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2009年5月17日 (日)

■手帳の中のダイヤモンド -10- 第三部 -更新第216回-

『アマガミ』絢辻さんシナリオ1解読企画
「手帳の中のダイヤモンド」、今回はその10回目です。


  ◆『アマガミ』 絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
  ◎『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク


前回お知らせした通り、今回は「絢辻さんとその家族」について、
掘り下げてみたいと思います。

……今回は、後半、シナリオそのものからはかなり外れて、
「意識のありよう」のようなところまで突っ込んでいるため、
少々オカタイ感じになってしまってます。


  ■前回までのおさらい


絢辻さんと家族のかかわりについては、ここまでにも何度か触れて来ました。
絢辻さんが家族を嫌っていること。
家族との関係が、猫かぶりと、彼女のこれまでの人生を支えた「目標」の原点であること。

けれども、絢辻さんと家族の間に実際どんな「出来事」があったのかという
直接の原因については作中では描かれず、
ちりばめられたいくつかのヒントによって、プレイヤーの心に委ねられます。

その委ねられたものを、毎度のごと、シナリオの端々から読み解いていきたいと思います。
だって楽しいんだもん。


====================================================================
 ■第三部■ 家族 ~はじまりの歯車
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  ■「絢辻」の肖像 ~家族構成・四つの歯車



まず初めに、絢辻さんちの家族構成を確認しておきましょう。
物語の中で明らかになるのは、

 ・過剰にエリート意識の強い父親
 ・一つの物の見方しかできない母親
 ・何も知らない姉
……と、絢辻さんご本人の4人家族であること。

この中で、現在までに本編中に現れることが分かっているのは、
今のところ、お姉さんの縁(ゆかり)さんだけです。



  ■軋み ~悲鳴を上げる家族「システム」



この家族の問題は、「スキ」ルートの終盤になってようやく、
絢辻さんの口からぽろぽろとこぼれ落ちるようになります。

その内容は、誰もが経験するような軽い物から重たい物まで様々ですが、
基本的には暗く、好意的でない話ばかりです。

曰く、
 「自分は、家に居場所がない。
  空気のような存在で、たとえ頑張っても誰にも顧みてもらえない」

 「家にいるのは好きじゃない」

 「ごはんは、外で食べる方が好きかな」

 「子供の頃から、家族と出掛けたりすることはなかった」

 「自分のことは自分でするようにしてるの。
  周りに気を使わなくてもいいようにしたいだけよ」

 「私の家は、橋の下。拾われたの。……冗談♪
  子供の頃、親にそう言われたの。ああいうのって、傷つくわよね」

 「誕生日にアクセサリをねだったら、
  おもちゃ見たいのをプレゼントされた。
  自分は、安物でもいいから、大人が付けてるようなのが欲しかったのに」

その他にも、家庭的な話題や家でのほっこりするような出来事について、
絢辻さんの反応は芳しくありません。

やはり家族のことを悪く言うのはためらわれるのか、
あるいは単に思い出したくないのか、
絢辻さん本人の口からは直接的な思い出やエピソードをあまり聞かせてもらえないので、
その程度や、事実関係を主人公が知ることはありません。

そのため、もしかすると全てが
「どこの家でもある、ちょっとした家族間の行き違い」
程度の問題で、絢辻さんがそれを思い違いしているのではないか?
……と考えることも出来てしまいそうです。

  絢辻さんが随分幼い時期から、家族に対して萎縮した思いでいたことからも、
  その危険性は読み取れます
  (絢辻さんは「小学校に入る頃には今の私が出来上がっていた」と語ります)。

ただ、本論内では絢辻さんの言うように、
その家庭環境……というか、両親の偏執が常軌の逸したものであることを前提としています。
なぜならば、
「絢辻さんが優秀であり、世を広く見渡しうる人格である」
という情報はゲーム本編から信頼できるものですし、
何より、
目的は絢辻さんという人間が内に抱えた闇の真実を照らすことですから、
それを形成した事実がどうであるかをとやかく言っても始まりません。

それを踏まえて、以下、関連するイベントをご紹介します。



  ■真冬の歯車はいびつに回る。
    ~関連イベント




絢辻さんが自分と家族の関係を如実に語るイベントがあります。
ある晴れた日、輝日東山を臨む屋上で絢辻さんが語る
「ウサギとカメ・絢辻版」、
そして、前章まででも何度もご紹介している、
お馴染み「わたしはだぁれ」です。

前者のイベントでは
おなじみの逸話である「ウサギとカメ」のカメに我が身をなぞらえ、

 「頑張り続けた揚句、ウサギさんを追い抜いて、やっと勝利を手にしたカメさん。
  それなのに、村人たちにも、ウサギさんにも、
  そもそもカメさんの姿は見えていませんでした。
  意味のない、カメさんの一人相撲でした」

という言いようのないかなしみが、
後者では、本章の冒頭で書いた家族の紹介がそのまま語られ、

 「私には自分がない。家に居場所がない。
  私は早く社会にでて、自分を認めてもらえる居場所がほしい」
 「大嫌いな家族に囲まれて毎日を過ごすの」

そしてついには、取り乱した絢辻さんが

 「絢辻……? そっか。
  じゃあ一体、……私はだぁれ?」

と駈け出してしまう、ショッキングなシーンが描かれます。
どちらも、家族から相手にされない絢辻さんのいい知れないかなしみと、
渇望が切々と伝わる……こう呼ぶのは少々辛いですが……名シーンです。


この二つのイベントから、
絢辻さんに猫をかぶらせ、また気高く薄昏らき「目標」を持たせるに至った
そのきっかけの出来事を……探っていきたいと思います。



  ■一つ目の歯車 ~姉妹~ 縁もゆかりも縁さん



上で書いた「ウサギとカメ・絢辻版」で語られる、透明な存在のカメさんは、
言うまでもなく絢辻さん本人でしょう。
ではウサギは誰なのか?
……家族の中で考えると、立場上絢辻さんとライバルとなり得、
家族の中で評価される側の人間、……となれば、お姉さんの縁さんしかいません。

同じ「絢辻家の娘」である姉の縁さんが、家族の中で、果たしてどのようなスタンスでいるのか、
ということが、絢辻さんの心の傷を読み解く上で大きなヒントになります。

絢辻さんは、お姉さんを、「何も知らない姉」と評しますが、
その意味するところは……正直、わかりません。

  少し大きめの話をすると、『アマガミ』の脚本の巧みなところで、
  唯一の家族のヒントであるあのセリフにしても、
  具体的な欠陥が指摘されているのは、父親の「過剰なエリート意識」のみで、
  母、姉については漠然としていて、その姿はハッキリと像を結びません。

  しかしオイサンの見る限り、縁お姉さんは、どちらかといえば
  父母からのプレッシャーから心を守るために、
  「気付かなさ・鈍感さ」を身につけることで自己防衛を図っているタイプに
  見えなくもないのですが……。
  マそれはテンプレートなキャラクター造形を見てきたオイサンの濁りとして。

  ココに小さな矛盾が一つ。
  もし縁さんが鈍感な存在だとすれば、
  同じく「鈍感さ」を売り物にしている主人公に嫌悪感を抱くことこそあれ、
  あれだけ心を開くことは考えがたいのではないか、ということです。

  物語中盤で「善人も、度が過ぎると目障りよ」と
  主人公に言い放つ絢辻さんも描かれるので、
  矛盾、というほどではないのかも知れませんが。

縁さんのキャラクター像と絢辻さんの関係のシナリオとしては、
二通り……否、三通り、考えられると、オイサンは思っています。

◆一つ目。
一番当たり前の展開です。
「生まれた頃から優秀で、父の期待にも応え、母とも波長が合い、
 (絢辻家なりの)愛を受けて育った姉・縁と、
 いくら努力をしてもそれに追いつけず、愛を受けられない妹・詞のコンプレックス」
という図式です。

そして、優秀でないものや古い価値観の上で高潔とされる以外のものに対しては冷徹である両親の心根に気付かずに、
……恐らく、周囲を無意識に・無邪気に傷つけながら……
のうのうと生きている姉・縁に対し、苛立つ妹
……というところでしょうか。

◆二つ目。
「やはり絢辻さんと同様に厳しい両親の目にさらされながらも、
 その本質に気付かず、それを普通だと受け流し、普通に生きている姉」
という図式。
ありそうですが、どうもあの人(縁さん)、優秀っぽい。

◆三つ目。
正直、このセンはないと思っていますが。
「実際に、絢辻さんは今の父母とは血が繋がっていない」
というセンです。
姉の縁さんは実の娘であり、「血」によって差別を受ける絢辻さん。

  ここに入ってしまうと、展開としてはヘヴィなのですが、
  ある意味で一種の諦めがついてしまう……
  つまり、「全ての不幸を『血というどうしようもない事実』のせいに出来てしまう」ため、
  絢辻さんという人物像が、少し違う世界にいってしまいます。
  「本物ではない父と母」に、強く執着する意味が無くなってしまうように思うので、
  あまりリアルではないと感じます。

サテ、ここで、大きな疑問が一つ。
「ウサギとカメ・絢辻版」の中で、絢辻さんは
「カメさんはウサギさんに勝った」
と言います。
「勝ったけれども、村人にはカメさんが見えていなかった。
 だから評価されなかった」
とも。

これは、
「努力の果てに、姉に優る成果を挙げた絢辻さんを、
 父母、あるいは一族からの理不尽な扱いが待っていた」
ことの示唆ととらえて間違いないでしょう。
それはきっと、能力値・結果値以外の、
何か、如何ともしがたい物差しの上での仕打ちだったに違いありません。

そう考えると、上で書いたシナリオの、
三つ目のセンもあり得なくはないと思えますがオイサンの考えはこうです。


  ただ、分野が違った。


絢辻さんは何かの分野で、姉に優ったことがあるのでしょう。
それがどんな分野の成果であったかはわかりませんが、
その価値は「絢辻家」においては認められず、
「一つの物の見方しかできない母」の価値観によって蓋をされ、
自分の作り上げた努力の価値を認めてもらえなかったのではないか。

  たとえば、芸術に対して学問で対抗しようとしたのか、
  或いはその逆か。
  そんなことです。

  ……これもまた余談ですが、会話モードの中で、
  「目標の一つは医療関係」であると、絢辻さんは教えてくれます。
  もしかすると、絢辻家で唯一無二の価値とされるその「何か」は、
  「人の生命よりも上に位置する」と、教え込まれているのではないかと想像します。
  だからこそ絢辻さんは、
  人の命を最上に置く分野で至上の成功を収め、その意味を家族に知らしめたいと考えた……
  これはまあ、軽い妄想ですが。

いずれにせよ、絢辻さんの情熱と渇望の時間は
「エリート意識」と「凝り固まった価値観」で叩き伏せられ、
閉ざされた扉によって、報われることのないものになってしまったのでしょう。



  ■二つ目の歯車
    ~絢辻さんの少女を殺した残酷な言葉




絢辻さんが家族との溝を決定的に感じるきっかけとなった言葉があるのではないか……
と、オイサンは踏んでいます。
それは、いつ、誰に言われたのかは分かりませんが……

  「お前には、絢辻の姓は相応しくない」

と言う類の言葉です。
多分、かなり幼い時期に。

  「お前なんかうちの子じゃない」

かなり、強烈です。

オイサンがそう思うに至ったのは、
前述の「わたしはだぁれ?」のイベントの一つのシーンからです。
主人公に「あ……絢辻さん」と呼びかけられた彼女が、

  「絢辻……?
   そっか。
   じゃあ……私はだぁれ……?」

当初、オイサンはこのセリフの意味を理解できず、
「コンプレックスを語るだけのイベントにしては、なんだか大仰だなあ」
と思っていたのですが……。

家族のことを思い出し、不安定になりかかった情緒の中で
自分に向けて呼びかけられた「絢辻」の苗字。
それが引き金となって、幼い記憶のフラッシュバックを起こしたのではないでしょうか。
それはまた、苗字を奪われた彼女が
「自分には、自分がない」
と考えることになった、もう一つの意味にも繋がる気がします。

そこまでのコトを言われながら、歯を食いしばり、喰らいつき、幼い日々を過ごした絢辻さん。

またさらに、このシーンでの絢辻さんは、
17年間自分が持ち続けてきた価値観を、主人公という新しい価値観に侵食され始め、
今まで築き上げてきた自分への確信に揺らぎを感じ始めている時期です。

自己を自己たらしめるものを、二つの意味で同時に危機に晒された少女が、
自分という存在を確かな物にしようと、必死になって不確かな物にしがみつこうとする……
彼女の深い絶望を描く、屈指のシーンです。

  書きながら泣きそうなのです。
  「もういい! 詞ちゃん、うちに来なさい!
   うちの子になりなさい!」
  って言いたい!


  ……。


ついでに解説です。
「わたしはだぁれ?」で語られるセリフに次のようなものがあります。
このセリフがまた……ものすごい。

  「面白いでしょ?
   家族に認められなかった人間が、社会から認められるの」

文字で読むと分かり辛いかもしれませんが、
この言葉には二通りの解釈が出来ます。

一つは、言葉のままに。
「あの家族を見返してやるんだ」という、
ドス黒く、しかし彼女にとっての痛快なシナリオの披露です。

そしてもう一つが、自嘲的な意味合いに。
「そんなことが、あり得ると思う?」
というあまりにも切ない響き。

  ★余談……では決してないのですが、
  ここで際立つのが、絢辻さん役の声優・名塚佳織さんの好演です。
  このセリフの持つ二面性を損なうことなく、
  見事な抑揚と抑えた感情で、演じ切っていて心底感心させられます。
  ドラマを語る上で、役者の力が十二分にモノを言う瞬間です。
  ……閑話休題。

前章までで解説してきましたが、
オイサンは、絢辻さんが17年間、真に求めてきたのは「居場所」、
すなわち「安息の場所」だと考えています。

  ……後ほど、それを軽く覆す話が出てきますが、
  それはそちらを読んで下さい。

そして、「目標=社会的な成功」の先にその「安息」を求める絢辻さんの姿勢を、
「過ちである」とも書いてきました。
ではそのことに、絢辻さん自身は気付いているのか、いないのか?

  幼いうちから、そんな残酷な刺激にさらされ続けた絢辻さんが
  「家族」と「愛情」を欲するようになっていても不思議はなく、
  そしてその誤りの結末を手に入れたときの絶望感は、
  筆舌を尽くしがたいものに膨れ上がっていたはずです。

……正直、確信はもてないのですが、
もしもこのセリフが上で書いたような二面性を持つものであったならば、
絢辻さんは、「今自分が歩んでいる道が、誤ったものである」ことに気付いていることになります。
そしてまた……その過ちに気付いたのは、案外最近……
主人公の登場を契機にして、だったのではないかとさえ、思います。

主人公に出会うコトで過ちには気付くことが出来た。
けれども、自分ではもう止められないし、戻れもしない、
突き進んで、どこかで自分を偽るしか方法がないと思っていたのではないか。

……それはいわば、過去の自分から繋がる未来への復讐です。
自分の過ちを止められなかった自分、
結果の誤りを認められなかった自分。
それらの自分に気付いていながら、いさめられなかった自分、
そのすべての罪を看過した過去の自分への復讐です。

過去の自分に、不幸な未来をプレゼントするという恐ろしい復讐。

だから主人公に変えて欲しい。
それなのに、生半可な言葉では受け入れられない。

 「私、今、間違った方向に進んでいるの、
  助けて、お願い、気が付いて!」

という、彼女の悲痛な、無意識の叫びが、プレイヤーの胸を引き裂きます。
はじまりに、いびつな歯車を与えられた彼女の悲しみが、
この言葉の裏側からかすかに、しかし強烈な臭気で漂ってきます。



  ■歯車が回すもの ~まとめ



以上が、本編の中から見えてくる、絢辻さんの根本を形作ったものの正体……
だと、オイサンは考えています。
正直、情報不足で、確定的なことは恐ろしく少ない。
もっともっと、絢辻さんを襲った恐ろしい事件が、きっとあったはずです。

  絢辻さんがサンタを信じれらなくなった、
  悲惨な事件とかね。
  ……なんだったんだろうか。

それなのに、ドラマとして成立させることが出来るのが
テレビゲームの恐ろしいところです。
人間の、想像力の素晴らしいところです。

ここが具体的になってしまうと、
多分『アマガミ』のドラマは一気に陳腐なものになってしまうことでしょう。
ここを最後まで逃げ続けたシナリオスタッフさんたちは、
不安で一杯だったと思いますが……
オイサンは、惜しみない拍手を送りたいと思います。

素晴らしいシナリオをありがとうございます。



  ■分かたれる二つの歯車の先で回るもの
    ~ルート分岐による人格の断絶




ちょっとここで、一つ注意があります。
それは、

 ★「家族との関わり」について深く語られるのは
  「スキ」ルートにおいてのみである

という点です。
「ナカヨシ」ルートでは、それについてはあまりキチンと触れられません。
お姉さんの縁さんがちょっと現れて、絢辻さんが嫌な顔をする程度です。

このことによって、一つ、大きな問題が生まれます。
それは、

 ★両ルートで絢辻さんの人格が分断されている可能性がある、

という点です。
つまり、「スキ」ルートと「ナカヨシ」ルートで、
「今の絢辻さん」を形成する根本的な感情が異なるものとなっている可能性がある、
もっと言えば、
「スキ」ルートの絢辻さんと「ナカヨシ」ルートの絢辻さんは、
ある意味で別人である恐れがある、ということです。

その、根本的な感情とは、言わずもがな、
「現在の、絢辻さんの家族に対する感情」であり、
その分断とは、

  「家族に執着している場合」  と
  「家族を既に見限っている場合」とがあり得る

というコトです。
もう少し具体的にすれば、

 ★「目標」が家族を意識したものであること、
  家族を見返したい、振り向いてもらいたいという
  感情の表れと解釈できる場合

   と、

 ★既に家族に興味がなく、関係の修復をあきらめ、
  「目標」がひたすらにわが道をいくためのものである場合

と言えるでしょう。
この分断が起こることによって、シナリオの解釈は大幅に変わります。

……が、本論では、それは考慮に入れていません。
オイサンの考えでは、
「スキ」ルートの絢辻さんも「ナカヨシ」ルートの絢辻さんも
基本的に同じ心を持つ一人の絢辻さんで、
「ナカヨシ」では見られなかった側面や深い心の内を、
「スキ」では詳らかに垣間見られ、
かつ
「絢辻さんは、家族に振り向いてもらいたいという気持ちを持ち続けている」
という解釈スタンスでお届けしたいと思います。
何故そういうスタンスをとったか、についてはこの下で書いていきますが、
先ず簡単に書いてしまうと。


  ■「スキ」とか「ナカヨシ」とか、最初に言い出したのは?
    ~分断に関する記述1



「スキ」の絢辻さんと「ナカヨシ」の絢辻さんの心根にあるものが別モノ、
つまり二人がある意味で別人であったとしてしまうと、
そもそも「猫をかぶった理由」や「目標の出どころ」なんかも、
「ナカヨシ」以下のルートでは無い話になってしまいます。

実際、これらを読み解くヒントは全て「スキ」ルートの中にあり、
「ナカヨシ」をやっただけでは分からない話です。
しごく単純ですが、これが第一の理由です。



  ■ダブルギアは回らない。 ~分断に関する記述2



次に、その「心根にあるもの」、つまり家族への感情が、
「諦め・無関心」ではなく「意識・見返しの表れ」であると考えた理由についてですが。

まず、心根が「見返したい」という場合と「諦め・無関心」である場合とで
どのように異なってくるかを読み解いておきましょう。

1)家族を意識している・家族を見返したい!と思っている……場合
 これはすなわち、凝り固まった考えしか持たない両親に、
 自分が頑張って得たものを認めてもらいたい、という気持ちにほかなりません。
 それはつまり、
 『両親が持つ価値観の外にある価値を持つ自分=ありのままの自分の価値』を、
 知って、評価してもらいたいということでもあり、
 両親の価値観の解放と、普通の家族としてのあり方を取り戻すことに繋がります。

 この場合、絢辻さんのいう「居場所」という言葉は、
 「家族=安息の場所」という意味合いに近くなります。


2)家族を意識しない・見限っている……とする場合
 この場合の絢辻さんは、家族を「壊れた物差し」くらいにしか
 思っていないことになります。
 やったことをキチンと見てくれない人間はいらない、
 ただ自分の業績を、正しい物差しで正当に評価されたい、と思っているということです。

 そして「居場所」は、その評価がされる場所、ということになりますから……
 つまり、それは「社会」でも間違いではないワケです。


オイサンの思う答えは 1) です。
以下、そう思う理由!


◆先ず一つに、絢辻さんの家族に対する気持ちが、
「強すぎる」という点が挙げられます。
イベント「わたしはだぁれ?」の中で、絢辻さんは主人公に対し、
ハッキリと「大嫌いな家族」と言います。
そして先でも述べたセリフ、
「家族に認められなかった人間が、社会に認められるのよ?」
が続きます。

……オイサンは、ここまで強い感情を持った人間が、
その対象に対して、諦めている・無視をしているとは、ちょっと思えません。
この反駁的な感情は、対象からの別離・遊離を意味するものではなく、
敵意であり、むしろ積極的な接触への意志であると感じます。

  カンタンに言ってしまえば、
  「キライ嫌いも好きのうち」というアレです。
  ちょっと軽すぎますが。

戦いを挑んでいる、と言い換えてもいいかもしれません。

「キライ」という言葉が、「見限る」という諦観にそぐわない、
強い気持ちであることに違和感があるのです。
「見限り」には、もっとどうでもよい、相手にしない感情がつきまとう。
一種の許しですらある。
その表現には
「あんな人たち(家族)、どうでもいいの」
「あたしはあたしのやり方で幸せを掴むわ」
という類の言葉が使われても良いように思います。

あそこまで、強い言葉で家族を意識し続けるのは、
かまって欲しい……と言えば幼さが勝ち過ぎるものの、
やはり「失った少女時代・安息への固執」の裏返しであるような印象をぬぐえません。
……お姉さんに対する感情は別として。

◆二つ目の理由。
求める居場所が「正しい評価がされる場所」であるのであれば、
それは社会に出てしまえさえすれば得られるものです。
なんなら、学校や部活だって、構わないとも言えます。
そういう状況の中で、絢辻さんは、ターゲットはあくまでも「社会だ」と言い続けますし、
加えて「それまで、絶対に負けられない!」とも言います。

この「負けられない」という感情は、この場合異質です。
「勝たなければならない=成功しないとならない」という意識は、
明らかに何者かに対して自分の能力が高いものであることを表明したいがための意識です。
その対象は……すなわち家族以外には考えられず、
家族への見返し行為に他ならない。
そうなってしまうと、当初の「家族を気にしない」コトからは矛盾してしまうことになります。

ただこの「負けられない」というのは、
「自分の背後にはもう何もない」という意識、
つまり家族という後ろ盾のない自分には、失敗すると後がないという
強迫観念のようなものが言わせたのかな? とも思えますが……
ちょっと、やはり言葉として強すぎる印象がぬぐえません。



  ■歯車はつるつるオデコのように。



以上のような理由から、オイサンは
「スキ」ルートだろうと「ナカヨシ」ルートだろうと、
絢辻さんは一人だけの女の子だし、
求めるものは安息の場所なのだ、と考えています……というか、信じています。

……正直言ってしまえば、この点に関してオイサンも若干迷っている部分があります。
絢辻さんの決定的な感情が読み取れない。
論理的に判断できるだけの情報も少ない。

ただ、なんというか……
あんなさびしがりで、脆い女の子である絢辻さんが、
そこまでドライになり切れるハズねえよな、という……
絢辻さんの人物像が、何よりの判断材料だと思うのです。

今回、5回目のプレーで、「シリアイ」ルートに入った時、
本当はもう少しドライだと思っていた絢辻さんが、
よりウェットな姿を見せたことに、オイサンはビックリしました。

……うん。
なんかね、思ってたより、フツーの女の子でした。彼女。
人情家でね。
「ウソついてるみたいのが気持ち悪い」
とか言っちゃって、いい人でね。
そもそも、正々堂々とした人ですしね。

なのでやっぱ、フツーにさびしいんだと思うんですよ。
小難しいコト、一杯書いちゃったけどさ。
ナシにしてもいいくらいなんだけど。

家族に相手にされなくて、
哀しくて、さみしくて、強気のふりして意地張って、
頑張って、頑張って、猫までかぶって、頑張って、
人の上に立つことで、それでいいんだ、正しいんだって思い続けてきて。

だけどやっぱり、どこかで哀しくてさびしいまんまで。
このまま頑張り続けないといけない辛さ、プレッシャー。
振り向いてもあとがない、逃げ込める場所も、支えてくれる人もいない孤独感。

誰か、誰か助けてよ、支えてよ、
こんなに頑張ってるのに、どうして誰も見てくれないの、
世の中ってこんななの?
……って思ってたら、変なのがフラッと現われて、ね。
助けてくれて。

自分の後ろを守ってくれる、家族のような存在になってくれると、思ったのでしょう。
それが「居場所」なのか、
「居場所」へ向かうための「唯一無二の休憩所」なのか分かりませんが……
でも、どっちでもいいと思うのです。

絢辻さんは、誰に似たのかまじめながんばり屋で、
小さい頃に、両親から「これで人生を回しなさい」と間違った歯車を渡されて、
自分の中の少女を殺されてしまったにも関わらず、
ひねくれも世を拗ねもせず、出来ることをまっすぐに頑張ってきたんです。

  イヤ、ちょっとひねくれてはいますけど……。

そんな彼女が17年の時を経て、いま新たに少女を取り戻そうとしている。
家族というものを心で感じ始めている。
そしていつかは、本当の家族と、キチンと面と向かって話が出来る日が来ればいいのになあ、
と思うオイサンです。

エピローグでは色々匂わせてくれるんですけどね。



  ■次回予告!!



えっ……と、決まってねえ!!
うそうそ。
……「手帳編」か、「恋愛編」か、どっちか!
決めとけよ!!

て、手帳! 多分、「手帳編」!
でも書けることないよ、ホントだよ!!






 ◆『アマガミ』絢辻さんシナリオ解読企画 「手帳の中のダイヤモンド」 目次
    01 前口上
    02 序文・絢辻詞という「少女」
    03 第〇部 物語のアウトライン 

    04 第一部 学校生活編 PRE STORY (SS)
    05 第一部 学校生活編 その1
    06 第一部 学校生活編 その2

    07 第二部 「目標」編 PRE STORY (SS)
    08 第二部 「目標」編

    09 第三部 家族編 PRE STORY (SS)
    10 第三部 家族編

    11 第四部 手帳編 PRE STORY (SS)
    12 第四部 手帳編 その1
    13 第四部 手帳編 その2

    14 第五部 恋愛編 PRESTORY その1 その2 その3 (SS)
    15 第五部 恋愛編 その1 その2 その3
    16 第六部 終章 PRE STORY その1 (SS)

    ◎『アマガミ』 絢辻さん SS 目次リンク

 

 

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