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2009年8月 2日 (日)

■手帳の中のダイヤモンド -15- 第五部・その2 -更新第271回-

みんな元気かい!?
オイサンだよ!

グレープフルーツ味のカチ割り氷に麦茶を注いで飲んでも、
カケラも美味しくないので注意だ!!
二見さんは黙ってて!


サテ、『アマガミ』絢辻さんシナリオ解読企画「手帳の中のダイヤモンド」、
今回はその15回目のその2。
恋愛編の続きでございます。


  ◆『アマガミ』 絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
  ◎『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク


■前回の復習と今回の予定



……まず、皆さんに謝らなければならないことがあります。
前回では、絢辻さんと主人公の恋物語を、
5つの各好感度カテゴリー、

  <デアイ><アコガレ><スキ><シリアイ><ナカヨシ>

ごとに、大体どういう展開をしているかを読み直し、
それぞれのカテゴリーで起こるエピソードの中で絢辻さんの心が
どのように揺らめいていったかを、
ややこし目な部分だけとりあげて、僭越ながらご説明申しあげました。
まだ<アコガレ>までですけど。

この恋愛編は前編と後編で終わりにする予定で、
今回は後編のつもりでいましたが……すみません、まとまりませんでした。
「スキ」だけで、随分と紙幅をつかってしまったので、
今回は「スキ」のイベント再読だけ、という格好です。
まっこと申し訳ない。

ですので前回の予告で書きました、
「シリアイ」「ナカヨシ」の読み解き、そして、
 ・物語としてとらえると、<ナカヨシ>って特殊じゃね?
ということと、
 ・<アコガレ>と<ナカヨシ>の関係って、中途半端でフクザツじゃね?
ということのご説明、
「<ナカヨシ>エピローグに見る幸福感の正体~絢辻さんの将来と幸福について」、
については、また次回ということになります。
申し訳ない。


では気を取り直して。
まずはシンプルに前回の続きから、各好感度カテゴリー別エピソードの読み解きの続きを、
「スキ」から進めていきたいと思います。



■4) 恋するフラグメンツ (←項題変わっとるがな)
      ~各好感度カテゴリーでのエピソード~



  □4)-3 スキスキダイスキ!(←そんなカテゴリー無ェ)-------------------



さて、絢辻さんの「スキ」。

……。
あの、えっと……。
……オイサンも、好きです……(←聞いてねえ)。

  オイサン、昔から取り乱すのだけは大得意です。

前回でも書いたように、絢辻さんの恋は、
<アコガレ>の段階で既に完成しているとオイサンは思います。
つまり、契約のキスを交わし、手帳を荼毘に付すことに主人公を立ち合わせた時点で、
……主人公の気持ちはともかく……
絢辻さんは主人公を、恋人の位置に引き上げ終わっているように見えます。

「スキ」のレベルでは、そうして変化した絢辻さんに襲ってくる問題
……中には、絢辻さんが変化したが故に呼び寄せた問題もありますが……を、
絢辻さんが新しい自分の力と、主人公と結んだ関係の力で応戦する姿、
そして、信頼した主人公に対し、脱ぎ去った猫以上の奥を開いて見せていく過程が、
たくさんの謎をはらみながらも丁寧に描かれています。

そんな中でも、絢辻さんの主人公への思いが見え隠れするイベントを見ていきたいと思います。


■「二つ目の顔」
先ずは、クリスマス委員の仕事が遅れ気味であること、
学校側のツリー設置が中止になりかかっていることでクラスメイト達に詰め寄られ、
クラスメイト達の前でも、ついにその本性を明らかにするイベント、
「二つ目の顔」。

この事件をきっかけに、絢辻さんはクラスの女子から孤立しますが……
どうしてそこまでして、怒りにまかせる必要があったのか。
絢辻さん自身、後のイベントで
「素を晒してまで怒らなくとも、もっとうまくやる方法はあった」と語ります。

まあ話はカンタンで、一つには、自分たちでは何もしないバカ三人が、
「他の誰もが気付かないことに気付き、無自覚とはいえ背負い込む主人公の性質」
が生んだ行動を、ひねくれたものの見方で悪し様に論ったことへの……
いわば、主人公の行いを馬鹿にされたことへの腹立ち。

そして同様に、自分の数少ない安らぎの時間を、
いちゃいちゃだのなんだのと下種な言葉で、
程度の低い噂話がらみで穢されたことへの、純粋な私怨と当然の報復。

……恐らく、これが絢辻さん個人にのみ向けられた刃であったなら、
絢辻さんはこれまで通り、うまくかわして猫を脱ぐことなく、
黒幕である黒沢さんのみをたたきに行ったと思われます。

けれども今回そうしなかった。
何故か。
自分はともかく、主人公のこと、そして二人の時間への攻撃までも許容してしまったら、
「何も変わらない・変われない」と感じたから、に相違ありません。
手帳を焼いた意味すらない、と。
抑え込む自分を許さなかった、という表現が正しいのかもしれません。

これまでの自分の位置を守ることよりも、新しく築いた主人公との関係を守ること、
その意思を表明することが、これからの自分にとって必要だと考えたのでしょう。
そしてその意思を表明する以上、これまでの位置を守る必要ももうない。
なぜなら、主人公が傍にいるから。
自分に対してここまで戦いを挑める人を、オイサンは知りません。

ここでまた一つ、裏ッ側から面白いなー、と、オイサン思うのが。
もとはといえば、絢辻さん自身も毛嫌いしていた主人公の「価値観」、
それを横から攻撃されて、絢辻さんは完全に主人公に味方をする格好に、立場が変わっている。
この変化は美しい。
いいですか、ここで皆さん、「あ、俺今愛されてる!」と感づかなければいけません。

  余談ですが、上でもチョロっと書きました、
  この事件も、隣のクラスの黒沢さんが裏で糸を引いているのは明らかでしょう。
  名言はされませんが、バカ三人も「別のクラスの人が言ってたよ」と言います。
  校内で、主人公と目に余るイチャイチャを繰り返す絢辻さんに腹を立てた黒沢さんが、
  A組のバカっぽいの3人に目をつけて、
  絢辻さんにナンクセつけるように仕向けた、という流れが読み取れます。

  A組のバカ三人組は、普段の言動を見るにつけ、クラスの有力者である絢辻さんに
  自分からケンカを吹っ掛けるほどの「気概」や「自主性」があるとは到底思えません。
  絢辻さんの言うとおり、ホントに不憫なお三方です。

  ……まあこの三人が、普段から絢辻さんや、絢辻さんと主人公のイチャイチャを
  よく思っていなかった、という背景はあるのでしょうが。
  そこに目をつける黒沢さんも、相当のイヤラシイやり手です。
  ムカツきながら、閑話休題。

主人公に向けられた、これまでの時間を焼き捨ててまで獲得した「信頼」。
それをさらに強固にするために、絢辻さんはこれまでの自分、
安っぽい居場所を全てうち棄てます。
これを恋、否、愛と呼ばずして何と呼ぶのか。

その熱量の多くは主人公にじかに向けられるものではありませんが、
内に秘めたるもののあまりに激しい熱情。
それをまた、詮索する主人公に対して、
一人きりの食堂で

「心配の枠を越えた詮索は、嫌われるわよ」

なんて、しれっとかわすその奥ゆかしさもまた、美しすぎるほどにいじらしい。
コレはもうあなた、男冥利に尽きるの一言です。

この絢辻さんという少女は、その小さな体にどれだけ巨大な獅子を住まわせているのか……
ホント、底の知れないヒロインだと思います。


■外付けStory「溢れだす思いw」
これは番外。
上で書いたような絢辻さんの、内に秘めたる思い。
それが生理的にw溢れだすのが、会話アタックのご褒美イベント、
「絢辻さん、鼻血鼻血!」(「志村、うしろうしろ!」風に)。

二人で交わした濃厚なキスのあと、絢辻さんが鼻血を出してしまう、という……
なんというか、前代未聞にして古今無双、強力無比のイベントです。

キスシーンでは「どっちがどうした」という描写がつぶさには記されないので、
このときの詳しい状況はわかりませんが、
絢辻さんのキャラクターソングCD vol.2 「Aftergrow」に収録されているモノローグドラマにて、
この日の晩に、昼間キスを反芻する絢辻さんの様子が描かれています。

Afterglow_3 絢辻詞 (Cv: 名塚佳織)/
アマガミ キャラクターソング Vol.2 絢辻詞
「afterglow」

アーティスト:綾辻詞(名塚佳織)
販売元:インディーズ・メーカー
発売日:2009/07/24
Amazon.co.jpで詳細を確認する



「軽く唇が触れ合えばそれでいい、くらいのつもりだったのに、
 思いが溢れだして、思わず自分から、濃厚な口づけを求めてしまった」
と。

……まあ鼻血を噴くくらいですから、
このキスの時の絢辻さんは、首から上の温度を相当に上げていたのだろうな、
くらいの想像はつきますし、
キスの最中の主人公が驚く様子で「絢辻さんから何か求めた」というのも読み取れはするわけですが、
その行動の過程が、そうした「主人公を求める衝動」であったことまでは、
オイサンには見えていませんでした。

  それでも、キスを終えた途端にその気持ちを軌道修正して、
  あっさりとその場を去ろうとする絢辻さんの、
  自律性の強さをすげえと思います。

イベントの中で絢辻さんは終始冷静で(鼻血に気付いた時だけ取り乱しますが)、
モノローグドラマで見られるような、自分の中の熱い気持ちについて
本編中で見られることはほとんどありませんし、
そういう風に描いてしまった時点で、絢辻詞というキャラクターは、
その輪郭をにじませてしまうことでしょう。

そんな中、こういう「体にどうしても現れてしまう強い反応」を用いて
本音を描き出そう、というやり方は、とても巧妙・効果的だと思います。
しかも、身体的な描写がどうしても限定されるコンシューマゲームにおいて、
うまく、分かりやすくやったなあ、と感心させられました。

一見、ただのネタイベントのようで、
実は主人公に対してキチンと体でも反応してくれている、
うわべだけでない、ホントの気持ちなんですよ、カラダに出ちゃうくらいなんですよ、
ということを巧みに表現する、安心と、嬉しみを感じさせるイベントです。
美しい。

それって、嬉しいでしょ?
それなりに昂ぶっていてくれたんだなあと思うと……
ねえ。

  ……。
  しかしなあ。
  くそう。
  オイサン、いつかやろうと思って、ずっと温めてたネタだったんだけどなあ……。
  粘膜弱い系ヒロイン。
  照れても鼻血、
  怒っても鼻血、
  泣いても鼻血。
  感情が高ぶるととにかく鼻血、というヒロイン。
  ……やられたあ……。


■「1対15」
オモシロイベントの次は、重めのイベント4連コンボです。

クラスからの孤立後、体育のドッヂボールで絢辻さんが集中攻撃を浴びる「1対15」、
「家族」と「目標」の関係について語られる「わたしはだぁれ」、
「目標」への思いを主人公に否定されたと思い込み激昂する「あなたにだけは言われたくない!」、
そして、その誤解がとける「僕の言いたかったこと」。

クラスの女子から孤立し、体育の時間に1対15のドッヂボールを強いられる絢辻さん。
その時間の最後で、絢辻さんは主人公に対し、
「自分はずっと一人で、これからも変わらない」
というようなことを口にします。

これが主人公と絢辻さんの間に残された最後の溝です。
二人を最初に引き合わせたもの、異なる二つの「価値観」。
皮肉にも、それが二人を隔てる最後の溝となって、主人公の前に絶望的に横たわるのです。
物語は最後にこの溝の埋め立てへと動き出し、
その竣工をもって「手帳の火葬」によって解け始めた絢辻さんの氷の心は、
完全な融解を迎えるのですが……その道のりは長く険しい。


■「わたしはだぁれ」
その第二弾として起こるイベント「わたしはだぁれ」では、
絢辻さんが「目標」に固執する事情、その発端の「家族」との根深い関係が語られ、
それが今の「価値観」へと繋がっていること、
おいそれと解消されるものではないことが明らかになります。
そしてさらに、自分の価値観と、愛する主人公の価値観の相違が
自分をぐらつかせている、とすら言います。

  彼女の後を追って辿りついた校舎裏で
  「ごめんね」と呟く……
  鉄壁の少女・絢辻詞の背中が……初めて、小さく見える一幕です。
  涙。

家族に端を欲した絢辻さんの「目標」。
絢辻さんは、そのために生きる自分を、主人公には理解して欲しかったし、
そのまま受け入れてもらえると……心のどこかで思っていたのでしょうか。


■「あなたにだけは言われたくない」
そのあとのイベント、
「あなたにだけは言われたくない」では、
「目標」だけを追う自分の姿を否定的に言い咎められたことに激昂した絢辻さんが
主人公を突き放し、決定的な一言を……

  「誰に何を言われてもいい。でも……
   あなたにだけは言われたくない!」

と言い放ちます。
この言葉は、後半の一行だけの意味を捕まえると、

「自分がどれだけの枷を背負って生きてきたか、言ったでしょう?
 真逆の価値観しか持ち合わせない主人公には分かるはずがない。
 そんなあなたに言われたくない」

という風に、先ず、とれます。
そう言いたい、絢辻さんの気持ちも分かります。

しかし前半の一行があることで、もう一つの意味が生まれます。
それは、上で読んだような、攻撃的で、突き放す意味ではない、
もっと甘く切ない、恋の気配を伴った感情だと思えるのですが……
正直、今のオイサンにはキチンと言葉に出来ません。

  ……って、ここまで書いたんですけど。
  今、イベントを再度見直してみて……名塚さんの演技を聴いて、一発でピーンと来ました。
  す……すごいぞ。

それは、
「あなたには、ずっとそばで、目標を追うあたしを黙って支えて欲しかった。
 理解してほしかったし、そうしてくれると思ってた。
 そう信じて、あなたの前で手帳を捨てたの。
 だけど……そうじゃなかったなんて、今になって言わないで!」
という……深い信頼と、それを裏切られたかなしみです。

勿論、主人公にそんなつもりはありませんが、
この問題……「目標」と「家族」に関しては、絢辻さんは、
主人公に立ち入らせる気はなかったのでしょう。
その二つに関しては、自分が頑張ればすむことで、その頑張りには主人公が必要だった。
絢辻さんが考えていた、ここから先の主人公の役割は、
これ以上は立ち入らせず、恋人であると同時に、
一先ずは、「家族」から離脱するために「目標」を達成するための
パートナーであってくれれば良い。

  勿論「その先」……を望まないではないけれど、
  それは今考えることではない……と思っていたフシが、感じ取れます。

それは多分、その感情を主人公が理解することは不可能だから、と割り切っていたためです。
人と自然に交わることが出来、幸せな家庭のうちで育った主人公に、
それの共有を望むことは出来ないし、そんな思いをさせる必要もない。
それは自分だけが知っていればよいことだと。

ですから、主人公がそこへ踏み込んできたこと、
侵入を許したことは、絢辻さんにとっては想定外の出来事で。
さらに、味方であったはずの主人公から決定的な一撃をたたきこまれた絢辻さんには
……主人公を拒絶するしか、道がなくなったのでした。


■「僕の言いたかったこと」
ここからが主人公のすごいところです。
自在派でありながら、インファイト、さらにはデンプシーロールまで使いこなす絢辻詞を相手に、
より近接のクロスファイトを挑んで打ち勝つのですから……
……この男、底が知れません。

「あなたにだけは言われたくない!」以降、
主人公に対しても心を閉ざし続ける絢辻さんに、
自分が本当に言いたかったことを伝えようと、主人公は奔走します。
そして遂に、自分のリングに上げることに成功するのでした。

ここから先は、本当にセリフの一言一言がメガトン級のパンチ力なので、
もう全部を追っていくことは難しいのですが……。

説得をあきらめて、立ち去ろうとする主人公に絢辻さんがかける
「今、聞かせてよ。続きを」
という言葉。

このときの彼女は、正直、自分でもどうしてよいか分からなくなっていたのでしょう。
主人公は失いたくない。
でも、今までの自分も捨てられない。
主人公は……自分とは違う価値観を持つ彼は、
どちらも失わないやり方を知っているんじゃないだろうか。
そんな一縷の望みを託した一言だったように思えますし、
主人公が促す、「もっと自分の好きなことをやったりとか」
という言葉に、「でも、そんな簡単には変えられない!」
と反発する絢辻さん。

そして絢辻さんのその望みに、120%答える主人公の言葉が、またすごい。
「そんなことはないよ。ただ思い直すだけでいいんだ」。

これは、
「目標を捨てろとか、やることや、生き方を変えろというんじゃない。
 同じことをやっていても構わない、
 もっと柔らかにあり続けることだってできるでしょ。
 自分のことを大切に考えながら、やるだけでいいんだよ」
という、絢辻さんへの愛情に満ちた言葉として、胸に響きます。

  以下の話は、本章のあとで書こうとしていること……
  「絢辻さんの幸せと将来」に関わることなのですが。

この場面で主人公は、絢辻さんに
「目標に縛られるのはよくない」
「自由にしていい、もっと好きなことをやったりとか」
といいます。
絢辻さんはこのセリフによって解放されるのですが……
では、絢辻さんは、本当に今の「目標」を追うことを止めてしまうのでしょうか。


オイサンは、それは明確に「否」だと思うのです。


絢辻さんは、今自分が追いかけているものに間違いなく価値を感じている、
と思うからです。
それは会話モードの一幕で、
「学校の宿題なんかにかまけていられない、勉強したいことが山ほどある!」
と瞳を輝かせて語る絢辻さんからは、
家族のことを抜きにしても、自身学ぶことが大好きで、
今の目標には、本当に彼女自身が心からやりたいと感じていて、
人生をかける価値があると考えていることが垣間見えるからです。

それに、このシーンで語られる主人公の一言……
「自分がないなんて言わないで。
 絢辻さんは、絢辻さんじゃないか」
という一言は、
「これまでの自分が、全部、家族のせいで作り上げられたものだなんて思う必要はない。
 それだって絢辻さんだ。
 そりゃあ始まりは、家族への反発から始めたことかもしれないけれど、
 その気持ちも過程も結末も、家族のものじゃない。
 絢辻さんのものだ。
 絢辻さんが自分で考えて、自分で拾い上げて、自分で積み上げてきたものなんだ。
 これまでのものを捨てて新しく作り上げるんじゃなくて、
 これまで作ってきたものを、正しい視点で見つめ直して、
 キチンと自分のものにしていこうよ」
という意味に、オイサンには思えます。

その言葉の意味を思うと、絢辻さんが自分の目標を否定的にとらえたり、
築いてきたものの価値を見失ったりすることは、決してないと思えるからです。

  ……まあこの辺は、物語の上で明確に示される事実ではなく、
  読む上での印象の積み重ねの問題なので、
  この「スキ」ルートでは結果絢辻さんは目標を諦めて主人公に依存していく、
  という見方も出来てしまうでしょうが……
  オイサンにはやっぱり、そんな風には思えませんでした。

  彼女は、よりしなやかに、そしてよりスピーディに。
  「目標」を、より価値のあるものとして、その手中に収めていったに違いないと思うのです。

そして、クライマックス。
「僕が一緒にいるから。僕は、絢辻さんのものなんでしょう?」
という主人公の言葉は……
絢辻さんが望んだパートナーとしての関係の、そのまた先の関係……
「本当に、僕は絢辻さんと家族に、絢辻さんの新しい家になるつもりがあるんだ」
という言葉に、聞こえたのではないでしょうか。

自分の想いをはるかに超えた先にいた主人公を見つけ、
最早抑えの利かなくなった絢辻さんは、主人公の背中を強制的に徴収し……
嬉し涙を流すのでした。

  ……あのですね。
  コレを書きながら、やっぱりイベントをもう一度見てたんですが……

    「……本当に?」

  と聞き返す絢辻さんを見て、オイサンはもう……
  なんか、死にそうになりました。
  か、かわいい……………………………………………………
  …………ほ、惚れてまうやろーー!! ( ← お前もう存分に惚れてるやないか)





……。





えー……。
全国、9億2千万の絢辻詞ファンのEXILEみなさま、コンバンワ。
おめでとうございます。
ここまでくれば。
ここまでくれば、あとの絢辻さんは、もうすっかりあなたのものです。

この後の絢辻さんは「うさぎとかめ・絢辻版」で以って家族との関係をさらに詳らかにした後、
どんどん可愛らしく、変貌していくばかりです。
その姿は……これまで失った物や、憧れて、けれど心の奥底に閉じ込め続けていた物を、
取り戻そうとしてどんどん表に出してくる微笑ましさと、若干の痛ましさを含んでいます。

主人公はそんなことにはケ程も気づきやしませんが……
みなさんは、全力で!
彼女の失われた少女の奪還に、お応え申し上げてあげましょう!


■あたしの唇をうばってっ!
放課後の校舎裏、突然「あたしの唇を奪ってっ!」と突っかかって来る絢辻さん。
……正直、このイベントでの絢辻さんの心づもりは、
オイサンにはハッキリと分かりません。

ただ、
「奪うところに意味がある」、
「頑張ってみるから」
という二つのセリフからは……
主人公を、自分の上位に据えようという気持ち、
主人公の言った通りにしてみる、という……
先の、「僕の言いたかったこと」で主人公が伝えたことへの、絢辻さんの答え、
なのではないかと思えます。
「あなたをあたしのものにしますっ!」の逆バージョンの実践だったのではないかと。


■帰り道のいちゃいちゃイベント2連発
「一緒に帰ろう」と絢辻さんから誘いかけてくる、
「冬の雷」のイベントでは、突然の雨に降られ、神社の境内に逃げ込む二人が描かれます。
……普通だと、雨に濡れて透けた制服が……とか、
身を寄せ合って触れ合う肌が……とか、
そういうことが描かれてしまうシチュエーションですが……
ここでもまた、一捻り。

こんな肝心な時にだけ、ロクなリアクションを起こさない主人公に業を煮やした絢辻さんが
一人芝居を始めてしまうという、ワケのわからない……
否、
なんとも可愛らしい一面を垣間見せてくれます。

恥ずかしいことをやらせるな、と怒る絢辻さんに
「自分で勝手に始めたんじゃないか!」と返した主人公に、頬を染めて呟く、
「だって」の一言。
……そういう展開も期待してみたかったんだもん、ということ……でしょうかね。
だんだんと、フツーの恋っぽいことをしてみたくなった、ということでしょう。
気づいたれよ、主人公。

そして、会話アタックのご褒美イベントで、
駅前でメロンパンを買い食いするイベント。
嬉々として主人公をいじめ倒す絢辻さんですが……
なんつうか、スで最大出力を出した自分を、真っ向から受け止めてくれる人がいることを
心から実感……したんでしょうし、したかったんでしょうね。
主人公は大変です、大変ですが……
大変な幸せ者です。

……まあ、こんなん見せつけられたら……
黒沢さんが意地悪したくなる気持ちもわかります。



■Closing



以上が、「スキ」レベルに起こるイベントと、
その中での絢辻さんの「恋心」、主人公に惹かれていく、
あるいはその想いを戦わせる気持ちを描いたもの……のダイジェストです。


前回で、「絢辻さんの恋は「アコガレ」で終わっている」なんて書きまして、
「スキ」ではそんなに書くこともないなあ、と思っていたんですが……
全然、ウソでしたね。
こんなになるとは思っていませんでした。
いや、これが「恋」ではなく「愛」になる過程であるという考えには変わりはないのですが。

思いのほか魅力的なシーンや、見落としていた難解な言葉が多数あったので……
一気にやってしまいました。
せめて、喜んでいただければ幸いです。


次回こそ、最後です。
……なんか段々、『水曜どうでしょう』じみてきたな。
じゃじゃじゃじゃじゃじゃあ、解散!


オイサンでした。






 ◆『アマガミ』絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
    01 前口上
    02 序文・絢辻詞という「少女」
    03 第〇部 物語のアウトライン 

    04 第一部 学校生活編 PRE STORY (SS)
    05 第一部 学校生活編 その1
    06 第一部 学校生活編 その2

    07 第二部 「目標」編 PRE STORY (SS)
    08 第二部 「目標」編

    09 第三部 家族編 PRE STORY (SS)
    10 第三部 家族編

    11 第四部 手帳編 PRE STORY (SS)
    12 第四部 手帳編 その1
    13 第四部 手帳編 その2

    14 第五部 恋愛編 PRESTORY その1 その2 その3 (SS)
    15 第五部 恋愛編 その1 その2 その3
    16 第六部 終章 PRE STORY その1 (SS)

    ◎『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク

 


 

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コメント

■関東の塾講師さん
オイサンです。

>ただ、何というか、この「契約」の件に関して、妙にモヤモヤとしたものが私の胸の内にありまして。
>ここまで出かかっているのですが……。
>現段階でうまく言葉にできないので、まとまりましたらまたご意見をお聞かせ下さい。

了解です。ご意見、お待ちしてます。
あまり他の方の話を聞く機会がないので、自分にない視点とか、
見落としの再発見が出来そうで楽しみです!


>私、こういう会話が大好きな性質で、今ものすごく楽しいのですが、ぶっちゃけご迷惑ではないでしょうか?
>我ながら、なんて重箱の隅をつつくようなことを、と思いますので。
>しかも一回一回長いし。

なんもなんも。何をおっしゃいますやら。
私の書いてることも、重箱の隅の集大成みたいなモンですよ。
10年に一度の豪華な豪華なお花見弁当です、みんなで盛大につつき倒しましょう!
酒だ酒だ!!
酒 を 持 っ て こ ー い !!

投稿: ikas2nd | 2009年8月 4日 (火) 23時27分

お邪魔します。
関東の塾講師です。
このたびは明確なお答え、ありがとうございました。

>敢えて言うのであれば「信頼への願望」というか、
「そうしてくれるはずだ」という、一種あまやかな思いこみでしょうか。

ああ、これです。この感覚。
主人公が自分に好意を向けてくれる自信や確信はないけれど、それに対する強い願望はある。
恋ですねぇ。


>なんというか、「契約」というドライなものへの裏切りと認めたならば、
ここまで感情に流されず、もっと冷静な、冷淡な態度での報復がなされるような……

むぅ、なるほど。
ご指摘を受けますと、その通りだとも思えてきます。
「ナカヨシ」で黒沢さんに走った時の、綾辻さんのあの報復を考えると……!((((゚д゚;)))

ただ、何というか、この「契約」の件に関して、妙にモヤモヤとしたものが私の胸の内にありまして。
ここまで出かかっているのですが……。
現段階でうまく言葉にできないので、まとまりましたらまたご意見をお聞かせ下さい。


>しかし、こうした穴を見つけて戴けるほど細かく読んで戴けていることに、
オイサン喜びを禁じ得ません。
今後とも、よろしくご指摘のほど、お願いいたします。

いや、あの……。
私、こういう会話が大好きな性質で、今ものすごく楽しいのですが、ぶっちゃけご迷惑ではないでしょうか?
我ながら、なんて重箱の隅をつつくようなことを、と思いますので。
しかも一回一回長いし。

ご迷惑でなければ、またお邪魔させて頂きます。
ありがとうございました。

投稿: | 2009年8月 4日 (火) 15時04分

■関東の塾講師さん
ちーす。
オイサンでーす。

> >「あなたには、ずっとそばで、目標を追うあたしを黙って支えて欲しかった。
>  理解してほしかったし、そうしてくれると思ってた。
>  そう信じて、あなたの前で手帳を捨てたの。
>  だけど……そうじゃなかったなんて、今になって言わないで!」
> という……深い信頼と、それを裏切られたかなしみです。
> 
> ここなんですが、綾辻さんは本当に主人公のことを信じていたのですかね?

えー、あのですね。
論破せえというリクエストにお応え出来なくて申し訳ないのですが、
そうですね、おっしゃる通りだと思います。
ここで「深い信頼」と言ってしまうのは、若干言い過ぎの感があります。
敢えて言うのであれば「信頼への願望」というか、
「そうしてくれるはずだ」という、一種あまやかな思いこみでしょうか。

オイサン本文中、このセリフに二つの心情を見出していますが、
実はアップする前の草稿の段階では、これにもう一つ、意味を用意していました。
そのボツ原稿から、メモ書きのままその部分を抜きだしてみます。

  「あなたにだけは言われたくない!」の意味は?
   → 目標の向こうの安らぎを得るために懐に迎え入れた主人公に、
     目標を否定されては元も子もない。
     (しかしもっと優しい、複雑な意味もあるはずだ。その気配は感じられる)

いかがでしょう。
この2~3行目の部分は、塾講師さんのおっしゃる心情に近いんじゃないかと思います。

本文では、
「お前なんかに言われたくない!」という、「反発の気持ち」と、
「あなたにそう言われてしまったら、もうどうしようもない」という「哀しみ」の
二つについて記し、
この三つ目が、アップ直前になってどうも「哀しみ」側にかぶるような気がして
削ったんです。
が、今指摘を受けてみると、言われる通り、
その中間の感情「願望への予期せぬ裏切りに対する怒り」という、
ある種ワガママな感情があると、オイサンも思います。

ただ一点引っかかりを感じるとすれば、
この瞬間の絢辻さんが、そこまで「契約」というものに縛られているかといわれると、
そうも思えない節があります。
なんというか、「契約」というドライなものへの裏切りと認めたならば、
ここまで感情に流されず、もっと冷静な、冷淡な態度での報復がなされるような……
気がするのです。絢辻さんの人物像から類推するに。
シーンにするならば……

 「そう……そういうことを今さら言うのね」と立ち上がり、
 背中で怒りを露わにして、教室を立ち去り際、
 「二度と、あたしに話しかけないで頂戴」と吐き捨てるような。

コトがコトだけに、単純にアウトオブコントロールだった、
という見方もありますが、そんなものを無視した、
感情の針の振り切れ方をしていると……感じました。

このシーンからオイサンが感じたものは、やはり何よりも「かなしみ」だったので、
そっち側に引っ張られ過ぎたかな、とは思います。
三つ目の解釈も、残しておくべきだったなあと。
マそれは多分、オイサンがかーなーり、絢辻さんに肩入れして
場面を見ているからだとは思いますが。

本来は、もっと絢辻さんに対して否定的・懐疑的な視点も持つべきだと思っているのですが、
如何せん、ラヴは盲目なもので。

しかし、こうした穴を見つけて戴けるほど細かく読んで戴けていることに、
オイサン喜びを禁じ得ません。
今後とも、よろしくご指摘のほど、お願いいたします。

でわまた。

投稿: ikas2nd | 2009年8月 3日 (月) 22時32分

こんにちは。
またしても関東の塾講師です。

相変わらずの鋭いご考察、感服しております。
まさに深い愛情のなせる業ですよね。
何も考えずニヤニヤ派の私は、ただただ感心しきりです。

が、今回一点だけ、無謀にもオイサンに挑戦することをお許しください。

下手をすると、言葉に対する認識の違い、もしくはただの揚げ足取りになる可能性もあるのですが……


>「あなたには、ずっとそばで、目標を追うあたしを黙って支えて欲しかった。
 理解してほしかったし、そうしてくれると思ってた。
 そう信じて、あなたの前で手帳を捨てたの。
 だけど……そうじゃなかったなんて、今になって言わないで!」
という……深い信頼と、それを裏切られたかなしみです。

ここなんですが、綾辻さんは本当に主人公のことを信じていたのですかね?


この時点での綾辻さんの感情は、まさに「恋」だと思うのです。

つまり、下心あり。

アコガレからここまでの綾辻さんの行動は、誤解を恐れずに言えば、非常に自分本位。
自分は主人公に傍にいてほしい。
自分が頑張り続けるために、主人公という宿木が欲しい。
でも、自分と主人公の間には何もない。
だから契約を結ぶ。

「お互いに思いやり支えあう関係」ではなく、「お互いの願望をぶつけ合い、利害が一致する関係」。

綾辻さんは、オイサンが散々考察されてきたように、本当の自分が無条件で好意を向けられる存在だとは思っていません。
主人公がまとわりついてくるのも、彼特有の「善意」からくるもの。
ですので、契約後の主人公の言葉で思いがけず照れる仕草からも解るとおり、主人公が自分の傍で支え続けるなんて、実は信じていなかったのではないでしょうか?

綾辻さんは自分と主人公の関係がいかに薄弱かを知っている。
でも、主人公への執着は増すばかり。
だから、自らが提示した契約条件の遵守に、例えそれを主人公が理解しなくとも、全力を傾ける。
オイサンがおっしゃる通り、主人公の「特性」を下碑た糾弾から守るため、猫の皮を脱ぎ捨てるくらいに。
まさに「私をあげる」です。
「だからあなたも、頑張り続ける私のそばにいるという契約を守ってね」、と。

そんな綾辻さんにとって、主人公の「きっとそのままじゃよくないよ(頑張るな)」という言葉は、「契約破棄(契約不履行?)」に聞こえたのではないでしょうか?
「契約破棄」ということは、主人公との関係性が無くなる。
主人公が自分の隣りにいなくなる。
その恐怖と、契約をひっくり返された怒りから出たのが、「あなたにだけは言われたくない」だったのではないかと思うのです。

そしてその後の「僕が一緒にいるから」発言で、主人公を縛りつけるはずで、その実自分を縛りつけていた「契約」から解放されたのではないか、と。


あとはオイサンが考察された通りだと思うのですが……穿ちすぎですかね?
我ながら純粋さの欠片もなくて嫌になります。(苦笑)

出来れば、完膚なきまでに論破して下さると幸いです。

これからも楽しみにしています。
長文失礼いたしました。

投稿: | 2009年8月 3日 (月) 01時41分

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