ったのだし、
  その後も付き合いが続いているような……
  なんというか、お互い、出会ったときから古女房みたいな関係である気がする。
  かゆいところに手が届くわけじゃないけど、
  まあ俺らじゃあしょうがないか、みたいな、
  許し方・諦め方の出来る間柄。

そんな感じなんだけども、
……正直、
オイサンは彼のことをあまり良く知らないというか、
理解できていないのだと思う。
これまた呑気な話だけど。

『ARIA』とか『たまゆら』とか、『いぬかみ』とか、
その辺の癒し萌え系作品が好きで、
いつの間にか一眼レフで写真撮るようになってて、
でも撮った物にはそれほど興味も無いみたいで、
昔はそこそこゲームもしてたけど、近頃はさっぱりみたい。
WebとかPCとかにも、ほぼ関心ない感じ。

  自分のPCのLANが無線か有線か、通信カードを使ってるかいないか、
  同年代でそういう用語が通じ難いという状況はちょっと想像してなかった。
  そのレベルで関心がないみたいです。
  「何かがささってないと、インターネットって使えないの?
   ささってさえすれば、使えるの?」
  と聞かれて、しばし面食らった。なるほど、そうなのか。
  自分が一番うといくらいかと思っていた。

  そういえば、クリスマスにちひろパパさん、JKPさんと話しをしたときも、
  「世間の人間は、自分たちが考える以上にIT的なものについて関心がない」
  と言っていたが、こういうことなんだな。
  うちは母はカラキシだが、親父殿はそこそこではあるがいけるクチなので
  60代であれが標準かと思っていたが、
  あれは相当デキるレベルと思っていいようだ。
  兄は異次元。
  ハニワ氏はゴルベーザ。

  ……まあ、分かる気がするわ。
  関心があるのはIT的なことじゃなく、
  IT的なものがもたらしてくれる情報をこそ、フツーの人は欲しいはずだもんな。
  テレビの仕組みなんか知りたくもないわけだ。オイサンだって、
  知らずに困らずに快適にいられるならそれで十分というクチだもんなー。基本は。
  そこまで知ろうというのは、変わり者であるのかも知れない。
  多分彼も、フツーの人なんだ。
  ついでに言うと彼の場合は、そのIT的なことの向こうにある情報も、
  さして必要としていないみたいで。
  だから尚のこと……なんだろうなあ。

  その昔ファミ通に連載されていたマンガ、『ドラネコシアター』で、
  にゃんこ先生(作者)のおばあちゃんがインターネットのことを聞かされて
  「そいつはすごいねえ。
   で、あんたは世界に用事でもあるのかい?
   あたしゃ世界になんぞ用がない」
  と言ってたっけなあ。
  まオイサンもワリとそうだわ。

  閑話休題。

一時期彼女がいたみたいだけど今はフリーのご様子で
別に彼女欲しい、結婚したい、みたいな、リア充的嗜好もないっぽい。

大学時代、とにかく生真面目で、勉強は良くできたらしい。
あと一歩で卒業式で学部の総代を務めるところだったって聞いた。

でも、何を考え、何を愛し、何になりたくてどんなことをしたくて、
今そこにいるのかってことがよく分からないんだ。
彼は。
色々と話を聞こうとしたこともあった気がするけど、
照れ隠しなのか何なのか、結局
「いやー、別に、何もないなあ」
と、濃いめの関西弁でお答えを戴くのが常だった。

手がかりとしてあるのは、
郷里である奈良や飛鳥の寺社史跡を見て回るのが好きだということや、
今彼の住んでいる四国・中国地方の、わりかしベタな、
けれども風景の美しい観光地を巡ることが好きらしい、
ということくらい。
それも別に、特段「そこが好きで」というわけではなく、
近くだから、という理由のようだ。

  あ、竹原にも行ったみたいです。

ある意味、彼のあれは自然体なのだろうと思うのだけど。

寧ろ、
「こういうものが好きな人」「こういうことが得意な人」という、
分かりやすい記号のようなものを貼り付けないことには
その人の姿を上手く掴めないオイサンが、
どこかゆがんでいるのかも知れないけれど、
そういうペルソナのような物、
心が形をとった物事を、彼からはあまり感じられないのだった。

なんていうのかな。

生きるうえで日々澱り積もっていく疲れや傷を、
美しいものややさしいものに触れて鎮め、
また日々に帰っていくという、
すごく原初的な姿を、時間の流れとともに体現している人のように思う。
彼の歩いた後こそが、彼の心の姿なんだろう。
自然な人だなあ。
隊長にちょっと似てるかも。

  法律用語では意図的であること、何かを知っていることを「悪意」と呼ぶけども
  (厳密な定義は違うと思うけど)、
  凡そそれは、普く正しいことなのかも知れない。
  人の意図は常に、邪気なのかも。

  今現在、たとえ尊大でなくとも確固とした思い
  (フツーに女房子供を食わすため、とかね)を持って
  社会に参加しているわけではなくて、
  自分のへばりついている岩がどんな大きさどんな形、
  どんな性質をしているのかもよく分からないまま、
  とりあえずゆびのかかる場所があるからへばりついてみている蟻のような、
  そんな感じであるように、話している限りでは感じる。

  それが悪いというんじゃない。
  そういう感じだ、というだけ。
  オイサンもそうだ。

だから全然イヤじゃないし、
退屈もしないし、キレイだなあと思う。
無邪気だなあとも思う。
そう見せてるだけなのかもしれないけど。

  呑気もんのオイサンには、そのままに見えるよ。

逆に、そういうスタンスで生きている彼からは、
わりとガチガチに好き嫌い・得意不得意が分かれて見えるに違いないオイサンは、
どんな風に見えていて、理解できてると思ってくれてるのだろうか、
それともよくわかんないなと思っているのだろうか。

女性から見たら、彼はどんな風に見えるんだろう。



などと。


近頃、ひとのことを考え始めるととりとめがないな。
何故だろう。



オイサンでした。

 

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2012年1月13日 (金)

■ちょい日記


短くても、内容が薄くてもいいんで、
ケータイからでも出来る程度に
ちょこっと更新するようにしよう。

あ、皆さんはまあ毎度の如く、気が向いたら読んで下さればいいんで。
愉快なこと内容ばかりにはなりそうもないのでね。
なんというか、
短くでも、何か言わないと、書かないと、気持ちがもたん。

んー。

とはいえ、早速書くことがないなw
(アカンがな)

今日は気分がとことん沈んだ一日。
何が理由ってワケでもないと思うけど……
アタマを巡ることが、ことごとく悪い方へ悪い方へと向かって、
不意に泣きそうになったり、叫び出しそうになったりする。
不安定じゃのう……。

こういう時に感じる不安て、
自分がただ無意味に沈んでいるだけの無根拠な被害妄想なのか、
それとも、
体が勝手に周りの嫌な空気を無意識に感じ取って見せている
根拠ある予感なのだろうか。
ため息の数が増える。

  その昔、「ため息はついてみせるためのもの」なんて言った人がいたが、
  その人はホントのため息をついたことがないんじゃないかしらね。

胃と胸に、もうどうしようもないほとぼりみたいな熱がわだかまって、
はかざるを得ない息って絶対あるよね。
こっちの意思と無関係に。

そんな重圧に押し負けて、
「何でもいいから、誰かと話がしたいなあ」
と思い、ついつい大学時代の友人にメールなど送ってしまった。
ううむ。
自分がこういうコトする日がくるとはなあ。
世間の人は、普通にやってることなのだろうけど。
ようやく、大人らしくなってきたってことなのだろうか。


んー……。


あー、やっぱだめだな。
また、こういう感じで書くかはわからないけど。
とりあえず、今日はこの辺にしておきましょう。
明日に備えて寝ないと。


オイサンでした。


 

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2012年1月12日 (木)

■おバキュラ坊主~年明け早々、三人のフォロワーさんと会ったこと -更新第748回-

日記なので日記っぽく。



■三人のフォロワーさんと会う



年が明けてから三人のフォロワーさんと会った。
ちひろパパさん、うぃぶれサン、てらじサン。
三人とも、もう何度目にもなる。

うぃぶれサンとてらじサンのお二人は、オイサンが初めて参加したオフ会、
2010年の『アマガミカミングスウィート』の第一回公開録音後の会で
会って以来の付き合いになる。もうじき丸二年だ。
どちらとも、一番最近では昨年の9月か10月頃にお会いしているので
3、4ヶ月ぶりということになる。

  そのときのことは記録しそびれているけど、
  昨年の夏、東北在住のボブササさんがお仕事の都合で数ヶ月関東にいらしてて、
  その時に一度集まったのだった。

その前となると、
てらじサンとは3月の震災直前に銚子を訪れた旅行で一緒で、
うぃぶれサンとは5月に鎌倉で、
これまた書きそびれてるが、クリッパーさんがこられた時に会っているので
いずれも半年以下の周期ではお会いしてることになる。


 ▼嘆きの銚子~アニメ『アマガミSS』舞台探訪
  第一回 http://ikas2nd.cocolog-nifty.com/blog/2011/03/ss-653--4b67.html
  第二回 http://ikas2nd.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/ss-654--7bbb.html
  第三回 http://ikas2nd.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/ss-662--2f05.html
  第四回 http://ikas2nd.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/ss-663--4288.html
  第五回 http://ikas2nd.cocolog-nifty.com/blog/2011/05/ss-665--a35c.html



今となっては昔なじみの友人とも盆か正月にしか会えず、
地元にいたときでもさほど頻繁に交流していなかった自分には結構な頻度だ。

  ちひろパパさんと一緒に行動する頻度といったら、もう異例中の異例だ。
  これだけ特定の人と頻繁に会うのは小学校以来ではなかろうか。
  本当にいいのかな? と戸惑いさえ覚える。
  ありがたくて、嬉しいことだ。

そう、随分と人付き合いのスタイルが変わった。
『アマガミ』とTwitterの影響で。
オンラインで出来た知り合いとはいえ、
この辺の方々とはすっかり普通にお付き合いをさせてもらってる。
リアルの付き合いの境目がないくらい。
そもそもそんな境目があるのかどうかってのもあるけども。
入り口がどこで、生身で会って話したことがあるかどうか、
という違いくらいだ。



   ●   ●   ●



しかし改めて思うのが
Twitter関連、『アマガミ』関連でお付き合いするようになった方々って
本当に気の良い方、人間の出来た方揃いで、正直驚く。
すごく恵まれ、救われていると思う。
これはもう、掛け値なしに。
皆さんありがとうございます。

逆に、自分が一番その和を乱してんじゃないかなあと
心配になるというかへこむことが多く、
その辺は心臓に悪かったりもするけども。
もっと、何か心地の良い物をお返しの出来る人間になりたいと
精進する心も芽生えてくる次第。
感謝の気持ち大事。
人はこうやって成長するんだろうな。
誰かのために、何か出来るようになりたい。
いや、決して自分がそのように成長しているわけじゃないけど。
結局、言いたいことは言うんで不愉快な思いもさせてるかもしれないし。

マ中にはそういう出会いでありながらも、
どういうわけか「主人公を裏切って大魔王になってしまった主人公の親友」
みたいな役どころもいたりするんだけども、
なんかね、
それはそれで愛おしいというか、
世の中の縮図のようで事実はラノベよりも奇なりだな、と思ったりもする。
そういう人にもまた会いたいと思う。



   ●   ●   ●



  ▼1月3日

うぃぶれさんとは、松も明けない1月の3日に
奈良への帰省からこちら(関東)に戻ってきたその足で会った。
新幹線降りてすぐやることがオフ会。
本当に変わったなあ自分。
そんなことを、車中でTLを眺めつつ実感する。

うぃぶれさんはうぃぶれさんで、
お正月を京都で過ごされていたご様子。
オイサンよりも一足早く着くように列車を取ってくれたみたいで、
アタマが下がる思いだ。

新横浜で、ちひろパパさん・うぃぶれさんに合流。
何かイベントもあったみたいで人が多い。
場所を町田へ移したものの、どこもかしこも席を確保するのが大変。
まあしゃあねえな。逃げても町田だもんな。
もっと隠れ家っぽい隠れ家を用意しておこう。

  新横浜~横浜・大船あたりで、
  人が少なくて落ち着けて、そこそこアシの便利も良いところ。

町田では、オイサンのいつも行ってる宮越屋珈琲と、
以前よつさん・しらすくんと行った喫茶店をハシゴ。
ボブササさんと行った喫茶・ロッセは一杯だった。
パパさんは馬肉屋に行きたかったみたいだけど、残念、やってなかった。
まだ3日だししかたない。

しかし、フォロワーさんの名前の出ない店がないな。
いかに店を使い回してるかってことだ。

そうそう、うぃぶれさんからはお土産に笹餅? を戴きました。
おいしかったですmogmog。

  オイサンも暇になったら京都に行きたい。
  地元の近くだけに、奈良とか京都とか、
  あまりキチンと自分の意志で回ったことがない。
  なので一度、下調べをしっかりして、プランをたてて、
  自分の気持ちで見て回りたいとかねがね思っている。
  奈良の南の方も手付かずだし。
  熊野とかね。

話の内容は新春雑談会議でしたので、特にコレ、というのはなかったと思う。
さすがに、これだけ会って話してるとね。
書き物の話と箱根駅伝の話、
あとはオシゴト関係の話がメインだったような気がする。

  今追いかけてるマンガとかアニメの話とかあったけど、
  みんなそんなにアニメは見てないんですよね。
  ていうかオイサンがアニメ見すぎだ。
  10本とか無理だろ。今期は減らそうと思う。
  その分、マンガとかゲームをしたい。
  うぃぶれさんは結構マンガ中心なのだということが分かった。  

うぃぶれサンは『アマガミ』だけじゃなく、
『ベイビープリンセス』とか『ポケモン』とか、
あとはプロ野球のトレカとか、色々手広い。
オイサンにも『ひだまり』とか『ドリクラ』とかはあるけど、
あそこまで深くないなあ。
色々は出来ない。

パパさんにせよ、うぃぶれサンにせよ、
チラホラと職場の異動が、というお話が挙がる。
オイサンにだって無縁の話じゃない。
そうして距離が開いてしまったときにでも、何か再び繋がりあえるようなものがあるといい。
三人で共通テーマでSSの競作とかもしたけど、
もういっちょ何か、深いところで繋がれるようなことがあると嬉しいと思う。

オイサンはね、ウェットなんですよ。
そういうところで。
一度、自分で「繋がった」と手応えを感じたものは基本的に外れないものだと
勝手に思っているし、外したくないと思っている。
どんなに時間をおいても。

けども世間的にはその辺、距離はともかく、
不通の時間が続くと案外しれっとなくなってしまうようで、
まだまだいけると思っていた糸をたぐってみたら
その先には何もなくなっていたりして、それはそれで哀しかったりする。
長い時間、平気で放置するくせにね。
勝手なもんだけどさ。

本当はもう少し長くご一緒出来れば良かったんだけども、
オイサンが家のことをしなければならなかったり、
ちょっとへばり気味だったりというのがあって夕方頃には解散になった。
貴重な休みを割いてもらったのに申し訳なかった。
反省。
これに懲りず、またお付き合い下さい。
お付き合いも3年目に入ろうということですので、
今年もひとつ、よろしくお願いします、ということで。
なんだかこういうのも良いですね。

▼三年目の浮気

パヤッパパヤッパヤッパー


あと全然どうでもいいけど、うぃぶれサンは『孤独のグルメ』の原作者の
久住さんに似ていると思う。
美味しいもの食べて笑ってるときとか。ちょっと年齢差あり過ぎるけど。



   ●   ●   ●



 ▼1月8日

てらじサンとはこの週末に。
週末前に呟いた
「日曜日はお休みがもらえそう」
という何気ない一言を拾って声をかけてくれた。嬉しい。

  このところ、休みも一人でいると気が滅入りがちで……
  話し相手がいないものかと考えていたところだったので
  非常にありがたかった。
  て言うか、こっちから声をかけてみようかとも企みかけていたところだったので、
  ちょっとびっくり。

『アイマス』のアニメが始まってほどない頃、
「ミキミキ可愛いよミキミキ」みたいなオイサンの呟きに
(その時はまだ貴音さんシンパではなかった)、

「だったらミキミキの同人誌を差し上げまおー」

みたいなことを言ってもらっておったのが都合がつかず、
それがようやく実現する運び。

うぃぶれサンとは生活圏的にもちょっと遠いので会うのが大変だけど、
てらじサンとはワリカシのご近所さんなので、
日取りさえあってしまえば会うのはスグだ。
でも会ってる回数はうぃぶれサンのが多いんだけどね。

この日もちひろパパさんと一緒。
これには一応事情があって(別になくてもいいけど)、
パパさんは、物に色を塗ることにかけてはTLで右に出る者のない、
生粋の色事師でいらっしゃる(人聞きが悪い)。

かたやてらじサンは、
まおまお言ってるかウォーキングしてるかメシ食ってるか、
寝てるか買い物してるかしなければ、
あとは大抵ガンプラ、しかもジムばっかり作ってるようなジム員さんで(失礼)、
以前二人がTLで
「プラモの塗装談義をしたいねえ」
みたいな話をされていたのを思い出し、
「じゃあパパさんも呼んでみます?」
と、てらじサンに持ちかけてみた。

あと、なんだかパパさん・てらじサンのお二人は
箱根そばを食べる会を企ててもおられたようなのだけど、
如何せんこの日は
オイサンが空気を読まずにフツーに昼ゴハンを食べてきてしまっていたので
それはまた別の機会に、ということになってしまった。
ぐぬぬ、面目ない。

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後ろに見えますのが、アラフォーのランチ交換会でございます。


お話のナカミは、まあ毎度のごと四方山だけども、
オシゴトや日々の話から始まって、
同人誌作りの話、
『アイマス』との出会いの話、
『キミキス』『アマガミ』まわりの話、
フォロワーさんの話、銚子にいったときの話。
そして、てらじサン主宰の劇団「ガンプラ愛の劇場」のお話など。

  実はこの前日も劇団の公演があり、大入り札止めだったご様子。
  オイサンのTLの、押しも押されぬ人気劇団です。
  運営には色々とご苦労もおありのようです。
  どーん!
  撃弾!

いつも思うのだけど、てらじさんの話はアツイ。
筋があって、芯がある。
話が上手くて、人をひきつけるものがある。

Twitter上でそんなに色々語る方ではないけども、
実際に会って話をすると
物腰柔らかな印象はそのままに深みと熱がどーんと増す、という
稀有なキャラクターだと思う。

  ……とか言いだすと、自分がどうなのか気になるな。
  多分、TLの方が饒舌というか、
  色々言うし、言ってるコトも分かりやすいと思う。
  言ってること自体はあまり変わらないと思うのだけども。
  いっぺん、全員アイコンが実写のTLで話をしてみたい。
  そういう問題でもないんだけど、それだけでも随分変わる気がする。

自分だけしゃべってばかりというのでも決してなく、
周りが上手く乗れて、自分も話せる話題を投げるのが上手。

自分を出して周りを盛り上げるのが上手というのかな。
オイサンはなかなか、そうやって自分から何かを差し出して、
かつ周りに火をつけるということがうまくない。
変に一人で暴走してしまうか、聞いてばっかりいるか、どっちかの気がする。
基本的には人にしゃべらせて上げたいスタンスなので、
聞きたい、という人は困るみたい。
別にしゃべってもいいんだけど、面白いこと、相手の聞きたいことがしゃべれているか
すごく不安。
なので、ああして場を作れる方、ニーズを察して切り替えて、
どっちも出来る人というのは尊敬する。

自分独自のセンスと、
世間一般のセンスを程よいバランスでもってるんだろう。
考えてああしているのか、クセなのか分からないけど。
でも多分考えてるんだろうなあ。

また、包み隠したりってのがないみたいで、
オイサンだったらちょっとコレ言ったら笑われそうでこわいな、
というようなことも、衒いなくお話になる。
考えや行いに、それなりの自負があるから出来るんだろう。
オイサンが薄っぺらいってことだ。
反省しないと。


 ▼「嘆きの銚子」strikes back

ここで少し、銚子での話。

銚子で一緒だった三人は本当に良い人揃いで、本当に楽しかった。
てらじサンも言っていたけれど、
「隊長とよつさんは本当にすごい。批判がましいことを一切言わない」
という、その言葉にはオイサンも全面賛成だ。
あの姿勢は、心がけなのか、もっと違う何かなのか分からないけれど、
人として本当にすごいと思う。

てらじサンも同じくらいそういうところあるよなーと
個人的には思っていたのだけれども、
隊長とよつさんの二人に感じる悟空のような邪気の無さとはまた異質な感があったので、
一つお尋ねしてみたいことがあった。



  『アマガミ(SS)』の聖地として、銚子は本当に聖地だと感じているか?



これは、『アマガミSS』の放映時から思っていたことだし、
銚子に行く前からずーっと疑問に思っていたことでもあったのは、
過去の日記やらを読んでもらえたら分かると思う。

オイサンが銚子行きで一番懸念していたのは実はそこで、
恐らくは何の疑念も衒いもなく、
「アニメに出てきたあの場所へ行くんだ !」
と盛り上がっているであろう三人に、
そんな要らぬ理屈を捏ね回すのが大好きなオイサンが同道して
果たして雰囲気を悪くしてしまわないかなあ、
ということを、実はすごく気にしていた。

だから道中ではそういうことは言わないようにしたし、
そもそも言いたくなったり意識したり、
つまり「そういう空気を醸してしまわないように」、
まずは「アニメっぽい銚子旅行」という気持ちだけで臨むことにしようと
うすぼんやりと思っていた。

  そういう気持ちはレポート記事の中でも続いていて、
  自分の「『アマガミ』 ⇔ 『アマガミSS』 ⇔ 銚子」の関係についての自分の気持ちも、
  必要最低限にしか書いていない(つもり)。
  恐らくは三人とも、レポートをいくらかは読んでくれてしまうだろうから。
  その分、
  「アニメの聖地巡礼だぜヒャッハー!!」
  というテンションの高さもさほど無いので、
  あの記事はワリとただの旅行記になってしまってると思う。

……そんな銚子という場所やあの旅行について、
てらじサンは実際どう感じていたんだろうなあ、ということを
改めて聞いてみたかったのだけど、しれっと普通に、自分から話してくれた。

 「そんな、あんまり『ここが聖地だーっ』っていうよりも、
  やっぱりどちらかというと『楽しい銚子の旅』でしたよ。
  銚子という場所が良かったし、メンバーも良かったし、旅行が楽しかった」

ああ、なんだ。似たような感じだ、とすごくホッとした。
その先の細かい話は本当に細かいというか文字化しにくいのでカンタンに言うと
「あの町に、あのヒロインたちのはっきりとした息吹は感じがたい」
ということだと思う。

その辺は色々な思い入れや解釈によってくるので
人によって息吹の感じ方が違うと思うけど、
恐らくは多分に原作ゲームのイメージに食われながらアニメを見たに違いない
オイサンやてらじサンには、
あの中途半端に鄙び、中途半端に観光地化された海風の漁師町に
ヒロインたちの息遣いは見つけにくかったということだ。

もっとアニメに特化して、はなからそのつもりで見ていれば、
あの町のイメージに彼女らのシルエットを投影して馴染ませることも
出来たかも知れないけど。

  恐らくは同じようにゲームのイメージを持っていたはずの
  おみかん隊長やよつさんが、その辺の情感をどう受け止めたのかは、
  ちょっとわからない。
  ほとぼりがさめたころに、無粋を承知でお尋ねしてみたくはある。

そしてやっぱり改めて面白かったのは
「四人が四人とも、
 ビックリするくらい七咲でテンションが上がらない」
ということの再確認w なんでなんだろうw
それでも盛り上がれるのが、隊長とよつさんのすごいとこなんだけどね。

まあこんな風に言ってるけど、掛け値ナシで誤解されたくないのは、
「アニメ『アマガミSS』で出てきた風景を見つけながら四人で巡る銚子の旅」は、
本当に楽しく、面白く、心地よいもので、
オイサンの人生の中でも五本の指に入ろうかというくらいありがたい時間だった。
誰かが何かガマンしたり、過剰に気を使ったりってことは、
多分ほとんど無かったと思う。

だからまた機会があれば、あの三人とも、もっと他の誰かとも、
もっと違う場所へも、行ければいいなあと思う。


 ▼800点満点

てらじサンという方は、おしゃれに言えばすごくショーマンで、
丁寧に言えばおもてなしの人だなあ、と思う。
とても見習いたいところをたくさん持った、しっかりした大人の人。
銚子の旅のときの、計画の立て方や人への提案の仕方、
配信のときの話の仕方なんかから、その辺はずっと感じていたことだけど。

あと今回、同人誌を何誌か出されたときの話を聞いていて、
人と人の間を取り持つだけじゃなく、
自分ならではの創造性も一緒に持ってるひとだったんだなあということを新たに知った。
作っているというのは聞いていたんだけども、
その作り方を細かく聞いていると、やはりその、
自分ならではのものへの「欲」みたいな部分も、譲らずに持っているんだ、
ということに感心した。

その作り方も、
主たる部分は他者と他者への配慮が中心にあって
なおかつ自分の欲の部分も満たしているのだから恐れ入る。
人への配慮と自分の欲って、そこまで鮮やかに折り合いがつくもんなんだろうか。
そこには一体どのくらいの、マチというかノリシロというか、
自分と他人が衝突するまでの緩衝帯が存在するんだろう。

そんなことが、エゴエゴなオイサンにはとても不思議に思えるのでした。

オイサンなんかは
「自分で読みたい類の物がないから自分で書いちまえ」
とブッこんで行って全然自分の欲しいクオリティに手が届かなくて自滅するタイプですけど。
↑ギドスパリオ10点

あと個人的には、ちょっとスタパ斎藤さんぽいなと思ったり(失礼?)。

他にもてらじさん周りでは、
「北関東でソバ食って一泊するオフ」(色々漠然)とか、
「『花咲くいろは』の舞台を見に行きたいねオフ」(希望)とか、
「銚子のメンバーで飯田橋のうまい回鍋肉を食べにいこうじゃないかオフ」とか、
色々話が持ち上がってはいるのですが
如何せん皆良いオトナなのでなかなか都合もつかず。

  実はこの日も
  「『アマガミSSplus』にかこつけて
   20人くらいでツアーバスをチャーターしてもっかい銚子に行こうぜオフ」
  みたいなバカ企画もぶち上げてはみたものの……
  参加希望者いるー?
  イヤやんないと思うけど(アカンがな)。

  オイサンが片足つっこんでる『ひだまりスケッチ』クラスタでは、
  「『ひだまりスケッチ×SP』公開 & 四期制作決定記念・
   小田急ロマンスカーの先頭車両を借り切って
   新宿から箱根彫刻の森美術館まで行って一泊するぜ大規模オフ」
  みたいなのを決行したみたいだし。
  オイサンも行きたかった。残念。
  オトナなんでやりゃあ出来ないことはないんだろうけど。
  人数増えると大変だろうな。


マそんなことで、お昼過ぎにお会いしてから四時間ばかり。

摩央ねーちゃんへの愛を伺い、
こちらからは絢辻さんへの愛をお話しし、
『SS』の梨穂子編は、あれはどーだったのよ? というお互いの解釈を披露し。
なかなか、久しぶりに『アマガミ』周りについて
しっかりお話をした感じでした。
うーん。
それを思うと、やっぱりこのところプレイしなおしてないせいか、
ちょっと新鮮な気持ちで話が出来なかったな。
新しい発見とか、いまやったらまたあるのかもしれない。
ちょっと時間を見つけて、またやってみるか。



   ●   ●   ●



そんな感じで、こちら様も。
改めて今年もよろしくお願いします、と、
そんなご挨拶でした。

ほんとに、今年といわず来年といわず、
こんなオイサンですが、末永くお付き合い戴けると嬉しく思います。
社交辞令とかではなく。



オイサンでした。



あと全然関係ないけど、
待ち合わせ場所まで一駅前から歩いてみたら、
新しく、たこ焼き屋とそば屋が出来ているのを見つけました。

ムウ。

ちょっと目をはなした隙に、油断もスキもねえな。
気になる。
そのうち立ち入り検査に来るからな。
そばとタコを洗って待ってろ!

「満席です!」



 

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2012年1月 8日 (日)

■盆地の年明け -更新第747回-

実家に帰ってたとき、親父殿が
「お前たちはもう、
 まあ結婚はするにしても、子供を作ったりはせずに
 自分の人生を楽しんだ方がいいんじゃないかなあ」
って言ってたんですよ。


  2012年元旦の、夕方に二人でふらりと出かけた散歩の帰り道のことで、
  よく晴れていて、
  東の坂の上から西へ向けて、家へと下っていくところ。
  西の空の崖の上の雲の色が、薄いオレンジに染まってとても綺麗でした。


別に、オイサンら兄弟の親としての資質とか、
結婚できるかどうかとか、
男としての能力(生殖能力に限らずね)みたいなものに疑いを持ってるわけでは多分なくて、
多分、
今のこの世の中の状況がいかにおかしくて難しいかを……
身に沁みて、なのか、単純に自分の頃と比較してなのかはわかりませんが……
よく理解して、そんな風に思ったのだと思います。

うん。

うちの親父殿はもうちょっと頭が古くて固いものだとオイサンも以前は思っていて、
それでもここ十年くらいは、
ああ、結構砕けた考えも持ってるんだなあ、
そんな風でも笑えるんだなあ、
と思えるようになっていたのですけど、
そういうことまで言うとは思っていなかったので軽く驚きました。
軽くですけどね。
へーえ、みたいな感じで。



そして同時に、胸が少し痛みました。
さみしかった。



そのときオイサンは、家に向かって親父殿と並んで歩きながら、
「お母さんはどう思ってんの?
 結婚してって言うけど、孫抱きたいんじゃないのか」
と訊いてみましたが、その辺のコンセンサスまではとれていないようで、
「お母さんがそう言うのはなあ……
 一人やったら、体壊したときとかに大変だからとちゃうか」
という推測にとどまりました。
まあそれも分かる感覚ではあるけど、実際のところはどーだか分かりません。
父と母は、感覚的にはあんまり通じ合えていないから。

親父殿のその言葉、
「自分たちのことを先ず考えて生きた方が、
 これから先は良いのかもしれない」
には、単純な内容としてはオイサンも賛成ではあります。

けれども。

その言葉は単純に、
アドバイスとして受け止めて、迷ったときに素直に従って良い類のものなのか、
それとも、
オイサンたちのために自分の何かを諦め、妥協して漏れた言葉であって、
オイサンたちはその言葉に、甘えてはいけないものなのか……
その辺が、もう一つ分からなかった。



どっちのやさしさから出た言葉だったんだろう。



そんなことが感じ取れない、
オイサンのセンサーはやっぱり欠陥品だとつくづく思う。
センサーじゃなくて、そのあとの解析処理機能の問題かも知れませんけどね。

もしかしたら、
カチンときて奮起すべきものだったのかも知れないなあ、
と思ったりもする。
「ふざくんな!」
と。
「嫁と子供くらい食わせてやれるよ、見てやがれ!」
と。

  ……まあ、オイサンがそんな気骨溢れる益荒男でないことは
  多分さすがに理解していると思うので
  そういう賭けには出ないと思うんだけども。

いやー……うん。
本音は、多分、きっとねえ。

もっと、親父殿自身の見てきたように、
親父殿のお父さんやお母さん、先立たれていった親族や周りの人たちのように、
「普通に」年老い、
「普通に」看取られていくのだと、
どこかのタイミングまではきっと思い、望んでいたのに違いなくて、
それが幸せなんだと信じて生きて来たに違いなくてですね、
でも、
自分の子供たちの様子が自分たちの思っていた姿と違うこともさながら、
その「普通」の難易度が、いつの間にか世の中的に、
恐ろしく上がっていることにも気付いていたんだと思います。
この五十年の、日本の国の普通。

  もっとも、歴史をきちんと振り返れば、
  オイサンや親父殿の思い描く「幸せ」、家族とか結婚とか継承の像は、
  本当に戦後のここ数十年のうちに出来上がり刷り込まれたものでしかないのですけど、
  その幸せ像の幸せさはあまりにインパクトがあり過ぎ、絶対的過ぎました。
  疑いようのない、最高の幸せであり過ぎる。
  豊かに贅沢になり過ぎたのかもしれない。

だから、
「裏切られた」って気持ちも、あるんじゃないかなあ。
色んなものに……対して。



……。



ウン。

  もしかしたら、そうやって「うまくやっていった」両親兄弟と自分を比較して、
  「自分は、なんだかうまくやれなかったな」
  とか思っているのかもしれない。
  だとすると……それは、申し訳ない。
  胸に詰まるものがありますね。
  うーん……。
  ……。

  ……。

ウチの親父殿は、
決して論理性やクレバーさに富んだ頭の良さをもっているわけではないんですけど
(あるのかも知れないけどそれを上手に人に説明できるタイプではないので)、
そういう「(幸せとかの)正しさ」とかを直感的に嗅ぎ取る聡さのようなものは
きちんと持っている人で、オイサンはそこはすごく信じてます。
兄とお母んは、そこんとこよくわかんないみたいだけど。
人の間で、人と身を寄せ合って生きてる人だからね。
オイサンと違って。

オイサンにもね、直感としてはあるんですよ。
なけなしのアレですけど。
どんなに辛かろうが、貧しかろうが、
子をもうけない、個体の幸せを優先する幸せが生き物にあろうかという、疑念が。

それはやはりどこかが間違っているんだと思う。
「国が!」とか、
「社会が!」とか、
あるんだけど、
結局根本的にはそれらを築いてきてそういう結論を口にしてしまった
「人間というイキモノが!」
というところに行き着いて、
「国とか社会じゃねえ、それ以前に人間だろ、健やかさだろ!?」
って言わないといけないんだけど、それを踏みつけにして、
いよいよそれを自分が親に言わせてしまったことに、
うーん……
なんかその、なんて言うんだろうなあ、
それは幸せではなくてかなしみであって、
現代の人間は、ちょっと「現実を見つめ過ぎ」なんじゃないか?

自分の外側にあるゲンジツさんを、
あまりにも強大なものとして捉え過ぎているんじゃないか……
そんな気さえしてきます。
空気読み過ぎっつうかさ。


  「生まれてこない方が幸せだ」
  と言っているに等しいんじゃないか。それは。


なんだろう。
なんかおかしい。
なんかおかしい気がするぞ、親父殿よ。

親父殿にそれを言われたとき、
何がそんなにさみしかったんだろう? と不思議だったんですが、
親にそういう風に言わせてしまった自分の不甲斐なさ、能天気さも一つだし、
生き物として、子を残すことが能力的に断たれてしまったわけでもないのに
それを放棄して個体の、
未来に繋がらない幸せを……未来を断つ幸せを幸せだと思ってしまったことも一つだし、
そういう時代を築いてしまった人間ってのも、一つだと思います。

ただ、逆にその、オイサンの胸にさくりと巣食った小さな痛みこそが多分、
オイサンの大好きな、かなしみというエンジンスターターであって。
もしもそんなことを狙い済まして放たれた矢なのであったとしたら、
オイサンの親父殿は……
存外、出来る男であることですよ。
思う壺。

  念のためにお断りしておくと、
  オイサンは別に生命礼賛の人じゃないですし
  (寧ろ「人生設計」という言葉の最後に
  「遅くともここまでには終わらせる」という仕様があっても良いと思ってるクチ)、
  別に、生き物だから絶対こうだとか、
  子供を作らない人、作れない人を批判する気はないですけど、
  ホントごめんなさいね、
  でもその瞬間に、ふっと胸のすき間の簾を差した諦め気味の光が、
  すごく寂しかったんですよ。
  しまったなあ、と思った。
  そのことを書き残したかったんです。

  気分を害された方ごめんなさい。

  自分の人生は自分の人生、と思っていた時期がオイサンにもあって、
  それはそれで間違っていませんし、
  結婚や子供に限らずとも、人間というやつは素晴らしいもんで、
  後の世になにごとかを継承することはできます。

  血肉は繋がっていなくても、共感し、教えあうことで、
  途切れず、つながり、残すことが出来る。
  それは人間の知性の成せる業で、素晴らしいことだと思います。
  なんかしら残すことが出来ればホッとできるのでしょう。
  それがどこから受け継がれてきたもので
  誰に喜ばれるものなのか、誰を喜ばせ、安心してもらいたいのか、
  ということが大切なのだと思うのです。

  ……まあ、その「何かを残す」ということも、
  エゴでしかないとは思いますけどね。
  何も残らなくてもいいのかもしれません。

  でもオイサンは、それが多分ちょっとさみしかった。
  そして多分、
  それを知性ではなく血肉のぬくもりでやりたかったに違いない親父殿に対して、
  申し訳ないと思った。
  そんな話なのです。

  あとついでにですけど、
  オイサンはあまり、「人生」っていう言葉を使うのが好きではないです。
  話がオオゲサになる気がして。
  だから自分で使ってしまいそうになったときには、
  生活とか、暮らしとか、営みとか、一生とか、
  もう少し砕いた言葉に置き換えるようにしています。

  けど、その言葉自体はとても好きです。
  使うべき人が然るべきタイミングで使えば、
  その言葉の背景に広がる様々のことが、
  適切な形とサイズと温度で、渾然一体となって伝わる気がします。
  意味をあまり深く考えず、ぽろっと使われる時ほど、使い方が上手な気がします。
  あまり関係のない話でしたね。

これも、やろうと思えばノベル風に出来たかな。
まあそれは改めてですね。

家にメールでもおくっとこ。





さて……。





どうしましょうかね。




オイサンでした。




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2012年1月 7日 (土)

■a white day~ミューズの座布団・その六 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 -更新第746回-

◆a white day~ミューズの座布団 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』
  その一 / その二 / その三 / その四 / その五 / その六 / あとがき
 





       ×     × 




「なずな氏は失礼だなー。そんなことを考えていたのですかい?」
「ごめんなさい、だけど、おかしかったんです」
 なずなの漏らした本音話に宮子がぼやき、聞いていた沙英はもう話の
出来る状態ではなかった。電柱に手をつき、おかしい、おかしい、おか
しい、おなか痛い、おなか痛いと、せっかく持ち直した腹筋をまたひど
くけいれんさせている。その声は夜の暗がりに腰まで浸った町には大き
過ぎ、ひたりとガラスのような空気にびりびりと振動を残した。どこか
の家で犬の鳴く声、遠く、急行電車の過ぎる音。その波の形を少しずつ
いびつに乱していく。自分の声が起こすさざ波に沙英も気がついて、徐
々に息を深くしていった。
「あーおかしかった……なるほど、それでたこ焼きね。じゃあ帰ったら、
それ持ってゆののところに陣中見舞いだ」
「ですなあ」
 ぽろりと小さな先輩の名前が挙がったのは、唐突な様でいて、ずっと
周到に用意されていた様でもあった。海の水がお日様に照らされて雲に
なり、山に雨と注いで染み入って、やがてとろとろと冷たく人の喉を潤
すような、気の長くて遠回りな循環がそこには感じられる。
「けど、だったら甘い物の方が良かったんじゃない?」
「たい焼きと、迷ったんだけどねー」
 淀みなく、二人がゆののことを話すのを、なずなは口をはさむことも
出来ずに聞いていた。山小屋の管理人が山に語りかけるのを聞く、登山
客の心持ちがした。その循環の中には多分ヒロもいて、大きな渦、巨大
な歯車、そのどちらも持ち合わせていなくても、どこか遠く離れたせせ
らぎに、ゴトゴト静かに回る水車くらいのありようで繋がっているに違
いないと想像がついた。
 そんな風に、二人を行き交う言葉を交互に目で追って歩いているうち
にあらぬ景色が眦の端から広がり、また浅い夢を見ている様な錯覚に陥
る。昔話に出てきそうな山が瞼の裏側にシンプルな稜線を描いて、さら
にその上には、不器用なおむすびに似た月が浮かぶ。見上げた本物の空
は、二人が公園を出た頃にはまだたなびく程度だった薄い雲に覆われて
しまっていた。今日の月は大きかった。そこだけ雲が透けるくらいに煌
々と明く、古い街灯などよりも、よほど白くて強い。その雲にも、月の
明るさにも阻まれて、星は見えそうになかった。
 なずながふっと我に返ると、宮子たちはもう随分先にいた。立ち止ま
り、肩半分に振り返った二人の視線に追いつこうとなずなが小走りにな
りかけたそのとき、さっきまでなずなの見ていた月の先を見上げた宮子
が、あっと嬉しそうな顔をしたのに気を取られ、なずなは足をもつれさ
せた。
「わ」
「おおお、あぶない」
 爪先の尖った感触とともに勢いよく数歩余分にまろび出し、前を行く
二人を追い抜いてしまいはしたものの、転ぶほどには至らなかった。な
ずなは、驚いた二人の空気を背中に感じて慌てて振り返ると手提げに引
っ張られるようにして頭を下げた。その勢いの良さに二人がまた驚く。
「いや、謝んなくても。でも、大丈夫? それと、それ何、ボンゴ? 
さっきから不思議に思ってたんだけど、どうしたのさ、そんなもん。な
ずなが叩くの?」
 画材はともかく、さすがにそこまでは想像が及ばなかったのだろう、
沙英のもっともな問いになずなが説明に窮したところへ、
「くたびれた? 持とうか?」
と、宮子がするりと割り込んだ。それ、案外重いでしょー、とこともな
げに差し伸べられた手は、長くて大きい。そうでなくても宮子はそれと
同じ重さのトートを肩に、背中には倍の重さのザックとイーゼルを負っ
ている。
 なずなはえっと目を瞠ると、今一度、自分のゆび先にかかった手提げ
から、白い革の張られた上面だけを覗かせているぼんごに視線を落とし
た。
 宮子の言うように、肉厚の白樫で出来たぼんごはほどよく重い。両手
で体の前に提げるとその重さが肩を回って背中をぐいと引っ張るから、
少し、胸と背筋を強く張る力が必要だった。自分の健や肌がこの楽器と
同じだけのしなやかな張りを求めている気がする。溜め息の聞こえてき
そうだった午後。ゆび先に感じる重さも、朝から変わっていない。ただ
それでも、こうして一日をともにしていると、それを提げていてもバラ
ンスを乱してしまうことはなくなっていた。手提げの揺れた拍子に脛を
ぶつけることももうない。なずなは小さく息を吐いた。アパートはもう、
目と鼻の先だった。
「いえ、せっかく、ですから。最後まで、持ちます」
「そう? じゃあお願いねー」
 二人の間で話が終わってしまい置き去りを食った沙英は目を泳がせた
が、「お客を呼ぶための最終兵器だったんだけどね」と宮子の付け加え
た一言で、いくらか納得がいったようだった。
「結局、出番はなかったんですよ……」
と、さらになずなが付け加え、ね? と手提げの中のボンゴにほほえみ
かける、その横顔には、朝会ったときよりも何かが足されているように
沙英には思えた。
「そうなんだ? だったら、ゆのがまだへこんでるようだったら、それ
でも叩いて、励まして上げたら?」
 沙英は冗談めかして笑い、なずなの小さななで肩を、インクの濃い香
りのする掌でぽんと押した。


       ×     × 


 会話が途切れ、宮子は今し方自分でおルスにした粒を平らげて残るは
二つ、なずなはようやく折り返しの四粒目に取りかかった。湯気の白い
帯は次第に薄くなり、今は熱ではなく、時折辺りを静かに凪いでいく風
にカツオ節が揺れている。そのわずかな湯気が空に吸い込まれてたなび
き、青く晴れていた空を、雲が薄く覆い始めていた。
 すこし急いだ方が良い気がして、なずなは楊枝をたこ焼きに向けるが
つるんと逃げられてうまくいかない。楊枝は二度目でうまく刺さったが、
なんだろう? その先から伝わる感触のおかしさに、なずなは首を傾げ
た。
 その粒は、おルスだった。
 ぱくりと口に入れ、さっきと同じ要領でどれだけ口の中を探し回って
みても、こりこりと柔らかな小部屋の主の姿がない。小麦ダネの温かな
感触、ソースの甘辛さに、青海苔とカツオ節と不思議な香味。宮子の言
った通り、あるじ不在でも顔の内側に広がる美味しさはもうすっかり形
になってしまっている、そのそこはかとないさみしさの影は伸び続け、
広がり続け、その色が黒からグレーへ、そして白にまで届いて光と境目
を失っても、まだ止まらない。
 さみしい、さみしい、さみしい。
 その場の代名詞で、そこにいないと寂しくて、ついでにちょっとユー
モラスで。いつでも独り立ち出来てしまう。それは、その姿は、佇まい
は、そうまるで。そう考えると、さっきまで宮子がたこに向けていた言
葉が重たく思え、自分が寝起きするあの温かな中間色のアパートが、朝
な夕なに落とす影がたこ焼きと重なった。そこでは、タネになっている
小麦粉、ソース、カツオ節に青ノリ、そしてたこ。どれをとっても、自
分に担えそうな役割なんてどこにも見当たらなかった。
 ああ、私はひだまり荘のおルスなのかも知れない。
 理屈には、合わないかも知れない。けれど今口の中に広がる、確かだ
けれどもそこはかとなく、物足りないけれども取るに足らない、何より
も、もっと些末なたくさんのことにかまけて素通りされてしまいかねな
いやるせなさには共感できたし、ともに哀しみ合える気がした。残った
四つの粒を乗せた舟の重みが、スカートから覗く、あの頃と何も変わら
ない小さなひざ小僧にのしかかってくる。
 なずなは、たこのいないたこ焼きをもぐもぐごくんとおなかに飲み込
んでしまうと、膝の上の舟をそっと両手ですくい上げて宮子を見た。宮
子は残りわずかとなったたこ焼きに別れを惜しむように、食べてしまお
うか、もう少し眺めていようか、難しい顔で思案に暮れているようだっ
た。
「あの……宮子先輩。残り、お手伝いを……」
「なずなどの」
 二人の声がほぼ重なった。なずなはびくりと身をすくめ、宮子は宮子
で「どうぞお先に」だなんて、先を譲るようなことはしないで続けた。
「このたこ焼き、ちょっとお洒落だよねー」
 お洒落。たこ焼きが? それは舶来の品だからだろうか。なずなが答
えあぐねるうちに、宮子はまた、楊枝をゆび先でくるくると回した。
「冷めても表面がぱりぱりしてて、中はあったかいまんまだね。どーな
ってるんだろー」
「ああ、それなら知ってます」
 ヒロと乃莉が話しているのを聞いたことがあった。表面に油を振って、
揚げ物のように加工をすると良いのだと。そうすると外はパリッと固く、
中は柔らかに、そして温かさを保つことが出来ると言っていた。けれど
も、その美味しさを「お洒落」と結びつけた糸が、どこから出てきたの
か分からない。
 なずなの伝え聞きの説明を受けて、宮子は色々考えてあるんだねえと
感心をし、鼻先を舟の舳先に近づけて、すんすんと鼻を利かせてわずか
に眉をゆがませる。
「なんだっけなあ、この香り。ちょっと変わった香り。ほら、なずなど
の。食べて食べて」
「香り……ですか?」
 宮子にせき立てられて、なずなは舟を一旦膝に戻すと、とりあえずも
う一粒口に放り込んでみた。同じ歯ごたえと舌触り、そしてもう一つ、
はじめにも感じた、ソース、青海苔、カツオ節にも負けない何か強い香
気があったことを思い出す。
「これって……」
 宮子は喉まで出掛かって思い出せないらしく、なんだっけ、ホラあれ、
と身をよじり、震えて、あげくに暴発した。
「ほら、あれ! えーとー……『ポッパァーイ、タァースケテェー!!』」
「!」
 突如ものすごい裏声で叫んだ宮子に道行く人は振り返り、なずなはベ
ンチごとひっくり返りそうになる。その勢いで背中をしたたかに打ちつ
けた拍子に、つかえていた物が飛び出した。
「あ、オリーブ?」
「それ!」
 言われてみればなるほど、甘いような、味の輪郭に髪の毛一本分ほど
の酸味を残した香りは確かにオリーブオイルのものだった。すべての香
りの上にさらに一枚、薄い膜を張るきりのその香りには確かな気配があ
りこそすれ、何かと何かが混ざって生まれた一瞬のグラデーションよう
にも思えてしまうから、気付かず素通りしてしまいかねない。先ほどま
でのなずな自身がそうだった。けれどもこうして気付いてみると、それ
が偶然ではなく、天秤ぼ上に最後に乗せられた大切なピースであること
が、そこに生じた調和のやさしさから感じ取れた。
 謎の解けた宮子は、そーだー、そーだよーと上機嫌で、筋肉質の船乗
りが活躍する舶来アニメのテーマを口ずさみながら、もう一度その甘み
のある香りを大きく吸い込んだ。
「うーん。最後まであったかいためだけじゃなくて、香り付けにも一役
買ってるんですなあ」
「そうですね。外人さん、色々工夫してがんばってるんですね」
「なずなどのの、そのヘアスタイルもオリーブなんだっけ?」
「え? あ。はい」
 オリーブは駅前の美容室の名でもあった。双子の姉妹スタイリストの
切り盛りする店で、ひだまり荘で一時、ブームになったことがある。な
ずなの髪型が話題に上った時のことだ。
 宮子はなずなを見つめて嬉しそう大きく笑い、ラスト二つのたこ焼き
のうち、一つをぱくんと口に入れた。そっかそっか、なずな氏はオリー
ブかあ、とおかしな納得をして。
「ふんわり、イイ匂いがするところもそっくりですしナ」
「え」
「あ、そうだー」
 そうして宮子はまた勝手に話をぶつ切りに、空を見てなにごとか思い
出すと、まだ口の中にたこ焼きが残っているにも関わらず、最後に残っ
た一粒に向けて例の構えをとった。ほいっ、とどこまでも陽気なかけ声
で、楊枝はたこ焼きにするりと刺さり、抜け出てきた先にはまた、たこ
だけが捉えられていた。その様子を少し呆れて見守っていたなずなだっ
たが、その楊枝が、自分の前にひょいと差し出されて面食らった。
「……なんですか?」
「たこだけ、ご返杯。さっき、おルスのとそうじゃないのの交換になっ
ちゃったでしょ」
「え、でも……最後の一つなんですし」
「おルス引いたのは、あたしだからね」
 そう竹を割った様に言われて、なずなは上目遣いに考えた。なるほど、
計算は合う。こだわるつもりはなかったが、自然に開かれた宮子の目に
譲ろうという気配はなかった。これもまた家訓であるのかもしれない。
風がそよいで、にがお絵がぱたぱたと揺れ、なずなはあまく乱れた髪を
ゆび先で耳にかけ直すと、目の前に差しだされた楊枝のたこに、そのま
まぱくりと食いついた。
「おっ」
 こりこり固くて、すこし柔らかい。宮子がくれたそのたこは、粒がや
や大きいことを除けばソースも青海苔も何もない、小麦ダネとオリーブ
オイルが少しからんだただ温かいだけのたこだったが、淡泊なようで、
身の詰まった力強い野性味があった。ぎゅっとかみしめるほどにしみ出
すほのかな甘みと、独特のゴムにも負けない弾力が、歯と言わず骨と言
わず、体の芯まで押し返してくる。耳の奥にこもる力が背中にまで伝わ
って、その度に自分の中で何かが一つになるような手応えがある。なず
なは、オリーブ。なずなはじっくりと味わって、やがてごくんと飲み込
んだ。
「おいしいです」
「うん」
 そして宮子は、なずなのその笑顔を見届けると、結局おルスになって
しまった最後の一粒を、ぱくん、ごくんと丸飲みにしてしまった。



     × ☆     ☆     ☆



「私が叩いても、うまく、鳴らないと思いますけど……」
「いいんじゃないの」
 散々しぶるなずなに沙英は、やってあげたらと、無責任で、半ば強制
に近い抑揚で背中を押す。へこんだゆのを励ましになずながボンゴを打
つ企みに、宮子も乗り気だった。
「大丈夫、教えた通りにやりたまえ。ゆび先と、手首の返しが秘訣なの
だよ」
「それはたこ焼きの話じゃないですか……」
 なずなに軽くいなされ割り込んだ宮子がばれたかと舌を出し、それを
聞いた沙英がまた、ぶっと勢いよく吹き出す。
 歩いてきた住宅街の細い通りを抜けると、いつもの学校とアパートの
前を走る、ささやかながらも一応国道の番号がふられた通りに出る。三
人がアパートに近づくにつれ、庭に面したベランダと大窓に、歯抜けに
三つ、明かりがともっているのが見えてきた。二階に一つ、一階に二つ。
どの窓もカーテンの色柄が違うから、夜空に温かな中間色のパッチワー
クのように浮かび上がって見えた。
「みんな帰ってるみたいだね」
 沙英が言葉にするまでもなくなずなの頬がぱっと明るみ、そうですね、
と答える声も、トーンが一つ弾んで上がった。その控えめな瞳は、ソー
ダ水の色の中に花柄の散った一階の窓、乃莉の部屋しか見えていないよ
うだった。歩調までそそくさと上がった小さな背中を見て、沙英は一つ、
溜め息とともに苦笑して宮子に視線を送った。
「宮子も、お疲れだったね」
「ふえ、何がー?」
 がしゃがしゃと無粋なロボットの様に、大きな荷物を揺すって歩くそ
のとぼけた返事が何の駆け引きでもポーズでもないことはこの二年で身
に染みてきた。並びのいい白い歯の隙間からもれる一見でたらめなメロ
ディが、何日か何ヶ月か、何年かかけて頭とお尻が繋がる法則性を持っ
ているかもしれないことも。
「ん、なんでもないよ」
「ねえ、沙英さん」
「ん?」
「ヒロさんにね、チャーハン作ってもらうんだ」
「チャーハン?」
 宮子の話の切り出し方はいつも唐突だった。話し相手の沙英を見ても
いない。宮子はまぶしそうな視線を、恐らくキラキラした目で乃莉の部
屋明かりを見ているのであろう、三歩先のなずなの背中に送っているき
りだった。言葉で終わらない宮子の話は、唐突でも、その瞬間にだけ腑
に落ちるしっとりとした重みがあった。それだけ分かっていれば良いの
だと、他はともかく、沙英は思っていた。
「ふーん。いいんじゃない? ヒロも腕、ふるってくれるよ」
 いつもと変わらぬ落ち着いた調子で言う沙英の横顔を、宮子はちらと
盗み見ると、その答えに満足したようにへへと軽い笑いをもらした。
「でもあんた、先週もそんなこと言ってなかった?」
「へ。せんしゅう?」
「うん」
 思い当たる節がないではないのか、宮子はぜんまいじかけの早さで腕
を組んだ。
「……そだっけ」
「そうだよ」
「そうだっけー……」
「そーうーだーよ……あれ? ピラフだったかな……」
 宮子のいい加減に引き摺られ、沙英自身の記憶もあやふやになってい
く。なるほどそうか、先週……。ぐぐぐ、と音を立てて腕組みを深くし
ていく宮子を横目に、沙英は温かく、
「まあ、いいんじゃない」
ともう一度、同じ言葉で笑った。
「あんたが食べたいって言うなら、何度だって作ってくれるだろうし」
 アパートの名前五文字をべつべつのプレートに描いた表札の前を過ぎ
て門柱を抜けると、それじゃあ、と手を振った沙英は自分の部屋へは向
かわずに、まっすぐヒロの部屋へと足を向けた。なずなはそれを見てほ
んの一瞬だけ疑問符を浮かべたがじきに察し、宮子はそれよりさらに早
く、「さすがですなあ」と開きっぱなしの大きな口から気持ちをダダ漏
れにした。
 なずなも、乃莉の部屋に灯る灯りに後ろ髪を引かれる思いがあった。
が、手に提げたぼんごと、一日駆けずり回って少し汗ばみ、少しほこり
くささを感じるパフスリーブの肩に歯止めをかけられて、ぐっと抑えて
カンカンと音の鳴る階段を上がった。
 階段を上がりきったところに、宮子が足を止めていた。
 朝から見続けたスネ丈のジーンズからはみ出す上等のアキレス腱をま
っすぐに伸ばして、壁にも手すりにもよりかからず、旅人のように何か
を見上げている。空と雲と月。夕方降りてきた風は空に帰って、雲の高
さではほどほどに強く吹いているらしい。雲は、晴れはしないもののな
びいてかすれ、高く低く、あちこちで濃淡をせわしなく変えた。月から
すこし外れた辺りに、十円玉ほどに穴の空くのも見えた。
「……綺麗ですね」
「お月さまー? うん、そうだ……」
「いえ、星です」
「……ね。え?」
 滑らかに、自分の言葉と言葉の間をなずながすり抜けていったのを聞
いて宮子は目を瞠り、なずなと空を交互に見遣った。
「お星さま?」
「はい」
 宮子はもう一度、いつもの穏やかさで、けれどもきっぱりと答えたな
ずなと、空に空いた雲の十円はげを見くらべる。今日の月の光は乱暴で、
ちいさな星の光など飲み込んでかき消してしまう。宮子が拾い集めるの
は、そんな小さな渦の泡、焦げたネジ、そんなものだった。
「綺麗、ですよね」
 なずなはもう一度その雲間を見遣って、まるで尋ねるみたいに囁いた。
なずなの大きな瞳は、髪の色と似た銀色の光を受けて遠く、どこに焦点
を結んでいるのか分からない。その目を見て、宮子は理解し、にこりと
微笑んだ。
「そうだねー。明日は、一緒にお星さまも見られるといいね」
「そうですね」
「それじゃあ、あとで」
「はい」
 そこでようやくぼんごの手提げを宮子に返し、いつもの言葉を交わし
てドアノブをまわす。二〇三がふられたその部屋は、なずなが越してく
る以前はただの物置部屋だったのだそうだ。上級生四人からは、大家に
請われて安い昼食で掃除を手伝った話を聞かされた。
 かちゃりと静かに開いたその扉の向こうから、他の誰の物でもない、
みかん色の空気が漂い出て……手にしたたこ焼きの袋から立ち上るオリ
ーブオイルの香りと縒り合うように混ざり合い、やがて、境目を失った。





                          (おしまい)





      ××× エピローグ ××× 





  コンコン


沙 英「ただいまー。ヒロー、いるー? 起きてるー?」


  がちゃがちゃ


沙 英「(あれ、開かないなあ。寝てるのかな)」
ヒ ロ「あ、沙英? ちょ、ちょっと待ってね。よーいーしょーっ」


  ぎぎぎぎぎぎぃぃぃぃぃ……


沙 英「うわ、すごい音」
ヒ ロ「沙英……おかえ……りっ!」


  ぎきぃ!!


ヒ ロ「ふー……。やっと開いたあ」
沙 英「ただいま……。ドア、どうしたの? 具合悪いの?」
ヒ ロ「わからないのよ……。
    帰ってきたら、なんだか立て付けが悪くなっちゃってて……。
    すごく開きにくいのー」


宮 子「……」
なずな「…………」
宮 子「………………(これは……正直にだまってよう)」
なずな「……………………(ですね……)」




                           → あとがき

 

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2012年1月 6日 (金)

■a white day~ミューズの座布団・その五 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 -更新第745回-

◆a white day~ミューズの座布団 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』
  その一 / その二 / その三 / その四 / その五 / その六 / あとがき 
 





     × ☆     ☆     ☆




 公園を出る頃になると西の空はすっかり茜色に焼けて東の縁は深い藍
色に滲み、アパートに帰り着く頃にはきっともう真っ暗だろうなと、な
ずなは二つ先の電信柱の先を見上げて考えた。今夜は大きな月が見られ
る筈だったが、少し前から風に流されて来た雲が、空を広く覆いつつあ
った。
 あのあと宮子はたこ焼きを買って戻って来、二人でそれをお腹におさ
めてしばらく話をした。そのうちに宮子が「うーん、そろそろ次のお腹
が空く頃ですなー」と意味の分からないことを言い出したので、荷物を
まとめて公園をあとにした。今はそのアパートまでの帰途にあった。
「今度こそ、ヒロさんにチャーハンを作ってもらわなければ」
「材料、買ってきてるといいですね」
 拳に決意を固める宮子に並んで歩きながら、なずなは笑いかけた。荷
物はここへ来るときよりも少し増えて、ボンゴの手提げに、にがお絵に、
ふた舟分のたこ焼きの入ったビニールが、なずなの手には揺れていた。
「あ、あれ。沙英さんじゃない?」
「え? どれですか?」
「三つ向こうのところで、角曲がろうとしてるの。ほらやっぱり沙英さ
んだよ、おーい、沙ー英さーん」
 まだ相当距離のある先を指さして、宮子は大きく手を振った。街灯の
花もぽつぽつ咲き、辺りは薄闇に包まれつつある。その人影は、言われ
てみれば背格好こそ沙英に近いかも知れないけれど、シルエットさえぼ
んやり滲んで、なずなには男性か女性かも定かに捉えられない。遠ざか
っているのか、こちらに向かっているのかもよく分からない有様だった。
けれどその背中は宮子の声に反応してピタリと動きを止め、振り返る仕
草をしたように見えた。
「おー、宮子ー……と、なずな。へぇー、何だか珍しいツーショットだ
ねえ」
 馬鹿みたいな大荷物をがしゃがしゃ揺すって、それでも宮子は結構な
速度で走るからなずなはついて行くのがやっとで、息を弾ませながら追
いついた、その人影は本当に沙英だった。シャツにジャケットを羽織り、
相変わらずのパンツルックの……朝出会ったままの装いの沙英は、二人
を見て意外そうに声を上げたが、少し嬉しそうでもあった。背はやや低
いが男性に見間違えても何の不思議もない。あの距離で識別できる宮子
は、ただ目がいい以上の何かをやはり持っているのだと、思わざるを得
なかった。
「ってあんたたち、何その荷物……。二人で出掛けてたの?」
「え!? あ、えと、これは……」
「うん、公園で絵ー描いてきたー。なずな氏にお手伝いお願いしたんだ
ー」
 さすがにこの大荷物は目を引いたのだろう。鼻白む沙英に、なずなは
「今日のことはないしょ」と片目を瞑った宮子の横顔を思い出してしど
ろもどろになってしまい、横から宮子が割り込んだ。けれども沙英は
「ふーん?」と、ひと目ふた目、なずなを眇めて、宮子のこめかみ辺り
をコツンと小突いた。 
「痛ぁ」
「あんまり無茶すんじゃないよ。ゆのがまた、心配するでしょ」
「へへへ。へえーい」
 本当に、分かってるのかねえこの子は。沙英はぎゅっと腕を組んでた
め息をつくと、今度は切れ上がり気味の眦を少し温ませて、なずなを見
た。
「お疲れ。大変だったみたいだね。いいんだよ、なずなも。あんまり無
茶するようならガツンと言っちゃって」
「え、あの、そんなこと……! ……はい」
 小さくなってしまったなずなに沙英は、なずなには難しいかと苦笑し
つつ、でも危なくなったらちゃんと逃げなね、と物騒に締めくくった。
冗談のつもりかも知れないが、その諦めがかった微笑と言葉は、なずな
の胸にすとんと収まった。
「ん。なずな、そんなところにホクロあった?」
「え?」
 突然、身をかがめた沙英の小洒落た下縁眼鏡に顔を覗きこまれて、な
ずなは軽く仰け反った。ちょっとごめんねと言うが早いか、すばやく沙
英のゆび先が唇の端をそっと拭っていく。
「ソース……青海苔?」
 人差し指の腹を電柱の黄ばんだ灯りに透かすようにして、背の高い先
輩は呟いた。
 何という失態だろう。公園を出てからこっち、自分はずっと青海苔を
顔に張り付けたまま歩いてきてたらしかった。心当たりはある。宮子が
買ってきて、二人で食べたたこ焼きだ。なずなは言葉にならない悲鳴を
上げつつ、慌ててポケットを探った。
「大丈夫だよ、もうついてないから。暗くてよく分からないくらいだっ
たよ」
 やさしくなずなをなだめてから、
「そういえば」
と沙英はすくすくと鼻をきかせた。なずなが提げた白いビニール袋から
は、甘辛く香ばしい香りが、やわらかくよじれたこよりのように立ち上
っていた。


       ×     × 


 謎の呼び声に呼応するように姿をくらませ、ほどなくして宮子は戻っ
てきた。
「あれー? なずな氏、どこ行ったのー?」
 名を呼ばれ、なずなが池のほとりから振り返ってみると、両手の平に
何かを乗せた宮子がベンチの真後ろの雑木林を、肩でがさがさとかき分
けて出てくるところだった。大人しくベンチに座って待っていたら、ま
た不意打ちを食らって大やけどをするところだったと、なずなはまた違
う安堵の息をもらした。
「すみません、……どうして、そんなとこから……あ、たこ焼き」
「冷めちゃうから、近道した」
「公園の人に叱られちゃいますよ……」
 小走りにベンチに戻ると、宮子が両手に乗せているのがたこ焼きの舟
だとひと目で分かった。大粒の、宮子の髪色によく似たこがね色の玉が
ひと舟に八つずつ、ゆらゆらと湯気を霞に立ちのぼらせ、それと同じテ
ンポでカツオ節を躍らせている。宮子は植え込みの囲いをまたぎ、なず
なにひと舟差し出した。
「はい、なずな氏の分ねー」
 自分の、分。またしても突然のことでなずなはついつい、鼻先まで迫
った舟の舳先に寄り目になってしまう。ソースに青海苔、かつお節。ひ
と目で伝わる、ほかほか、ころころと甘辛く、空き腹にたえ難い強い香
気と熱と艶に、なずなの口の中はたちまち大洪水になった。
「ん、もしかして苦手だった?」
「い、いえ! ちょっと、びっくりして……いただきます」
「うむ、心して味わいたまえよー」
 なずながほとんど恭しいくらいに両手で舟を受け取ったので、宮子も
それにつられるようにふんぞり返って見せた。目が合って、微笑み合う
と、宮子は荷物を押し退けて二人が並んで座れるスペースをこしらえる
と、ベンチに飛び乗った。
「なんといっても、我々の労働の結晶、そして、世にも珍しい舶来の品
でもあるのだからねえ」
「舶来?」
 たこ焼きが、だろうか。
「いただきまーす。うん。焼いてる人がね、ガイジンさんだったんだー。
珍しいよね、初めて見たー」
 そこで、話で繋がった。外国訛の呼び声に、サンフラワーの女性。
「じゃあ、さんふらわあのお嬢さんって……」
「おいしー! 熱々ー! 外カリカリー! 中、ふわふわのとろとろー!」
 宮子さん、少しは人の話を聞いて下さい。幻の乃莉がなずなの中で呆
れて愚痴をこぼす。宮子はなずなの話などお構いなしに自分がとろけ落
ちそうになりながら、一心不乱に口の中でたこ焼きを転がしている。
 そうかと思えば、まだ最初の一つを口の中に入れたままだというのに
「……いらないの」
と、棒立ちのまま手をつけようとしないなずなの宝舟を、涎をためて狙
ってくるからたまらない。
「た、食べます」
 舟をかばうように身をよじり、なずなは宮子の隣に腰を下ろすと急い
で一つ、楊枝に突き刺して口の中に転がした。
 宮子の言った通り、外側は油で揚げたようにパリッと堅いパイ生地の
ような歯ごたえで、甘辛いソースにも負けない、何か強い香気を顔全体
が満たした。それをつきやぶると中からは、舌と歯の付け根を刺す熱さ
のタネがとろけ出て、「あふい!」という声とともに口から鼻から、自
然にたくさんの息が吹きこぼれる。それを見た宮子が面白そうに「やけ
どするよ」と笑うので、恥ずかしくなって慌てて口元を押さえた。
「あ、あふいれふ、れも、美味しいれふ……」
 ふいごのようになりながらもそのことを懸命に伝えようとするなずな
を見て宮子はにんまりと笑うと、自分も二つ目にとりかかった。
「本当はね、さっきお茶と一緒に買って帰ってくるはずだったんだけど。
焼きたてがいいって言ったら、五分待ってって言われてさ」
「ほうらったんれふね……あふくて、美味ひいれふ……」
 空になっていた胃袋に熱の塊が一つ落ち、なずなはゆっくりと、深く
息を吐いた。残ったお茶を一口含むと、早くも四つ目に取りかかろうと
いう構えの宮子に、そっと缶を差し出した。
「おお、かたじけない。ではお礼に、良い物をお見せしよう」
「え」
 それを軽くあおり、缶を返した宮子が不敵に楊枝を構えて見せるから、
なずなはまだ何か演し物があるのかと身構えずにはおられない。
「見ててね」
 そう言って、宮子がじっくりと間をためるので、なずなも思わず固唾
を飲んだ。やにわに、宮子の手から「えい」とねじりを加えた楊枝がた
こ焼きのうちの一つ打たれて、「ほい」とスナップの利いた手首の返し
で引き抜けば、
「はい、たこだけー」
と、楊枝の先には、ぶつ切りのたこの身だけが、百舌のはや贄の体で刺
さっている。なずなは目を丸くした。
「え? ど、どうやってるんですか?」
「指のひねりと、手首の返しが秘訣なのです」
「でも、たこがどこにあるのかって……」
「たこの気持ちになって、心の目で見るのです」
「はあ……」
 そんなコツを教わったところで、どちらか一つを身につけるだけでも
並大抵では叶わなそうだとなずなは思った。そもそも、両方が身につい
たとして、その「心の目」とやらは、人の視点なのだろうか、たこの視
点なのだろうか。たこ目線だとしたら、迫る楊枝を凝視することになっ
て考えるだに恐ろしい。青くなって震えるなずなの隣で、宮子は誇らし
げに剥き身のたこと、主を失った小麦玉を順番に口に運んだ。


       ×     × 


 そこまで話を聞いて、沙英はもう息が出来ないくらいに笑っている。
笑い事じゃないんですよ、となずなが小さくなって抗議するも聞き入れ
られず、宮子は宮子で何がおかしいのか分からない。
 沙英は、おなかいたい、おなかいたい、意味が分からないと繰り返し
て震えていたのを持ち直し、目尻にこしらえた大きな涙の珠を拭った。
「はーおかしい……あんたたち案外いいコンビかもねえ。でも、へーえ。
外人さんのたこ焼き屋かあ、そんなのいたんだ? 男の人? かっこよ
かった?」
「私も、お会いしてはないんですよ……」
 なずなは結局、最後まであの声の主には会わずじまいだったのだ。お
土産のたこ焼きも宮子が一人で買ってきた。二人の視線が同時に宮子を
向いたが、そんな話題が宮子に響くはずもなかった。
「え? どーだろー、うーん……あたしは、ジモッティーさんの方が渋
くて好みかなー」
 知らない名前に無言の沙英が「誰?」の視線でなずなを振り返っても、
なずなもまた無言で首を横に振るほかない。
「となると、今日のひだまり荘は一日お留守だったってことか。火の元
とか戸締まり、ちゃんとしてきたろうね?」
 夜の斜幕がまた一枚、静かに下りて、一段と濃さを増した夕闇の中を
三人歩く。その暗がりの中に、家々の窓明かりが、一つ、また一つと、
オレンジ色の四角い穴をうがっていく。人の気配も、外の世界には最早
まばらだ。一人暮らしを始めたばかりの頃は、ルスにする、家を空ける
という言葉が重たくて、出先で不安になることも多かったが今ではお手
の物だ。あ、はい、ちゃんと、と答えた語尾でなずながぷっと小さく吹
き出したから、沙英はまだまだ弛みが戻らない頬をにやつかせた。
「何よ、まだ面白い話あんの? 聞かせなさいよ」
 今日は一日中仕事で、ふざけた話に餓えているのだろうか。いつにな
く食い付きの良い沙英に、なずなも半ば吹き出しそうになりながら、そ
の眼鏡の瞳を逃れて宮子に視線を送り、宮子はそれに、何の気もない笑
いで応えた。
「はい、あの、おルスって言うとですね……」


       ×     × 


 宮子は少し得意げに、摘出したたことタネを別々に平らげ、それにつ
いてなずなはどうコメントしたものか途方に暮れた。
 焼いた小麦の玉をごくんと飲み下すと、宮子はニタリと笑ってなずな
を見た。
「お客さん、まだ信じられないご様子ですなあ」
「い、いえ、そういう……わけじゃ……」
「ではもう一度お目にかけよう! お覚悟ー!」
 今日の宮子先輩、どうしてちょっと時代劇がかりなのだろう? 大仰
に振りかぶった宮子の楊枝は、残った四つのたこ焼きのうち、左から二
番目に深々と命中した。
「む!」
 瞬間、宮子の表情が明らかに曇った。動きを止めて、そのまま深い呼
吸を二つ半。なずながどうしたらいいか分からなくなった頃、宮子は得
物を引き抜かないまま、悲しそうな顔をなずなに向けた。
「なずな殿」
「は、はい」
「悲しいお知らせがあります」
「え? は、はい」
「残念ですが、このたこ焼きは、おルスのようであります」
「お……おルス?」
「はい、おルスです」
 つまり、たこ焼きにたこが入っていない。そのことを宮子の家ではそ
う呼び倣わしていたのだそうで、しかし家訓には、おルスに遭っても決
して怒ってはならない、そっと悲しまなければならない、という教えま
であるのだという。だめだ、この一家にはどう逆立ちしても敵わない。
そう悟るのと同時に、なずなはこのことを早く誰かに、乃莉に、話した
いとも思った。
「はあ。おルス……」
 ひとしきり解説を受け、しゃぼんだまに閉じこめられたような顔にな
っているなずなを見て、何故か突然宮子の肩が怒気を帯びて膨らんだ。
「うたぐっておいでか!」
「え!? 違……」
 たこを突き損なっただけなのでは? と考えなかったわけではない。
が、その真偽は、なずなにとってもう取るに足らないことだった。
 しかし宮子はまたしても犬と喧嘩の様相で、自分の舟をぐっとなずな
に突き出してくる。食べて確かめてみろ、というのだ。その大層なケン
マクに、なずなはたじろいだ。訳も分からないまま、楊枝が刺さったた
こ焼きと、唇を真一文字に結んだ宮子の顔を、二度、三度と見比べる。
──ちがいます、先輩、ちがうんです。どうでもいいんです、そんなこ
と、私どうでもいいんです──。
 おずおずと、前髪がかりに宮子の顔色を伺いながら、左から二番目の
たこ焼き──次男坊であろうか──に宮子が刺した楊枝をそっとつまむ。
宮子が大仰にうなずくのを確認して、なずなはそれを、ゆっくりと口に
運んだ。
 なるほど、たこはどこにも見当たらなかった。
 さっきまで灼熱の玉のようだった熱は程良く失われていて、舌に乗せ
ても痛みはなかった。口の中でひと転がりさせてから、香ばしさの殻を
舌と歯で押しつぶすようにして破ると、中からとろりと温かな小麦粉の
タネがあふれ出す。その中を、なずなは舌全部と時には歯先を使って丁
寧に、こりこりとした弾力の感覚を探してさまよったが、ついにそれに
は出会うことはなかった。
 結果を告げる前から、宮子はすでに勝利の面持ちで鼻息が荒い。
「……。ない、です……」
「ほらねー!」
 何か、褒めた方が良いのかとも思ったが、いまいち上手い文句が思い
浮かばない。さすがですねというのも余計な気持ちが先に立ってしまい
かねず憚られた。なずなは無言で頷き、思うところもあって、両手でそ
っと自分の舟を差し出した──。
「あの、どうぞ……」
 今度は宮子が首を傾げる番だった。
「ほえ? くれるの?」「ひとつ戴いてしまったので、交換です」「あ
そっか、じゃあ遠慮なく」
 宮子が舟から一粒選んで持ち去るのを見届けてから、なずなも宮子の
選んだ隣の粒を、三つ目に選んで口に運ぶ。しかし宮子は、なずながも
ぐもぐと口を動かし始めてもそれを見つめたままで、一向に口に入れよ
うとしなかった。
 やがて、
「なずな殿」
「はい」
 口元を手で隠しながらだから、くぐもった返事になる。宮子はたこ焼
きを見つめたまま言った。
「たこ焼きに、たこって要ると思う?」
 『秘剣・つばめ返し』の次は、禅問答である。たこ焼きよりたこを除
きて、いざいざ、なんとする。たい焼きに鯛は入っていない。うぐいす
パンにもうぐいすはいない。具の問題なのか、外形上の話なのか。そん
な表向きの道理を通してみても、大渦のヌシの目線が今、その程度の高
さにあるとは思えなかった。彼女の見据える先は遥かに遠い。
「でも、たこ焼きなんですし……」
「それは、そうなんだけどねー」
 深い考えを避けたなずなの回答をあっさりかわして、宮子は目の前の
たこ焼きを口に放り込んだ。おルスだとすっごく寂しいのは事実なんで
すけどね、と、そのひと粒を今までになく時間をかけて味わい、ゴクン
と飲み下す。どうやら今回はおルスでは無かったようだった。
「おいしいです!」
「は、はい」
 おいしさには満面の笑顔だった。されど疑問は続いていた。
「でもさー、たこでなくたっていいと思うんだよね。鶏肉とかさー」
 確かに部位さえ選べば、淡泊さや弾力において、たこと鶏肉は似た位
置にあるかも知れない。
「変わりダネたこ焼きの屋台とかだったら、見たことありますけど……」
 禅問答かと思いきや、話は意外や、まともに料理の話だったらしい。
もしこの場にヒロがいたら闘志を燃やし、ゆのが話を広げて、今夜のひ
だまり荘は変わり種たこ焼き祭りになだれ込む話の運びだった。ただ、
本格派の乃莉がいるから、それを許すかどうかはわからない。なずなも
口の中の一粒を、きちんとたこの存在を確かめながら味わって、その存
在意義を改めて問うてみた。それにしたって、外国の人が焼いている方
がよっぽど意外性がありますよね、という思いつきは口には出さないで
おいた。
 そうだよねー、と宮子は、聞いているのかいないのか分からない言葉
で話を続けた。
「小麦粉でしょー、ソースでしょー? あとカツオ節と、青海苔。たこ
焼きって言う名前の割に、美味しいののメインはそっちの方だなーって
いつも思うんだよね。よっと」
 軽やかな声とともにまた楊枝が打ち込まれ、またも的確に摘出された
たこは、先ほどのルスを帳消しにするほど粒が大きい。その大きさに二
人して思わず歓声を上げてしまって笑い合い、宮子は紅白自然な色合い
のたこの身を、その収穫を祝うみたいに目の前でクルクルと回した。
「いいかーい、君も油断してると、他のものにとって替わられちゃうか
も知れないんだからねえ。日々怠らず精進したまえよー」
 低くした声と真剣な目で、脅かすように。たこに説法をする宮子がお
かしくて、なずなは声を抑えて笑ってしまった。宮子はそのほほえみを、
おっ、と短く意外そうに受け止めると、諦め気味に、柔らかく頬をゆる
めた。
「まあ君には、他にも道があるからいいんだろうけどね。いただきまー
す」
 その身の大きさに比例して大きく開いた口で、宮子はカニカマの時と
同じにぱくりとたこに食らいついた。もぐもぐ蠢くあごもしっかりして
いる。
「道……ですか?」
「うん。お刺身に、お寿司に。お酢の物とかさー」
「あ。そういうことですか」
 口の中のたこを頭で調理して、宮子の表情が恍惚にゆるむ。なずなも
記憶の中からたこの身の振り方をいくつかあたってみたけれど、他には
マリネくらいしか思いつかなかった。ヒロの引き出しからは何が出てく
るだろう。あれも、これもと、生き生きと弾む毛糸玉の声と笑顔が思い
浮かんだ。
「うん。たこさんは生でも十分美味しいですからなあー」
「お刺身……ですか?」
「海からガブっと」
「生きたまま!?」
 やはり話は料理に収まり切らない。なずなは色を失った。
 関門海峡の洋上にぽっかり現れた巨大な渦の中心で、学校指定の水着
とスイムキャップで身を固め、蟻地獄よろしく、シンクロナイズドスイ
ミングの要領で足だけ水面から出したかと思うとざんぶともぐり込んだ
宮子が海中で大だこと愉しげに踊るダンスは、自分のにがお絵のその先
の姿よりもよっぽど容易に想像出来た。それこそ、溌剌と鍋を振るヒロ
の姿に負けないくらいに。
「おいしーよ」
 上手く食べないと、吸盤が口の中に張り付いてすっごく痛いけどね、
というアドバイスにも、想像するのが恐ろしくて、なずなはそそそ、ソ
ウデスカ、としか返せなかった。


       ×     × 


                            (続く)

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2012年1月 5日 (木)

■頭文字<イニシャル>「ほ」 -更新第744回-

帰省の道すがら、移動のお供にと思って本屋に寄り、
『とめはねっ!』の9巻と堀江敏幸さんの文庫を一冊買って、
新幹線のシートでしばらく書き物をしたあと
ンじゃちょっと本でも読もうかー、
と思って文庫の方を開いたら全然違う人の書いた本だったでゴザルorz

オイサンです。

その見知らぬ本の著者の頭文字も「ほ」だったので、
恐らく著者別あいうえお順で隣に並んでた本を取ってきたしまったご様子。
あるあるネタですか?


本日からオシゴト。
まだ勤め先自体は休業期間だったのですが、マいわゆる休出と言う感じで。

ですけどもTwitterのタイムラインを見ていると、
割かし普通に2日からオシゴト、3日からオシゴトという方もおられて
まあそんなモンかな、と思ったりします。

確かに世間を見渡してみれば
2日3日から営業しているお店や施設なんてのはザラにありますので
そういう人たちがたくさんいるのは当然なのですけどね。
そもそもテレビは正月から放送してますし。



■四方山正月トーク



こんな話はどこでもされていることだと思いますが、
オイサンが子供の頃……
今から30年ほど前のお正月なんてのはどこのお店もホントすっかりお休みでして、
子供心に、もらったお年玉の使い先もなくて
タイクツな思いをしたのをよく覚えています。

  今となっては、
  お店も交通機関も休みにすればいいのに、と思わないではないです。
  自分の足で行ける範囲でお参りに行って、
  あとは家でゆっくり、近所の公園で凧でも上げて過ごせばいいよ。

  オイサンは普通に福笑いとかカルタとか、人生ゲームとか。
  やってましたね。
  素朴だなあ。
  昭和50年代前半~中盤のことです。
  福笑いとか、今やっても面白いかね。
  今やって何が面白いって、多分「目隠しをされる」というシチュエーションが
  一番面白いんじゃないだろうか。
  だって日常生活で目隠しされることって、まあ先ずないですからね。

……あー、そっかー。
そういうことしたらいいのかなあ。


 ▼お正月のコミュニケーション

いえね、実家に帰ってさ。
ご飯食べて、風呂入って。
とりあえず出来るだけ両親の傍にいてやろうと思って
リビングに一緒にいるんですけど、何もすることがないんですよね。
テレビが流れてるくらいで、雑談が弾むわけでもなし。

結局本読んだり携帯いじったりしちゃうんだけども、
そういうときに、トランプでも持ちかけてみればいいのかな。
将棋指したり麻雀したり、出来ればいいんですけどね。
オセロとか。
そういうことでもやってみれば、良かったかなあ。
次回やってみよう、と思っても、次帰る頃にはまた忘れてるんですよね……。
何かしら、家族で遊べる共通のものがあったらいいんですけどね。
皆さん、どうされてます?


……。


そういうとき、『遊戯王』とかで盛り上がれてしまう親子はイヤだなw
 

  息 子「デッキからカードをドロー! ブルーアイズホワイトドラゴン!
      ナントカのブレスで親父に4000のダメージ!
      場に2枚を残してターンエンド!」

  親 父「なんの、ライフで受ける!
      そしてスケルトンを犠牲にしてライフを回復!
      ナントカの魔道士の追加効果で、ブルーアイズホワ」

  お母ん「正月からうるさい! ムダに声を張るな!」

   娘 「ホワイトチョコレートモカフラペチーノベンティに
      エスプレッソショットをドッピオで!」

  お母ん「お前もか!」 
 

城之内君とか家にいたら鬱陶しいだろうなー。


 ▼お年玉の使い道

お年玉で何を買ったっけなあ。
あまり憶えていませんが、『アラレちゃん』のドンジャラは買いましたな。
当時、五千円くらいしたはず。

けれども、そういう物心つくかつかないかの頃の買い物って、
本当にそれが欲しかったのかどうか、わかんないものが多いなあ。
当時の自分が、ドンジャラを本当に欲しかったかと言われたら、
なんかそんな筈ない気がする。
とりあえず、貰ったオカネ使いたかっただけのような。
オカネ使うの、あんまり好きな子供じゃなかったけど。
お祭りの日に、特別に500円とか貰っても、必ず2、300円は残すタイプ。
つまんないオトコですよ。

そうやって貯めたお金が、多分高校の終わりくらいまでに
10万円足らずあったはずで、
それは今の通帳に印字された数字の、どこかに含まれているはずです。
……うーん。
今の手持ちで考えると微々たるモノなので、
当時のうちにパーッと使ってしまっていた方が、ミがあった様な気がしますね。
なんというか、
幼い自分がその額を貯める苦労や気持ちに見合ったスケールで使うことが出来た、
と言いましょうかね。

そのとき貯めた一万円と、今貯める一万円。
そのとき使う一万円と、今使う一万円。

貯めただけのカタルシスを感じられるのは、
やはり当時でないと無理でしょうしねえ。

ちなみにオイサンは家帰る度に、
親にこっそりいくばくかのお金を、まあ宿代食事代として置いてきますが、
親父殿はそれを嬉々としてゴルフに使い、
母は……どうしてるかわかんないなー。
ぱーっと使って欲しいんだけどなー。



■箱根駅伝



テレビと言えば、箱根駅伝。
今年は何やら東洋大がアホみたいな強さで盛り上がっていたご様子。
オイサンはそんなに真面目に見たことはないのですが、
毎年盛り上がっていることくらいは存じ上げております。

殊にここ1、2年、何やら
「出場選手のごひいき声優・アニメキャラ」のリストが
レース前に出回る事態になっていて、
TwitterやらWeb界隈ではそういうおかしな盛り上がりが見受けられます。
面白いぞもっとやれ。
時代は変わったねえ。

  ……でも、下手するとそのうち、
  選手の名前と声優・キャラの名前やイラストが並べて書かれたのぼりとかで
  応援合戦とかになりそうで、
  そーまでになったらブレーキをかけた方がいいかな、
  という気はしますけれども。
  画面に出ないくらいまででやめといた方がいい、と、オジサンは思います。

あと家族でチラッと見ていて挙がった疑問なんですけど、
駅伝出身で、その先にプロスポーツとかで華々しく活躍をした人、
というのをあんまり見た覚えがない。
駅伝で活躍して、終わり、みたいな。
そうした中で……この資本大好き主義国であれだけ大々的に開催して、
コレ、誰がトクしてるんでしょう?

ちひろパパさん、うぃぶれさんとお会いしたときも
ちょろっとそんな話をしたのですが。

学校が宣伝になるのはわかるんですが、
その後のプロスポーツの種に、そんなになるわけでなし。
どこが、何を見越してお金を出しているのか。
テレビ局なんですかね。

高校野球とか駅伝とか、そういうの好きだな日本人は。
自転車ロードレースとかはダメなんですかね。



■故郷



しかしまあ、ほんの二日間とはいえ実家に帰ってみて思いますけど、
帰って落ち着ける場所があるのはシアワセなことです。
オイサンは関東に出てきてから14年ほど経ち、
物心がつく前の時間を考えれば、
故郷で過ごした時間とそう大差のない期間になりつつありますが。

それでもやはり、故郷がホームであって、
こちら、関東は間借りした場所である印象が拭えません。
うん。
まだやっぱり、お邪魔してる感がすごくあります。

まあ、せわしない日常をすごすコチラの風景と対比して、
常にのどかな時間を過ごすアチラの風景を
殊更美化して刷り込んでいるだけかもしれませんけど。
学生時代、アチラでそれなりにヤなこと・ストレスもあったはずですしね。

開発が進んで、景色も昔と随分変わってはいるんですけど。
それでも、あの山あの川、ねずみ色のくすんだ風景を、
愛おしいと思いますよ。
こちらに比べれば、物もお店も多くないし、家からコンビニまで10分は歩くし、
不便は不便にちがいないんですけど。
けど、不便何するものぞ、ですよ。

あー帰りたい。



■『とめはねっ!』9巻



お正月と言えば書初め、書初めといえば書道。
書道と言えば『とめはねっ!』ですよ(ごういん)。

冒頭でも書きましたが、
平熱系学園書道部コメディ(勝手に命名)『とめはねっ!』の9巻を読みました。
NEW WAVE SHO-DO COMIC!


 ▼河合先生のスタンス

河合先生の持論としてなのか、
お話作りの方法論としてなのかわかりませんけれども、
いつもの河合先生節、つまり
「理論的に、効率を追い求めて、
 強くなるために頑張って強くなろうという人たち」
と、
「好きだから好きなことを好きなまま、
 楽しんでその結果強くなろうという人たち」
の戦いに、またなってきました。
『帯ギュ』と同じ構図ですね。

  ……というと、厳密には違うか。
  主人公サイドの団体が個性派・アウトサイダー揃いで、
  楽しむことで強くなろう、という立場の人間たちというスタンスは同じだけど。
  「楽しい」VS「ストイック」の戦い、みたいなことです。

これは……河合先生は実際どう思ってるんだろう。
そうした方がお話的に面白いし、共感も得られそうだから
主人公たちをそちら側に据えているのか、
それとも、ご本人も常日頃
「それが正しい、そうあるべきだ」という思いがあるから
そういうお話にしているのか。

今のところ『帯ギュ』『モンキーターン』、
そしてこの『とめはねっ』が河合克敏先生の代表三部作になると思いますが、
『モンキーターン』だけ、ちょっとだけ毛色が異なる気がします。
主人公が実利重視・効率重視とは言いませんが、自由さが少ないというか。
競艇を楽しんでいるという感じを、あまりうけませんでした。
競艇が好きで好きで、という感じではない。
マ『モンキーターン』だけはプロスポーツの世界の話なので、
その辺のリアリティがそれを許さなかったのかも知れませんが。

オイサンは『帯ギュ』は大好きなマンガの一つですが、
以降の河合作品は、やっぱり好きではあるのですが
『帯ギュ』ほどの魅力はないと感じてます。
やわらかさが足りないと言うか、オカタイ感じがすごくある。

相変わらず……面白いのか、面白くないのかわからない。
面白くないことは決してなく、
なんというか、読み甲斐・読み応えはあるんですけど、
面白くてそうなのかどうか……分からない。

あの、なんていうんですかね。
科学雑誌の教育マンガとか、進研ゼミの勧誘マンガとか、
ああいうのを読んでいる感覚に近い気がする。
アレらよりは、物語として面白いのは確かなんですけど。
でもなんか、純然たるマンガを読んでいる気が……あまりしない。
フシギなマンガです。

これは何となくですが、
「やってることは大昔の学園部活モノの流れそのまんまで、
 『そこに乗っかっているのが書道部である』ということ(だけ)が違うから、
 斬新なような、そんなことないような」
というモヤモヤさを感じているのではないか、
と、思っています。

また河合先生はキャラクターを作るのが上手く、また独特でもあるので、
河合作品に慣れていない人はもっと素直に
「新しい!面白い!」と思えるかもしれませんが、
オイサンのように「河合慣れ」している人間には、

  「昔からあるストーリーライン」
 +「従来の河合路線のキャララクター群」
 +「『書道部』というあたらしさ」

と見えてしまって、
「ちょっと奇を衒って勢いがつききらない感じ」を受けてしまうのかも知れません。
とはいうものの、河合作品はオイサンがワリと珍しく、
自分でゼロから発掘した作品なので、すごく愛着はあるんですけどね。

あ、この「自分で発掘した」ってのは、
誰かから勧められたとか、何かの繋がりとかではなく、
本誌連載、或いは単行本を見かけて自分から興味を持って買うようになったもの、
くらいの意味です。
そういう作品は案外多くないんですよね。

  ちなみに他には『県立地球防衛軍』の安永航一郎作品、
  『人類ネコ科』のみず谷なおき作品、
  『おざなりダンジョン』のこやま基夫作品などがあります。
  『天上天下』(大暮維人)『神聖モテモテ王国』(ながいけん)
  『ヤンキー』(山本よしふみ)『アカテン教師梨本小鉄』(春日井恵一)
  なんかがあったりします。




マそんな感じで、散漫に。
本格的にオシゴトが始まりますのでまた更新は滞ると思いますが、
時々でも思い出して、覗きに来て下されば。

面白くもないグチの一つもお聞かせできるかと思います。
今年もよろしく。

オイサンでした。


 

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2012年1月 4日 (水)

■a white day~ミューズの座布団・その四 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 -更新第743回-

◆a white day~ミューズの座布団 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』
  その一 / その二 / その三 / その四 / その五 / その六 / あとがき 
 


     × ☆     ☆     ☆


 そこからの二時間あまりは、なずなにとって正に怒濤のような時間だ
った。
 公園に入るなり、宮子はところどころペンキの剥げ落ちた園内案内図
に駆け寄るや一頻り睨みつけたあと、中央広場と池、そして出入り口に
繋がる人通りの多そうな、けれど十分に広さもあって人の滞ることの無
さそうな唯一のポイントを指差すと
「ここだね!」
と宣言して一目散に走り去った。一度は背中を見失ったなずなが当の目
的地でどうにか追い付いた時には、彼女は既に肩と背中の荷物を下ろし
てイーゼルを組み立て終え、椅子を広げにかかっているところだった。
そして、何が始まるのか、息の弾むままに呆然と見守るだけだったなず
なを見つけると、
「じゃあじゃあなずな氏は、あ、荷物そこ置いといてー」
となずなから手提げを取り上げてしまって、
「で、あっち! 一回あっちまで行って、そっちの方へ、こーいう感じ
で歩いてきてね」
と、広場の方から池の方へ、道を指でなぞるように指し示したのだった。
「え? え? 歩く? 歩けばいいんですか?」
 思えばこのときことは既に始まっていたのだがなずなにはまだ何がな
にやら訳が分からず、うん、よろしくーと言われたままに油断丸出しで
歩いてくるとそこには、広げた椅子に腰を下ろし、その周りには準備万
端、持参した画具をざらりと広げてほとんど釣り人かアクセサリー売り
みたいな佇まいで、らっしゃえー、えー、らっしゃえー、と、早くも衆
目を集めながら妖しい呪文を小声で囁く宮子がいて、なずなは身震いが
するのを感じた。そして何のつもりなのだろうか、股の間には、件のボ
ンゴが試し打ちをして見せたときと同じ位置ですっぽりと収まっている。
 中でもひときわ目を引いたのはイーゼルの下の貼り紙で、らんぼうに
やぶりとったスケッチブックに一ページ、雑だが力強さのある字で大き
く「にがお絵 十五分 四百円」。値段のところはご丁寧に、一度「五
百円」と書いてから二重線で改めてあった。
 これは、声をかけて良いものか。あまりの怪しさに圧倒されて立ちす
くんだところを、
「ちょいと! そこ行くおじょうさんっ!」
「は、はいいっ!」
「にがお絵はいらんかねえ」
「にが……」
あちらから声をかけられ、動けなくなったのだった。
 否も応もない。
 次になずなが我に返ったときにはもう、向かい合った宮子の鉛筆がさ
らさらとよどみない音を立て始めていた。秋に身を装い道をゆく人々は、
まれに見る金髪美少女にがお絵描きの手元を覗き込んでは感嘆の息を漏
らし、それを聞いてようやくなずなも気付いたのだった。これは、サク
ラだと。
「はいおつかれさまー。出来ましたよー」
 きっかり十五分。見せ物にされて泣きたい気持ちのうえ、びびびびび
と無造作な音を立てて切り離されたスケッチブックの一ページが文句の
つけようのない出来映えだったから泣くに泣かれず、半分涙声で礼を告
げるや、
「はい、それじゃあなずな氏は、看板娘よろしくねー」
と、なずなは瞬きをする間ももらえずに、新しいお役目を頂戴した。
 そこからさらに、一時間あまり。
 なずなを描き終えたとき見物に立っていたカップルを最初の客として、
描き終えると次、そのまた次と、客足は数珠繋ぎに途絶えることがなく、
なずなはその間自分の似顔絵を首から下げるように手に持って立ち、興
味ありげな通行人に、いかがですかと繰り返すだけの仕事をこなした。
 はじめのなずなを除いて四組・六人を描き終えたとき、ぎんごーん、
ぎんごーんと、木立で隠すように建てられているポールに括り付けられ
たスピーカーから午後三時を告げる無粋な鐘の音が流れて、描いて欲し
そうにしていたもう一組のお客を残して、そんじゃあここいらで、と宮
子はあっさり店じまいを始めてしまった。
「それではなずな氏、参りましょうか」
「え? い、いいんですか?」
 えー、おしまいなの? と聞こえよがしなカップルに宮子は、ぼ、ぼ
ぼぼくたちはお腹が空いているんだなあ、とテレビで見た高名な貼り
絵画家の物まねで笑いをとって、あっさり追い返してしまった。
「あの、よ、良かったんでしょうか? お客さん……」
 がしゃん、と大きな音を立て、荷物を元来た通りに担ぎ直した宮子の
手にはボンゴの入った手提げも既にあって、なずなは何も言えないまま、
またも揚々と引き揚げんとするそのあとについていくしかなかった。
「うん。二千円もあったら、お昼には十分でしょー」
「えと、そうじゃなくて……」
 眩しく熱い、オレンジの濃くなり始めた光に影を伸ばして笑う宮子の
手には、百円と五十円玉ばかりで二千円、遠浅の、夕陽の海に沈んだ貝
殻のように、光の底で揺らいでいる。「カップルさんは、うらやましい
から二人で六百円でいいやー」と言った、宮子の理屈が未だによく分か
らない。

       ×     × 

「風が出てきたねえ」
 公園の中をまたどこかへ向けて歩きながら、高い並木の梢がざかざか
と音を立てるのを聞いて宮子が呟いた途端、その風は地表にまでさっと
降りてきて、レンガ模様の石畳のすき間を埋めていた砂を舞い上げて走
らせ、噴水池の表面を白く波立たせた。緊張から解放されて油断してい
たなずなは足を取られそうになり、髪とスカートを押さえて小さく悲鳴
を上げた。
「だいじょぶー?」
 たくさんの荷物を担ぎ、ちょっとした旅人風情の宮子はびくともしな
い。
 ちょっとここで待ってて、と宮子が荷物を下ろしたベンチは、さっき
の場所から五分は歩かない、噴水池のある中央広場の片隅の、昔は自動
販売機か何かが置かれていたであろういびつに奥まったスペースに隠れ
るように置かれていて、後ろはせまい芝地をはさんですぐのところまで
雑木林が迫っている。広場と、管理事務所のような建物のある敷地を結
ぶ比較的細めの小径の近くで、人通りはなかった。
 なずなは、また行き先も告げずにどこかへと歩き去った宮子を見送り、
自分も荷物の一つのように腰を下ろしてベンチに背中を預けると、魂が
抜けて、背骨がゆるんだ。最後にはただでさえなだらかすぎる肩がはず
れたようになって、舌の付け根あたりから、どろりと熱い息が漏れた。
 くたびれた。
 ベンチの上で、一旦溶けてから冷えてまた固まりかかったチーズのよ
うになっていると、頭の中から瞼に重石が降りてきた。ぐらり、と眠り
に落ちそうになったところを、指のすき間にかろうじて挟んでいたスケ
ッチブックの一枚のページが滑って抜ける感触の一瞬のくすぐったさが
やけに長く感じられ、どうにか意識を繋ぎ止めた。
 改めて眺める宮子が看板用にと描いたなずなのにがお絵は、辻にがお
絵屋の看板としては申し分のない出来映えだった。
 目鼻に、顔立ち、自分でも結うのがあんなに面倒な髪の編み込みまで、
彫刻が木塊の中から彫り当てられて生まれてくると言われるように、ま
るでスケッチブックのそのページにはじめから眠っていたなずなをただ
探り当てたような自然さでなぞり出していた。
 描かれた表情は、笑うでも、しょげるでもなかった。毎朝の洗面台の
鏡に映る、まつげの先にかすんだ寝起きの曖昧さをしていて、あのとき、
自分は本当にこんな顔をしていたのかな? と不思議に思った。地突然
似顔絵を描かれることになって、もっと戸惑い、抵抗し、呆然としてい
たのではなかったか。
 それに、と強く疑問に思うのは、宮子の瞳から紙の上に写されたこの
女の子は、はっきり、きっぱりと勢いのある線を与えられていたことだ。
鏡のこちらの自分より、よっぽどしっかりしていそうなのが羨ましいの
と同時に、情けなく、癇に障った。描きつけられた線はひたりと静止し
ているはずなのに、既に次の動線を、頬や髪や、細すぎる首筋からなだ
らかに滑る肩のラインの輪郭に持っているようで、動くために力強く止
まっている……それは、人の座布団に腰をおろした、このにがお絵の書
き手の居住まいのようでもある。
 自分の顔がこれほどの意志をもっていないことを、なずなは言葉では
なく知っている。毎朝毎朝向かい合う鏡の中の面差しは、自信なさげに
揺らぐ曖昧な輪郭線と、やわらかな中間色の陰影に薄ぼんやりと浮かび
上がるだけだった。
 ──そんな風に、宮子のにがお絵はなずなを少し不安にさせた。
 無造作に置かれた荷物の一画に例のボンゴが入った袋を見つけて、「
これを持ってついて来て」と言われた最初の言いつけを思い出し、なず
なはその手提げだけ自分の左脇に取り除けて、風に飛ばされないように
とにがお絵の重し代わりにして置いた。
 ところで、当の宮子はどこへ行ったのだろう……そう考えた矢先、宮
子が両手に、同じ銘柄の缶入りのお茶を持って弾むように戻ってきた。
「お待たせー。あったかいのと冷たいの、どっちがいい?」
「あ、ありがとうございます。宮子先輩は……」
「あたしは、どっちでも」
「じゃあ、えと……冷たいので」
 日が傾き、木立の陰が、もうどこにいても届く。手先は少しずつ冷え
てきていたが、今あたたかい物を体に入れるとそのまま眠ってしまいそ
うだった。
「はい、じゃあこれね」
 宮子はなずなと同じベンチに、荷物の山を挟んで飛び乗るように座る
と、勢いよく缶の封を切った。アルミのこすれる乾いた音が、木立の幹
と幹で跳ね返って土に吸い込まれていった。
 なずなもそのあとを追って封を切った。寄越された缶は見たことのな
いデザインで、知らないメーカーと商品の名前が印刷してある。がんば
っても遠慮がちにしか開かない口をちびりと当てると、いつも近場のド
ラッグストアで買っているペットボトルのお茶よりも強いいがらっぽさ
が舌を刺した。緑の匂いが濃い。けれど、それはそれで新鮮で、そうい
うおいしさなのだと思えた。
「ふー、生き返るー」
「おいしいです」
 不意に宮子が荷物の陰から「疲れた?」と顔を覗かせて尋ねかけてき
たから、なずなはお茶を喉に詰まらせそうになった。それもどうにか落
ち着かせ、ゆっくりと、口の中にあったお茶を舌になじませてから飲み
下した。
「えと、……はい」
「そっか。へへへ。あたしももう、右手ぐらぐらー」
 ごめんとも、ありがとうとも、だらしないとも言わず、宮子はただ嬉
しそうに笑い、幽霊のように垂れさせた右手をぶらぶらと揺すって見せ
た。自分のにがお絵をただ持って立っていただけのなずなでさえこうな
のだから、その間ほぼ休むことなく、鉛筆を走らせ、時には客と言葉を
交わして怒ったり笑ったりしていた宮子の疲れはその比ではないはずだ
った。
「でも、楽しかったあー。労働のあとの一杯は格別ですなあー」
 宮子は腰を下ろしたまま、胸を反らせて大きく伸び上がった。まるで
熱い湯に浸かった時と同じ調子で、気持ちの良さそうな長い息を吐いた
──。
 なずなは──一時間以上も立ち通しだったから、だろうか、忘れてい
た爪の痛みが鈍く、また足の甲から脛、膝へと、血管を遡ってくる感触
が不意に意識の下ではっきりとし始めて、靴の中でもじもじと、親指と
人差し指をこすり合わせてみた。血と肉のわだかまる感触で、腰とこめ
かみに鈍い重みを感じ、自然と慣れた角度へとうつむいた視界に、袋か
らはみ出したボンゴと、あのにがお絵が見え隠れする。ともすれば冷た
さを感じても不思議の無いようなそのにがお絵の瞳にはしかし、そんな
翳りはなく、何とも丹念に、長い時間の間にそこに映り込んだ光の粒が
……それがいつの物なのかはわからなかったけれど、描き込められてい
るのがそのとき見えた。宮子が自分の中に見出したその光に背中を後押
しされるように、なずはな「……わたし」と、ゆっくり口を開いた。
「ん?」
「わたし、びっくりしました。こんなことするって、思ってなかったか
ら……」
「あれ。言ってなかったっけ?」
「教えてもらってないです……。せ、先輩は、……あ、そうだ」
 渇いた喉に張り付いて一度つっかえかけた言葉を初めて飲むお茶でぐ
っと押し込んだ、そのときにふっと思い出すことがあって、なずなはス
カートのポケットから、小さくて、淡いピンクのがま口を取り出した。
 その中から一つ、百円玉をつまんで差し出す一連の所作を見て、今度
は宮子が目を丸くした。
「お茶のお金……どうしたんですか?」
「なずな氏。お金、持ってるじゃん」
 信じ難い物を見た、とでも言いたげだ。なずなの白魚のようなゆび先
と、それとはほんのりと温度の異なる白さの頬を、宮子は驚きをもって
交互に見比べた。
「え、はい。えと、……。あ」
 一切れのカニカマで空腹をやりすごそうとしたことが、あらぬ誤解を
生んだのだろう。最後に目と目の合う瞬間に思いの到った先をなずなが
口にするより早く、
「なあんだ。なずな氏もお金無いのかと思ってた。お代はいいよ、さっ
きのお金から出したんだから」
と宮子は、遠慮がちな距離で硬貨をしまおうとしないなずなをたしなめ
てお茶の残りをあおった。
 自分は何もしていませんから、とへりくだることも出来たけれど、そ
れも傲慢な気がした。ゆび先にかかる硬貨の軽さに堪えかねたこともあ
って、なずなは静かに百円をがま口もどした。
「それじゃあ、すみません。戴きます」
「可愛いガマだねー」
「ありがとうございます……」
 また、少し強めの風が吹いて、なずなのとなりで、にがお絵と、重し
代わりに置いたボンゴの手提げ袋がばたばたとなびいて音を立てた。つ
いでに宮子の腹が、蛙のようにグウと鳴く。
「まだかなー」
「ぼんご……使いませんでしたね」
 持って来て、と頼まれたボンゴだったが、にがお絵を描いている間ず
っと宮子の膝の間におさまったきりで、打たれることはとうとう無かっ
た。あれには何か別の意味があったのだろうかとも思ったが、宮子の返
事も
「そうだねー、要らなかったねー」
とそっけなく、使うつもりでいたアテが外れたのだとわかった。部屋で
の宮子の見事な演奏を思い出して、あのまろやかな類を見ない高音を、
空と木々の間に弾ませることの出来なかった、誰かを踊らせる機会を失
ったこの野生の打楽器のことをなずなは哀れに思った。ボンゴのため息
が聞こえるようだった。
「お客さんが来なかったら、なずな氏にそれ叩いて呼んでもらおうと思
ってたんだけど、要らなかったねー」
「そっ……!? そんなこと、考えてたんですかっ!!?」
「うん」
 恐るべき計画。一筆描きで描けそうな顔で目論見をケロリと知らされ
た瞬間、宮子の言葉どおりの風景がそのまま頭に思い浮かびそうになっ
たが、そこにリズミカルにボンゴを打つ自分の姿がどうしても当てはま
らなくて、景色に黒く穴が空いた。
「そんな……」
 何か言おうとして口を開いた途端、ただでも太くないなずなの胸に、
下から詰まる物があった。息がうまく吸えない。そのまましゃべり続け
れば、その固まりが涙腺から何かを押し出してしまいそうだったから、
一度ぐっと空気の塊を飲み込んで、鼻をすすった。
「なずな氏?」
 宮子からの呼びかけにも答えず、なずなはこっそり震える息を吐くと、
また一口お茶を飲み込んだ。
「わ、私、そんな……。宮子先輩みたいに、出来ません……」
 ボンゴで押さえたにがお絵の紙の端が、風にあおられてばたばたと小
さくはためく。自分以外の誰を描いたものでもないのに、自分の決定的
な欠片を見つけられない不安なにがお絵の人物は、ぽこぽこぽことボン
ゴを打つのだろうか。
 宮子は、いつものほえーと言う音を口からこぼして、うーんと唸った。
「別に、あたしみたい、とかじゃなくてもいいのに」
 部屋で見たままだった。宮子の描く渦は大き過ぎて、なずなの中には
それに見合う歯車が見当たらない。ヒロや沙英でさえも持ち合わせない
その巨大な歯車は、春の始業式に途方もないパフォーマンスで講堂を沸
かせたあのおかしな女教師だけが持っていて、どこまで行っても、誰も
噛み合わないのかも知れない。
「でーん」
 宮子は、何が「でーん」なのか、靴を脱いで裸の足をぶらぶらさせ始
める。足の爪は、手入れをしているわけでも無かろうに、せせらぎに洗
われた小砂利の丸さでつるりと自然の光を含んでいた。足の甲には無駄
な肉がなくて浅く骨が浮き、女性らしさこそ希薄だったが、野性味とい
う一風変わった美しさで満たされていた。
「そう、ですか……」
 その足で力強く踏み抜かれるペダルの力が伝わって、宮子の歯車が一
つ動く度、一体自分は何回転させられてしまうのだろう? 天地を失っ
たすさまじい遠心力の中で、ふっと立ち眩みのように意識が遠のくと、
真っ白なのか真っ暗なのかわからないくらい溢れた光の先に、一瞬だけ、
全く違う景色が見えた。風に揺らいだみかん色のカーテンの向こう、ぽ
つんと、秋の空の雲の座布団の上にイーゼルを構えて笑う宮子は、傍ら
のビニールプールにしっかり水も張り、ひとりそれでも笑っているのだ
った。
「ゆの先輩……!」
「ん? ゆのっち?」
 宮子の声で、なずなははっと我に返った。瞳に風景が戻ってくる。自
分は手にお茶の缶を持ち、公園のベンチに腰掛けていた。ほんのわずか
な時間、眠りに落ちたのかも知れない。影がまた少し色を濃くした気が
した。今日、一人で行方をくらませているゆののことが、自分で思うよ
りも心に引っかかっていたらしかった。一瞬の夢の世界で、雲上のなだ
らかな凹凸の上に彼女の影が落ちて、我知らず名前を呼んでしまった。
「どうかしたー?」
 宮子の声がする。
 宮子が雲の上に一人でいるのなら、あの人はどうなってしまうのだろ
う? 時刻は三時を回った。「なるべく早く帰るから」と言っていた乃
莉は、もしかしてもうアパートに帰っているだろうか。それとも自分の
ことは忘れ、日が落ちても戻らないかも知れない。慣れているはずだっ
た一人の休日。誰と、何を見に、何を買いに出掛けたのだろう? 一人
だけ違うにおいの部屋に住む自分には、見当も付かない──。
 寝言のように口にしてしまった先輩の名前のわけを、どうにもうまく
説明出来ずになずなが慌てていると、
「ゆのっちには、叱られちゃうんだよね」
と、宮子がまた、違う話を切り出した。
 やはり以前、今日と同じように宮子の手持ちが無くなった折に、ゆの
を連れて今日と同じことを試みた、という話だった。
「ま、前にもやったこと、あったんですか……」
「うん。そしたら終わってから『おまわりさんとかに見つかったら怒ら
れちゃうよ!』って、怒られちゃった。だから、ゆのっちにはなーいし
ょ」
 なるほど、公園の注意書きなど真面目に読んだことは無かったけれど、
許諾無き営業行為は禁止されていそうなものだ。二時間も派手にやって、
どこからもお咎めを受けずに済んだのは幸運だったのかも知れない。そ
う思うと尚のこと、この計画が恐ろしくなってきた。恐らくゆのも自分
と同様、予想外の展開に押し切られて、流れが去るまででそのことを言
い出せずにいたのだろう。
「ないしょですか……。あ、『せっかく』って、そういうことですか?」
「うん。そう」
 出がけに宮子の口走った、「今日はせっかくゆのがいない」という少
しおかしくて、少し不穏な言い方が、なずなの心にこうまでゆのの影を
ひっかけていた。
 なずなは、看板用にと宮子が描いてくれた自分のにがお絵を、もう一
度ぺらりと取り上げて眺めてみた。宮子には自分がこんな風に見えてい
ると思うと不思議ながらも合点がいき、乃莉が描けばまた違い、ゆのが
描けばまた違う自分が浮かび上がるのだろうと考えた。どんな角度から、
どんな思いで。ただ単純に、普段右に座ることが多いのか、それとも左
か、そんなことでもきっと変わってくる。それを思うと、秋色のスカー
トの裾からはみ出したひざ小僧に、むずむずとした衝動が芽生えた。
「ゆの先輩……今頃、どこでなにをしてるんでしょうか」
「さあねえ」
「気に、ならないんですか?」
「うん、あんまり。怪我したりしてなきゃいいな、とは思うけど」
「そう……なんですか」
「夜には帰ってくるでしょ。ひだまり荘に。聞いたらきっと、教えてく
れるし」
「でも……」
 自身の歯切れが悪いのはいつものことだけれど、ぶつぶつと、言葉と
気持ちは伸びたうどんをすするみたいにいつまでたって終わりを見せな
い。十五分と言い切った時間で、出会ってからの半年というなずなの時
間をずばりと選んで束ねた宮子の業には申し分がなかった。美術科には
こういう訓練があって、誰もがこれをやれるのだろうか。ヒロにも沙英
にも乃莉にも、ゆのにも? 出会ったばかりの頃乃莉が言っていた、「
皆そのためにここに来る」のだという言葉が、今、なずなの中に深い反
響を伴って、宮子とゆの、昨日の教室に何があったのか、何故宮子は今
日ここにいて、ゆのがいるのがここではないのか、その反響と疑問はや
がて、初めからにおいを持たない自分にはその畔で佇むことしか出来な
い目の前の大きくて早い渦に飲み込まれていく。その回転に目奪われる
と、どんどん、どんどん、目眩がひどくなって天地を失い、体の外側の
ことがわからなくなっていくような気がした。頼れるものは、体の中に
あるものだけだった。
「でも、ゆの先輩……何か悩んでらしたんですよね……」
「うーん。そだねえ」
「私、私は……そういうのよく分からないし、ヒロさんたちも忙しそう
だし、乃莉ちゃんは、まだ多分……あの、だから……」
 訥々と、自分のどこかから湧いてあふれ出す澄み切った液体は、さら
さらと自分でもとらえどころが分からず、その向こうに見える景色をゆ
らゆらと歪めてしまう。源流が分からないから、いつものように石で蓋
をすることも出来ない。
「宮子先輩は」
 にがお絵をまた、ボンゴの手提げの下に滑り込ませる。居住まいを正
して座り直すと、体が自然と、少しだけ宮子の方を向いた。宮子は大き
な目をぱっちりと見開いて、不思議な物を見る目でなずなの話を聞いて
いる。
「ひ、ひとりで色んなことが出来るから、その、そういうの……そうい
う……」
 気持、ち……とまた、心が逸って一つの言葉を一息で言えなくなって
きたそのとき、どこからか、奇妙な呼び声が空を渡って響いてきた。


  ──SunFlowerノ オ嬢サん、どコでスカー!?


 大人の男の声だった。
 なずなも宮子も、めいめい声のしたと思った方へ顔を上げたが、その
方向はちぐはぐだった。その声は夕暮れの町を巡るチリガミ交換の呼び
声のように、ぜんたい何処から聞こえてくるのか分からない、反響の迷
路の中にあった。前方の、池の向こうで呼んでいるようにも、背後の雑
木林の奥からのようにも聞こえる。
 外国の人間なのだろうか、ところどころで舌が口の中で持て余し気味
になっている。肺の底からまっすぐに上がって抜けていく太みのある声
で、出所こそ分からないがよく透り、なめらかで、独特の丸い甘みがあ
った。それよりも問題は、言葉の中身の方だった。


  ──オ嬢サん、SunFlowerノ、オ嬢サーん……


「……さんふらわあ……。何なんでしょう?」
 サンフラワー。ひまわり。公園の中に花売りでもいるのだろうか。呼
び声の不可思議さに心がすっと落ち着きを取り戻し、なずなは移動式ス
タンド売りの花屋を思い浮かべながら宮子に視線を戻した。そのとき、
当の宮子が反応した。
「焼けたー!!」
と、耳をぴくりと跳ねさせたかと思うと、ベンチをひっくり返しかねな
い勢いで飛び出すように立ち上がり、
「ちょっと行ってくる!」
と、なずなに声もかけさせず、走っていってしまった。方角はさっきお
茶を買って戻ってきた方だったように思う。池の畔から花壇のある角を
曲がり、その姿は雑木林に隠れてすぐに見えなくなった。
「え? み、宮……」
 言いそびれた言葉の続きを、上げかけた手と一緒にだらりと無かった
ことにして、なずなはため息をついた。
 ひとりに戻ってみると、暮れかけた秋の陽は思いの外冷たく、肌の下
に一枚、水の膜が張っているように感じる。忘れかけていた空腹も、寒
さに一役買っていた。やはり温かい方にすれば良かったと宮子が残して
いった空の缶を横目に眺め、ゆび先の軋む手のひらをこすり合わせて開
いてみると、いつもよりも小さく縮んで、白く見えた。
「ふう。よいしょ……」
 じっと座って待っていても、今度宮子がいつ戻ってくるか分からない。
これだけの荷物を盗もうという者もいないだろう。なずなはベンチを立
った。
 改めて眺め渡す、ぐるりと外周が四百メートルほどの大きな池の周り
には、犬を連れた大学生らしき男や、お年寄りの夫婦や、二、三人の子
供や、カメラを持った自分と同い年くらいの女の子らがいて、それぞれ
に長くなり始めた影を気にしていた。
 なんとはなしに池の畔を目指して歩いてみると、薄いクツの底越しに、
ごろんとした痛みとくすぐったさを覚えた。足を上げてみるとそこには
親指の先ほどの小石があって、なずなはそれを拾い上げ、軽いケンケン
で爪先を整えるとまた歩き出した。朝から切りそびれたままの爪と肉と
のわだかまりは消えなかったが、随分と歩いてなじんできたのか、もう
あまり気にならない。
 池の淵までたどり着くと、池は空色から紫へ、濃さを増した空を映し
て大きな鏡のようだ。手の中の小石が何か生意気なことを言ったような
気がして、なずなはころころとそれをたなごころの上でもてあそんだ後、
控えめな投球フォームを取った。
「えいっ」
 けれど、やっぱりやめた。またさっきと同じように、手にした石の分
重みの増した手のひらをたらんと垂らすとしゃがみこみ、石はそのまま
池のはたの植え込みにころんと転がした。
 それに合わせるように、水面から一匹小さな鯉が跳ねてとび、その鱗
に夕日にもならない光を受けて、一瞬だけオレンジ色の光の塊みたいに
なった。魚の形をした光の塊は、とぷん、と独特のやさしい深みのある
音をたてて水の中へ帰って行った。
 なずなは、なんとなくホッとした心持ちでその鯉の落とした波紋の広
がっていくのを見送った。波紋は歪みもよどみも無い真円で、多分、無
粋な石塊を投げ込んだのではこうはいかない、あるべきかたちと速度を
たもってゆるゆると池全体を覆っていく。
 聞こえなくなった呼び声の主と、彼の探していたひまわりの女性が何
者なのかは分からなかったけれど、二人の存在に密かにちいさく感謝を
して、なずなはため息とは違う、短くてあたたかな息を一つもらした。




     × ☆     ☆     ☆




                            (続く)

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2012年1月 3日 (火)

■a white day~ミューズの座布団・その三 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 -更新第742回-

◆a white day~ミューズの座布団 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』
  その一 / その二 / その三 / その四 / その五 / その六 / あとがき 
 


 
     × ☆     ☆     ☆
 
 
 
 
 大急ぎで部屋を飛び出したにも関わらず、宮子の姿は部屋の外にも既
になかった。すぐ隣、彼女の部屋のドアが開き放しになっていて、そこ
から何やらゴソゴソと物を動かすこもった音が聞こえてくる。
 おじゃましますの挨拶もそこそこになずながサンダルを脱ぎ捨てて上
がりこむと、どの部屋にも備え付けになっている小さな収納スペースに
頭をつっこみ、突き出したお尻をるんるんと振っている宮子の姿があっ
た。
「ちょっと待っててねー」
 何をしているんですかとお尻に尋ねそうになり、なずなは一旦出かけ
た言葉を、口を噤んで鼻からのため息に変えた。嘆息のおつりで体に流
れ込んできた部屋の空気にはさまざまに色を感じさせる匂いがついてい
て、まぶたを閉じるとその裏にすべての匂いが渾然となって一枚の絵を
描くような気になる。中には決して快いばかりではない、上あごをヤス
リで擦られる様に錯覚させる鋭いものも混じっていたが、それもまた寿
司に乗るわさびと同じで、こころの釣り合いをとるための欠かすべから
ざるピースの一つなのだろうと自然に理解することが出来た。
 そんなの当たり前じゃないですか、と──さっき自室で、部屋の匂いが
ここだけ違うと断じられたとき、なずなは言いたかった。分かりきった
話だ。
 なずなの部屋には、他の五室には必ずあるものがない、それは画材だ
った。多種彩々、時には不要な物まで、ゆのが、ヒロが、沙英が、乃莉
が、画材屋やホームセンターで愉しげに買い込むなずなにはてんで謎の
物品の群れは、木、粘土、油、生き物の毛に紙、どれも皆独特の匂いを
持っていて、なずなにとっては一つのジャングルにも等しい。さらにそ
れらが持ち寄られ、混ぜ合わされ、ちょっとお醤油貸してと言う代わり
に取り交わされている当たり前の日常が、なずなの部屋にはないのだか
ら。もしかするとそれがない部屋というのはひだまり荘始まって以来か
も知れない。それを……今更敢えて、突きつけなくても良いではないか
と、強く反駁したかった。その時結んだ拳の力が、まだかすかに手の甲
に残っている。なずなはその手のひらと、待ッテテネー、アソーレ待ッ
テテネーと、能天気に歌う宮子のお尻をかわるがわる見つめ、もう一度
小さく拳に結んで、そのまま、胸にぐっと押し当てた。

 そうして手持ちぶさたになってようやく、なずなの目にも、部屋の様
子が落ち着いて映り始めた。
 部屋の中央を広場のように大きく使って置かれたイーゼルと、そこに
鎮座ましますカンバス。そういえば、さっきなずなの部屋で宮子は、今
描いている絵を「なかなかいい」と言っていた。あのイーゼルとカンバ
スが、今この部屋の王様なのだとひと目でわかった。
 そしてまた、床に無秩序に散らかされたように見えるたくさんの画具
が、カンバスを中心として幾重かの同心円かあるいは歪んだ渦を描いて
いることにすぐに気付く。その航跡はまるで宮子自身がイーゼルの上の
絵に辿り着くための道のりと、たくさん時間を象徴した波紋のようで、
この部屋を天井から写真に撮れば、それだけで何か一つの作品になるよ
うな気もした。美術畑の同居人たちの影響か、最近すぐにそんなことを
考えてしまう自分を、なずなは少し恥ずかしく思っている。
「本当に、朝からずっと部屋にいたんですね……」
 なずなの口から、ぽつりと本音がまろび出た。
 朝からあまりに静かだった隣室にはてっきり誰もいないものだと思い
こみ、本人の口からずっと部屋にいたと聞かされても、なずなはまだ半
信半疑でいた。けれども、この、まだどこか新鮮さ……折り取ったばか
りの生木にも似た湿りを感じさせる匂いと、足下に巨大な渦を巻いた思
いの遺構が、静謐で濃密な宮子と絵との語らいの時間を物語っていて、
あのあり得ない静けさを疑う余地はもうなかった。
「えー? あー、うん。ごめん、ちょっと待っててね」
「絵……見てても、その……い、いいですか?」
「うん! どーぞー。えへへ」
 嬉しそうな宮子の声を背に受けて、なずなはその大切な渦を壊さぬよ
う、乱さぬように、そしてうっかり飲み込まれないようにと、孤に沿っ
た大回りでカンバスに歩み寄った。そして王様然と部屋の中央に鎮座在
す絵の尊顔を、やや斜め横から覗き込むように伺った。
 静寂。
 それまでごそごそと部屋の空気をくすぐっていた、宮子が収納を掘り
進む音の止む時間が少しだけあった。
「どーかな? うへへ」
 沈黙を破った宮子の声は、こもりながらも誇らしげだった。彼女の唇
の端が、緩くほころんでいるのが声だけでわかる。感想を求められて、
なずなは慌ててカンバスの正面まで回り込んでから、もう一度きちんと
絵を見つめてみた。
 カンバスにはまだ白い空き地が結構な面積広がっていて、黒く曖昧な
輪郭線だけの箇所も半分くらい残っていて、描きかけであることは分か
る。その状態にあって、それ以上の感想を持つことは、なずなには出来
なかった。
「ええと、あの、その」
「あはははは」
 宮子は、なずなが心に汗をかくのをお尻のセンサーで感じ取って高ら
かに笑うと、無理しなくていいよーといままでと違うリズムと軌道でお
尻を揺らした。
「あ、これかな?」
 ほどなくして、収納からじりじりとバックで這い出た宮子の手には、
B4サイズほどの小さな手提げがあった。稲穂色の髪をうっすらと埃で
染めたまま、宮子はその袋の口を広げて中を確かめ、うん、と一度力強
く頷いて顔を上げた。探し物が見つかったのだろう。
「ゆのっちもさ、『よくわかんない』って言うんだよね。ヒロさんも、
沙英さんも」
 絵のことを言っているのだと気が付いたのは、なずなを見る彼女の目
と頬に、普段よりも強い力が宿っているような気がしたからだった。手
提げに気を取られて、なずなには始め、なんの話か分からなかった。
「ああ……。ゆの先輩でも……ですか?」
「うん。吉野屋先生くらいだよ、良いって言ってくれるの」
 困ったもんだよねー。なんでかなー。まあでも仕方ないよね、とその
話題をぷつんと簡単に諦めると、宮子は床に散らかった画材やらなんや
らを、ほいほいと飛び越えたり、拾い集めたりしながらなずなの隣まで
やってきた。そして描きかけのカンバスを、一度子どもに高い高いをす
るみたいに取り上げて満足そうに微笑むと、
「君は、お留守番ね」
と手近な壁に立てかけてしまい、慣れた手際でイーゼルを畳むと鼻歌混
じりに小脇に抱えた。
「そういうものですか……」
 そういえば、自分はここへ何をしにきたのだったか。なずながそう思
い始めた頃、宮子は拾い集めた画材をナップザックにざらざらと詰め込
んで、畳んだイーゼルと、その前に置いてあった小さなパイプイスも畳
んでくくりつけると、
「じゃあなずな氏は、これ持ってついて来てね」
と、先ほどの手提げ袋を、なずなに向けて突き出したのだった。


       ×     × 


「こんが……」
 そんないきさつを経て、今、なずなの手にはその楽器の収まった手提
げが下がっている。立ち止まって袋の口を広げ、浅く日焼けした革の打
面に呟きかけてしまう。
 なずなは戸惑っていた。
 宮子は「ご飯を食べに行こう」と言った。この身支度が必要な食事と
は、果たしてどんな場なのだろう? 皆目見当がつかないものの、ある
意味で畏まった席であるような気もしてくる。「路銀が尽きた」と言っ
た宮子は論外、自身の懐具合も怖くなって、なずなはぶんぶん重い手提
げ袋に引きずられるようにして、小走りに宮子に並んだ。
「あ、あの、宮子せんぱ……」
「ぼんごだよー」
「え?」
「それ。コンガじゃなくて、ボンゴなんだって。コンガはもっと大きい
んだってさ。それもお土産物で、本物じゃないんだけどね」
「ぼんご……」
 なずなの呟きを拾った宮子の回答はまたしても頓珍漢だったが、なず
なはいま一度手提げの中を覗いて、頭の中でぼんご、ぼんごと、次は間
違えないように繰り返し唱えた。
 お兄ちゃんが、外国で買って作ってくれたんだーと始まった宮子の話
は、いわく『外国』がどこなのか、買ってきたのか、それとも買ってき
た材料から拵えてくれたのか表面が曖昧だったが、彼女の兄がいかに嬉
々としてそれを妹に贈り、またその打ち方を伝授したかを、シルエット
の軌跡とともに伝える豊かさがあった。
「お上手でしたよね、宮子先輩」
「えへへ、そう? ありがとー」
 部屋でボンゴを捜し当てたあと、宮子はなずなに、試し打ちをして聞
かせてくれた。
 ちょっと見ててね、とベランダに出、宮子は自分の頭より先にボンゴ
の埃をはたいて清めると、木筒二つを繋げた形のその楽器を、両足の真
ん中に抱き込むようにしてあぐらをかいた。
 演奏は、やにわに始まった。
 ほんの少し前までは絵筆を握っていた筈の、まだ色とりどりに汚れた
ままだった宮子のゆび先は乾いた木の葉が蝶に化けたように強く反り返
ってひらひらと踊り、そこから繰り出される音符はあの単純なつくりの
楽器を奏でていることが信じられないくらいさまざまで、数多の鳥が羽
を休める熱帯の木々の魂がそこに込められている様を思わせる。
 音色も、なずなが思い描いていたのよりも、カンカン・コンコンとず
っと高く鋭く澄んでいて
、それなのにその音の表面には一つも角張った
ところがない。丁寧に面取りのされたまろやかな曲線が、耳の奥で波を
打つようだった。もっと鈍さのまさる音がするものだとばかり思ってい
たなずなは素直に驚いた。
 演奏は短いもので、宮子がどんなメロディを思い浮かべてそのリズム
を刻んでいるのかまでは分からなかった。
「宮子先輩は本当に……何でも、出来ちゃいますね」
「そんなことないよ。お父さんとお兄ちゃんに教えられて、結構練習し
ましたからなあ」
「お兄さん……。そういえば、さっきの歌も……」
「あれは、お父さん」
 出がけに宮子が口ずさんだ、あの歌のことだった。ともすれば惨めな
境遇をあっけらかんと歌う様がアンバランスで記憶に残る。うっかり乃
莉と一緒の時に、風呂で口ずさんでしまったりしないようにしなければ
と今から余計な心配をした。
「やさしいお父さんとお兄さんなんですね」
「そーでもないよー? 結構スパルタでさあ」
 意外な言葉が飛び出して、なずなは足が半歩遅れた。そうなんですか?
となずなは言葉以上に恐ろしいものを想像し、宮子はじわりと西に傾い
た日に向けて下唇を尖らせた。
「変なところで厳しいんだよね。二言目には、ひとりでもやっていける
ようにってさ」
「ひとりでも……」
 宮子の家庭に関しては、色々と不可思議なエピソードも聞いていた。
風呂に困らぬようにと、一人暮らしのお供にビニールプールを持たせた
両親の話はもはや現役にして伝説だ。やんちゃアパートの逸話の一つと
して先々と語り継がれるに違いなく、テントウムシに好かれる娘の引っ
越しを、本人不在で勝手にやってしまう程度の両親では、話の飛躍とい
う面において太刀打ち出来ない。逆に、娘の留守に荷物をすべて運び出
してしまうくらいでなければ到底かなわないだろう。そうして出来上が
るガランとした部屋、誰ひとりいなくなってしまったアパート。その中
で自分は、耳を刺す静けさにかまけることもなく、ただ一人自分の、自
分だけの信じる思いの渦の中心に向かって、全速力でゆび先を走らせる
ことが出来るだろうか。そしてたとえ筆を奪われても、いきいきとコン
ガを打つこともをやめずにおられるだろうか。ひとり。ひとりで。
「あの」
「うん?」
 遅れが半歩から一歩になり、二歩になった。宮子は、なずなとの距離
に気付きながらも、まだ足を緩めたりはしない。少し離れた後ろから見
上げるパーカーの肩はまた秋の空に触れ、境目を失おうとしていた。
「ゆの先輩は……今日はひとりの日だって、言ってましたけど……」
「へ? 何それ。ゆのっちが? 会ったの?」
「え!? だ、だってさっき、宮子先輩が、そう……」
「ああ、そういうこと。うん。多分だけどね」
 確かに、ヒロの部屋の前で。宮子がそう言ったのをなずなは聞いたは
ずだった。さすがに宮子も驚いたのか足を止めてなずなを見たが、その
目はいつも通り、つるんとした光が透けて嘘がない。ただ自分で言った
ことを忘れていただけだと分かってなずなはほっとした。
「それ……何なんでしょうか……?」
「あたしが勝手に、そう言ってるだけだけどね。よいしょっと」
 宮子は一度軽く沈ませた膝を跳ね上げて、ずれ落ちかかっていたトー
トとナップザックの位置を背負い直した。
「ゆの、たまに一人でどっか行っちゃうんだ。スケッチブックとか持っ
て」
「絵を……?」
「うん。なーんにも描けずに帰って来ちゃうことの方が多いけど。あは
は」
 なずなが小走りになってようやく並びかけることの出来た横顔は、カ
ラカラと笑っていた。一体、何が可笑しいのだろう? 歩く早さを急に
変えたせいで手提げの振幅が不規則にずれて、コンガの角がゴツンと一
度、脛を打った。その拍子に、切りそびれたままの右足の親指の爪がま
た肉に浅く食い込んでしっくと痛み、我知らず、小さく顔をしかめてし
まう。
「先に教えてくれることもあるし、黙って行っちゃうときもあるし。何
がスイッチなんだろねー」
 宮子は首を傾げたが、なずなには、ゆののその振れ幅が分かるような
気がした。振幅に差こそあれ、きっとそれが普通なのだ。宮子ほど、始
終高いレベルでハイな感情を保つのにも体力が要りそうだと思うが、ゆ
ののように頻繁に、高空と低空を繰り返し飛行していたのでも、具合を
悪くしてしまいそうだ。かといって自分のように、いつも雨の前のつば
めみたいな高さを飛んでいるのも、人を不安にさせやしまいかと、びく
びくしている。
「そういえば、昨日の晩ご飯も……」
「夜中になんか食べてたみたいだよ。あのあと、遊びに行ったら慌てて
た。あはははは」
 昨晩は、明日が打ち合わせで時間がないという沙英と、それに付き添
ったヒロを除いた下級生の四人で集まって夕食をとろうという話になっ
ていたのだが、気分が優れず食欲もないというゆのの申し出から中止に
なった。だったら食後のお茶だけでも、と三人だけで集まり、ゆのさん
どうしたんですかねー? と尋ねるともなく言う乃莉と、んー? んー。
と曖昧な返事を返すきりの宮子の会話を、なずなはやはり外野から、お
茶をちびちび舐めながら伺っていた。
 宮子が言っているのはそのあとのことで、ゆのは深夜になって体調が
戻り、お菓子かおにぎりか、ぱくついていたところに宮子の襲撃を受け
たのだろう。その様子を想像して、なずなは笑ってしまった。
「だから多分、今日はこうなるかなーって」
「え?」
「結構、ダメージ受けてたからねー。学校でさ。あったのですよー」
 宮子の言葉は断片的すぎて、学科も違うなずなには推し量ることも難
しかった。川面の飛び石を渡るように、そのしなやかなふくらはぎ同様
ひゅんひゅんと跳躍する思惟は「突」「拍子」「もない」という言葉が
これ以上ないくらいに相応しく、きっと誰をも振り落とす。さっき部屋
で見た大渦も、その中心まで溺れずにたどり着ける人間はほんの一握り
で、ゆのはおろか、沙英やヒロでさえも道のり半ばで前後不覚に陥るだ
ろう。唯一、吉野屋だけが渡りきることが出来たのだ。
 なずなは大慌てで人差し指を下唇に添え、自分に届く最短距離で、上
目遣いに宮子の言葉のあとを追った。
「えと……お友達……とケンカとかですか?」
「ううん。絵」
 踏み石を一つ間違えたらしい。何か授業で、美術のことで落ち込まね
ばならないことがあったのだろう。宮子はゆののその様子を知っていて、
ゆのが今日にも一人で行方をくらますことを、これまでの経験との足し
算でなんとはなしに感じていたということだ。
 美術科の授業では、しばしば作品に順位付けをされて講評を受けると
いう話を、なずなは乃莉から聞いていた。
「これが結構堪えるんだよ。人前でさー。あたしはまだ、一番下の方に
されたことはないんだけど──」
 そう話す乃莉はおどけ半分でトントン肩を叩いて見せたが、それでも
実際参っている内心が滲んでいた。比較的図太い乃莉をしてこう言わし
めるのだから、あのひときわちいさなゆのをその刃が襲ったのだとした
ら、臓器の一つや二つ、傷ついていてもおかしくないとなずなは思った。
「じゃあ夕べは、部屋で何かお話……」
「んーん、別に。隠れて一人でお菓子食べてたから、太るよーって脅か
したら半分くれた!」
 にっかと笑ってブイサインを突き出す、魚釣りゲームの魚みたいな並
びの歯にはそのとき食べたお菓子の残りかすが挟まる隙間もない。カチ
ンと音の鳴るくらい、あまりに真白く光っている。
 その笑顔になずなは言葉を失ってしまった。空腹のせいだろうか。そ
れとも、わけも聞かされずに連れ回されているせいだろうか。じわじわ
と、足の肉に食い込む爪の、鈍くて重くて、疼々としたわだかまりが胃
の辺りまで無言で這い上がってきたような気がする。伸びた爪がお気に
入りのソックスを突き破ってしまわないかとハラハラしている自分と、
いっそそれを口実に、頭を下げてアパートまで逃げ帰ってしまおうかと
いう自分とが、心の中で、せめぎ合うでもなく、ただ道を譲り合ってい
る。
「あの……宮子先輩」
 おずおずと、果たしてそのどちらの自分が先に折れるのか分からない
まま、しっかり閉じることの出来ない自分の口から言葉が漏れるのを止
められない。これもいつものことだった。
 なにー、と宮子の調子は変わらない。いつもの宮子のままだ。
「の、のり……」
「え?」
「の、乃莉ちゃんは……宮子先輩の絵、なんて、言ってましたか?」
「乃莉すけさん? おー。そういえば」
 前を行く宮子は軽く空を仰ぎ、思い出すための間があった。乃莉すけ
さんにはまだ見てもらってませんなー、というあっさりとした答えに、
なずなのなで肩がまた一段下がった。
「あ、そう……ですか」
「また今度聞いてみるね。えっと、ここ右だっけ」
「え? 公園行くんですか? ……はい」
 道は、なずなが地元だ。行く先こそ分からなかったが、ここを右に折
れることを意識するなら目的地はそれしか思い当たらなかった。以前、
アパートの皆に手軽に遊びに行ける広場を尋ねられて教えたのがそこだ
ったのを、宮子も覚えていたのだろう。けれど、どうして。昼ごはんの
話はどこへ行ってしまったのか。
 お昼と、ボンゴと、公園。三つを結んで星座を作りなさいという出題
に、果たして、吉野屋だったらどう答えるだろうか。答えられるのだろ
うか。その疑問も晴れぬまま、
「はい、とうちゃーく」
と、最後まで揚々とした宮子の声に導かれ、なずなは緑地公園の、大樹
が象るアーチをくぐったのだった。
 

 
 
     × ☆     ☆     ☆
 

 
 
                            (続く)
 
 
 
 

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2012年1月 2日 (月)

■新春アドリブ絵日記 -更新第741回-

本日も、平穏にお休みを戴いておりましたオイサンです。
久方ぶりの二連休。
一日が意外と長い感じです。
マ特に何をしたってワケでもありませんけれども。

R0046136
お雑煮2日目。

朝方、外は雨。

昼から、小学校からお付き合いのある友達と、近所のオサレコーヒー屋さんでお茶タイム。

しかしまあ……
彼は昔っからテレビゲームだけは大好きで
大人になってもその性質はずっと持っていたようなものの、
……いつの間にやら、すっかり声優(ラジオ)の世界にハマってしまっていたようです。
イヤ、オイサンがビックリする位にたくさん聞いてて、
色んな周辺のコトにも無意識に詳しいものだから、ビックリしてしまいます。

  なんか『ひだまりスケッチ』、『ひだまりラジオ』が発端みたいなんだけど。
  話をするネタがたくさん出来て嬉しいんだけどね。
  それにしたって、何故このタイミングでw

オサレカフェで2時間近く、あすみんやら『けいおん!』やらの話で沸き上がります。

R0046203

ああそうそう、このオサレコーヒー屋さんのマスターが、
オイサンの地元の中学の一コ上の先輩だと知ってびっくりしました。
まあ、生徒数1000人超、一学年十クラスのゾイドマンモス校だったので
そう言われたってどこの誰だか分かりやしないんですが、
それでも地元の人がこうして地元でオサレなことをして成功しているかと思うと、
やはりちょっと感動してしまいますね。
気のいいオヒゲのマスターです。

ケニア珈琲とシフォンフロマージュ(レモンフレーバーのシフォン)を戴きました。
旨ェ。

親父殿から「LANケーブルを買ってこい」という指令があったので、
友人にクルマを出してもらい近場のミ○リ電機へ。
売り場は広いのに品揃えが残念気味で、閑散としている……
むぅん、やる気が微塵も感じられない。
活気がねえなあ。

そこで関東で買いそびれていた『セブンスドラゴン2020』をゲット。
まあやる時間あるかわからないけど。

ひとめぐり電気屋を冷やかして、
「『ひだまりスケッチ』のDVDを借りて帰りたい」という友人の言葉を受けて
隣のゲオを覗き、
……という、カーラジオ代わりに流れる『ひだまりラジオ×365』の#9、
サワシロンのゲスト回が心に沁み入る一日でした。

  そうそう、この時、「ある女性声優がゲストに来た回が面白かった」
  という話になり(イヤひだまりラジオは全部おもしろいっていうかおかしいんだけど)、
  それが誰だったか? 誰役の声優だったか? という話で紛糾したのですが……

    「保健の先生じゃないか?」
    「いや、保健の先生役はゲストには来てねえ」
    「じゃあ……有沢センパイ?」
    「余計だ」
    「チカちゃん」
    「……も、来てはなかったはず」
    「他にいないだろう!」

  結局それが最後まで「夏目だ!」というのが、オイサン出てきませんでした。
  この場を借りて隊長に土下座したいと思います。
  隊長、ミサトゥス、ゴメン。 or2

バンゴハンは牡丹鍋。イノシシ肉のお鍋ですね。
味があって美味しいお肉でした。


R0046147
雨に濡れた坂道。

オイサンの父君は今六十代半ばなのですけども、
七人だか八人だか兄弟の末っ子でして、
もうそのくらいのお歳になると、兄弟も、お友達も、
少し早い人は静かに世を去ったりすることが、あまり珍しくなくなってきているご様子。

  家の近所でも、古くから親しくしていた人が不意にお亡くなりになったり、
  いたします。

やはり近しい人であったり、近い立場、年齢の人がそういうことになると
自身のこととして考えてしまうのも無理からぬことのようで、
その日のための支度とか、覚悟とかを、ゆっくりと始めているみたい。
そういうことを考えるのは、子供の身としては辛かったり面倒だったりしてしまうのですが、
やはり立派な姿だなあと、
自分がその立場になった時のお手本として憶えておこうと思うのです。
そしてまあ、その心構えに応えられるように、
真摯に受け止めて振舞わねばならないのでしょう。
……けども、どうしたら良いのか。
うーん。
明日の朝にでも、今思っていることを、きちんと質しておこうか。



マそんな感じでヒトツ。



ホントなんてことのない日記ですけど、
いや、穏やかなのが結構なことですね。
お正月っぽいというか。
今年一年、良い年に出来るように頑張りたいと思います。

オイサンでした。


 ▼オマケ・小ネタ劇場

R0046182
「ふう、お猪口温泉はあったまるわい」



 

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■a white day~ミューズの座布団・その二 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 -更新第740回-

◆a white day~ミューズの座布団 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』
  その一 / その二 / その三 / その四 / その五 / その六 / あとがき 
 




     × ☆     ☆     ☆




 それから三十分もしないのち、なずなは……何故か、宮子とともにア
パートを出、外を歩いていた。

「じゃあ、なずな氏はコレ持ってついて来てね」

 そう手渡されたB4サイズほどの小さな手提げは、小さいが結構な重
さがあった。それをぶらぶらさせながら、いつもすまないねえ、とおど
ける宮子の後ろをついて行く。
「いえ、あの……。私こそ……、すみま、せんでした……」
 すみませんでした、も一息で言えない。本当に、自分はいつまでも何
をやっているんだろう。本当に。
 前を行く宮子の肩にはなずなには名前も分からない画材のぎっしり詰
まった大型のトートがかかっていて、背中には、それからも溢れた道具
を収めたナップザックに、小型の折りたたみいすをビニールひもで無理
矢理に結わえ付けて背負い、遠足の朝の様に揺れている。
「持たざる者は持てる者からオコボレさずからなーくちゃー♪」
 なんだか惨めな歌声も揚々と、歩く宮子の足がどこを向いているのか
も知らされず、アパートを出てから見慣れた町並みをまだ五分と歩いて
はいなかったがなずなの心は不安で一杯だった。
「……。なんなんですか? その歌……」
「お父さんに教わった!」
「……そうですか」
 他に、もっと聞くべきことがあるだろうに。けれどそれは敢えて言わ
ないのかも知れない宮子の気遣いを台無しにする行為の様な気もして、
当たり障りのないことしか聞かれずにいる。俯いた視線の先に、宮子か
ら手渡された手提げの中身がちらりと覗く。

「(……こんが?)」

 宮子が自室の収納から発掘してきたその木製・革張りの小振りな打楽
器は、その見た目に反してぎゅっと重たかった。
 部屋で見たその楽器は、白樫材で出来た胴体がすとんとまっすぐな円
筒形で、年月を経て飴色に近い美しい光沢を有しており、筒の上面には、
ほのかに日焼けして黄味を帯びた白い、もしかするとかなり上等な革が
ぱりんと張られていた。その革の打面は指先で触れただけで肩の骨まで
まっすぐに押し返してくる緊張があって、宮子が少し試し打ちをして見
せてくれただけでも、そのリズムに鼓動を操られてついつい踊り出さず
にはおられないような、熱い響きを裡に秘めていたのだった。

 ヒロ宅前でのやりとりの後、なずなの目論みはあっけなく崩れ去った。
おなかを空かせた先輩をゴハンを餌に自分の部屋へおびき入れるまでは
簡単だったが、いざ部屋へ戻ってみると、冷蔵庫にはふた切れ残ったカ
ニカマの口の開いた袋があるきりで、なずなはキッチンの床に崩れ落ち
たのだった。
「な、な、な~♪ なずな氏の~♪ 今日のお昼はなんだろな~?」
と、背後から弾んできた宮子のでたらめな歌声に、全身がびくん! と
総毛立ったときの怖気が、産毛の先にまだ少し残っている。
「す、すみません、先輩……っ。う、うちにも食べ物が、こ、これしか
……っ」
「……あえ?」
 カニカマを、手持ちの中で一番よそいきの皿に盛って差し出したなず
なの声と手はふるえていた。
 とりあえずお茶を煎れ、カニカマは一人一本ずつ、手で摘んで食べた。
宮子は一口に、なずなはそのいんちきな繊維を縦に三つに裂いて食べ、
ほのかに香るカニの風味を鼻の奥で転がした。大口を開いた宮子が、歯
科の専属モデルにもなれる歯並びでカニカマに食らいつく姿に、なずな
は昔おもちゃ屋の店先で見た釣り堀が電動で回転する魚釣りゲームを重
ねた。
 カマボコを丸飲みにし終えた宮子がテーブルの湯呑みを取ろうとした
時、
「熱っ……あ。ひび」
と、ぴくんと手を跳ねさせて言うので見てみると、彼女が部屋から持参
した大きなお湯呑みの一面に、模様とは明らかに違う黒い亀裂が一筋、
上から下まで走っていた。
「あ、本当……」
「うーん。もう換えどきですかな」
「もったいないですね。かわいいのに……」
「そだねー。でも、お下がりだから。仕方ないね」
「そうなんですか」
 小さなテーブルを挟んであぐらに座った宮子は、湯呑みを上から下か
ら矯めつ眇めつ、別れを惜しみながらも淡々と、そのものにしみこんだ
時間を確かめているようだ。宮子の手に誂えたようになじんで見えた湯
呑みも、元はひとの物だった。
 空色のパーカーに、深い青のジーンズ。
 なずなはいつも思うのだがその居住まいは不可解で、留まるときにこ
そ勢いがあるように、預ける体重に加速度を感じさせる。そのくせ、動
き出すとき、地面を蹴るときはしなやかで後腐れもなく、誰の座布団で
も湯呑みでも、すっと腰を落ち着けてしまう佇まいはどこへ行ってもも
じもじと席を見つけられない自分とは大違いだった。うらやましい、の
と同時に、少し怖い。どこへでも行けるということは、ここであること
に強い理由が必要なことの裏返しだと思った。
 宮子の方からなずなに昼食をたかってこなかったのには、彼女がなず
なが料理を得意としていないのを知っていたのと、曲がりなりにも自分
の方が先輩だから、という理由があったのをなずなは知っていた。
 ゆのが言っていた、
「別にね、宮ちゃん、なずなちゃんの料理を食べたくないっていうわけ
じゃ、きっとないんだよ」
という、ころころとした優しい声と言葉がよみがえる。不得手な料理を
少しでもどうにかしようと、ゆのにコーチをお願いしたときのことだ。
モタモタと、じゃがいもの何処に刃を当てたものかと動きを止めるなず
なの隣りで、遙かに手際よく道具と材料を取り回しながら、ゆのは笑っ
た。
「なずなちゃんに苦手なことさせて、無理させるのが嫌なんだよ、きっ
と。だから焦らないで、ゆっくり上手になって。いつか『なずな氏~、
ごはん作ってー』って言わせちゃおうよ。ね」
 自分よりも背丈の小さな先輩のモノマネは決して似ていなかったし、
その解釈も、本心ではあったのだろうけれど、当のなずなには好意的に
過ぎるように思えた。けれど、それは自分のうしろ向きな性質と相殺さ
せて、長く宮子をそばで見てきたゆのの感覚を信じることに、なずなも
したのだった。
「あの……午前中、……どこか行ってらしたんですか?」
 なずなの、前髪に隠れながらの問いかけに、宮子は「部屋にいたよー?」
と、茶柱でも浮いているのか湯飲みから目を離さずに応えた。
「そう……なんですか? すっごく静かだったから……。てっきり、ゆ
の先輩と一緒にお出かけだと」
「ふーん? ずっと、絵描いてたからね」
 その返答には驚きもしたし、そういうものか、と思いもした。半年隣
の部屋で暮らしていて、こうまで静かだったことは記憶にない。宮子が
眠っているはずの時間においてさえそうだった。だったらこれまでこの
先輩は、一人の時間にはあまり絵を描いたりはしていなかったのだろう
か? という、うっかりすると失礼な疑問も浮かんでくる。
 宮子は湯呑みはをテーブルに戻し、ことわりもなくカーペットの上に
大の字になる。気持ち良さそうに鼻から抜けた深い息は、窓から吹く風
よりも勢いがあった。
「今描いてるのが、なかなかいい感じなんだよねー。へへへ」
「そうなんですか……」
 なずなは、三つに裂いたカニカマの最後の短冊を唇にくわえ、咀嚼し
ながら丁寧に口の奥へ奥へと運んでいく。居心地の悪さや緊張あるわけ
ではなかった。ただ、宮子の胃袋はなずながこれまで見てきた限り──
おかしな話だとは思うが、多分、この部屋よりも大きい。それだけの空
間にあの小さなカニカマがころりと転がっている様はいかにも侘びしく、
それをどうにかしなければという焦りが湯呑みの底に揺らいで見えた。
自分に考える猶予を与えるように、ちび、ちび、ちびと、アパートの中
でも一際ちいさな湯呑みのお茶を、なずなは時間をかけて啜った。
「なずな氏はさあ」 
「はい、えっ、はい」
 湯呑みと見つめ合っていたところへ声をかけられて思わず背筋が伸び
た。宮子は変わらず、床に転がったままの格好でなずなを見上げている。
「なずな氏の部屋は──」
 宮子は仰向けのままひくひくと何度か鼻を利かせると、
「なんだかちょっと、ふんわりイイ匂いがしますな」
「そ、そう……ですか?」
「うん。よ、っと」
と、筋肉の伸び縮みだけで体を起こす。その仕草ひとつで、彼女の体が
アパートの誰よりも強いしなやかさを持っていることが分かった。どこ
にも無理のない、すべての力が体の一点で綺麗に釣り合った滑らかな動
きだった。
「ここだけ、みんなの部屋とちがーう」
 座り直して目を閉じ、改めて深く息を吸い込んだ宮子の顔は満足げだ
った。肉体のしなやかさ、感覚の鋭敏さにおいて、このアパートで彼女
の右に出る物はいない。その宮子に断じられ、なずなの心臓がどきんと
跳ねた。
「そう……ですか」
「うん!」
 なずなは、また湯呑みを底を覗き込んだ。益体もない茶っ葉の粉がう
っすらと残っている。考えてはいけないことと分かっていても止められ
ない言葉が脳裏をかすめ、なずなは色素の薄い前髪の陰から、ちらりと
宮子を伺った。
 そんなの、当たり前じゃないですか──。
 そう言葉が口を突きかけたその拍子、なずなのちいさな胃袋がころこ
ろと鈴の音のような音で鳴いてしまった。空きっ腹に中途半端に物を入
れたのがまずかったのだろう。
 物言いたげににへりと笑う宮子に何か弁明をと慌てたが、その声は排
水溝が渦を吸い込むような宮子の腹の音にきれいにかき消されてしまっ
た。ずごーっ。
「なあんだ。なずな氏もお腹空いてたんだねー。へへへ」
「……はい」
「さっきのでもう、お腹一杯なのかと思っちゃったよー」
 なずなは観念してうつむき、宮子ははははと笑って表情をぱっと輝か
せると、またも勢いをつけずにするりと立ち上がった。膝丈のジーンズ
からのび出た脛には無駄な肉がなく、飾り気のない素足の爪も、伸び気
味ではあったが手入れの必要がないくらい丸い。
「それじゃあ、今日はせっかくゆのもいないことだし」
「……え?」
 頭上からこぼれた、少し不穏な一言に釣られて見上げると、宮子の顔
がもう目の前に迫っていた。宮子は、ちゃぶ台の湯呑みをつかみ上げて
残ったお茶をぐっとあおると、湯呑みのひびから染み出すお茶のしめり
をためらうこともせずに、その手をなずなに差し伸べた。
「ごはん、食べに行こっか」
「あ、はい……え?」
 その様があまりにさりげなくて、なずなは、うっかり疑いを感じるよ
り先に取ってしまったその手に、あっという間に引き起こされていた。
「それでは、ごはんの支度を始めましょー」
 ただでさえ背の高い宮子に目の前に立たれると、なずなの視界はその
胸と、ラフに開いた襟元からのぞく逞しくて艶やかに上下する鎖骨で塞
がれて、はい、としか返事のしようもなかった。
「では!」
 言うが早いか、踵を返した宮子の姿は部屋を飛び出てもう見えない。
開け放されたドアからは、部屋よりも温度の低い空気が流れ込んできて、
丈の浅い靴下からこぼれたなずなの、これまた頼りなく可愛らしいくる
ぶしを冷やした。予測不能。二人きりのアパート。さっき切ろうと思っ
てそのままになっている親指の爪が、こつりと肉に食い込む痛みを感じ
た。
 その感触に苛まれながらも急き立てられ、なずなは慌ててサンダルを
ひっかけると、走り去ってしまった宮子のあとを追った。



     × ☆     ☆     ☆



                            (続く)




 

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2012年1月 1日 (日)

■a white day~ミューズの座布団・その一 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』 -更新第739回-

◆a white day~ミューズの座布団 SS『ひだまりスケッチ×☆☆☆』
  その一 / その二 / その三 / その四 / その五 / その六 / あとがき 
 

 その日曜の午後、気付いた時には、アパートにはもうなずなひとりに
なっていた。

 窓辺の床に一人素足を投げ出して、なずなは天井に向けて小さく息を
ついた。窓を抜けてくるあるやなしやの風に、山吹色とクリーム色の中
間をしたカーテンがふわりと持ち上がる気配が耳朶をくすぐる。そのカ
ーテンを透した光で満たされるから、晴れた日の部屋の中は淡い黄味を
帯びた白で、みかんの中にいるような気分になる。

 しずかだなあ……。

 なだらかに夏の熱気を失っていく、今年の秋口の空気は肌とほとんど
境目がなくて、うっかり眠ってしまおうものなら、吸い込んだ息と肩に
ふれる空気とに、内から外から、ほつれて溶けてしまいそうだった。
 乃莉は、美術科の友人たちと買い物に出かけてしまった。「なずなも
来ればいいじゃん」という誘いに甘えるのは普通に厚かましい気がした
し、ひだまり荘の面々と同じ同じ美術科の人間とはいえ、うまく話せる
とも思えなかったから遠慮した。乃莉の「なるたけ早く帰ってくるから
ね!」という言葉は素直に嬉しかったが、何か違うんじゃないかとも思
う。
 今日最初に会ったのは沙英だった。午前のまだ早い時間、半分寝間着
の自分とは対照的にきっちりと着飾って出かけるところだった二つ上の
先輩に、寝癖の髪を気にしながら挨拶をした。仕事の打ち合わせなんだ、
とただでさえ落ち着きのある声をいつもよりも低音に張り付かせて言わ
れ、より距離を感じた。「ちょっと遅くなるかも」という言葉は、その
場には自分しか居合わせなかったものの、誰に向けられたものだったろ
う。
 ヒロがどこへ行ったかは分からない。朝のうち、庭をうろつく姿をベ
ランダから見かけたがそれきりだった。今、時計は正午まで少し。この
時間になっても、階下から鼻歌や、調理器具が軽やかなリズムを刻むの
が聞こえてこないところを見ると、部屋にはいないようだった。そうい
えば、ドアの外で誰かと話す声を聞いた気がする。
 ──私もたまには何か探してこようかと思って。そうだ、ついでにお
夕飯の買い物もして来るけど、何が食べたい?──
 その口ぶりは本当に「お母さん」の様だ。ところで、何かを探す、と
は何のことだろう? 美術科の人間同士でしか受け取ることの出来ない
波長が、このアパートでは頻繁に発生する。いずれにせよ、ヒロは沙英
の予定は間違いなく自分などより先に把握していたろうから、たまの一
人の休日をどこかで満喫しているのかも知れない。少しだけ家事に疲れ
た、若妻のように。

 一人、かあ。

 なずながここへ来て半年が過ぎようとしている。なぐさめるように揺
れたカーテンも、今では少しくすんできた。家にいた頃はこんな休みは
ざらだった。もとより引っ込み思案で人と接することが上手くない。悪
目立ちもしないから敵を作ることもなく、むしろ誰からも優しくされる
ことが多かったが、人と過ごす時間は長くなかった。ことに、休みとな
ると一人で過ごしがちで、部屋で、本か、テレビか、音楽か……何か静
かなものと向かい合っていればそのうち誰かが家に戻ってくる。そうす
ると夕餉のにおいが漂って、日はいつも静かに暮れた。そんな何もない
時間が辛いときもあって、友達を誘おうとして、上手くいかないことに
もいい加減慣れていた。誘いを受けることはさいさいあったが、誘うの
はいつまで経っても上手に出来ない。
 この六か月あまり、この屋根の下に全くの一人だった時間がどれほど
あったろう。家族で住んでいたときの方が、一人でいる時間が長かった
んだ。ヘンナノ、と一人ほくそ笑んでみる。

 もうお昼かあ……。

 二年生の二人は、まだ影も形も見ていない。ただ、挙って姿が見えな
いということは、連れだってどこかへ出掛けているのだろうということ
くらいは、なずなにもそろそろ想像がついた。そもそも……アパート一
のノイズメーカーが住む隣の部屋から、一切の物音がしない。部屋にい
ないことは明白だった。
 さっき思ったことも忘れてそっと目を閉じてみると、本当に外気と自
分の境目が曖昧で、どこまでが自分の体なのかはっきりと感じ取れない。
まるで、自分がひだまり荘になってしまったみたいだった。
 もしも私がそうして空気に溶けてしまって、みんなが帰ってきたとき、
いなくなっていたらどう思うだろうなあ。ひょっとして、みんなが居な
いんじゃなくて、実はもう私の方がいないのかも。
 そんなことを考えていると、朝はそこそこ早かったから、お腹がすこ
しずつ減り始めた。

 ごはん、どうしよう。

 たまには一人で外で食べてみようかとも思うが、どうすればいいか分
からなかった。どこにどんなお店があるのかは、生家から離れていると
はいえ地元なので、全くわからないではない。しかし店があったとして、
高校生が一人で入れるお店なのかどうか、おいしいのかどうか。ちゃん
と、自分の食べたい物が注文出来るかどうか。乃莉のように人に尋ねた
り、なんならパソコンで調べてしまうということも出来ない。ヒロや沙
英はお手の物だろうし、宮子がそれしきのことに怯むとも、到底思えな
い。マグロを塊で買った魚屋の店先で「イートインで!」と言い放った
という逸話だって、はじめはうそかと思ったが、今では真実味の方が濃
いと思う。彼女に外食をするだけの持ち合わせがあるかどうかは別にし
て。ヒロをひだまり荘の台所にたとえるなら宮子は胃袋で、彼女がリク
エストするメニューは、不思議とその日の皆の気分にことごとく一致す
るという、特技というか、特性があった。ゆのは……自分と似たところ
はあるが、たかだかランチ選びでそうまで迷うこともないだろう。
 そこまで考え、胸の浅い部分から陰鬱な気分が浮かび上がって来そう
になったのを感じてなずなは体ごと頭を揺すった。今落ち込み始めると
面倒だし、せっかくの休みの残りがもったいない。そのままふらふらと
脚をゆすっていると、左足の親指のつめの外側が、少し伸びているよう
な気がしてきた。人差し指とすり合わせると親指の肉の柔らかい部分に
薄い爪がこりこりとわだかまるのを感じる。爪切りはどこに置いたっけ。
 これを切ったら、てきとうに何か作って食べてしまおう。そう決めて、
四つん這いに収納ボックスに近づこうとした──そのとき、だった。



     × ☆     ☆     ☆



 どんどんどん! どんどんどん!!
「ヒロさん! ヒーーローーさぁーーーーん!!」
 雷が落ちたのかと思った。
 下階の扉を激しく叩く音と聞き慣れた声に驚いて様子を見に飛び出し
てみれば、宮子が、後ろで一筋に縛った金髪を稲光のようにうねらせて、
一○二号室──ヒロの部屋の扉を打ち据えていた。その表情はまるで、
犬と喧嘩をするみたいに真剣だった。
「居るのは、わかっているんだぞー!!」
 中のヒロさんが眠っていたって、ここまでやったら起きますよ。どう
考えたっていないでしょう。乃莉の幻が隣に立ち、そんな風に呆れて見
せたから、様子を見に出てきたなずなも、その言葉に頷いてしまった。
「あ、なずな氏。おはよー」
 なずなの気配を敏感に察知して、宮子は冷静に挨拶を投げながらもド
アノブは固く握って離さない。なずなも、返す挨拶はいつも通りの短く
つっかえながらだったが、頭の中ははてなマークで一杯だった。この稲
穂色をした髪のナイスバディな先輩は、何をそんなに怒っているのだろ
う? そもそも、アパートに居なかったんじゃないの? それとも、気
配がなかっただけで実はずっといたのかな? でも何処に? まさか隣
の部屋にずっと?
「あの、宮子先輩……」
「聞いてよなずな氏、ヒロさんたらひどいんだよー。もう、嘘吐き!」
「う、嘘吐き?」
 ヒロが、だろうか。今にも扉を蹴りつけかねない宮子の勢いに、新し
い疑問がなずなの引き出しに収まる。確かに、ひだまり荘の面々で上手
に嘘を吐きおおせるのは、強いて言えばヒロと、あとは自分くらいのも
のだろうけれど。そんな不遜な思いに絡め捕られながら、ほとんど反射
的に尋ねていた。
「ヒロさんが……ですか?」
「そーだよー。今朝さ、お昼にチャーハン作ってくれるって約束したん
だよ? それなのに……籠城とは卑怯なりー!! 正々堂々、出てきて
米を炒めろー!」
 く、くだらない……。
 宮子の話は簡単だった。今朝方ヒロと出くわしたとき、昼食にチャー
ハンを食べさせてもらう約束をしたのだそうだ。正午丁度に部屋に来て
くれれば良いという言葉に喜び勇んで参じてみたところ、呼べど叫べど
チャーハン、もといヒロは現れず、いよいよ実力行使に及んだのだとい
う。そう頑丈でもないアパートのドアノブを力任せにひねって叫ぶ背中
に、なずなは、一体神様はどうしてこの人に美貌なんてものを授けたの
かと埒もなく、いつまでたっても好きになれない自分のなで肩を下着の
肩紐がずり落ちた気がして服の上から位置を確かめたが、特段ずれても
いなかった。
「あの……ヒロさん、その……」
「え?」
「えと、その……ヒロさん、いない……ん、じゃないですか? 沙英さ
んも、お出かけ……みたい、ですし」
 内心の確かさとは裏腹な、控えめな声しか出ないのはいつものことだ
った。けれど宮子の大きな瞳はそれもきちんと拾ってくれて、聞く気満
々でなずなを飲み込む。空から見下ろされているような安心感があった。
「えっ。沙英さんもいないのー?」
「はい……多分」
 そこで宮子はようやくドアから離れた。これは困ったぞ、としかめた
眉に、窮した色がいよいよ濃い。なずなにはヒロがそんなどうでもいい
嘘を吐くとは思えないし、宮子が言いがかりをつけているとも思えなか
った。どちらかが何か勘違いをしているだけか、ヒロが寝たぶけていた
かのどちらかなのは明白だった。
「……ごはん、これからなんですか?」
「うん! なずな氏も?」
 けれど、今そんなことを検証したところで、先ほどから鳴りっぱなし
の宮子の『腹の虫は収まらない』だろう。なずなは、ええ、とだけ返事
をし、色々と積み上がり始めている腑に落ちないことのうち、無難なと
ころから切り出すことにした。
「ゆの先輩は、一緒じゃなかったんですね」
「うん。ゆのっちは、今日は多分、ひとりの日」
「ひとりの……日?」
「うん、そう。ひとりの日」
 なずなが傾げた小首の角度に動じる様子もなく宮子はただ繰り返し、
やがて一○二とふられたドアと仁王立ちに向き合いながら、
「まったく、ヒロさんはー」
と、いかった肩から息を抜く。
 居丈高な背中を眺めながら、なずなは頭の中に積み上がっている幾つ
かの不思議を反芻した。
 宮子が今日今まで、何処で何をしていたのか。
 何をそんなに困ることがあるのか。
 何故そんなに、ヒロメイドのチャーハンにこだわっているのか? 実
は以前、乃莉・ゆのと一緒に、宮子手製のチャーハンでもてなしを受け
たことがある。材料の大半と洗い物は自分たち持ちだったが、カラリと
きつね色に香ばしい、まさにフライドライスの名にふさわしいその味は
出色で、今でも少しがんばれば、プチプチとはじける米粒の食感を鼻孔
の奥に甦らせることが出来る。激しい炎と向き合わねばならない中華の
ような、腕力、胆力、そして大雑把さが旨味に直結する調理に関して、
その腕前はヒロよりも上なのではないかとなずなは密かに睨んでいた。
 そして、「ひとりの日」とはなんだろう? 受け答えの余りの平易さ
に、ゆのと二人の間でそういう日の取り決めが交わされているのだろう
と理解しようと努めた。それでも「多分」という曖昧さが、ねっとりと
頭にこびりついてはがれない。夕べ、ゆのが沈んだ様子だったのを知っ
ているから尚更だった。
「あの……」
「んー?」
 肩を捻って振り返る、宮子の様子に少し不機嫌さが混じった……もち
ろんそれはなずなに向けられたものではなかったろうし、なずなにもそ
れは伝わっていたけれど、とかく彼女は怒気に弱かった。
「あ、えっ、と……。み、宮子先輩だったら……自分でごはん、用意出
来るんじゃないですか? あの、前作ってくれたチャーハン、とっても
おいしかったからっ……」
 質問を慌てて変え、本音とはいえ香り付けのゴマまですってしまう自
分が嫌になる。そんな小狡い自分には、やはりこのアパートの一員でい
る資格などないのではと、ひとり湯船に沈没する夜も少なくない。しか
しそんなときには、バスルームに盗聴器でも仕掛けてあるのではないか
と勘ぐりたくなるタイミングで尋ねてくる乃莉の、さりげなくもない言
葉や振る舞いに救われて、今日まで漕ぎ着けたのだ。
「え? あー……。あはははは。うーん……。んー?」
 宮子は何でもないはずのなずなの問いに軽く目を瞠って受け止めると、
窮屈そうに肘を抱えた姿勢で体をくねらせた。もぐもぐと、何かを言葉
にしようとしてそれも上手くいかないようで、手先がもどかしそうにう
ごめいているのは、もしかして絵筆を欲しているのだろうか。
「実はですなー。拙者、兵糧と路銀が底を突いてしまったのですよー」
「ろ、路銀って」
「お恥ずかしい」
 珍しく笑ってはぐらかした先輩の笑顔に、なずなの薄い胸がどきりと
強い拍を打ち、その波紋は空きっ腹の裏側まで届いた。
 日が照れば汗ばみ、日陰に逃げれば肌寒い。夏から遠ざかる秋空の下、
庭先で見つめ合うのには限界があった。つまりは、食べる物と、お金が
ない。他にも理由のようなものがあるにせよ、一番簡単で致命的な、そ
して嘘でないところだけを切り抜いて照れくさそうに頭をかいた宮子を、
それ以上追及出来る自分ではないことも、なずなはよく理解していた。
 宮子の背の高い水色のパーカーは、一体もう何年着ているのだろうか、
裾と襟と袖口が色褪せて綺麗なグラデーションを作っている上、ところ
どころが白く色落ちして、放っておいたらそのまま空に、霞んだ雲間に、
溶けていなくなってしまいかねない気がした。それではいけない。彼女
は自分とは違う。他の住人たちが帰ってきたとき、彼女の姿がなかった
ら、皆どんなに寂しがるだろう? 聞いてみたいことも残っていた。彼
女をこの地上につなぎ止めておくために、今一番必要なことは何だろう、
それは多分。
「ええと、それじゃあ……」
 なずなは細いこぶしを精一杯小さくむすんで、ぎゅっと胸に押し当て
た。



     × ☆     ☆     ☆



                            (続く)





 

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■じゃきんと賀正~2012・新年のごあいさつ -更新第738回-

2012年、新年明けましておめでとうございます。
オイサンです。


R0046108


旧年中は、本当に大変おせわになりました。
今年もどうぞ、宜しくお願い致します。



……。



と、書いてしまうと、もう何も書くことがなくなってしまう。
そんな元旦を迎えております。

いやあ……年末はもう、本当にいいだけやられてしまいまして、
マお休みが明ければまた同じ状況に戻ってしまうのでまたしんどいのですけれども、
せめて休みの間だけでも、穏やかな気分でおりたいと思います。

紅白歌合戦が始まる辺りからオイサンは新幹線に乗っていて、
年のドンつごもりムードは殆ど味わえていないのですけれども、
なんか小林幸子さんがまたモノすごかった、ということだけは、
Twitterのタイムライン上から伝わってまいりました。
世の中で何が起こってるか、ワリと伝わってくるからホントTwitterは便利です。

  逆に、家族で過ごしている時間は殆どTwitter見ないので、
  何が起こってるかどんどん分からなくなるというていたらくぶりなのですが。
  関東で地震があったみたいですね……新年一発目から恐ろしい。

今日元日は、家族でお雑煮食べて
(ついでに昨晩食べそこなった年越しのお蕎麦をいただいて)、
近所の氏神様にお参りに行ってと、
何の変哲もないお正月でした。

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年明けそば

オイサンちは親戚まわりとかほとんどしないので。
親戚が来たりはしますけど、それもきまぐれです。

マそんな感じで……。
のどかに穏やかに、過ごさせて戴いております。
ありがたい限りです。
特段コミケに行ったり、オタク的な活動をしたりということもなく。

しかし、タイムラインを見ていると、結構普通に一人のお正月を迎えている方も少なくないですね。
オイサンは……なんかちょっと、それは耐えられそうにないなあ、と思ってしまいました。
旅行とか、自分でイベントごとを持っていれば平気なのでしょうけど
(実際、いつだかの正月は、北海道へ行って宗谷岬から初日の出を拝みに参ったりしました)、
自室で一人で、お雑煮もナシに年を越すのは……ちょっとしんどそうかなと。

  ……両親がどうにかなってしまったらヤバいってことですね。
  結婚しないとだめかなあ( ← 弱気)。

まあせいぜい、親孝行に励んで帰りたいと思います。
それではみなさん、引き続き良いお年を。 ← (違

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愛おしき稜線

ああそうそう。
なんか初詣の帰りに両親が言っていたのですけど、
奈良に出没するリアルマリオカートの親父さん。
あのヒト、なんかワリとうちの近所に住んでるみたいです。
ホントかよw
マ近所っつうほど近所ではないんですけど、そこそこ近く。

いや、それだけ。
面白かったので。


■公道でマリオカート

どうでもいいけどこの動画、録ってる親子にやたら味があるなw いい動画だ。



マンマミーア。
オイサンでした。








……。








このあとすぐ!!



 

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