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2009年7月21日 (火)

■手帳の中のダイヤモンド -15- 第五部 -更新第262回-

オイサンです。

3ヶ月あまりにわたってお送りしております、
『アマガミ』絢辻さんシナリオ解読企画「手帳の中のダイヤモンド」、
今回はその15回目。

  第五部、最終章・恋愛編に突入です。
  ◆『アマガミ』 絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
  ◎『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク



……ぶっちゃけた話、オイサンもぼちぼち
この企画を始めた時の気持ちやきっかけを忘れそうになってはいます。

  もちろん、絢辻さんへの気持ちが薄れたりしたわけでは決してありませんが。
  むしろ日増しに強くなるこの思い。
  どうして良いやら。
  オイサンこのまんま四十になっちまうよオイ。
  短えな人生。

思い出すのは、一番初めにこの解読企画をやろうと思い立ったのは4月の初め、
スキルートに足を踏み入れ、
あの公園での「契約のキス」のイベントを見たときでした。

最初あのイベントを見たとき、
オイサンには絢辻さんの言葉の意味や真意がシナリオから読み取れず、
あとからあとからいろんな考えが頭をよぎり、
「感想と一緒にキチンと読み解いて、整理をしよう」と思いました。
それがこの「手帳の中のダイヤモンド」の始まりです。
ですので実は、原稿的に一番最初に手をつけたのはこの恋愛編。
これが一番古いファイルです。

それから先は、ここまで「手帳の中のダイヤモンド」のシリーズを読んできて下さった
ありがたーい皆様には、ご存知の通り。
その先の物語の展開も分からないことだらけで、それら一つ一つを読み解いていくうちに
このような膨大な量になってしまった、というわけです。
思えば、この試みの無謀さに途中で気づいて、スタイルを変えればよかったのですが。

  おかげで未だに隠しシナリオにもたどりつけず、
  スキBADも見られていない体たらく。
  今死んだら、オイサンの人生なんだったんだって話ですよ……。
  全部読んで下すっている皆さまはホントご苦労様です。

しかしまあ、今更反省したってもう遅い。
泣いても笑ってもこれが最後です。

それでは参ります、手帳の中のダイヤモンド・第五部、恋愛編!
「ダイヤモンドの恋模様」!!

ダイヤモンドの少女、絢辻さんの恋。
そのシンプルで難解な始まりと、成り立ちを。
知りたい奴は、前へ出ろ!!


あああ、もう!
絢辻さんが好きだあっ!!


====================================================================
 ■第五部■ 眠れる森の絢辻さん
--------------------------------------------------------------------



■1) 恋をはじめる前に。
     ~本章の目的~




……とか、息巻いてみたところで。
そもそも『アマガミ』は恋愛モノです。

ですから、用意されるエピソードには、基本的に恋愛の要素……
つまり、ヒロインと主人公が惹かれあう物語の断片が含まれています。
そこに対して「ヒロインの恋愛の流れを読み解く!」なんつっても、
シナリオ全部を解説する、と言っているようなものです。

しかし、そこは鉄壁の仮面優等生、絢辻さん。
彼女の場合、ヒネくれ気味の聡明な頭脳のおかげで、
その感情の流れがいちいちややこしくコーティングされ、
若干一般的な概念を外れた解釈が備わってしまっている場合があったりもします。

そこで本章では、各好感度カテゴリーに区切り、
主要なエピソード、そして絢辻さんの気持ちが読み取りにくい、見えにくい部分をピックアップして
その心情を読み解いていきたいと、このように思います。



■2) ならばその、心につく名を恋と呼ぼう
     ~各好感度における、絢辻さんの恋模様~




まずは、各好感度での、絢辻さんの心の傾向を簡単にまとめてみましょう。
『アマガミ』での好感度のカテゴリーは
<デアイ><アコガレ><スキ><シリアイ><ナカヨシ>そして<ソエン><テキタイ>と7つあるわけですが、
最後の二つは本章のテーマと関係ない感じなので割愛。

  ……ていうか、<テキタイ>には、オイサンまだまだ全然到達出来てないので、
  言及出来ません。スミマセン。
  個人的には、<テキタイ>状態で染み出す心情には、
  熱い恋心の裏返ったものが多分に含まれそうで……非常に興味があるのですが。
  なので、これについてはまた別途、到達出来た暁に書いてみたいと思っています。

残り5つの好感度カテゴリーでの絢辻さんの状態については、多分こんな感じ。

★デアイ
  まだ、ただのクラスメイトである絢辻さん。
  主人公に対しても猫を被った状態であるため、恋愛の要素はほとんどありません。
  ただ、後々惹かれていくことになる、主人公の特殊性については勘づき、
  違和感(苛立ち?)を感じ始めているようです。
   <関連イベント>
    絢辻さんのお手伝いをする
    手伝いのお礼にお弁当をつくってきてもらう 等
    「掃除、手伝ってあげようか?」

★アコガレ
  絢辻さんが正体を現し、主人公との「恋」が始まります。
  「恋」が最も盛り上がる好感度カテゴリーがココ。
  そしてまたぶっちゃけた話、二人の感情としての「恋」はここで完成してしまいます
  (あくまで「スキ」にクラスアップする条件を獲得する進行をした場合、ですが)。
  この先の「スキ」で語られるエピソードは、その恋の成熟を描くものになっていきます。
  特別でない、日常の一コマから漏れてくる、絢辻さんの戸惑いや素直な気持ちなど、
  細やかな心情がとても丁寧に描かれていて、非常に読み応えのあるランク。
  しかし、甘いモノや、微笑ましいエピソードはそう多くないため、
  緊張感に満ちた恋の日々です。
   <関連イベント>
   ・助けて高橋先生!
   ・体育のあとで
   ・あなたをあたしのものにしますっ!
   ・一人は嫌
   ・契約のキス


★スキ
  好感度カテゴリー名こそ「スキ」ですが、
  ここでは「恋」と呼ぶほど、もどかしさや曖昧さに遊ぶエピソードは展開しません。
  絢辻さんは「アコガレ」で確かめた気持ちを頼りに、
  主人公への信頼を、もうコレデモカってくらいに深めて行きます。
  その絢辻さんから向けられる気持ち、スキスキ光線の濃さをどれだけ読み取れるかで、
  この好感度カテゴリーの意味は随分と変わってくると思います。
   <関連イベント>
   ・クラスメイトとの対立
   ・あなたにだけは言われたくない!
   ・突然の雨
   ・あたしの唇をうばって!


★シリアイ
  レベル的には「アコガレ」と同じ第2段階に位置する「シリアイ」ですが、
  絢辻さんが正体を現すのは終盤になってからなので、
  ここでの絢辻さんの気持ちは「デアイ」とさほど変わらない位置にあるように見えます。
  ただ、絢辻さんの抱える気持ちは、
  「アコガレ」における攻撃的なもの・攻めの恋愛よりも、
  より内向的でもどかしさを含んだ、いわゆる片思いにちかいものであるように感じられます。
  「アコガレ」で展開する感情よりも、それが恋であることが分かり易い。
  マこの「シリアイ」については、オイサンもまだしっかりと追跡出来ていないので、
  あまりガッチリとしたことは言えませんが。


★ナカヨシ
  この好感度カテゴリーには、
  「アコガレ」からスライドしてくる場合と、
  「シリアイ」からレベルアップしてくる場合の2パターンがあるため
  絢辻さんの心の連続性が保たれていません。
  基本的には、絢辻さん上位での主人公との関係が描かれるため、
  「アコガレ」から来た場合にはワリと自然に受け止められますが、
  「シリアイ」から来た場合は、若干唐突な印象を受けます。
  「スキ」と同じレベル3に位置する好感度カテゴリーですが、
  絢辻さんの気持ちは、恋という全面降伏的なものよりも、
  「信頼」に近い、友情的な感情が描かれている感があります。



■3) 恋のように、絢辻さんは。
    ~ナカヨシというキモチ~




サテ、ここから先は、上で簡単にまとめた各好感度カテゴリーでのイベントについて、
ちょいちょいとオイサンの解釈をまとめていくだけにしたい、と思っています。

……が。

一つだけ、オイサンの抱く大きな疑問を、掲げておきたいと思います。
それは、


  「ナカヨシ」ランクでの絢辻さんは、果たして恋をしているといえるのか?


ということです。
この疑問の発生源や過程については、後のイベントの読み解きや
ランクとルートの構成への考察で書いていきたいと思いますが……。
Web上での『アマガミ』絢辻さんシナリオの感想などを読んでいると、多くの人が
「スキエピローグよりも、ナカヨシエピローグの方が、幸せなエンディングに見える」
という感想を抱いておられるようにお見受けします。
その点についてはオイサンも共感するところが多々あったのですが、
しかしよくよく物語を追ってみると、どうにも腑に落ちない点も散見される。

  まあ「幸せ」という言葉の指すものが、各人にとって異なるというのもあるでしょうが。

そこで以下では、絢辻さんの各ルートでの気持ちの流れを追う中で、
「ナカヨシ」という好感度カテゴリーの在り方を中心に、
「3つ」の恋の在りようについて、もう一度考えてみたいと思うのでした。



■4) 恋する断片
     ~各好感度カテゴリーでのエピソード~




サテ、『アマガミ』の恋物語には、言わずもがな、
各キャラクターにつき3つの物語が用意されています。

一つは「スキ」ルートの物語。
 デアイ → アコガレ → スキの流れでたどり着く、最も新密度が高いとされる物語です。
二番目は「ナカヨシ・アコガレ」ルート。
 デアイ → アコガレ → ナカヨシ。
三番目も「ナカヨシ」ですが、こちらは「ナカヨシ・シリアイ」です。
 デアイ → シリアイ → ナカヨシ。

先ずは単純に、これにそって頭の好感度カテゴリーからイベントの中身を紐解いていきましょう。
あんま何も考えないでね。
そうしましょうそうしましょう。


  □4)-1 デアイ-------------------------------------------


最初の状態であるデアイ。
この好感度カテゴリーでは、当然のことながら恋愛らしい恋愛のエピソードは展開してきません。
絢辻さんもまだ猫を被った状態で、あるのは、
絢辻さんという人物のパーソナリティのお披露目と、
主人公という価値観との、ちょっとした接触程度のことです。

絢辻さんの心に萌すものは、
時折見せるちょっとした隙を見逃さずに「別人みたいだ」と突っ込んできたり、
無償で自分に接触してきたりする、
主人公の鋭さへの警戒と驚き、そして価値観への興味のようなものだけです。

ただ、「アコガレ」にクラスアップした瞬間から、
無意味に主人公のお人好しをサポートしてくれるあたり、
主人公のその人柄が自分に安らぎを与えてくれるということには、
潜在的に気付いているのではないか、という感はあります。

クラスアップのイベントには「お礼のお弁当」が設定されていますが、
正直オイサンには、何故あのイベントがそんなに重要な位置に置かれているのかが
ちょっとわかりません。
あのイベントからは、絢辻さんの感情の、重大な上下が見られないからです。

それよりはその後に起こる、
主人公と自分の価値観の違いに苦しみながらも
「掃除、手伝ってあげようか?
 ……ちがうわね、掃除、手伝わせてくれない? ……かな?」
と、一度主人公の価値観に飛び込んで、その正体を突き止めようとする姿の描かれる
「梅原の掃除を代わってあげる」のイベントの方が、
絢辻さんの情動の激しさを感じます。

このイベントでの絢辻さんの申し出は
純粋な好意・お返しととれなくもないですが、
やはりまだ猫を被った状態の絢辻さんですから、
自分にとって意味のあること以外をするとも思えず、
またこの後、主人公の価値観に対して敵意を明確にあらわにすることを考えると、
主人公の正体を突き止めんとする「一つの実験」であると考えるのが
自然であるように思います。

  ……マ、その後の態度をただのてれ隠し、ツンデレだととることも出来ますが。

しかし疑問なのは、あれだけのお弁当を……
絢辻さんは、一体誰につくってもらったんでしょうか。
借りを作りたくない両親や、嫌っているお姉さんにお願いしたとも思えません。
あるとすれば、家におさんどんさんがいるか、あるいは……

「実は全部絢辻さんのお手製だが、
 主人公に入れこまれすぎることを避けるためにそれを偽った」

というセンが濃厚かと思います。
ちなみにオイサンは、最初絢辻さんが作ったのは、
「お弁当箱」もしくは「お箸」かと思ってました。
裏読みし過ぎだ……orz

あと、個人的な要望を述べると……
このお弁当イベント、ゲーム終盤あたりで
「本当に絢辻さんが、フルスクラッチのお弁当を作ってきてくれる」
というイベントがあると、より一層感慨深いイベントに出来たと思うのですが、どうでしょう?

  しかし、朝は4時5時に起きてランニングをこなす絢辻さんが、
  夜食が必要になる時間まで勉強してるって……
  一体普段、何時間寝てるのか。
  謎の多い人ではあります。

……えーと、ですね。
この記事のために、デアイのイベントを見直していたのですが……
何故でしょう、全部を知った状態で、
デアイの頃の絢辻さんを見ていると、異様にドキドキしますな。



  □4)-2 アコガレ-----------------------------------------



「アコガレ」は……物語としてみると、大変に扱いの難しい好感度カテゴリーです。
話がうまく進めば当然「スキ」にクラスアップしますが、
何もせずに放っておいても、「ナカヨシ」にはなれてしまうからです。

つまり、恋物語としての「アコガレ」の位置づけは、
100%成功すればお話が先に進むのでブレがありませんが、
成功率が0~99%の場合は、不成功として話が進行してしまうため
この不成功の場合のブレ幅の大きさが、物語としての完成度を大きく左右してしまいます。

  ※ここでは基本的に「スキ」に向かって物語が進んだ場合のことを書きます。
   このアコガレや、「ナカヨシ」カテゴリーの特殊性については別途。

デ、話が「スキ」に向かって進む場合、
主人公と絢辻さん、二人の恋が最も盛り上がるのがこの好感度カテゴリーです。
というか、もどかしさや、曖昧な気持ちのはざまで揺れ動く、いわゆる「恋」は、
このカテゴリーで終わってしまうと言っても良い。


■三つの日常イベント
物語の体裁上、最終的な気持ちの確認はエンディングまで引っ張られますが、
事実上の気持ちの確認はここで成立しています。
イベントにも、

「あなたをあたしのものにします」
「vs犬」
「一人は嫌」
「契約のキス」

など、エキセントリックで印象的なイベント目白押しですが、
中でも、地味ながらも細やかに揺れ動く気持ちの妙味を感じさせてくれるのは、
主人公が、絢辻さんが猫を被っていることを担任に相談しようとする
「高橋先生に相談しよう!」と、
体育の授業終わりで絢辻さんがからんでくる、
「バレーボールのあとで」、
そして
「放課後の絢辻さんを手伝おう!」
だと、オイサンは思います。
ていうか、オイサンの好きな3大イベントです。うへへ(蒼樹うめてんてー風)。

どのイベントも、イベントCGなどの華やかさとは無縁の日常の一コマですが、
「自分の本当の姿の醜さを知っているからこそ、
 拒絶されることを前提に主人公に接する絢辻さんと、
 その絢辻バリアを意外な言葉で突破する主人公、
 そしてさらに、その意外な反応に驚き、不安と喜び・戸惑いを隠せない絢辻さん」
が描かれるものです。

絢辻さんが色々と考え、自分の言葉でしゃべるイベントは、
彼女の聡明な頭脳と高潔なプライドが、奥底にある感情をコーティングしてしまうため、
なかなか、本来はシンプルな筈の彼女の真意を見通すことが難しい。
しかしこれらのイベントは、
「絢辻さんの視点で、突拍子もない主人公を見る」形で語られているため、
比較的その本音や、揺れ動くものを読み取りやすいと思います。

  逆に、その他の絢辻さんメインのイベントの多くは、
  主人公の視点で、「不可解な絢辻さんを見る」形で描かれるため、
  上記のような読み取りの難しい語り口になってしまうのでしょう。

「高橋先生~」のイベントでは、
絢辻さんもまだまだ自嘲気味で主人公への警戒を解いていません。
自分で自分のことを、
「そんな裏表のある人間、何を考えているか分からない」
「近づくメリットを感じない」
とさえ言います。

しかし「バレーボール~」では、
「もしかして、自分は素のままでも人に受け入れてもらえるんじゃ……?」
という、照れのような希望が見え隠れし始めて、
絢辻さんが本格的に、
主人公という特殊人格に恋をし始めていることが読み取れます。

  ついでに、主人公が「ボクは、今の絢辻さんの方が……」と言ったときの
  一瞬の驚きよう。
  「何コイツ、変態なの?」
  という視線がもう……ちょっとたまりません(←変態でした)。

皆さん、是非、これらのイベント、見直してみて下さい。
イベントCGなんかがない分、非常に細やかな表情の変化が着けられています。
一瞬の変化を見逃さないよう、
じっと絢辻さんの目を見ながらプレイするのがコツです。

  ◆余談その1
  それにしても、こういう細やかな場面で際立つのが、
  声優・名塚さんの演技の巧みさです。
  ちょっとしたためらいの息遣いなど、本当に「絢辻さん」であるかのような振る舞い。

  現在進行中の棚町薫さん役の佐藤里奈さんも
  プレイしていて相当に上手だなあと感じますが、
  うまいうえに分かりやすいというところが、さらにすごいです。

  ◆余談その2
  上でもちょっと書きましたが、『アマガミ』の……なのか、絢辻さんシナリオの、なのか、
  巧みなところで、
  ところどころ、視点がヒロイン主体だったり、主人公主体だったりと、
  交代する場面が多々、見受けられます。
  これは主人公がえらくエキセントリックな性へ……キャラクターをもっているからですが、
  ヒロインが主人公を解き明かそうとするシーンと、
  主人公がヒロインを解き明かそうとするシーン、
  二つが折り重なって飽きの来ない面白さを作り出していると言えます。

そして、主人公の視点で、語る絢辻さんを見届けるイベントの最たるものが
「あなたをあたしのものにします」
「契約のキス」
であると言えるでしょう。


■「あなたをあたしのものにします」
「あなたをあたしのものにします」での言葉は、
……正直、
「主人公が好きなんだけど、好きと素直に言えないから、
 ああいう体裁で主人公を傍に置いておこうと思った」
という、ただのツン気味の強がりな告白である、と解釈してしまいそうですが、
未だ主人公の価値観のバックボーンにあるものを理解しきれておらず、
絢辻さん自身の価値観とのすり合わせても出来ていない状態にあり、
後の「契約のキス」のイベントで、
自分のうちに芽生えている感情が「好意のようなもの」であることにも
気付けていなかったことが語られることから、
そこまで自覚的ではないと言えるででしょう。

「だから、そのすり合わせをする時間と距離を頂戴」
という、絢辻さんなりに、
中多さんシナリオでいうところの「お試し期間」を無自覚に設定した、
という一幕だと考えます。
「契約のキス」という大砲をたたきこむための、左ジャブであるともいえます。


■「契約のキス」
そして絢辻節の真骨頂、「契約のキス」。

ここでの絢辻さんの気持ちは、
もう気持ちの良いくらい「恋」で満ち溢れています。

色々を考え過ぎるくらいに考え込んで出した論理的な結論と、
子供っぽい、すこし拗ねたような感情と、
言葉に出来ないもどかしさ。

つまるところは、
かけがえのない存在である主人公を、どうにかして自分のそばに縛りたい。
だから自分を差し出すのだけど、それがただ差し出すだけの関係ではなく、
「お互い、対等のペアに、恋人同士になりましょう」
という、絢辻さんからの、提案に近い申し出です。

「あなたには、あたしの傍にいて欲しい。
 だから、あたしを差し出します。
 けれど、あたしという存在を理解した上でペアでいることを了承する限りは、
 あたしの日常である演技の世界に付き合って頂戴」

という、ある意味では絢辻さんばかりに都合のよい申し出なのですが……。

面白いなあと思うのは、このときの絢辻さんの告白のスタイルが
「お願いだから、付き合って下さい」というものではなく、
「対等に、恋人同士になりましょう」という申し出であること。

オイサンなんてのは、いわゆる告白というものは前者、つまり
「自分を差し出して、相手を獲得する」ようなものだと感じていたので、
絢辻さんの、この、自分から言い出しておいて
「お互いを差し出しあいましょう」という提案のカタチに考えがたどり着くまでに
ワリと時間がかかってしまいました。
しかし、絢辻さんらしいと言えば、じつに絢辻さんらしいですし、
しかもそうあるべきだという納得性も、すごくあります。
自分を卑下しもせず、なおかつ相手も尊重するというやり方が、
絢辻さんの恋に対しても真摯な姿勢が見て取れる、一面だと感じます。

なんというか……絢辻さんの人生が常に切実であること、
そしてそれゆえに、不器用な生き方であることを、
ひしひしと感じてしまう……そんな一幕であるように感じます。

そして、言葉の端々から漏れ伝わる、絢辻さんが主人公の存在を、
どれだけ貴重なものだと考えているかという気持ちが、胸を打ち、
暖かい気持ちにさせてくれます。

「あなたがいなくなる可能性。いつまで一緒にいられるのか」。

失っても代わりがいると思えるのであれば、この言葉は出て来ません。
今現在でかけがえのない存在だと思っており、
この先、同じような人間に巡り合えることもないと、考えているのでしょう。
それはつまり、これまでの17年でも出会ったことのないタイプの人間だったということでもあります。
だからこそ、何としてでも縛りたい。

それなのに、得意の策略ではなく、
「自分を差し出す」という形でこの場に臨んだ絢辻さんの気持ちを思うと、
その誠実さに胸を強く打たれます。

  しかし。
  この後に起こる「手帳の火葬」イベントを開けなければ、
  物語は「ナカヨシ」に移行してしまい、
  そこで絢辻さんは再び謀略による、上から目線での束縛に走ります。
  これは……ゲーム上は何の演出もありませんが、相当に悲しい出来事です。
  ……もちろん、「アコガレ」 → 「ナカヨシ」のスライド確定は
  このタイミングだけで起こるものではないので、
  絢辻さんが「何をきっかけに一歩下がってしまうか」は
  「アコガレ」でのイベントをどこまで開いたかによりますが、
  この「契約のキス」までを開いておきながら、「ナカヨシ」に移行してしまうのは
  物語としてはかなり最悪のパターン……
  絢辻さんの心の中で起こっている出来事としては、スキBADにも比肩しうる痛みを持っているに違いないと、
  オイサンには思えます。

そうした、真摯で、ある意味論理的な、絢辻さんらしい考えの中に、
ところどころ現れる感情の波が花を添えます。
例えば、

「そうでしょ? だって、あたしとあなたの間には何もないんだもん」

というセリフに混じる「拗ね」のような感情。
「だから、なんとかさせてよ! 何かがある関係になりたいの!」
……という、理不尽な子供のダダのような気持ちは何とも華やかですし、
キスを交わしたのあとの会話において、
含み笑いを「怖い」と言った主人公に対して、
「嫌い?」と聞き返し、そうでもないと言われて「そっか」と受け止める、
その一連の手続き。
その「嫌い?」にも「そっか」にも、既にかつての拒絶への不安は見受けらず、
自信に満ちたものになっていて……声優さんもライターも、すごいなあと思います。

それに結局、このイベントの肝であるキスについても。
絢辻さんは、
「二人の関係を証明できるものはなにもない」
と言いますが、たとえキス一つ交わしたところで、そのことに変わりはない筈なのです。
恋人という関係に近づいたとしても、そうなったとしても、
それは結局、何の証明にもならない。
主人公がいなくならない保証は、どこにもないわけです。

それなのに、少しでもその不安を軽減させようと、
ただ自分と、主人公の間で証明するためだけに、
大きな賭けに打って出る絢辻さんを……いじらしく思いますし、
やはり、切実で、不器用で、いとおしく感じてしまうのでした。

  ……。
  だけどオイサンも、
  「一緒にいて楽しい」という理由だけで、
  誰かと一緒にいようだなんて、なかなかシンプルには思えないクチなので……
  それを理解できない絢辻さんの気持ちも、わからんではないんだよなあ……。

いずれにしても、このイベントを以て、
絢辻さんの主人公への「恋」は一つの完成をみます。
本当の完成が実感できるのは、「手帳の火葬」イベントを経て、「スキ」クラスに上がった後になりますが、
「手帳の火葬」が主人公への信頼の証し、
主人公とともに先の人生を歩んでいこうとすることの決意の表明であることを考えると、
主人公への思いはこの時点で果たされたものと考えられるでしょう。

この先の「スキ」で見られるのは、その気持ちの成熟であり醸成であり、
恋よりも「愛」に近いものへと進化を遂げます。
幾つかの化学反応を経て、今の気持ちをさらに強固なものにするための手続きとなっていきます。


■「一人は嫌」
そして時系列は若干前後しますが、
放課後の図書館で絢辻さんが不安定状態に見舞われる、「一人は嫌」。

今日も一緒にいられると思っていた主人公を、
一時とはいえ、想定外に喪失してしまった絢辻さんは、
完全にアウト・オブ・コントロールに陥ってしまいます。

……オイサンは、基本的に絢辻さんを、「強い人」だと考えています。
主人公に出会いさえしなければ、その強さをもって、
自分の描いたとおりの道を、きっと歩んでいったに違いないと思います。
その道の先に、本当に望んだものがあったかどうかは別として、ですが。
独りで居続ける限り、独りでどこまでも、いけてしまう人……だったのでしょう。

この、一種依存にも近い状態を、果たして「恋」と呼んで良いのか、
というためらいはありますが、
梅ちゃんへの「ヤキモチ」の行き過ぎたものであり、
主人公への初めての「甘え」だと思うことにして、ここに書こうと思いました。


  ……。


……と、いったところが「アコガレ」での絢辻さんの心模様、恋模様なわけですが。
ちょっと長くなってしまうので、ここらで一端切りたいと思います。

後半では、「スキ」「シリアイ」「ナカヨシ」での絢辻さんの恋?について、
そして物語の構造として、「ナカヨシ」の特殊性と「アコガレ」の果たす役割について、
……そして。
「絢辻さんの幸せって?」というところについて。
突っ込んでいきたいと思います。



オイサンでした。


……。
えー、出来るだけ早く、載っけるようにします。
すみませんでした。






 ◆『アマガミ』絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
    01 前口上
    02 序文・絢辻詞という「少女」
    03 第〇部 物語のアウトライン 

    04 第一部 学校生活編 PRE STORY (SS)
    05 第一部 学校生活編 その1
    06 第一部 学校生活編 その2

    07 第二部 「目標」編 PRE STORY (SS)
    08 第二部 「目標」編

    09 第三部 家族編 PRE STORY (SS)
    10 第三部 家族編

    11 第四部 手帳編 PRE STORY (SS)
    12 第四部 手帳編 その1
    13 第四部 手帳編 その2

    14 第五部 恋愛編 PRESTORY その1 その2 その3 (SS)
    15 第五部 恋愛編 その1 その2 その3
    16 第六部 終章 PRE STORY その1 (SS)

    ◎『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク

 


 

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