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2008年3月22日 (土)

■今はもう、死んで、居ない人の歌 -更新第116回-

 


■夢は、パントマイム



かつて、新山志保さんという声優さんがこの世におられました。
透明感のある中性的な声の持ち主で、
あまり華のある役周りではなかったかもしれませんが、
難しい役でもしっかりとこなす方でした。

オイサンは『それゆけ!宇宙戦艦ヤマモト・ヨーコ』のドラマCDで彼女のことを知り、
その後PSのゲーム『エターナルメロディ』で再度お声を耳に
多少地味なところがありながらも、落ち着いた彼女のお芝居に、
すっかり彼女のファンになっていました。

しかしあるときを境に、
アニメやゲーム作品の中で新山さんの声を聞くことも、
エンドテロップの中に名前をお見かけすることも、ぱったりとなくなりました。
決して入れ替わりの緩やかな世界でもありませんし、
結婚など、何かの理由で引退したか、或いは別な道をお選びになったのか、
くらいに考えていました。

けれども、現実はもっと残酷で、次に私が彼女の名前を見かけたのは、
「声優 新山志保 急性白血病で逝去 29歳」
という記事でした。
もう8年も前のことです。
声優業をお休みされることも、ご病気のことも、
全く公にはされていなかったので、ファンの間に大変大きなショックを与えた記事でした。

ただ、お休みされる前まで新山さんが演じておられた役に、
どんどん違う声優さんが代役で入っていくのを見るにつけ、
大人の事情(これはあまり考えたくありませんでしたが)があったのか、
本当にどうしようもない、止むに止まれぬことが起こっているのだと、
察知するには十分でした。

表題の、『夢はパントマイム』は『ヤマモト・ヨーコ』の作中で
新山さんの歌っておられたキャラクターソングなのですが、
今でも私の好きな曲の一つで、
プレイヤーを適当に流していると、時折行き着くことがあります。
何気ない歌詞と、淡々としたメロディとを繋ぐ新山さんの声は、
今でも尚、春風に乗って聞こえてくる鳥のさえずりのように、透明で、暖かです。

こんな一節があります。

 ♪あの頃の自分に ちょっとだけ戻って
  さり気ないポーズで 自慢したいな 勇気持てたこと

これを聴き、今は肉体を失った当の新山さんには、
戻るべきあの頃という時間ももう存在しないんだなあと思うと、
妙に切ない気持ちになるのです。
また、Wikipediaの記事にはこうあります。

 ・闘病時、見舞いに訪れた岩田光央に、自身のレギュラーキャラの代役が決まっていくのを見て
  「私の代わりはいるんですね」と語ったとの事。
  岩田は現在でもその新山の悲痛な一言が忘れられないと回想している。
                  (『Wikipedia』新山志保の項より)

彼女は声優です。
あまたの声優さんと同じく、作品の中でキャラクターに声を吹き込み、
作品作りに参加する人間の一人です。
ですから、多くのアニメーションやマンガやゲームがそうであるように、
その理想の溢れる世界にどっぷりと浸り、
愛や勇気、夢や正義を、真正面から高らかに謳い上げては、
人々に伝えることのお手伝いをする役回りであることが多かったでしょう。

けれどもあるとき突発に、自分に何の落ち度のあるでなく、
あまりにも理不尽にその身に降りかかった”死”、
死そのものだけでなく、
日々の痛みや苦しみ、
体の中で起こっている得体の知れない出来事と、
それらに引き連れられてやってくる、黒い澱のような感情という現実に侵されたとき、
それまで自ら賛同し、仲間と共に築き上げ、自身の喉で歌い上げてきた、
愛、勇気、夢、正義、理想、
そんなものたちを、彼女は信じることが出来たのだろうかなあ、
それまでの全ては最後まで彼女にとって本物だったのかなあ、と……
神ならぬ我が身は、思いを馳せるほかないのです。

■夢はパントマイム


★匿名希望さんからコメントを戴いて、『夢はパントマイム』だけの動画を追加しました。
 情報トンクス。



 

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コメント

コメントと動画情報、おおきにです。
家主のikasです。
さっそく動画を追加しました。

新山さん、亡くなられたことは残念ですが、
こうして時が経っても、
残していった物に連れられて、
常世のそこかしこに面影が帰ってくることがあります。

それはやっぱり新山さんが、
人の心に広く色んなものを残していくことを許された、
特別な人間の一人であったことの
証しだと思うんですよねえ。
そんな風に生きていけると素晴らしいですねえ。

……ここんちでは
ワリと思い出したようにこういう古いネタに触れてますから、
おヒマなときにでもまたのぞきに来て下さいね。

投稿: ikas(家主) | 2008年4月 2日 (水) 00時46分

 新山志保さんが大好きです。
 今でも新山さんのことを好きだという人が居るのだと思うと安心しました(というとちょっと語弊があるかな?)。
 ちなみにニコニコ動画、“夢はパントマイム”だけの動画がありますよ☆

投稿: 匿名希望 | 2008年3月31日 (月) 14時24分

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