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2009年11月25日 (水)

■手帳の中のダイヤモンド -22- 番外編 -更新第360回-

                   ◆『アマガミ』 絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
オイサンです。


前回。


自分の絢辻さんの<スキBAD>への思いが、
なんだかぺったんこでもう一つ面白くないなあと思ったので、
ここらでいっちょ感情的思考にブーストをかけようと思い、
わざと寝不足気味になってみました。

そしたら、早朝のデニーズで大変なメに遭いました。
どんどんどんどん湧き上がって流れ込んでくる、あのシーンへのイメージ。
描こうとされていたこと。
少なくとも、自分の中ではかなり大部分が繋がったので、
らんぼうに、だーっと、書いていきます。



■前置き



とはいうものの、あの絢辻さんについては、
シナリオライターさん自身が公式ガイドだったかで、

「なんで絢辻さんが、ああいう風に言ったかも、もう分からない」

というようなことをおっしゃっていたので、
これはもう、本当にオイサンの印象からの解釈です。
当たりもハズレもありません。

だから特に、前後の繋がりや論理性には言及しませんし、
そもそもああした状態にある人間の思考や感情に、
論理もヘッタクレもあるもんじゃないと思います。

……ただ、そこからオイサンが感じ取ったものが、
ショッキングで、哀しいものだったので、もう書かずにはいられない。
そんなことです。



■絢辻さんの<スキBAD>について



  「あたし、幸せだった。だからもう、これ以上望まないね」



ズシンとくるセリフでした。
ここからオイサンが読み取ったこと、それは、
絢辻さんは裏切られたショックと、それによってショートした思考の中で、自分自身を

「そういう幸せを望んではいけない存在なのだ」

と認識してしまったんだろう、ということでした。
そうして、今後一生幸せになることが許されないのに、
尚生きていかなければならない自分というものに絶望して、儚んでいるように見えました。
なればこそ、手のひらに舞い落ちる雪を羨んで、



  「私もこのまま溶けてしまえばいいのに」



と、その身の朽ち果てることを望んだのではないかと思うのです。

それはそうでしょう。
本当に欲しいもの、望んだもの、
手に入れるために全てを犠牲にしてここまで進んできた、その価値観さえうち棄てて尚望んだものが
この先の人生、どうあがいても手に入らないと、
それが正しいにせよ、誤りであるにせよ、思い知ってしまったのですから。

正常な思考を失った絢辻さんは、それをハッキリと認識してしまい、
そしてそのことが過去に犯した過ち
……それが何なのかは分かりません。恐らく手帳にも関係しているのではないかと思いますが……
への罰であり、
「愚かな自分への当然の報いであって、絶対のことなのだ」
と、思ってしまったのでしょう。

これまでは、努力の先に開放や安息があると、せめてもの希望があったにもかかわらず、
この先はその希望すらも奪われた人生を生きていかなければならないと思い知った
その絶望たるや、想像に堪えません。



そんなのは辛いから、本当は死んでしまいたい。



……そんな思いが、絢辻さんの中の「あの子」を殺してしまったのだと思います。
自分の中に「あの子」を生かしておいたならば、体まで破壊してしまいかねない。
そう判断した心と体が、絢辻さんの中の「あの子」を、
安全な場所に押し込めてしまったのだと思えます。



■あの子



「あの子」と「あの子を失ったあとの絢辻さん」の関係については説明はしづらいのですが、
オイサンの中ではもう、すごく明確なイメージがあります。

「あの子」とは、絢辻さんの言うように、
主人公へのあらゆる思いを抱えた絢辻さんそのものなのでしょう。
そこには、愛しさや信頼はもちろん、今回裏切られたことに対する怒りも怨念も
全て含まれていて、ある意味最も人間らしい絢辻さんです。

そして恐らく、「あの子」は絢辻さんが言うように本当に消えて無くなってしまった……
わけではないのだろうと思えます。

  それは、ラストで「あの子に負けないように、気丈に振舞っているだけ」と、
  その後の絢辻さんが語ることからも。

「あの子」はまだ絢辻さんの中にいて、表に出たい、
主人公に思いをぶつけたいと、心の壁を内側から叩き続けている。
そんな絵が、オイサンの脳裏に焼き付いて離れません。
ただ、心と体が、我が身の崩壊を避けるために「あの子」の解放を許さない。

強すぎて、制御を失った「あの子」を表に出したならば、
己をか、はたまた主人公をか、壊してしまいかねない。
それを避けるための措置として、
絢辻さんの意志と関係なく、心と体の自律作用によって自衛のために封じ込め、
喜びや解放を求めない、新しい自分をつくりあげる。
意識は、それが起こったことをどうにか理解しようと後付の理屈をつけている。

「あの子」からは外の様子も伺えるし、
「あの子を失った後の絢辻さん」がどう振舞っているかも感じ取れる。
今も裏切られた痛みを感じ、苦しんでもいるし、恨み辛み怒りも感じている。

同様に、「あの子を失ったあとの絢辻さん」は、
それ以前の絢辻さんが自覚的にああいう風に振舞っているわけではなく、
ショックで焼き切れそうな身心を保護するため、
心の、危険な状態にある部分だけを押し込めたためにああならざるを得なかった。
そうして、深奥に押し込めた「あの子」を抑圧し、監視し続けている。

……そういう、構図なのではないかと思いいたりました。
なんというか……主人公自身も言っていましたが、本当に「最悪の」結末だと思います。
そしてそれを思うと、冒頭で書いた屋上でのセリフが、一層の重さを持ってくるのです。



 「私、幸せだった。これ以上望まないね。
  ……ばいばい……!!」




それまでの自分と主人公にぶつけたい思い、
まだ幸せを求めんとして、主人公のことも愛している今の絢辻さんが、
新しい自分の渦に飲み込まれて消えていく、断末魔の言葉に見えてくるのです。
本当は、

 「死にたくない、消えたくない!! 助けて!!
  そんな簡単に結論付けないで!!
  ここから出して、どうして来てくれなかったの、話をさせて……!!」

そんな叫び声の欠片なのだと、わかります。
けれどそれすらも、新しく生まれつつある自分の感情にコーティングされて、
表には現れて来ない。
思いは届かぬまま、はかなく消えていく。
辛い、苦しい、哀しい。
こんなに酷いことってない。

絢辻さん自身が築いた頑強な心の壁と、育んできたアクトレスとしての自分、
そして主人公の浅はかな行いによって……
二人は永久に隔たれてしまった。

オイサンは、ですね。
今も「あの子」が、自ら築いた固く冷たい心の壁を、
内側から、泣き叫びながら叩いているのかと思うと、
オイサンはもう、本当にどうにかなってしまいそうなのです。
誰だ、こんなの考えた奴は!!



■解放と抑圧の構造



失恋や裏切りのショックで、いわゆる自我崩壊を起こしたり、命を絶ったり、
そういう「鬱エンド」的なものはわりと見かけますが、
今回の結末は、その派手さや、ありきたりな感じを避けるために生み出されたものなのだと思えます。

そしてそれら「鬱エンド」が「解放によって起こるもの」であって
ある種のカタルシスを伴うものであるのに対し、
今回の絢辻さんに起こったことが、「抑圧によって起こるもの」であることから、
より陰鬱で、鬱屈した影を感じさせます。



■そして、絢辻さん



何よりも悲しみを訴えるのが、
「その後の絢辻さん」が、「あの子」の最後の言葉を伝えるシーン。



  「あの子の言葉、忘れないであげて」



これは、幸せを求める絢辻さん、つまり「あの子」の最後の抵抗です。
「あの子」を亡きものにしてしまった自分はもう、忘れてしまって取り戻せない。
けれど、幸せだった思いが、この世の中から全部消えてしまうのは哀しい、
つらい、いやだ。
だから、それを知っている彼に、せめて覚えておいてもらいたいという……
あまりに切実で哀しい、「本当の絢辻さん」の最後の気持ちだったのでしょう。
裏切られ、憎いはずの彼に、その気持ちを託すしかないという、哀しすぎる結末。

本当は自ら表に出て、愛を、怒りを、恨みもつらみも全部主人公にぶつけたい。
泣き叫ぶ絢辻さんの心が、唯一細く届いたのが、この言葉だったのではないかと思います。

先に書いた、「解放の鬱」の逆を行く構図と相まって、
ものすごいラストだと思います。
敢えて言います。
名シーンです。


……。


オイサンは、ここまで敢えて「二つの人格」という言葉を避けてきました。
それを書ければもう少し分かりやすく話せたと思います。
ですが、それをしなかったのは、このシーンにおいては、
「心が二つある」ことではなく、
「体が一つしかない」ことがクローズアップされているように思ったからです。
人の本体は心ではなく、あくまでも体なのだということを、
このシーンにオイサンは強く感じるのです。

決して別人ではない、一人の絢辻さんを、その中身が取り合っている。
そのことがこのシーンを分かりにくくしながらも
ものすごいリアリティ・生々しさを与えているように感じたので、付け加えておきます。
これに関してはうまくまとまらないので、また整理したいと思います。



■Closing



以上、とっちらかってて申し訳ないのですが、
とりあえず勢い任せにだーっといきました。

アタマでも書いたように、
シナリオライターさん自身も分かっていないことですが、
それも踏まえた上で書きました。

ただその……上で書いたことは、
本当に、昨日の早朝、寝不足のアタマで台所に立ちながら、
何も思わない頭の中に、パーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっと……
線香花火の火花が一輪の花を咲かせるように、一瞬で繋がったことなのです。

自身「なんだこれは?!」と驚きながら大急ぎで朝ゴハンかっこんで、
日も昇らない駅前のデニーズで一気にメモり上げた物です。
不思議なくらい、繋がった。


ですからその、論理性はありませんし、当たりはずれもないものですけど。


……ただ、インチキながらも物書きとして思うところとしては、
本当に分からないモノというのは書けないモノだとオイサンは思っていまして。
だからライターさんも、分かっていないと思いながらも、
繋がるものがあったに違いないと、オイサンは思うのです。

ただそれは、やはり明確で客観的な論理ではないし、
書き手自身も経験したことのない心と体の状態であることから、
説明のつけようがなかったのではないかと、思っています。
それは言葉を扱おう、言葉で全てをあらわそうという者として、すごく「ある」ことです。
見たこともないことは言葉には出来ないものですから。
そういうときの苦しさったらありません。

そしてオイサンには、

「これだけ『繋がる』モノが、
 『書き手からしてワケも分からずただ並べられただけ』のモノであるハズがない!!」

という、おかしな、そしてものすごく偉そうな確信が、ですね。
今回ばかりはあってしまいます。
だから書き手も、絶対に「筋が通っている!!」という何らかの感触と実感を
感じているに違いないと、勝手に思っています。
決め付けでホントすみません。

ですけど、そう思わずにいられないくらい、繋がった。
絢辻さんの言葉の意味も、心の状態も。
そして、哀しくて辛くて、絢辻さんへの申し訳なさも、そうしてしまった罪の深さも、
何もかも。

マそんなことで、僭越極まりないのですが。
オイサンの中ではすごく腑に落ちたので、このようにまとめさせてもらいました。
本当はもうちょっと丁寧にまとめればいいんですけどね。

なんか、すみませんでした。
オイサンでした。



……ゴメンね、絢辻さん。





 ◆『アマガミ』絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
    01 前口上
    02 序文・絢辻詞という「少女」
    03 第〇部 物語のアウトライン

    04 第一部 学校生活編 PRE STORY (SS)
    05 第一部 学校生活編 その1
    06 第一部 学校生活編 その2

    07 第二部 「目標」編 PRE STORY (SS)
    08 第二部 「目標」編

    09 第三部 家族編 PRE STORY (SS)
    10 第三部 家族編

    11 第四部 手帳編 PRE STORY (SS)
    12 第四部 手帳編 その1
    13 第四部 手帳編 その2

    14 第五部 恋愛編 PRESTORY その1 その2 その3 (SS)
    15 第五部 恋愛編 その1 その2 その3

    16 第六部 PRE STORY その1 (SS)
    17 第六部 感想編 その1
    18 第六部 PRE STORY その2 (SS)
    19 第六部 感想編 その2-1
    20 第六部 感想編 その2-2の1
    21 第六部 感想編 その2-2の2

 ◆『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク





 
 

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コメント

■JKPさん

>なるほど、心が二つなのではなく、体が一つである、ですか。
>なんかものすごく納得しました。

ここ、ガッツリ書こうとして、どうにもうまい書きようが見つからずに止めちゃいました。
すみません。
もう少しきれいにまとめたい。

>好きBADは精神的に辛く、ホント流し見た程度なので、しっかり論証できないのですが。
>あれはやはり、いくらゲームとは言え、自分のトラウマと同じ傷をあえて女の子たちにつけた
>我々に対する罰なのでしょうね。

別の方のコメントのお返事にちょっと書いた
(右下のikas2ndのリンクをご参照ください)のですが、
主人公への感情移入をより強く促すためのギミックであると考えると、
すごく腑に落ちるものがありました。
罰であると同時に、一つのメッセージであるのではないかと思えます。

>コンプリートのために、好きBADの犠牲者になった全ヒロインに、
>この場を借りて、深くお詫び申し上げます

スキBAD、見ないのが正しいのか、見るのが正しいのか。

投稿: ikas2nd | 2009年11月28日 (土) 22時45分

なるほど、心が二つなのではなく、体が一つである、ですか。
なんかものすごく納得しました。

好きBADは精神的に辛く、ホント流し見た程度なので、しっかり論証できないのですが。
あれはやはり、いくらゲームとは言え、自分のトラウマと同じ傷をあえて女の子たちにつけた
我々に対する罰なのでしょうね。

コンプリートのために、好きBADの犠牲者になった全ヒロインに、
この場を借りて、深くお詫び申し上げます

投稿: JKP | 2009年11月26日 (木) 02時10分

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